異世界の石   作:井ノ中蛙

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第41話 追手

 

 

「申し訳御座いません…… 」

 

「この、スカポンタン!」

 

 ミリルシアがチェルニアをなじる。

 久し振りに聞いた、その台詞。

 翌朝、チェルニアが血相変えて帰って来た。

 魔族なのがバレたそうだ。

 いや、それだけなら、慌てる必要はない。

 運悪くその相手が騎士団に知り合いがいるとかで、すぐさま通報に向かったそうだ。

 よりによって、一番知られたくない所へ情報が回ってしまう。

 話の通じる相手とは、とても思えない。

 御者をフェリオに代わり、荷馬車に全員飛び乗って、宿屋を後にした。

 何もかも後回しでいい。

 タイミングを逃したら捕まってしまうかもしれない。

 チェルニアが言うには、羽目を外し過ぎたそうだ。

 インキュバスの羽目とはどの程度のものなのだろう。

 

 町はどうにか無事に出られた。

 後を追われると見越して、敢えて近隣の町に寄らずに、北上するルートをとる事にした。

 町を2つ3つ越えれば、後を追う者も諦めるだろうから。

 旅路は長いよ、食べながら行こうよ、である。

 なんて、気楽に言っていられる余裕はなかったらしい。

 どの町にも出入りの道に門番が立つようになった。

 遠くに馬車を停め、フェリオとフロンジュに歩いて町へ様子に見に行かせたが、入口で種族を確かめる魔道具をするよう言われ、それをしないと通して貰えないそうだ。

 影の中からそれを、冷や汗をかいて見ていた。

 屋台で食べ物を買い漁り、水代わりのビードを小樽で買う。

 パンに干し肉、葉物野菜に芋と、影の中から指示して色々買わせた。

 何度か途中で路地裏に行き、影収納に全て仕舞えばまた買い物をするを繰り返した。

 後をつけられるのを警戒して、帰りは違う方向へ向かう道から出る年の入れよう。

 それでも、見つからない保証はどこにもない。

 もっと北上すれば、もっと時間が経てばと、他力本願な対策しか思いつかなくて詰みそうな予感。

 

 フェリオとフロンジュは仲が良さそうだし、どっちも戦えるから、傭兵の仕事とかでやって行けるだろう。

 チェルニアを筆頭にインキュバス組は、町中にさえ入ってしまえば、魅了を使えば、前のお屋敷に潜り込んで、ちゃっかり居座る事も可能だろう。

 ミリルシアも魔国のお屋敷に帰れさえすれば、どうてとでもなる。

 どうして大陸のこんな端っこまで来てしまったのだろう。

 安易に神聖国を目指したのがいけなかった。

 心の中で、反省と後悔がムクムクと頭をもたげてきた。

 

 お嬢様、お嬢様と持ち上げられて、リスクを何も考えないから、こう言う事態を招いた。

 行き先を変えて、帝国領を出る事を最優先にするべきではないだろうか。

 

 今さら何を後悔しても遅い。

 そもそも見通しが甘すぎる。

 主人公が馬鹿過ぎてつまらない。

 下らない話を永遠と並べる作者の無能に付き合ってられない。

 ネット慣れした人達は口を揃えて批判するだろう。

 舞台は異世界、訳の分からない生い立ちの石がヴァンパイアの女に生まれ変わって、ビビって逃げ回ってるだけだ。

 読むに値しない。

 窮地に立ったこともなく、現場すら知らない者がそうのたまう。

 人のやらかしを、さも見通していたかのように上から目線で批判する。

 アレもだめ、コレもだめ。

 空調の効いた快適なお部屋から、体臭や排泄物の匂いから逃れられない遅れた生活の中で、常識も世界の情勢も詳しくないのに、異世界で要領よく生きられる方がおかしいだろうに。

 現代も異世界も、楽して生き延びられるほど甘くはないのは同じなのに。

 

 誰彼構わず噛み付くほど、自分を追い詰めてることに気付かせてくれたのは、ラーラだった。

 

「だいじょうぶ? いいこ、いいこ……」

 

 なんでか頭をナデナデされて、ちょっと涙が出そうになった。

 

 

 

「ん? 」

 

 ミリルシアが目を紅くして遠くを見ていた。

 時は夜の帳が降りたばかりの頃、ラーラとミシェネ、フロンジュが夕食に供するスープを作りはじめたところだった。

 水は、 チェルニアがなけなしの魔力を振り絞って出した水球5発分。

 残りの5発分は湯浴み代わりに身体を拭くお湯に充てられる。

 一日に水球10発分の魔力しかないチェルニア。戦いには向かないのは誰より本人が一番良く分かっている。

 そのくせ魅了とか下僕を洗脳する術には長けているのだから、始末が悪い。

 フロンジュ辺りを下僕にして身を守らせるなんて最初から見抜かれていて、ミリルシアにやらないようにと釘を刺されていた。

 

「火を止めなさい…… 」

 

「上から見てくる…… 」

 

 ミリルシアにそう言い残して俺は空へと舞い上がった。

 それなりに距離はあるものの、鎧を着て馬に乗った集団が町からこちらへ向けて、ゆっくりすすんでいる。

 灯りをつけてないのは、感づかれない為だろう。

 慌てて降りて、今いる場所を離れるよう指示した。

 月の明かりがあるとは言え、そこまで明るくはない。

 フェリオは手綱を握って、馬の前を歩いて引いた。

 その横で俺も地表に目を凝らす。

 荷台の後端ではミリルシアが騎士達の動きを警戒する。

 夜中にヴァンパイアを出し抜ける筈がないのだから。

 夜明け前に、藪の広がる所に出くわした。

 隠れられるとは思わないが、馬車を木の横につけて、そこなら、落ち着いて寝れるだろう。

 食事もまだだった。

 影収納からコンロの魔道具と共にスープの入った鍋も出す。

 食事を済ますと、体を拭くのも忘れて、荷台で寝た。

 責任を感じているらしいチェルニアが警戒に当たると自ら言い出した。

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