異世界の石   作:井ノ中蛙

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第44話 再会2

 

 

 

 

 ラーラとミシェネは宿屋の出入り口へ真っ直ぐ向かい、その扉を開ける。

 

「マスター、まってた…… 」

 

 そこにいたのはインキュバスのチェルニアだった。

 後ろに見慣れない男が数人いる。

 

「お嬢様はどの部屋か、案内しなさい」

 

「うん、マスター、こっち……」

 

 ラーラもミシェネも久し振りに会えたマスターに嬉しそうだ。

 夜中だというのに、飛び跳ねかねないほど足取りが軽い。

 道に残った男の1人が、空に向かい火球の魔法を放った。

 高く高く上がった火球。

 寝静まった夜の町、それは何かがはじまる合図のようにも見えた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「まさか罠じゃないわよね…… 最も、魔族にそんな頭はないか…… 」

 

 神聖国騎士のジュリエッタ・フィスコは笑みを浮かべながら、駆け出すのだった。

 目指すのは火球の上がったその元だ。

 神眼で魔族を探しながら、宛もなく町を放浪するのは、効率的ではない。

 はじめは、騎士団の建物に向かい頭数を揃えて探し出す案も頭に浮かんだが、その道すがら上がる火球が目に入った。

 なぜ、派手に攻撃せずに隠密行動をとるのか、それを確かめたい気持ちもあった。

 明らかに今までの魔族の行動とは違うものを感じていた。

 とんでもない魔物でも町中に召喚するつもりなのか知らないが、何よりもまず、それを確かめるのが先決だ。

 

「………!」

 

 いた、魔族だ。

 角を曲がると、少し先に魔族の男が立っていた。

 ひと言も発せず、戦槌を振り上げ駆け出す。

 魔法を撃つつもりか、片手をこちらに掲げる仕草を見て、ほくそ笑む。

 下級魔族か。

 詠唱などしている暇があるなら、誰も剣や盾など持ちはしないだろうに。

 戦槌は魔族の体内にある魔石を正確に撃ち抜いた。

 

ーーードッ!

 

 胸板に突き刺さる戦槌。

 背中から、ゴルフボール大の魔石が飛び出す。

 心臓の横、大概の魔族の魔石はそこに有る。

 即死ではないが、出血多量で間もなく事切れるはずだ。

 治癒魔法が使える仲間でもいれば、助かるかもしれない。

 しかし、一度、魔石が抜けてしまった体で再び魔法を使える日は来ないだろう。

 左を向くと、明け放たれた扉、目指して進む騎士。

 神眼でもこう何人も人が重なるように存在していては、良く見えない。

 

 階段も、もどかしく駆け上がると、何人もの魔族に出くわした。

 

「おま! ガッ!」

 

「グアッ! 」

 

「ままま、待ってくれ! 俺は誰も殺しちゃいない! 」

 

 怯える魔族の男。

 向かってくる女魔族の剣を戦槌の柄で止める。

 

「魔族でも、命乞いするんだ? 」

 

 知らずに、そんな言葉を口走っていたらしい。

 "マスター、悪い魔族じゃない!" そう言い、立ちはだかる人族の女。

 邪魔するのは、もう一人の女、いや、こいつは魔獣だ。

 

 ヴァンパイアの女の剣は、鋭いが、大した事ない。

 もう一人、壁際に尻もちをついたヴァンパイアがいる。

 いや、ヴァンパイアのキメラだ。 

 キメラをみるのは、初めてだ。

 魔石があるなら、殺し易い。

 ヴァンパイアは倒しても直ぐ復活してくる。一番、面倒臭い相手だ。

 

「………ほら! 出直せ! 」

 

 横から剣を弾き、その胸深く戦槌で突き刺した。

 ヴァンパイアは体をバラバラにして、その場から、逃げ出した。

 

「ぼけっと、しない!」

 

 呆気に取られている、魔物の核を戦槌の柄で突き潰す。 途端にドロドロと人の姿をしてい物は溶けはじめる。

 

「ラーラ! 」

 

 部屋の隅で震えていたヴァンパイアの女が飛び出して来た。

 魔物を庇いたかったらしい。

 遅い。

 しかも無防備。

 素人の行動だ。

 すかさず、その背中にに戦槌を振り落とす。

 魔物の死骸の上にヴァンパイアの死骸が重なった。

 キメラは、魔石を抜くと死ぬらしい。

 これは良い発見だ。

 残った命乞いをする魔族の男に戦槌を振り上げようとしたところで、殺気が走った。

 閉まっていた窓へ飛びこんで外へと退避する。

 

ーーーズガアァァッ!

 

 巨大な、火球が建物の屋根を吹き飛ばした。どうも、横から放ったらしい。

 すぐに建物へ飛び込む人影があった。

 追うように元いた部屋の窓まで大きく跳んだ。屋根は無いが、窓枠と壁は残っていた。

 

「………。」

 

 ヴァンパイアの女の亡骸を抱き締めるヴァンパイアの男の姿かあった。

 命乞いをしていた魔族はいつの間にか逃げ出したらしい。

 人族の女も魔物の死骸も無い。

 

「貴様〜! よくもお嬢様を!! 」

 

 先程のヴァンパイアの女が剣を振り被って向かって来た。

 頭に血が登っていると簡単な状況判断すら疎かになるようだ。

 ヒョイと避けると、女は飛べないらしく、勝手に落ちていった。

 

「神聖国の騎士か? 」

 

 亡骸を抱く男が背中越しにそう聞いてきた。

 見れば分かるだろう。

 

「魔族にいちいち名乗りをあけるほど暇じゃないんだけど? 」

 

「妻の仇だ、良く顔を見せるといい……」

 

「そう言うの、女々しいって思わないんだ、魔族は? 」

 

 問答無用と、戦槌を横に振ると、男は亡骸を抱いたまま、空へと飛び上がった。

 あんな、ド素人が妻とは笑わせる。

 お屋敷で、編み物でもさせておけば良いものを。

 ただ、状況は良くない。

 町ごと葬り去るなんて言いださないとも限らない。

 追い詰められて血迷った者は、この世の全てを呪うとさえ言われている。

 

「神聖国ごと滅ぼす! 」

 

 ヴァンパイアはそう捨て台詞を吐いて逃げて行った。

 あの手の馬鹿は、本当にやりかねない。

 まあ、相手をするのは、精鋭揃いの護国隊だろう。

 間抜けなヴァンパイアの女も何処かへ、消えてしまった。

 街に残る魔族が居ないか、探しに行こうか。

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