異世界の石   作:井ノ中蛙

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第20話 治癒魔法

 

 

 おかしい。

 だいぶ前にドラゴンの所に来たヴァンパイアはコウモリから、人の姿になる時に服も着ていたはずだ。

 不死スキルが、出来たのは嬉しいが、その度に裸になるのはどうなのか。

 何が違うのだろう。

 服着た状態を想像しながら元に戻るとかだろうか。

 フェリオは筋トレしてても良いが、下見てやるようにと命じておいた。

 また猫になって、人に戻る。

 

「あー…… 」

 

 ダメだ、裸のままだ。

 チラッと見るとフェリオが盗み見してる。

 コラコラ、命令は守らないといけないだろうに。

 見られてると気がついて目を閉じた。

 目の前でしゃがんでやろうか。

 下半身が反応したら、薄目を開けて見てるの確定だ。

 まあ、しないけど。

 自分でもちゃんと見た事ないのに、男に見せるつもりは無いし。

 それにしてもことごとく、自分では見れない位置なのだと、実感した。

 いわゆるマ〇〇リ返しみたいなアクロバティックな体勢にでもならないと、見れないらしい。

 それをしてまで見たいかと聞かれたら、こたえは "NO'" だ。

 満月の夜じゃないんだから。

 フェリオのラッキースケベは長くは続かない。

 猫の姿のあと、鳩のような鳥、見た目はカラスにしか見えない鳥にもなれるのを確認したら、練習は終わりだ。

 もし空を飛べたとして、着陸に失敗しそうになったら、猫より鳥の方が助かる率は上がるだろう。

 飛行機事故で一番多いのが着陸時なのは有名過ぎる話だ。

 車もブレーキが壊れたら、それは動く棺でしかない。

 ダッシュボードが祭壇に見えてくる事だろう。

 そうならない為に、出来る事は尽くすべきだと思う。

 

 ところで、"カツ式魔法" の治癒魔法と言うのがあるのだけど、これも試してみたいと思っている

 呪文はまるでオマジナイなのだけど、それが却ってばあちゃんらしいと言えなくもない。

 翌朝、朝食後、部屋に戻った時点で告げる。

 

「フェリオ、ちょっとここ、座って……」

 

「はい、リベラさま……」

 

「ダメな方の目はこっち?」

 

「そうです、ほぼ見えてません…… 」

 

「ええと、治癒魔法、試してみるから、そのままね…… ちちんぷいぷい 御代の御宝、イタイのイタイの飛んでけ 」

 

 ダメな方の目に手を翳して呪文を唱えた。

 少しだけ手が淡い光に包まれたように見えた。

 キョトンとしているフェリオ。

 手をどけると、顔を見てくる。

 手で左右の目を交互に覆ったり外したりして確かめていた。

 そして、いきなりだ。

 

「リベラさま! 治りました! ありがとうございます! 見えます! 良く見えます! 」

 

 抱きしめられた。 

 良かったね、嬉しくて我を忘れたね。

 ひとしきり騒いだフェリオが落ち着くのを待って "放して" と告げると、慌てて、腕を離して解放してくれた。

 なかなか強い力だった。

 

 ばあちゃん魔法は良く効くようだ。

 最悪、もしもの時はこれを試してみるのも良いと思った。

 体の分解、再生は裸になるのがネックだから、治癒魔法で済むなら、その方が良くないだろうか。

 墜落した現場に知らない人が居ないとも限らないし。人混みの中に墜落したら、自分の他に怪我人も出るかも知れない。

 使えるに越した事はないだろう。

 

 今日は、移動の予定は無し。

 雑貨屋みたいな店で地図を買った。

 手描きのツギハギの紙片の寄せ集めのような地図だ。

 何枚かあったが、どれも似たような状態のものしかなかった。

 国内だけと周辺の国まで書かれたもののの2種類があって、値段で区別されていた。

 もちろん、周辺の国まで書いてある方が高い。

 必要だと思ったから買ったが、フェリオは黙って店の主人との遣り取りを見ていた。

 

「何か言いたそうに見えたけど? 」

 

「値段を吹っかけられてないか、見ていただけです…… 」

 

「相場だった? 」

 

「そうですね…… 」

 

 何か不満気にもとれるのだが、何が気に入らないのだろう? 奴隷の機嫌を伺う主人もいないから、放っておこう。

 

この町はヌォルソーの町の北側にあるリグの町。

 西にはグランディーア獣人国があり、国境沿いを北上するように移動してきたようだ。

 

 因みにファフスの町は、もっと北東寄りに結構離れている。

 この距離を1週間ほどで移動してきたのだから、さすが獣人国のお姫様だ。

 どんな馬車だったか、今となっては良く覚えていない。

 馬を頻繁に替えて、超特急で進んだとかだろう。

 

「あの…… 」

 

 地図を見ていると、フェリオが口を開いた。

 

「ん、なに?」

 

「宜しかったら、剣をお与え頂けませんか? リベラさまをお守り出来ますし、傭兵の仕事をして稼いで来れます 」

 

「あー…… 剣ね…… 」

 

 遅かれ早かれ必要になるとは、思っていた。

 幾らするのか分からないから、手が伸びなかっただけだ。

 

「高くない? 」

 

「ピンキリです、銀貨20〜30枚もあれば、普通に使える物が買えると思います 」

 

 思ったより全然しなかった。

 この町には、新品を扱う店はなく、研いだり中古を売り買いするだけの店はあった。

 フェリオに銀貨を渡して、選ばせた。

 鞘は別売りではなくて付いていた。

 一応、渡す前に研いであるか確認して、場合によっては研ぎ直しもしてくれるのだとか。

 思ったより良心的な商売をしてて感心した。

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