◇◇◇◇
夕焼け小焼けの赤トンボ〜♪
夢とも現実ともつかない処にいた。
ばあちゃんと手を繋いで、夕焼けの道を歩いていた。
ばあちゃんがデカいから、俺は子供の頃らしい。
赤トンボの唄を口ずさむばあちゃん。
俺はついて行くのだけで精一杯だ。
「和宏よ 」
「ん、なに?」
「止まんじゃねんだよ、 分がるが? 」
「ん、なんで? 」
「へっへっへっ…… 」
笑ってばあちゃんはこたえては、くれなかった。
◇◇◇◇
気がつくと、視界が随分と低いのに気がついた。
なんか暑いなと思ったら、日の光の下だ。
まずい、体が焼けると、一瞬、慌てるものの、何処も痛くはない。
と言うか、視界かおかしい。
ピンクの風船の上に乗っているような不思議な所にいるようにも見える。
体を触って確かめようとするも、手がどうしたのだろうか、縛られてるのか、なかなか上がらない。
お、やっと出た、って、言葉も出ないじゃないか。
口も塞がれているのか? 手を口元に持っていくと……。
「ラーラ、気がついた? ラーラ? 」
「うおっ、気持ち悪いな…… 」
「ほんとに、こんなのがラーラなの? 」
「ラーラ、念話に答えないから、心配したんだぞ? 」
フェリオとフロンジュとミシェネとチェルニアがいた。
ラーラは居ないのに、何を言っているのだろう。
「あっ 」
「あー……、 ナニコレ? 」
「どうしたの? ラーラ、落ち着いて!」
ミシェネが体を抑えてくる。
顔がツルツルでプニュプニュで、信じられない位に大きくなってる。
首も胴体も足も無いじゃないか。
"ワーワー" 騒いでいたら、チェルニアが、"ほーら、御馳走だぞ" と言いながら、ズボンと下着を下ろして近づいて来た。
うわっ、変態野郎だ。
陰部の見せつけだけでは済まずに、押し付けようとしてくる。
インキュバスは大変態だ。
「うわっ! キモッ! 来るな! 汚い! 」
「ラーラ、どうかしたの? 声も変よ? 」
「だから、ラーラじゃないから! 」
「じゃ、誰なの? 」
「リベラでしょ? 忘れたの?」
「「「「え?」」」」
全員の頭の上に、疑問符が浮かんでるのが見えた気がする。
"だって、ホラ、良く見てみてよ" とミシェネが手鏡を見せてくれた。
「げげっ!」
そこに写っていたのは、淫獣の姿になったラーラのようなものだった。
ピンク色の巨大饅頭のようなものの上にチンアナゴのような触手が、4本生えている。
どうやらその一つが目らしい。
口が巨大饅頭の中央にあって、人の両手が左右の両端から生えていた。
「ラーラ、どうしちゃったの?」
リベラは死んだと何度もミシェネに説明された。
ヴァンパイアが来て、神聖国の騎士が来て、何体かのヴァンパイアは退治されたそうだ。
知らないし、そんな覚えはないのだけど。
ミリルシアが剣で白い鎧の騎士から守ってくれたのは覚えているが、覚えているのは、ラーラがヤラれそうになって飛び出した。
そして、騎士が戦槌を振り上げて、逃げないと殺られると思った所までだ。
リベラは死んだのか。
魔石の俺が体から取れたら、死んでしまうのか。
そんなに、簡単にヴァンパイアが死ぬとは思えないのだけど。
魔石を体に埋め込まれる前の状態とかは分からないから、どう言う理屈で生きていたのかは、分からない。
けど今のこの状態も、一体誰に聞いたら良いのだろう。
ラーラの体なのは間違いないと思うが、俺はちゃんと意識は保てている。
けど、ラーラじゃないから、体の自由が、全然、上手くいかない。
「ここは何処? 」
「森林国よ、もうすぐシリルガ村に着くそうよ…… 」
その後、馬車に揺られながら、手鏡を使って、体を自由に動かせるよう、練習した。
胴体から足や手など人の体の部位だけなら、生やす事が出来るようになった。
頭とか、胸とかは、試してない。
キモいことになりそうだから。
手足のサイズも、変えられるようになった。
顔は、誰も見てない夜にでも試すとしよう。
ラーラのように人の姿になれたら、また自由に動けるだろうから、今は慌てても仕方がない。
あの夜、起きた事はミシェネも余り喋りたくない様子だし、今、何故、森林国の村に向かっているのかも、聞かない方が良いだろう。
「さあ、着いたぞ、下ろすほどの荷物もないか…… 」
「大丈夫ですよ、マスター 」
リーダーはチェルニアらしい。
ミシェネは勿論のこと、フェリオもフロンジュも、従っている。
森林国は、エルフの国ではなかったのか。
木造の家は、独得の作りで初めてみる外観だ。
俺は自分で歩けないから、ミシェネが背負ってくれている。
腕を生やして彼女の肩に掴まった。
上から布を被せられたので、そこから先の事は何も見えない。
降ろされたのは、畳のようなそこまで柔らかくないベッドの上だった。
「早く元に戻ってね…… 」
ミシェネに撫でられ、そう言われた。
そうしたいのは、山々なのだけどね。
ままならぬ体が、どうにも言うことを聞いてくれなくて。
何でこんな体になったのだろうなんて、落ち込む理由は無いので、通常運転なのだけど。
まあ、そのうち、何とかなるだろう。
手と口があるから、夕食は食べた。
ミシェネがベッドまで持ってきてくれたから。
湯浴みは、必要なのか分からないから、遠慮した。
夜、月の明かりが差し込む窓辺で自主練する。
生やした足で移動出来るようになったから。
手足の生えた巨大饅頭の姿は、地球外生命体の面影が無いこともない。
夜中に出くわしたら攻撃されても何も文句は言えないだろう。
走って追い掛けて来たなら、もう絵面的にはホラー以外の何者でもない。
自分自身で戦慄するってどう言うこと?とか半ギレになって、クレーム入れたくなる。
何処へ入れるのか?って話になるけど。