「あー…… 」
リベラの顔だ。
自分の顔はリベラだと思っている節があるのは、否定しない。
いや、純粋に美への追求と言う点において、妥協はしたくないと言うか。
たぶん、好きなんだと思う。
"自分の顔はこれなんで" とか、自信持って言えた経験が皆無だから、この顔に縋る気持ちを責められると、悲しくて切なくて凹むしかない訳で。
いや、もう、ヴァンパイアじゃないんだし、世の中には、似た顔の人が3人居るとか言うのあるし。
ああ、自分、可愛いです。
鏡を見ながら、ウットリするのは夜中だから許されると思うのです。
顔の次と言ったら、首でしょ?
首が出来たら肩を繋げて、両手を生やして、胸を2つ拵えたら、上半身は何とか、出来た感じだろう。
"うふん" とかポーズを決める。
うむ、悪くない。
フェリオが見たら飛びついて来るだろう。
この勢いで、後半戦もいって、みようか!
って、明け方前に、リベラの全身が出来た。
体を動かすのは、まだ少しぎこちないけど、昨日、全日本選手権の試合やってきたんで、ボロボロっす、とか言いながら、筋肉痛のフリしてれば、誤魔化せるレベルかもしれない。
種目を聞かれたら、ウェイトリフティングか、リュージュとか言えば大丈夫だろう。
きっと、どうにかなる。
満足感に浸って、疲れたので寝た。
やはり、人の体は便利だ。
人用の家具だから、当たり前なのだけどね。
「リベラ! リベラ! 」
肩を揺すられて目が覚めた。
フェリオだった。
やはり、リベラ大好きマンだから、リベラの気配を嗅ぎつけたに違いない。
「リベラの顔したお前は、誰なんだ?」
「へ? 」
何をおっしゃるウサギさん。
リベラの顔なんだから、リベラに決まっているだろう。
「ラーラ、なんで、お嬢様の姿なんかになったの? 」
その脇でミシェネも困り顔で聞いてくる。
「だって…… 」
毛布で前を隠して上体を起こすと、ちょっと違和感を覚えた。
フェリオがアッチを向いて、服を着けるのを待ってくれている。
ラーラの着ていたメイド服を着たら、ミシェネより背が低いのに、気がついた。
ん? なぜか、チビになっている。
なんで?
「ドロドロになってたから、ラーラ全部持って来れなかったのよ…… 」
聞いたら、済まなそうに言うミシェネ。
彼女を責めるのは、違うと思った。
違うんだけどね。
服の胸の所はキツキツだけど、シャツの袖も、スカートの裾も余ってる。
お姉さんの服を居ない間にこっそり着た妹のような。
「まあ、その姿も悪くないがな…… 」
「なに言ってんのよ、この浮気者!」
そうフロンジュに怒られたフェリオ。
フロンジュが正妻の座を掴んでいるみたいだ。
アンバランスなのは縮尺の誤差が微妙にあるからだと、気がついた。
上半身が大きくて下半身が小さいらしい。
ミシェネに手伝って貰いながら、人として、おかしくバランスになれた。
一度も "ラーラ" だよとは、言っていないのに、それでも "ラーラ" と呼ばれ続けると、ちょっと複雑な気持ちになる。
ミシェネにとって、淫獣のラーラは欠くことの出来ない仲間なのだろう。
サイズこそ小さくなったが、リベラは復活を遂げたと言うのに。
喜んでくれたのはフェリオだけのようだった。
ここは、客人をもてなす村の施設のような所である。
チェルニアからの説明で初めて知った。
エルフを殆ど見ないのは、村の集落の隅っこに建てられているから。
周りに建つ家々も同じ目的で建てられている。
20〜30人が生活出来る規模で用意されているそうだ。
シリルガ村は、来る者は拒まず、去る者は追わず、魔族にも、人族でも数日の宿を提供する。
それ以上の事はしないが、それ以下の事もしない。
この村はそうして、周囲からの攻撃を躱しこの辺りの平穏な生活を維持してきた。
後ろ盾は森林国である。
もし、この村に害を為す者がいれば、エルフの戦士や魔導士が大挙してやって来るだろう。
そんな安全地帯のような村で、今後の身の振り方を考える時間をくれたのは、あの奇襲部隊だ、とは、チェルニアは口にしないで、言葉を濁している。
そして、ライブザバン王国へ戻ると思っているのだとも、告げた。
森林国に留まるのは無理らしい。
魔国から出て来た彼が魔国に戻ると言う事はない。
神聖国など、もってのほか。
ライブザバン王国で、かつてのように大きな屋敷に紛れ込んで、ゆっくりした生活に戻りたい。 彼の言う事に反対する者はいなかった。
果たして、それが可能なのかとは誰も言いださなかった。
それが可能な者が、チェルニアの後ろに居るのだと、知っているらしい。
他の人達よりは遅いながらも、
夕食を食べた。
味覚は前と変わらないようだ。
ちゃんと、喉を通って胃に運ばれてる気がする。
手先の触感も変わらないように感じる。
みためだけではなくて、機能も人と同じように出来ているようだ。
蝋人形のように外観だけ真似た作り物とは、違って安心した。
食後の湯浴みもちゃんと出来た。
ミシェネとフロンジュと共に、髪を洗い、体を湯で流した。
スッキリするのまで同じだ。
本当なら、髪を乾かすのに影から魔道具をだして使うのだけど、この体はヴァンパイアではないから、無理だろう。
魔眼だって使えるとは思わない。
所詮は、淫獣でしかないのだから。
「あー、ん、あれ……使える? 」
前のように影に手を突っ込むと、抵抗無く、スルリと手が入った。
魔道具を探すように影のなかで手首を捻ると、そこに魔道具の手応があった。
引き抜けば、出て来る魔道具。
「え、 持ってたの? 」
持ってましたよ、リベラお嬢様が。
試しに手のひらを翳して鑑定眼で見てみると、いつものように、フキダシが現れた。
名前は、リベラ、種族は淫獣と記されていた。
使える魔法も以前と変わりない。
ばあちゃん魔法も健在だ。
使える能力(スキル)の吸血が無くなり、吸精になっていた。
あと、擬態と、偽装も追加されてる。
さらには歳が241歳と言う仙人級の高齢だ。
どうやら淫獣は長生きするらしい。