「ここが、魔導士ギルド? 」
翌日、町を移動した。
リグの町には、魔導士ギルドが無いと分かり、隣のワオルーの町にあると聞いたからだ。
乗り合い馬車に揺られてるのはフェリオだけで、俺は影の中。
節約はしておいたに越した事はない。
そして町についたのは、夕方少し前。
近くの建物の影でフェリオの影から出て、ギルドの前に立つ。
さすがに仁王立ちになり、腰に手をあてて、高笑いするほどイカれてはいない。
「行って来るから…… 」
「え、ついて行きますよ? 」
「そ、そう?」
子供じゃないんだから別に1人でも大丈夫なんだけど。
勢いのまま扉をくぐれば、建物の中は、ガラガラだった。
銀行のように長椅子が、何列か並んで置いてある。
そしてその奥には、カウンターがあった。
受け付けらしき、職員がこちらを見ている。
「登録は、まだ出来るか? 」
気を利かせたフェリオがそう言いながらカウンターへと、歩み寄る。
だから、子供じゃないって言っているのに。あんまり過保護過ぎるんじゃないのか。
「この時間からは無理ですね…… 」
「……。」
振り向いたフェリオの顔には、"ほらね"
と書いてあるかのよう。
魔眼の威圧でもくれてやろうかと思うほど、素っ気無さ過ぎる。
俺はその場でくるりも向きを変え、帰ろうとした。
そこに誰かいた。
「ちょっと、待ちなさいよ 」
中学生位の身長の女の子だ。
手には杖を握っている。
黒ローブを被ってはいないけれど、ちょっとお洒落な魔導士みたいな衣装に見えなくもない。
なんかアニメに出て来そうなキャラっぽい。
声もやたら甲高いし。
「あたしが登録した時は、こんな時間じゃなかったかしら?」
"シュレンティナ様だ"、"不味いぞ" とカウンターの中から、声が聞こえる。
「ええ、そうですが、シュレンティナ様はやはり、特に優秀でいらっしゃるので…… 」
「特別扱いしたってこと? それギルドとしてどうなの? 杖にかけて公平と言える? 」
女の子はお冠だ。
よく見ると耳が横に長いエルフらしい。赤毛の髪は何処かで見たような気がするけど、思い出せない。
「確かに、登録はまだ出来ますよ、どうしますか? 」
そう言いながら、奥から男が出て来た。
出来ないといっみたり、今度は出来ると言ってみたり、忙しいものだ。
「リベラさま、お受けになりますか?」
「うん…… 」
気の利いた返事が思い浮かばなくて頷いた。
"お受けになるそうだ" とフェリオが伝達するものだから、カウンターの中では、何者だとこちらを覗き込む者もいた。
「そうよ、人の厚意は素直に受けるものよ…… 」
腕組みして "ウンウン" と頷いてるエルフの女の子。どうやら厚意をかけてくれていたらしい。
ギルドの登録は、筆記試験、実地試験があったりは、無くて、鑑定の魔道具でステータスを確認されると言うものだった。
ーーーチリン♪
通路を通り奥の部屋へと案内された。
そこには、テーブルの上にポツンと魔道具が置かれているだけだ。
木製の台座に水晶玉が嵌め込まれたような形の魔道具からチャイムのような音が鳴った。
水晶玉の上に手を置くよう言われていた俺は、玉の中に文字が浮かび上がるのを見ていた。
この世界の字は読めないが、読み書きの出来ない子供と同じで、自分の名前位は分かった。
あと、字と数字の区別もつく。
なので、それがリベラのステータスの一部なのだなと、想像できた。
鑑定眼で見たステータスよりかなり短い。
必要な情報だけ抽出して、表示しているのかもしれない。
「………。」
職員が、水晶玉の表示と俺の顔を、無言で交互に見る。
「魔族でしたか…… 」
「ええ、まあ…… 」
「ヴァンパイアと言うのは伏せておきましょう、ギルドで公表するのは、大まかな種族だけが通例となっていますので…… 」
カリカリと手元の書類に何やら書き込みながら、そう告げる職員の男。
これなら、虚偽申告は通用しないし、試験も必要ない。
スキルまで表示するかどうかは分からないが、使える魔法とかは表示されるのだろう。
ひょっとして "カツ式魔法" も表示されているのだろうか。
鑑定眼で確かめたいが、今使うと職員に魔眼がバレてしまう。
都合よくトイレにでも行って欲しいところだが、そんな事にはならなかった。
幾つかのスキルについて質問されたから、魔道具に表示されなかったのだろう。
"以上で登録は済みました" と、部屋を出るよう促された。
フェリオのいる長椅子の並ぶ待合室に戻る。
カウンターの中では、職員同士でヒソヒソ話がはじまった。
先程のエルフの女の子は、引き揚げたとフェリオから聞かされた。
先輩魔導士として、困った事があったら面倒見るから、何時でも頼って来いと言い残して行ったそうだ。
"シュレンティナ" とちゃんと名乗って行ったとか。
典型的なお節介焼きのお人好しなら良いのだけど。
恩を売って、仲間に引き込んで、何やら良くない事に誘われても断れなくするとか、無いとも言い切れない。
子供に見えても子供じゃないらしい。
前見たエルフは、ゴーレムの頃、集落に居た人達を思い浮かべて比べたが、大人か子供かの区別は、見た目の大きさで判断していたのも思い出した。
小さいけど大人とかも、中には紛れていたとしても、不思議ではなかったか。
ナイスバディのあのエルフが懐かしい。
今会えたら一緒に湯浴みでもしても良いだろう。
同性なんだし。
ついでに、お邪魔岩も思い出した。
あの岩、まだあるだろうか。
今となっては、破壊する気にもならない。
岩に恨みを持ったのは石だったからね。
今はヴァンパイアだし。
人生の成功者の余裕のようなものを感じずに、いられないじゃないか。
ヌフフフ………。
りとりでニマニマしてたら、フェリオに、"お腹でも空きました?" と聞かれてしまった。
馬鹿だな、ここに来る時、屋台で買い食いしたばかりしたのを忘れたのか。
ああ、筋肉が多いから、お腹が早くへってしまうのだろう。
フェリオは食いしん坊でいけない。