恥骨と言う身体の部位について、少し説明を。
その箇所を "恥骨' と呼ぶのは、ここ異世界では俺だけだろう。
ここでの呼称は "土手" とか "出っ張り" と、隠語しか聞いた事はない。
種族によって、程度の差こそあれ、女性の体は5つの山と3つの穴で表される事が普通だ。
恥骨はこの世の男性の劣情を煽るらしいと知り、ちょっと戸惑っている。
下着姿にでもならない限り、そんな所を人前に晒す事はないが、何とも奇妙な感覚で理解出来ないと思った。
なぜ、そんな事をと思うかも知れないが、レゴスの町で、買い求めた下着の土手の部分が、盛り上がった形状になっていたので、その理由を聞いてみたら、そんな訳らしい。
布地を丸めた物が入っているそうだが、そこまでしてアピールしたいものなのだろうか。
それなら、胸当てにも入れたら良いだろうに。
所変われば品も変わると言う事だ。
レゴスの町は港町だった。
港と言っても立派な大型帆船が停泊しているわけもなく、遊覧船程度の大きさが最大サイズらしい。
木造ならそれも仕方ないだろう。
逆に頑張ってるほうだと思う。
船の知識なんて何もないのだけど。
マストが立っているから、帆船なのが分かる程度だ。
面舵と取舵の違いすら知らないから。
そんな港町は、船の大小とは関係なく賑わっている。
夕方、通りを歩いていると、薄着の女性を目にする事が多い。
花売りであるのは間違いない。
しかし、その格好はなかなかに露骨過ぎないだろうか。
下着をつけているのは分かる、その上に着ている布地がスケスケだから、中身がまる見えだ。
なるほど、ここでかさ増しした土手が遺憾無く威力を発揮するらしい。
スケスケだから、くっきりとは見えない。
しかし、その盛り上がりは視認出来る。
需要があるから売っているのだと、これ以上ない位良く分かった。
チェルニア、ラーラ、ミシェネ、の淫魔組は夜の町に消えて行った。
フェリオにも行っても良いと、小遣いを渡してあるから、きっと、宿屋の部屋にはいないだろう。
ミリルシアが警護がてら、横を歩く。
俺は、夜の屋台で買い食いして、満足すると、宿屋へと戻った。
ここでは、久し振りに湯浴みも出来たし、言う事はない。
つかの間の休息には持って来いの町だった。
「………。」
と思ったそばから、俺の横を駆けて行く薄着の女の子がいた。
ミリルシアがサッと前に出てオレを護る位置についてやり過ごした。
「ちきしょう、何処行きやがった!」
そして、それを追いかける男達が通り過ぎる。
異世界アルアルの手垢まみれのシチュエーションだ。
助けたら何処かの国の王女様パターンは既に使用済みだから。
そもそも、いちいち助けてたら、ただでさえ多いと思ってる同行者が増える一方になるし、目立つだけだから。
「やめてよ!」
「ふざけんな!」
「逃げられると思うなよ!」
「やめて! 助けてー! だれかー!」
角を曲がった先で掴まったらしい女の子。
声が大きいから、一部始終聞こえている。
ほどなくして、3人の男達に抑えつけられた女の子が角から姿を現した。
「ね、助けてよ! お願いだよ! 」
リベラって、お人好しそうな顔してないと思ったけど、すれ違いざまに何故か助けを求められた。
「如何しますか?」
ミリルシアもどうして聞いてくるのだろう。頷いたら、男達に声をかけてしまった。
「その者、買いましょう、幾らなら売るのか、言いなさい…… 」
ええと、ミリルシアは人の考えをある程度読める能力(スキル)を持っているのだった。
金貨8枚と言った男に、金貨5枚の娘に男3人で金貨3枚の手数料を乗せて儲けるなんて、セコい男もいたものだと、相手の考えは筒抜けの様子だ。
結局、金貨6枚でその女の子を買い取った。
先日、奴隷に落とされたばかりという女の子は、名をフロンジュと言った。
この国では珍しい獣人族だ。
頭の耳と、お尻の尻尾は切り落とされていた。
なので、見た目は人族にしか見えない。
そもそも、奴隷だと、どうして分かったのだろう。
奴隷なら奴隷紋とか隷属の首輪とか外観で分かるように、してあるはずだと思うのだけど。
「獣人の奴隷は、切り取った体の一部を使い契約魔法で逆らえなくする手法が使われているからです…… この娘は、まだ、処理が終わっていなかったのでしょう…… 」
ミリルシアは、物知りなのは分かった。
他の種族もそうすれば良いだろうと思うと、種族ごとに、最適な奴隷の扱い方があるのだと、教えられた。
行き掛かり上、買ってしまった獣人の奴隷。
どうしたら良いだろう。
「客を取って働かせれば良いのではないですか?」
「ううっ……… 」
それを聞いて泣きだすフロンジュ。
「いやなの? 」
「イヤよ、そんなの嫌に決まってるでしょ? 初めては番になる相手って、決まってるのに……」
「では、何が出来るのです?」
「鉄爪があれば、魔物ぐらい狩ってこれるわよ…… 」
「鉄爪? 」
「獣人族特有の武器です…… 」
「戦えるなら、護衛でもして貰ったら?」
「そうですね、腕を見てから決めましょう……」
「………。」
貞操観念がしっかりしてるのは、良いとして、インキュバスがいるから、貞操を守るのは極めて望み薄だろう。
取り敢えず、宿屋に戻った。
後からフロンジュの契約魔法の書類が届いた。
本当に奴隷だったようだ。