異世界の石   作:井ノ中蛙

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第51話 お嬢様育ち

 

 

 夜は毛布1枚を渡されて床に直接横になった。エルフの人の扱い方、もうちょっとどうにか、ならないものだろうか。

 明け方、冷えて目が覚めてしまった。

 手枷は腰に巻かれた紐で縛られてて上には上がらない。

 何をするにも不便で仕方がない。

 向かいの檻の男がこちらを見ていた。

 手枷に足枷をつけられてるから、全く自由が効かないようだ。

 何故、ここに入れられているのだろう。

 人の心配どころではないのだけど、気にはなった。

 

 

「ほうら、あったかいスープだよ…… 」

 

 朝食は、固いパンに葉物野菜の入ったスープだった。

 調理が終わってから来るらしく、他の檻の人達が食べ終わる頃、昨夜のおばちゃんがまた来て、食べさせてくれた。

 昨夜の言葉通り、迎えの人が檻の前に来て、取り調べ室のような小部屋に連れてか行かれた。

 名前から、出身地、親の名前など、一通り聞かれたが、こたえられるものは限られた。

 名前と歳だけだ。

 リベラ、エルフ、241歳、以上。

 

「魔法は何を使える?」

 

「闇と土が少々 」

 

「空を飛べると聞いたが?」

 

「飛べます 」

 

 調査官らしき、男の人は、手元の書類にカリカリと書き込む手を止めて、顔を上げた。

 思案顔の男の人と、にらめっこになった。変顔はしない。そこまで笑いに貪欲ではないから。

 

「基本的に魔法を使える者は登録され、管理されないといけない…… 」

 

 なるほど。

 

「一度、審査を経て、その後については、結果を踏まえて決める事になるだろう…… 優秀な魔導士は相応の働きと対価を得られるべきと、国は考えているからね…… 」

 

 ギルドか何かに登録させて、働かせるのだろうと、思った。

 この時から、待遇は目に見えて変わる。

 手枷が外され、違う所へ案内された。

 宿屋っぽいが、警備の人がいて、民間とは違うのだと思わせる。

 

「リベラ様、こちらです」

 

 建物の受け付けでは、"様付き" で呼ばれた。

 ちょっとまともな、部屋に通される。

 まともとは、シリルガ村の部屋と比べたらと言う事だ。

 田舎と都会の違いと言えば分かりやすい。

 

部屋は、ベッドと、テーブルと椅子があるだけで、寝る為だけの設備しかない。

 お茶一杯飲むにも、食堂へ行かないといけないらしい。

 世話係が一人付けられるそうで、詳しい事はその人に全て聞いてほしいと告げると、部屋の扉は閉められた。

 

「ニジルイハと申しますぅ」

 

 ノックと共に部屋に入って来たのは、エルフにしては、ちょっと毛並の違う雰囲気を持った人だった。

 

「リベラです……」

 

「まあ、リベラちゃん、可愛いわぁ…… 一緒に楽しく過ごしましょうね……」

 

 ええと、この人は、保育園の保母さんか何かのつもりなのだろうか。

 完全に子供扱いしてくる。

 保育園なら "お歌やお遊戯いっぱいしましょうね" と来るところか。

 

「あの……」

 

「な〜に、オシッコしたいの? 」

 

 いや、違うから。

 

「お茶を飲もうかと……」

 

「あら、そう? じゃ、食堂行きましょうね、 お手々繋ぎましょうね、 走っちゃダメよ? 」

 

 "怖いオジサン、メッて来るから、お利口さんにしてましょうね" と、完全に子供を諭すかのような口調で言われながら、廊下を進んだ。

 確かに小さいが、子供ではないのは、見た目で分かるだろうに。

 

 "ここで待ってましょうね" と言われ、何処かのフードコートのような、広い空間の隅の法の席に座らされた。

 

 お茶のセットはワゴンに載せて運ばれて来た。

 

「はぁ〜い、熱いから気をつけてね……」

 

 目の前でカップにお茶が注がれる。 

 お茶請けの菓子の載った皿もあった。

 

「あの、この後、審査とかがあると、聞いたんてすが……」

 

「そうよ、午後には、ここを出る馬車に乗る予定よ 」

 

「遠いんですか?」

 

「そうね、3日はかかるかしら……」

 

「そんなに? 」

 

「そうよ、オレンクティセジアに行くんだもの、審査だけしに行くなんて、珍しいわよね…… 」

 

「おれんく……、って?」

 

「オレンクティセジア魔学院よ、魔導士養成所みたいな所ね…… 」

 

 エルフの国に、そんな所があるとは思わなかった。

 魔導士の養成所か。

 なにやら、とっても異世界らしくて良いじゃないか。

 エルフにしてはやや垂れ目のおっとりした雰囲気のニジルイハ。

 エルフにしては珍しい巨乳の持ち主で、やや丸びを帯びた体型をしている。

 カールした髪は赤茶色だ。

 自身もお茶を飲みながら、カリカリと菓子を口にした。

 食べるのが好きなのだろう。

 昨夜、湯浴み出来なかったから、体を流してから行きたいと告げると、ここの湯浴み場は大人数でも使える大きな湯だめなので、夕方からしか使えないそうだ。

 しかし、そこ以外に心当たりがあると言う。

 お茶請けを全て食べきると、一旦何処かへ消えて、すぐ戻ってきた。

 

「行くわよ、あまりゆっくりしてる余裕はないわ……」

 

 手を引かれ、ズンズン進むニジルイハに連れられ建物を出た。

 通りを横切り路地裏を進み、とある建物の裏手から入る。

 そこは、銭湯の裏方のような熱気の籠もっていた。

 実際に火を扱っているのだろう。

 釜の前で木をくべてる年季の入ったオジサンが、いた。

 

「沸いてるかしら? 」

 

「ん、ああ、もう沸いちゃいるよ……」

 

 何故この時間から湯を沸かしているのかは、知らないが、ニジルイハは勝手知ったる他人の家のように、扉を開けて通路を進み、階段をあがり、ガラリと雰囲気の違う部屋に出た。

 

「1部屋、つかうわよ」

 

  途中、カーテンで仕切られた廊下の先に向かって、そう告げたが、相手がどこにいるのかさえ、分からなかった。

 いくつも扉が並ぶ廊下の端の部屋に入る。

 部屋は、アンバランスな配置でまずベットがあり、その奥に応接セット、奥に湯浴み場があった。

 タイルの敷き詰められた洗い場の奥に仕切られたのが湯溜めだ。

 配管の栓を抜くと。ドボドボと湯気をたててお湯が出てきた。

 

「はい、服脱いで、その棚に入れてね 」

 

 木桶やら、小さな壺がいくつも並んだ棚から幾つか取り出すと、洗い場へと持って行く。

 戻ってくるなり、服を脱ぎだすニジルイハ。

 

「洗ってあげましょうね〜」

 

 一緒に入る気満々だ。

 腹は出てはいるものの、胸の迫力の前には敵わない。

 巨大なシャインマスカットの粒が2つ並んだようだ。

 

「あら、ちゃんと、大人なのねぇ……」

 

 あなたの前では誰も貧相にしか見えないだろう。

 俺は頭のてっぺんから足の爪先まで彼女に洗われた。

 

「何処かのお嬢様だったの? 」

 

「いえ、別にそんな……」

 

 "普通、洗わせてくれないのよ" と言われ、確かにお嬢様育ちなのだなと痛感させられた。

 思えば、いつも誰かに世話されてきた。

 他人に体を洗われる事に慣れていたようだ。

 髪を乾かす魔道具は別の部屋にあって、そこで髪を梳かされた。

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