異世界の石   作:井ノ中蛙

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第43話 再会

 

 

 

 

 

 滞在3日目。

 夜のたびにチェルニアの乗った馬車を探しに部屋を抜け出して空を飛んで回るも馬車は見つからなかった。

 追手の騎士達も現れる気配はない。

 もう一日、もう一日とミシェネとラーラに懇願され、出発する日が、ズルズルと延びそう。

 4日目を過ぎ、5日目、2人にもうこれが限度だと告げた。

 フェリオに隣町まで馬車を出して貰いに行かせた。

 今夜、町の周りを探して見つからなければ、それまでだ。

 町の入口の門番は相変わらずだから、捕まったのとは違うと思った方が良さそうだ。

 たぶん逃げた、そう考えるのが自然だ。

 

 そして、その夜、宿屋の部屋の窓から、夜空を見上げると、いつもと違った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「援軍? 奇襲部隊だ? 」

 

 魔王軍としのぎを削る攻防戦の繰り広げられる最前線。

 ここ数日は目立った戦闘は行われていない。

 積極的にこちらから攻勢をかけたのは、もう何ヶ月も前の事だったか。

 

 馬車に揺られながら森林国の魔導士カーガル・トリスタは文官からの報告を聞いていた。

 隣りには、仰々しい鎧を着た神聖国の騎士がいた。傍らに金色の戦槌を携えている。

 新手の奇襲部隊が東南に向かい魔王軍側から飛び立った。

 それほどでもない頭数で、なにが出来るのかと馬鹿にする者も居るが、過小評価は莫大な損害によって覆されるのか常だ。

 西の隣国ライブザバン王国で報告書にある奇襲部隊も同じ特徴と記されていた。

 空飛ぶ魔族は20人にも足りず、それでいて町はほぼ壊滅まで破壊され、毎回夜明け前には撤退する。

 恐るべき破壊力と機動力だ。

 今まで相手をしていた魔王軍にそこまで徹底したやり方はなかった。

 夜中の奇襲はあってもあくる日に攻勢を仕掛けてくる前触れみたいなものしかなかったのだ。

 隣国は一部の魔女と結託し、下級魔族の軍勢を用いて魔族対魔族で戦わせると言う奇策で防衛戦を有利にしていると聞く。

 そんな局面で揉まれてきた奇襲部隊が来た。

 果たしてどうなるのか、エルフの魔導士は、相棒の杖の冷たい木肌に手を添えた。

 

 

「これは、奇襲ではないのか? 」

 

 スベルグの町は戦闘の気配すら無く、静まり返っていた。

 夜警の門番は眠そうな顔をして、"何か御座いましたか?" と聞き返してくる始末だ。

 

 魔王軍の奇襲部隊は既に到着している筈だ。

 何か細工でもしてから本格的に攻めてくる気なのか。

 

「私は神眼に従い個別に魔族を仕留めてくる…… お前は防御結界の準備でもしていろ…… 」

 

 神聖国騎士ジュリエッタ・フィスコはそう言うと颯爽と町中へと駆けて行った。

 独断先行と避難するのは容易だ。

 しかし、森林国魔導士のカーガル・トリスタは、"危なくなったらキャーとでも叫ぶといい" とからかい半分にこたえるのだった。

 あの気狂い騎士の心配をする必要はない。

 幾多の局面で彼女の異常さは理解している。

 下手な防御魔法より強固な鎧、種族だけではなく、その急所まで見抜く神眼。

 そして、儀式用の飾りのついた杖に見える戦槌は、生半可な武器で太刀打ち出来る代物ではない。

 一体どこに心配しろと言うのか。

 いつもの後方支援に徹する事に決めた魔導士は門番に、騎士団の奴等を叩き起こして、町の要所の守りにつけと、命じた。

 "これは、全て隠密行動である" と付け加えるのも忘れない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「まだか? 」

 

「未だのようです…… 」

 

 奇襲部隊を率いるヴァンパイア、シルベスター・リックスは町で一番高い建物の屋根の上に立っていた。

 かたわらに跪くのは部下のヴァンパイア。

 跪きながらも、四方への注意は怠らない。

 ここは敵国の町の中、何処から矢が放たれるとも、限らない。

 たかだか人族の放つ矢など、恐れるに足りぬが、この国には森林国と神聖国から派遣された魔導士と騎士がいるらしい。

 神聖国の奴等は駄目だ。

 アレは蜂の群れなようなもの。

 女王蜂の下に働き蜂、戦い蜂、が群がる狂った集団だ。

 魔族において、宗教とは自らの誇りを捨て、尊厳を放棄し、教え込まれた歪な教えに心酔し、盲目な奴隷と成り下がった者の集まりとしか認識されていなかった。

 本来なら、忌み嫌われる存在として、葬り去るべきだが、やたらと奇妙な魔道具で武装しているたちの悪いことでも有名だ。

 ガーゴイルのような石に変えられる矢を放つ騎士もいるらしい。

 最も警戒すべき相手であるのは間違いない。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「お〜い、開けてくれ! 」

 

 ドンドンと、扉を叩く音がしていた。

 "誰だ?" と閉まったままの扉の中から尋ねる声が返ってくる。

 

「夜中に悪いんだが、客に知り合いがいねぇか、教えて欲しいんだが…… 」

 

 名前を幾つも、並べはじめる声。

 

「いねぇな、そんな客」

 

 返事をするや否や、扉が蹴り破られる。

 現れた男の目は紅く染まっていた。

 

「この町に他に宿屋はあるか? 」

 

「……、ああ、あと2軒ある…… 」

 

 寝間着姿で宿屋の主人は、ペタペタと裸足で外へと歩き出した。

 "高級な方に案内しろ" と言われると"こっちです" と従順な様子だ。

 

 

ーーーニャン

 

「あ…… 」

 

 部屋の扉が、開いてもいないのに、黒猫が寝静まった部屋に入って来た。

 ラーラのベッドに飛び込んだ。

 

「マスター、きた 」

 

 起き上がり、扉のカンヌキを開けるとラーラはミシェネを揺すって起こした。

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