異世界の石   作:井ノ中蛙

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第11話 カトリーナと言うサキュバス

 

 

 名をカトリーナと言うサキュバスの女性。

 彼女は魔眼持ちだそうだ。

 魔族は色んな種族に分かれるが、サキュバスやヴァンパイアは大きく分類すると、同じ吸魔族となる。

 吸魔族は、普通に魔族持ちであるらしい。

 "鑑定眼、使えませんか?便利ですのに" と言われても、有る事すら知らないのに使える筈もない。

 使い方を聞いたら、教えてくれることになった。

 もちろん、有料で。

 

 ヌォルソーの町にあるのは、グランディーア獣人国の施設ではなく、商人の屋敷だった。

 もちろん、獣人国と強い繋がりのある商人に間違いない。

 正式に公的な施設と言うわけではないが、事実上そう見なされているだけで十分らしい。

 大使館みたいなものを想像してはいけなかったようだ。

 俺はこの世界の事を余りにも知らなさ過ぎる。

 カトリーナから、魔族の事など聞きながら、獣人国の人達の世話から独立出来ないか、模索しようと思ったのだけど。

 

「リベラさまなら、空も飛べるようですし、仕事には困らないんと違いますか? 」

 

「そら? 」

 

 鑑定眼でカトリーナに見て貰うと俺のステータスが分かるそうで、闇魔法に土魔法、それと魔眼に飛翔のスキルを持っているのだ言う。

 確かに奇襲して来た者達は皆、空に浮かんでいた。

 きっと、あの中にも兄がいたのだろう。

 兄に出来るのなら、妹にも出来て不思議はない。

 それが本当なら、自立の道は意外と簡単かもしれない。

 

「闇魔法なら、闇収納とかも使えますでしょう? 」

 

「いえ、知らないけど…… 」

 

 ホムンクルスが魔導書を見ながら教えてくれたのは、攻撃や防御に使う魔法だけだ。

 闇収納なんて魔法は聞いたこともない。

 カトリーナが言うには、影の中に物を仕舞える魔法らしい。

 そもそも闇魔法使いは、影の中に潜れる筈と、不思議な事を言い出した。

 初耳過ぎて、驚くしかない。

 魔法の説明を聞いていくと、ホムンクルスは魔女側に都合の良い魔法しか教えなかったらしい。

 影に収納出来たり、影の中に潜れたら、簡単に逃げられてしまうし、何を持ち出されるか分かったものではない。

 やはり、リベラも攫われて連れて来られた口なのだろう。

 魔女側も手駒に使いはしても、逃がす気は無かったのが良く分かった。

 ますます兄の捜索の手が迫って来るのではないかと、その恐怖を再認識した。

 かつての生活に戻るのは、何としても避けたいところだ。

 大きな理由はやはり、魔王軍とか言う側に付きたくないから。

 どう考えても戦闘に身を投じる事になるだろうし、そんな生活を誰が望むだろうか。

 チートスキルでも持って転生してきた勇者じゃあるまいし、こっちは、生身の体に埋め込まれた石でしかないのだから。

 何かの拍子に石の体が肉体から撃ち抜かれでもしたら、それで終わりじゃないか。

 普通のヴァンパイアとは違うのだから、戦闘なんてもってのほかだ。

 闇魔法で影に収納出来て、影に潜れるなら、何処まででも逃げ切れる気しかしない。

 

 

「本当にいいんですかい? 」

 

「ええ、お願いします……」

 

 魔眼の使い方から教えて貰うのだけれど、カトリーナが言うには、仕事の合間にちょっと来て教えられるようなものではないし、客商売で店を空けるのも頻繁には出来ないから、近くに住むか、習いに来て貰った方が良いと言われた。

 金を払えば、こちらを優先させる事も可能だろうけど、そこまで獣人国の人達の世話になるのもどうかと思い、カトリーナの店に住み込みで習う事に決めた。

 素人でも手伝える仕事はあるからと、カトリーナも乗り気のようだったから、そうしたのだ。

 

「はい、おはようさん、 まだ眠り足りないんですか? ヴァンパイアさまは寝付きが良くありませんの? 」

 

 早朝、叩き起こされて、店の掃除からはじまり、水汲み、朝食手伝いを言いつけられた。

 早い話が"職業:家事手伝い" と言うやつが俺の仕事らしい。

 口では柔らかな事を言うが、やらせる事は決して優しくはなかった。

 言い方が、ストレートてはなくて、嫌味っぽいのは、彼女の性格なのだろうか。

 姑にイビられる嫁の気持ちが分かる気がする。

 いや、別に嫁入りした訳でも何でもないし、たまたま人使いの荒いサキュバスに当たったと言うだけだから。

 さすがに教えて貰う身だから、表立って逆らうような態度はとらない。

 しかし、カトリーナの人使いの荒さは、文句の一つも言いたくなるほどだった。

 

 仕事は屋根の下、処置室で行われるから、ヴァンパイアにも優しい環境だ。

 下働き兼受け付け、更には助手と公私に渡り働かされていた女性が出勤してくると、第一声は、"大変でしょう?" だった。

 "はい!" とにこやかに返事をしたが、他意はない。

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