異世界の石   作:井ノ中蛙

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第46話 仙人級

 

 

 

「あー…… 」

 

 リベラの顔だ。

 自分の顔はリベラだと思っている節があるのは、否定しない。

 いや、純粋に美への追求と言う点において、妥協はしたくないと言うか。

 たぶん、好きなんだと思う。

 "自分の顔はこれなんで" とか、自信持って言えた経験が皆無だから、この顔に縋る気持ちを責められると、悲しくて切なくて凹むしかない訳で。

 いや、もう、ヴァンパイアじゃないんだし、世の中には、似た顔の人が3人居るとか言うのあるし。

 ああ、自分、可愛いです。

 鏡を見ながら、ウットリするのは夜中だから許されると思うのです。

 顔の次と言ったら、首でしょ? 

 首が出来たら肩を繋げて、両手を生やして、胸を2つ拵えたら、上半身は何とか、出来た感じだろう。

 

 "うふん" とかポーズを決める。

 うむ、悪くない。

 フェリオが見たら飛びついて来るだろう。

 この勢いで、後半戦もいって、みようか!

 って、明け方前に、リベラの全身が出来た。

 体を動かすのは、まだ少しぎこちないけど、昨日、全日本選手権の試合やってきたんで、ボロボロっす、とか言いながら、筋肉痛のフリしてれば、誤魔化せるレベルかもしれない。

 種目を聞かれたら、ウェイトリフティングか、リュージュとか言えば大丈夫だろう。

 きっと、どうにかなる。

 

 満足感に浸って、疲れたので寝た。

 やはり、人の体は便利だ。

 人用の家具だから、当たり前なのだけどね。

 

「リベラ! リベラ! 」

 

 肩を揺すられて目が覚めた。

 フェリオだった。

 やはり、リベラ大好きマンだから、リベラの気配を嗅ぎつけたに違いない。

 

「リベラの顔したお前は、誰なんだ?」

 

「へ? 」

 

 何をおっしゃるウサギさん。

 リベラの顔なんだから、リベラに決まっているだろう。

 

「ラーラ、なんで、お嬢様の姿なんかになったの? 」

 

 その脇でミシェネも困り顔で聞いてくる。

 

「だって…… 」

 

 毛布で前を隠して上体を起こすと、ちょっと違和感を覚えた。

 フェリオがアッチを向いて、服を着けるのを待ってくれている。

 ラーラの着ていたメイド服を着たら、ミシェネより背が低いのに、気がついた。

 ん? なぜか、チビになっている。

 なんで? 

 

「ドロドロになってたから、ラーラ全部持って来れなかったのよ…… 」

 

 聞いたら、済まなそうに言うミシェネ。

 彼女を責めるのは、違うと思った。

 違うんだけどね。

 服の胸の所はキツキツだけど、シャツの袖も、スカートの裾も余ってる。

 お姉さんの服を居ない間にこっそり着た妹のような。

 

「まあ、その姿も悪くないがな…… 」

 

「なに言ってんのよ、この浮気者!」

 

 そうフロンジュに怒られたフェリオ。

 フロンジュが正妻の座を掴んでいるみたいだ。

 アンバランスなのは縮尺の誤差が微妙にあるからだと、気がついた。

 上半身が大きくて下半身が小さいらしい。

 ミシェネに手伝って貰いながら、人として、おかしくバランスになれた。

 一度も "ラーラ" だよとは、言っていないのに、それでも "ラーラ" と呼ばれ続けると、ちょっと複雑な気持ちになる。

 ミシェネにとって、淫獣のラーラは欠くことの出来ない仲間なのだろう。

 

 サイズこそ小さくなったが、リベラは復活を遂げたと言うのに。

 喜んでくれたのはフェリオだけのようだった。

 

 ここは、客人をもてなす村の施設のような所である。

 チェルニアからの説明で初めて知った。

 エルフを殆ど見ないのは、村の集落の隅っこに建てられているから。

 周りに建つ家々も同じ目的で建てられている。

 20〜30人が生活出来る規模で用意されているそうだ。

 シリルガ村は、来る者は拒まず、去る者は追わず、魔族にも、人族でも数日の宿を提供する。

 それ以上の事はしないが、それ以下の事もしない。

 この村はそうして、周囲からの攻撃を躱しこの辺りの平穏な生活を維持してきた。

 後ろ盾は森林国である。

 もし、この村に害を為す者がいれば、エルフの戦士や魔導士が大挙してやって来るだろう。

 そんな安全地帯のような村で、今後の身の振り方を考える時間をくれたのは、あの奇襲部隊だ、とは、チェルニアは口にしないで、言葉を濁している。

 そして、ライブザバン王国へ戻ると思っているのだとも、告げた。

 森林国に留まるのは無理らしい。

 魔国から出て来た彼が魔国に戻ると言う事はない。

 神聖国など、もってのほか。

 ライブザバン王国で、かつてのように大きな屋敷に紛れ込んで、ゆっくりした生活に戻りたい。 彼の言う事に反対する者はいなかった。

 果たして、それが可能なのかとは誰も言いださなかった。

 それが可能な者が、チェルニアの後ろに居るのだと、知っているらしい。

 

 他の人達よりは遅いながらも、

 夕食を食べた。

 味覚は前と変わらないようだ。

 ちゃんと、喉を通って胃に運ばれてる気がする。

 手先の触感も変わらないように感じる。

 みためだけではなくて、機能も人と同じように出来ているようだ。

 蝋人形のように外観だけ真似た作り物とは、違って安心した。

 

 食後の湯浴みもちゃんと出来た。

 ミシェネとフロンジュと共に、髪を洗い、体を湯で流した。

 スッキリするのまで同じだ。

 本当なら、髪を乾かすのに影から魔道具をだして使うのだけど、この体はヴァンパイアではないから、無理だろう。

 魔眼だって使えるとは思わない。

 所詮は、淫獣でしかないのだから。

 

「あー、ん、あれ……使える? 」

 

 前のように影に手を突っ込むと、抵抗無く、スルリと手が入った。

 魔道具を探すように影のなかで手首を捻ると、そこに魔道具の手応があった。

 引き抜けば、出て来る魔道具。

 

「え、 持ってたの? 」

 

 持ってましたよ、リベラお嬢様が。

 試しに手のひらを翳して鑑定眼で見てみると、いつものように、フキダシが現れた。

 名前は、リベラ、種族は淫獣と記されていた。

 使える魔法も以前と変わりない。

 ばあちゃん魔法も健在だ。

 使える能力(スキル)の吸血が無くなり、吸精になっていた。

 あと、擬態と、偽装も追加されてる。

 さらには歳が241歳と言う仙人級の高齢だ。

 どうやら淫獣は長生きするらしい。

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