異世界の石   作:井ノ中蛙

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第26話 隣りの警備

 

 

 

 グレシェディエ家は思ったより簡単に見つかった。

 日頃の行いが物を言うとか、茶化すお調子者は居ないから、自分で言ってみた。

 想像したより、敷地は大きくない。

 と言うか、隣りの屋敷が大きいからそう見えるだけか。

 家と家の間は高い塀が両側に立ち、見通しは良くなさそう。

 降りる場所を探しながら、降下しているときに、いきなりそれは来た。

 

「あ! ガッ!! 」

 

 お尻を棍棒で殴られたように、いきなり衝撃が来た。

 咄嗟に手をのばしたら、お尻に細い棒が刺さっていた。

 もちろん、激痛が走ってそのままでいられる訳がない。

 意に反して降下してる。

 気がお尻に集中して、飛ぶのは二の次となったようだ。

 "痛い" と "堕ちる" 頭の中でグルグル回る。

 地面がドンドン迫って来る。

 咄嗟に体を分解出来た。

  服から出るのに、まごつくのもいたが、墜落する前に全てが空中に逃れる事が叶った。

 良かったと思った刹那。

 

「イタタタタッ!」

 

 体中がチクチクと痛い。

 白い煙が視界を覆いはじめる。

 今度は日の光が襲ってきた。

 ヒラヒラと服が後から落ちてくるのを、近くの木の影の中から見守っていた。

 服には矢も混じってる。

 先端には血がついていた。

 誰が放った矢なのか。

 文句どころで済む話ではない。

 人が仕事で飛んでいたのに、それを矢で射るなんて、非常識にも程があるだろう。

 当たり所が悪ければ、死んでも不思議はない。

 服も影から手を出して引き摺り込んだ。

 これは、れっきとした殺人行為だ。

 影伝いに東屋まで辿り着いて、その影で服を着た。

 

「賊が堕ちたのはこっちだな? 」

 

「はい! 確かに見ました、こっちです! 」

 

「探せ! 逃すな! 」

 

 防具を着け、武装した男達が4人、駆けてきた。

 腰には剣を下げている。

 人を射っておいて、賊とは、大した言い草だ。

 問い詰めてやろうと思ったが、止めた。

 仕事中だ、配達が済んでからでもいいだろう。

 証拠の矢も手元にある。

 血のついた矢を見せれば言い逃れも出来ないだろう。

 自分の影に潜って、屋敷の敷地の外へと移動する。

 大きな屋敷の建物の影を通って、裏口へと回って、道に出た。

 グレシェディエ家はどっちだろう。

 また空に上がると矢を射られそうだ。

 少し歩いて、屋敷から離れた所で影から出て、そのまま宇宙へと上がる。

 

「逃げたぞ! 」

 

 見ると、男達がこちらを指差して叫んでる。

 そこは、グレシェディエ家の隣りの大きな屋敷だった。

 帰りに文句を言ってやると心に誓った。

 そっちを睨みつけながら、グレシェディエ家の門番のすぐ近くに降りる。

 

「魔導士ギルドの者です、お届け物の以来で参りました 」

 

「ちょっと待て…… 」

 

 門番が、奥へ引っ込んでるうちに、影から小箱と封筒を取り出して手にした。

 

「見つけたぞ〜! 逃がすか〜! 」

 

 そこへ、隣りの屋敷にいた男達が駆けて来る。

 完全に何かの悪者扱いだ。

 

「おい、女! グレシェディエ家の者か? ペレイゲス家に忍び込むとは、只で済むと思うなよ! 」

 

「空から配達の依頼をしている魔導士に矢を射って邪魔をしたのは、誰ですか? 当たり所が悪ければ死んでもおかしくないじゃないですか? 」

 

「口から出任せを言うな!」

 

 威勢がいいのは1人だけで、残りの3人は不味いと思ったのか、口を閉じてる。

 

「こいつは、出来の悪い密偵に違いありませんよ! 捕まえて連れて帰って何処の屋敷の手先か吐かせてやりましょう!覚悟しろ! お前はもう、逃げられん!」

 

 ペラペラと喋り続ける男の口も止まらない。

 その後では、3人が何やら小声で話し合いをはじめていた。

 

「リンゼイ家の方々が何かご用ですか? 」

 

 門番が帰ってきた。

 黒服の男を連れてきた。

 その黒服の男が4人に向かい聞いている。

 "あの" "え〜と" と歯切れの悪い返事をする3人に対して、"この者は、賊てして、連れ帰り……" と説明をはじめる1人の腕を引いて黙らせた。

 

「空から降りてくる時、この人達が矢を放って殺されそうになりました、荷物は無事てす、奪われたら依頼失敗になってしまう所でした」

 

 これみよがしに俺はそう告げる。

 

「リンゼイ家が荷物を? まさかそのような…… 」

 

「いや、人違いだった、騒いでスマンな…… 」

 

 後の3人のなかの1人が一歩前に出てそう告げた。

 喋り続けていた男が "隊長、こいつは賊です" と反論しているが、他の苦笑いしている男に腕を引かれ、黙らされている。

 

「依頼を終えたあと、抗議に伺いますので、言い訳はその時聞きます 」

 

「まさか、本当にそんな野蛮なことを? 」

 

「射られて血のついた矢も保管してありますから、嘘かどうか、見る人が見れば分かると思ます 」

 

 そこまで言うと、黒服の男は、"話は中で" と、その場を終わらせる。

 4人の隣の警備の者達にも、了解を取りつける。

 4人は引き揚げて行った。

 

 案内された応接室はやはり、豪華だ。

 ギルドの依頼書と身分証を見せ、そのあとに小箱と封筒を渡した。

 依頼書に受け取りのサインを書く所でもあったらしい。

 黒服の男は、洒落たインク入れと羽根ペンで何か書き込んでいた。

 

「さて、門の所での騒ぎの件ですが…… 」

 

 その話題について、何かアドバイスでも貰えるのかと思えば、黒服は "被害が小さいなら、騒ぎ立てない事です" と俺を諫めるようなことを言いはじめた。

 ギルドに苦情を言う程度にしておかないと、身に災難が降りかかると、物騒な事を言う。

 大家(たいけ)と付き合って行くには、多少の被害には目を瞑って、相手を怒らせないように振る舞うのが利口がする事だと、諭してきた。

 "でも" なんて俺は言わない、"はい、そうですか" と従う様な言葉にとどめた。

 "リンゼイ家に逆らう馬鹿は長生き出来ませんから" とそれで話を終わりにした。

 黙って依頼書と共に金貨を渡してくる。

 その時は報酬だと思って受け取ったが、後から考えたら、それはおかしいと気づいた。

 その後、ギルドに戻ったら報酬が支払われて二重に報酬が出る訳がないから。

 アレは口止め料的な意味のお金だったのだろう。

 帰り道は、わざと隣りの屋敷の前を歩いて通り過ぎてから、空へと昇った。

 敷地の中をチラと見たが、4人は解散したらしく、集まってる様子は見れなかった。 

 

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