「お待たせしました、身分証が出来ました…… 」
カウンターの職員の女性に呼ばれた。
行くと、銀色の金属プレートに名前が彫ってあるものを渡された。
登録料は、はじめに払ってあるから、受け取りだけで済む筈なんだけど、ギルドの規則の説明がはじまってしまった。
町中での魔法の行使は極力控える。
自身の身を守る、若しくは武器を持ち攻撃している者にはこの限りではない。
町の外での魔法の使用は制限されない。
悪事に魔法を用いた者は、ギルドからの追放とする。
悪事とは、人を殺める、怪我をさせる、脅す等、他人の生命、財産に被害を与える行為全般とする。
ただし、自身、他人問わず生命と財産を守る為である場合、この限りではない。
こんな形式張った言い回して、ちゃんと意味を理解できる者がどれだけ居るだろうか。
頭でっかちの役人が作った規則の為の規則のようなものだ。
魔法は悪い事に使ったらダメ、人を守る為ならいいよ、町中ではビックリしちゃう人がいるから、止めようね、それだけの事だろうに。
他にも細々と規則があって、長々と説明が続いたのだけど。
階級は、下から "見習い"、"木"、"鉄"、
"銅"、"銀"、"金"、"白銀" とする。
「リベラさまの階級は銀となりますので、宜しくお願いします、ご活躍をご期待します 」
「へ、 何で銀?」
「種族による優遇と、魔力量による補正、並びにスキル理由による考慮含みとなっております…… 」
「あー…、 はひ…… 」
何となく分かった。
ヴァンパイアだからね、色々と吹っ飛んでると評価されたのだろう。
「先程のシュレンティナ様と同格ですね…… 」
隣りの女性職員が口を滑らせたらしく、規則の説明をした職員に睨まれて、あわてて口を手で塞いでいた。
あの、ちびっこも銀とは驚いた。
エルフも魔法は得意なのかもしれない。
あの狩猟民族風のエルフもゴーレム使うほどの、腕前だったし。
ギルドから帰る際は、"次はいつ来られますか?" と聞かれた。
フェリオが言うには、期待されている証なのだとか。
明日、行ったら、やって欲しい仕事を幾つか並べて、どれから手をつけるかと聞かれるかもしれないそうだ。
シカゴの南地区に入団した3冠王野手ではないのだから、それは大袈裟だろう。
その夜、ベッドの中で少しだけ自分を慰めた。
フェリオは、壁を向いこちらに背中を向けて寝ている。
仕方ない、今日は精神的に疲れたから、少しリラックスが足りない。
フェリオに触らせるのは満月の夜だけにのつもりだし、同棲してる恋人と言う関係でもないし、声を我慢しながら、ちょっとだけした。
久し振りだからか、かなり良かった。
「あの、俺、お手伝い出来ます 」
「それは、満月の夜だけね…… 」
翌朝、そんな事を言い出すフェリオ。
バレてたらしい。
そう返すと明らかにションボリした。
大人ボディは、安くないんだから、ダメだって。
トイレ行って抜いて来なさい。
カトリーナの部屋に居た頃はヌく必要すらなかっただろうけど、俺は "精" は必要ないから。
着替える時もアッチ向かせてるし、同じ部屋にいても、ちゃんと教育はしてる。
たまに、チラッと見てるのも知ってる。
そこまで口煩く言うのもどうかと思って、黙っているけど。
翌朝、フェリオの影に潜ってギルドへと向かう。
闇魔法を使えるのは知られているから、影に潜る位、騒がれるとは思ってない。
建物の扉をくぐって、依頼の用紙がチラホラ貼ってある掲示板の前に立つフェリオの影から、スルスルと生えるように抜け出る。
カウンターの前の待合室には魔導士らしき男女が4人しかいない。
魔導士って、朝が弱かったりするのだろうか。もう、朝食を終えた時間で、町は動きさはじめていると言うのに。
「リベラさま、朝早くから、御苦労様です…… 」
カウンターに行くと丁寧な挨拶を受けた。
奥の部屋へと案内される。
「おはようございます、リベラさま…… 今日は幾つか良さそうな依頼をまとめてかあるのですが、御覧になりますか? 」
「仕事ですか? どんなのがありますか? 」
差し出された何枚かの書類は、依頼書らしい。
遠慮せず、鑑定眼を使い読んだ。
護衛の仕事と、護衛の仕事、それと護衛の仕事………。
「あの、護衛の仕事しかないんですか?」
「いえ、他にもありますが…… 」
きっと、優先順位が高くないのだろう。けどそれは、ギルド側の事情だろうし、俺にも事情はある。
護衛はパス、平和的なのをご所望であるゆえ……。
次に持ってこさせた書類は、護衛の他にも違う種類の依頼が混じっていた。
おおっ!とその題目を見て一瞬、喜んだのが、"家庭教師" の文字。
鑑定眼で日本表記されてるのだけどね。
しかし、要求項目が、"火魔法、水魔法の扱いに富む者" とあったので興奮は一瞬で散ってしまった。
背は低くないけど、ミ◯ルド族でもないけど、安定収入は、期待出来そうだと思った。
まあ、無理と分かって、この町に何年も定住するつもりは無いからと胸をホッと撫で下ろした。