TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第八章 証 第81話 最終総合評価 後編

 

 《友軍前衛部隊、BETA群と交戦》

 

 《増援を要請する》

 

 《防衛拠点方面 大規模敵群接近》

 

 二つの情報が同時に表示される。

 

 シミュレーター内に緊張が走った。

 

 だが、第一小隊の隊列は乱れない。

 

 一ノ瀬は戦況図を見つめる。

 

 友軍前衛部隊は谷間で交戦中。

 

 防衛拠点までは約十分。

 

 敵主力は防衛拠点へ向かっている。

 

 数秒。

 

 その沈黙は、迷いではなかった。

 

「第一小隊。」

 

 一ノ瀬の声が響く。

 

「友軍と合流する。」

 

「ただし、交戦を長引かせるな。」

 

「敵を引き離し、防衛拠点へ向かう。」

 

「了解!」

 

 二十人の返答が重なる。

 

◇

 

 第一小隊は速度を上げ、谷間へ進入した。

 

 爆発音。

 

 砲撃。

 

 友軍部隊は防御陣形を維持していたが、徐々に押し込まれている。

 

「第一班、左翼!」

 

「第二班、右側索敵!」

 

「第三班、中央支援!」

 

「第四班、後方援護!」

 

 命令と同時に各班が展開する。

 

 橘は敵の流れを読み、接近経路を次々と報告する。

 

「右斜面、増援三!」

 

「前方、高速種接近!」

 

 理沙は味方との通信を維持し、負傷機の位置を共有する。

 

 九条は第三班を率い、友軍が離脱するための通路を確保した。

 

 武田もその一角を守る。

 

 敵を追わない。

 

 前へ出過ぎない。

 

 任務は、友軍を救出すること。

 

 それだけを意識した。

 

◇

 

「友軍部隊、離脱開始!」

 

 通信が入る。

 

 一ノ瀬は即座に命じる。

 

「全班、離脱援護!」

 

 第一小隊は後退する友軍を挟むように隊形を組む。

 

 最後の一機が安全圏へ入った瞬間、一ノ瀬が命じた。

 

「離脱!」

 

 誰一人遅れない。

 

 全機が一斉に進路を変え、防衛拠点へ向かう。

 

◇

 

 防衛拠点まで残り二キロ。

 

 橘の声が響く。

 

「敵主力、接近!」

 

 平原の先に、無数のBETA反応。

 

 モニターが赤く染まる。

 

 朝倉が息をのんだ。

 

「多い……。」

 

 しかし、一ノ瀬の声は落ち着いていた。

 

「予定どおり迎撃する。」

 

 その一言だけで十分だった。

 

 第一小隊は防衛線を展開する。

 

 橘が敵の進路を読み、理沙が各班との通信を維持する。

 

 九条は第三班を動かし、防衛線の隙間を埋める。

 

 武田も持ち場を守り続けた。

 

 焦りはない。

 

 誰も無理に前へ出ない。

 

 誰も命令を待ちすぎない。

 

 それぞれが、自分の役割を果たしていた。

 

◇

 

 時間だけが過ぎていく。

 

 敵を全滅させることはできない。

 

 それでも、防衛線は崩れない。

 

 やがて通信が入る。

 

《友軍主力部隊到着》

 

 その直後。

 

 モニターに白い文字が浮かび上がる。

 

《任務達成》

 

 シミュレーターの映像が静かに消えた。

 

◇

 

 候補生たちはコクピットを降り、整列する。

 

 室内は静まり返っていた。

 

 板垣教官は評価表へ目を落とす。

 

 しばらく沈黙が続く。

 

 やがて顔を上げた。

 

「第一小隊。」

 

「任務は達成された。」

 

 候補生たちは静かに聞いている。

 

「敵を追わなかった。」

 

「友軍を見捨てなかった。」

 

「防衛拠点も守り抜いた。」

 

 一拍置く。

 

「……それでいい。」

 

 板垣は候補生たち一人ひとりを見渡した。

 

「シミュレーター課程で教えることは、ここまでだ。」

 

 その言葉に、誰も声を上げない。

 

 一ノ瀬が号令をかける。

 

「敬礼!」

 

 二十人の腕が一斉に上がる。

 

 春には揃わなかったその動きは、今は寸分の狂いもなかった。

 

 板垣は静かに敬礼を返す。

 

 その姿を見つめながら、武田は思う。

 

 この一年で学んだものは、操縦技術だけではない。

 

 仲間を信じること。

 

 任務を果たすこと。

 

 そして、一人ではなく、小隊として戦うこと。

 

 そのすべてが、この敬礼の中に込められていた。

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