異世界の石   作:井ノ中蛙

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第42話 行方不明

 

 

 

 西に向かえば首都の近くを通る事になる。

 東は海。

 南は海と砂漠。

 北に向かうしかないのだろうか。

 海から船に乗れるとは思わない。

 船自体がとても特殊な乗り物らしい。

 荷物の運搬が主で、庶民を乗せてくれるような話は聞いたことがないそうだ。

 かつて荷物として獣国から船で運ばれて来たフロンジュが言うのだから、間違いない。

 早い話が奴隷船だろう。

 

「ほとぼりが冷めるまで、町に潜伏すると言うのは? 」

 

 なんともインキュバスらしい提案をするチェルニア。

 しかし、前提が "町に入れたら" と言う事になるのは分かりきった事だ。

 フェリオとフロンジュはこの前、試したからOKだ。

 ラーラ、ミシェネも問題ないと思われる。

 影に潜れるヴァンパイア2人も心配ないだろう。

 とすると、残りは言い出したチェルニアだけだ。

 あと馬車か。

 荷物は影に入るとして、馬車と馬はどうだろう。

 たぶん生物は無理な気がするのだけど。

 

「なら、お前が、馬車で行き囮となると良いのではないか? 」

 

 ミリルシアの言葉に迷いはない。

 魔族は捕まり、騎士達も戻り町の警戒も解かれる。

 良い事尽くめだ。

 さすがに、受け入れられないが。

 

 却下すると、意外そうな顔をするミリルシア。

 ただ、町に入ってやり過ごすと言うのは、悪くないと思う。

 地図でもう少し北に向かうと海岸近くの町があるのが分かった。

 既にそれなりに北上しているらしい。

 

「じゃ、夜中に迎えに来るから……」

 

 チェルニア独りが馬車に残り、他の全員が馬車を降りた。

 ラーラとミシェネはとても心配そうな顔でマスターのチェルニアの顔を見てる。

 一度、町に入り宿屋に部屋をとったら、夜中に俺が空から迎えに行く事にした。

 背はリベラより高いが、ひょろっとした優男のチェルニア。

 背中に背負って何とか空を飛べると思う。

 

 馬車は最悪放棄か、早めに回収出来る事を願うしかない。

 いわゆる放牧しておくしかない。

 念のため、チェルニアの隷属の首輪を外しておいた。

 主人が別にいると勘繰られるのは面倒になるだろうから。

 

 フェリオとフロンジュが先を行く。

 2人とも軽く武装しており、目立ちはしない。

 その後に続くラーラとミシェネの方が場違いに見えた。

 2人ともメイド服を着ていて、歩いて移動するような格好ではない。

 空の藤で編んだようなバスケットを片手に下げているミシェネ。

 タオルで蓋をして中身は見えないようにした。

 ミシェネ曰く、メイドはお使いだ何だと外に出る事が多いのだとか。

 言い訳の1つや2つは彼女に任せて大丈夫らしい。

 さすが本職がメイドなだけはある。

 

「おい待て、ここを通るのは、この魔道具に手を翳してからだ…… 」

 

 町へ入る者は全て門番に声をかけられているらしい。

 魔道具は脇の小屋の中に置かれていて、判定を見る係の者が詰めていた。

 

「はい、通ってヨシ…… 」

 

「ん? 」

 

 メイド2人を見て係員の動きが止まる。

 

「何処かの屋敷の者か?」

 

「リンゼイ家に御座います 」

 

「知らんな、その屋敷から何用だ?」

 

「帝国の特産品を集めるよう言われております」

 

「特産品? そんなのあるのか?」

 

「無いからかこんなに奥地まで来ているのですよ、全くもう……」

 

「何だ、ご苦労なこった…… ヨシ、行っていいぞ……」

 

 ミシェネは意外と、女優だった。

 家政婦ではないから "見ちゃった" とは言わないようだ。

 

 路地裏でミリルシアと俺は影から出た。

 6人で宿屋を探して、部屋をとる。

 この宿屋では湯浴みが出来た。

 久し振りで体をがスッキリする。

 全然大した事ない料理なのに、テーブルの上で食べるだけで、ひと味違う気がした。

 夜、辺りが寝静まった頃、窓から外に舞い上がり町の周囲を探したけど、馬車は見つけられなかった。

 チェルニアは何処に行ったのだろう。

 騎士達に捕まってしまったのだろうか。

 寝ないで帰りを待っていたラーラとミシェネ。

 チェルニアが見つからなかったと知ると不安そうな顔をした。

 ラーラはそれほどでもないように見える。

 表情は人の猿真似だから、上手くいかなかっただけだろう。

 ミリルシアは囮となって責務を果たしたのだろうと満足げだ。

 町で、新たに馬車を探すとしても果たして買えるのか分からない。

 フェリオとフロンジュが、アチコチ回って聞いてきたら、地元の者以外には売れない仕組みになっていた。

 なら、馬車を持つ者を魅了で支配すれば良いとミリルシアは言う。

 魔族であるが故に追われていたのに、また新たな追われる種を作るのは賛成出来ない。

 その辺りはチェルニアが得意としていたところだ。捕まったのか逃げたのかも分からない男を宛にするのはどうかと思うが、適材適所と言う言葉もある。

 買えないなら借りれば良いとフェリオが口にするも、乗用の馬車が良いとミリルシアが口を挟む。

 目立たないように荷馬車にしたのを忘れてしまったようだ。

 国境での失敗さえ覚えていなさそう。

 ミシェネとラーラは、数日はここに滞在してマスターの帰りを待ちたいと言うし、ここに来て、皆が好き勝手な事をいいはじめた。

 チェルニアはその辺りを丸く納める役割も担っていたのだと痛感する。

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