異世界の石   作:井ノ中蛙

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第13話 死相、浮かぶ顔

 

 

「サボらずやってるようだねぇ…… 」

 

 カトリーナに角オナ中、声をかけられた。

 "指先に、魔力を集中させて、そこに当てると凄いのが来る" と謎のアドバイスを残して行った。

 じっと、指先を見る。

 恐る恐るそこに指先を伸ばしてみる。

 

「あっ…… 」

 

 ただただ気持ち良い。

 クニクニさせてみると、もっと良くなった。

 いや、これ、魔力のせいじゃなくない?

 

「ん………………………………………… んあっ! 」

 

 ペタンと、その場に尻もちをついた。

 ビクッビクッと、来たからだ。

 逝ったかもしれない。

 魔力、気持ちいい。

 鮮烈な体験を経て、遂に俺は魔力を意識する事に成功した。

 

「あー…… 」

 

 呆けた顔で自分の手を見る。

 脇に漫画のフキダシのようなものが浮かんで、その中に言葉が並んでいた。

 全て日本語だ。

 それは、俺のステータスだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

リベラ・リックス ♀ 魔族(ヴァンパイア)82歳

 体力:78/205

 魔力:159/472

 知力:233/621

 能力:不死、飛翔、結界、魔眼(鑑定、威圧、魅了 暗視)、

 魔法:闇魔法(闇玉、闇槍、闇壁、影腕、影潜り、影収納、影法師、闇召喚、冥界の門、)

   :土魔法(土玉、土槍、土弾、土壁、土刺、)

   :カツ式魔法(ちちんぷいぷい{治癒}、髪結いの簪{攻撃}、河原の石積(召喚)、ずいずいずっころばし{範囲攻撃}、御破算で願いましては(魔法解除)、閻魔様の置き土産{即死攻撃})

 加護:祖母の加護

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

 

 初めて見る自分のステータスは、なかなか有能そうに見える。

 何より一番目を惹いたの加護だ。

 祖母の加護がついていた。

 ばあちゃんの夢を見てから、ずっと頭の隅に引っ掛かっていた。

 ばあちゃんが俺を転生させてくれたに違いない。

 "石の体=丈夫な体"、ばあちゃんが考えそうで納得しかない。

 魔法の欄の "カツ式魔法" の "カツ" とは、ばあちゃんの名前だ。

 ばあちゃん魔法と言ったところだ。

 

 クチュクチュと音がするけど、気にしないでほしい。

 ミゼンの指導だから、仕方なくしているだけだから。

 パブロフの犬ではないけど、"魔法=気持ちいい" の図式が頭の中で出来てしまいそう。

 魔力を集中させた指は、最早ただの指ではない。ゴールドフィンガーと呼ぶに相応しい効果と実力を兼ね備えている。

 その魅力に抗う術は、今のところないかな。身を委ねるしかあるまいて、このビッグウェーブに。

 気持ちいいの奔流に俺は流されていくのだった。

 

 

「少しは稼げるようになったじゃないか……… 」

 

 カトリーナから初めて褒められた。

 鑑定の仕事を俺が初めてこなしたから。

 鑑定眼を持つだけで、食いっぱぐれはない。

 その言葉に嘘はないと、実感した。

 教会にも鑑定の魔道具があるそうで、15歳の成人儀では、新成人のステータスを見て貰うそうだ。

 それが待ちきれない、若しくはその前に確認したい事情がある場合、魔法屋によっては、見てくれる所がある。

 カトリーナの店がそれだ。

 今日のお客も、どこぞの金持ちの子らしいようだった。

 着てる物を見れば分かる。

 能力(スキル)を確認したいそうで、それを鑑定眼で見たままを口頭で伝えた。

 適当に言っていない証明の代わりに名前から、ずっと読み上げる。

 望む結果が得られたのかは、分からないが、それは、こちらの関知する所ではない。

 それで金貨1枚になるのだから、カトリーナも褒める訳だ。

 

 鑑定眼でカトリーナを見ると、彼女は風魔法を使うのが分かった。

 何というか、初級魔法以上は中級が1つとなかなかに寂しいラインナップだ。

 魔法屋と言う商売を選んだのは、彼女なりに考えた結果なのだろう。

 総魔力量は、俺の半分以下なのはサキュバスの平均値なのかは、分からない。

 

 自分のステータスを見て気がついたのは、体力魔力共に全然回復しないのが、見ていて不思議だった。

 朝、疲れている訳でもないのにどちらも半分以下のままだった。

 そんな状態ではあったが、魔導書を2冊、渡された。

 闇魔法と土魔法のだ。

 魔導書はかなり高価だとミゼンから聞いたのだけど、大丈夫なのだろうか。

 そんな事もあって、俺はカトリーナの仕事を前よりすすんで手伝う事にした。

 

「わぁ……… 」

 

 それは、小さな手鏡だった。

 それまで、木桶に汲んだ水面でしか見たことのない自分の顔を初めてちゃんと見れた。

 第一印象は、貧相な外人の女の子か。

 病気療養中、しかもステージの進んだ病状を抱えた死相すら見える顔だった。

 目が落ち窪み、額には血管が蒼く浮かぶ。

 そしてカサカサの唇、一見して大丈夫そうでは決してない顔立ち。

 これが自分?

 じっとこちらを見つめる灰色の瞳。

 銀髪と相まって、雰囲気が独特だ。

 

「リベラちゃん、満月になったら、もっと元気になるのよね? 」

 

 ミゼンからそう心配されたのは、この見た目のせいだと分かった。

 この手鏡は、金属を磨いたものだそうで、重く、持ち歩くのには向かないし、磨きに出しても、ひと月も保たずに曇ってしまうそうだ。

 それをわざわざ持ってきてくれたミゼン。

 お陰で、自分が相当心配な状態なのが分かった。

 角オナしてる場合じゃない。

 これでは、夜良く寝た程度で回復するわけがない。

 病気なのかも?

 アプリリア様の家臣の人達が、手厚く世話してくれたのはこの見た目のせいもあったのだろう。

 この子、この先長くは保たないだろうと、憐れみも混じっていても不思議ではない。

 

「病気なのかな? 」

 

「鑑定眼で分からないの?」

 

 そう言われても、健康とか、病気とか健康状態を示す表示はどこにも無い。

 ひょっとして、この体自体、相当無理した状態ではないのだろうか。

 鎧の中で過ごした半年近くの間にかなり弱ってしまったのだろうか。

 俺を体に埋め込まれて、不健康な状態なのだろうか。

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