夜は毛布1枚を渡されて床に直接横になった。エルフの人の扱い方、もうちょっとどうにか、ならないものだろうか。
明け方、冷えて目が覚めてしまった。
手枷は腰に巻かれた紐で縛られてて上には上がらない。
何をするにも不便で仕方がない。
向かいの檻の男がこちらを見ていた。
手枷に足枷をつけられてるから、全く自由が効かないようだ。
何故、ここに入れられているのだろう。
人の心配どころではないのだけど、気にはなった。
「ほうら、あったかいスープだよ…… 」
朝食は、固いパンに葉物野菜の入ったスープだった。
調理が終わってから来るらしく、他の檻の人達が食べ終わる頃、昨夜のおばちゃんがまた来て、食べさせてくれた。
昨夜の言葉通り、迎えの人が檻の前に来て、取り調べ室のような小部屋に連れてか行かれた。
名前から、出身地、親の名前など、一通り聞かれたが、こたえられるものは限られた。
名前と歳だけだ。
リベラ、エルフ、241歳、以上。
「魔法は何を使える?」
「闇と土が少々 」
「空を飛べると聞いたが?」
「飛べます 」
調査官らしき、男の人は、手元の書類にカリカリと書き込む手を止めて、顔を上げた。
思案顔の男の人と、にらめっこになった。変顔はしない。そこまで笑いに貪欲ではないから。
「基本的に魔法を使える者は登録され、管理されないといけない…… 」
なるほど。
「一度、審査を経て、その後については、結果を踏まえて決める事になるだろう…… 優秀な魔導士は相応の働きと対価を得られるべきと、国は考えているからね…… 」
ギルドか何かに登録させて、働かせるのだろうと、思った。
この時から、待遇は目に見えて変わる。
手枷が外され、違う所へ案内された。
宿屋っぽいが、警備の人がいて、民間とは違うのだと思わせる。
「リベラ様、こちらです」
建物の受け付けでは、"様付き" で呼ばれた。
ちょっとまともな、部屋に通される。
まともとは、シリルガ村の部屋と比べたらと言う事だ。
田舎と都会の違いと言えば分かりやすい。
部屋は、ベッドと、テーブルと椅子があるだけで、寝る為だけの設備しかない。
お茶一杯飲むにも、食堂へ行かないといけないらしい。
世話係が一人付けられるそうで、詳しい事はその人に全て聞いてほしいと告げると、部屋の扉は閉められた。
「ニジルイハと申しますぅ」
ノックと共に部屋に入って来たのは、エルフにしては、ちょっと毛並の違う雰囲気を持った人だった。
「リベラです……」
「まあ、リベラちゃん、可愛いわぁ…… 一緒に楽しく過ごしましょうね……」
ええと、この人は、保育園の保母さんか何かのつもりなのだろうか。
完全に子供扱いしてくる。
保育園なら "お歌やお遊戯いっぱいしましょうね" と来るところか。
「あの……」
「な〜に、オシッコしたいの? 」
いや、違うから。
「お茶を飲もうかと……」
「あら、そう? じゃ、食堂行きましょうね、 お手々繋ぎましょうね、 走っちゃダメよ? 」
"怖いオジサン、メッて来るから、お利口さんにしてましょうね" と、完全に子供を諭すかのような口調で言われながら、廊下を進んだ。
確かに小さいが、子供ではないのは、見た目で分かるだろうに。
"ここで待ってましょうね" と言われ、何処かのフードコートのような、広い空間の隅の法の席に座らされた。
お茶のセットはワゴンに載せて運ばれて来た。
「はぁ〜い、熱いから気をつけてね……」
目の前でカップにお茶が注がれる。
お茶請けの菓子の載った皿もあった。
「あの、この後、審査とかがあると、聞いたんてすが……」
「そうよ、午後には、ここを出る馬車に乗る予定よ 」
「遠いんですか?」
「そうね、3日はかかるかしら……」
「そんなに? 」
「そうよ、オレンクティセジアに行くんだもの、審査だけしに行くなんて、珍しいわよね…… 」
「おれんく……、って?」
「オレンクティセジア魔学院よ、魔導士養成所みたいな所ね…… 」
エルフの国に、そんな所があるとは思わなかった。
魔導士の養成所か。
なにやら、とっても異世界らしくて良いじゃないか。
エルフにしてはやや垂れ目のおっとりした雰囲気のニジルイハ。
エルフにしては珍しい巨乳の持ち主で、やや丸びを帯びた体型をしている。
カールした髪は赤茶色だ。
自身もお茶を飲みながら、カリカリと菓子を口にした。
食べるのが好きなのだろう。
昨夜、湯浴み出来なかったから、体を流してから行きたいと告げると、ここの湯浴み場は大人数でも使える大きな湯だめなので、夕方からしか使えないそうだ。
しかし、そこ以外に心当たりがあると言う。
お茶請けを全て食べきると、一旦何処かへ消えて、すぐ戻ってきた。
「行くわよ、あまりゆっくりしてる余裕はないわ……」
手を引かれ、ズンズン進むニジルイハに連れられ建物を出た。
通りを横切り路地裏を進み、とある建物の裏手から入る。
そこは、銭湯の裏方のような熱気の籠もっていた。
実際に火を扱っているのだろう。
釜の前で木をくべてる年季の入ったオジサンが、いた。
「沸いてるかしら? 」
「ん、ああ、もう沸いちゃいるよ……」
何故この時間から湯を沸かしているのかは、知らないが、ニジルイハは勝手知ったる他人の家のように、扉を開けて通路を進み、階段をあがり、ガラリと雰囲気の違う部屋に出た。
「1部屋、つかうわよ」
途中、カーテンで仕切られた廊下の先に向かって、そう告げたが、相手がどこにいるのかさえ、分からなかった。
いくつも扉が並ぶ廊下の端の部屋に入る。
部屋は、アンバランスな配置でまずベットがあり、その奥に応接セット、奥に湯浴み場があった。
タイルの敷き詰められた洗い場の奥に仕切られたのが湯溜めだ。
配管の栓を抜くと。ドボドボと湯気をたててお湯が出てきた。
「はい、服脱いで、その棚に入れてね 」
木桶やら、小さな壺がいくつも並んだ棚から幾つか取り出すと、洗い場へと持って行く。
戻ってくるなり、服を脱ぎだすニジルイハ。
「洗ってあげましょうね〜」
一緒に入る気満々だ。
腹は出てはいるものの、胸の迫力の前には敵わない。
巨大なシャインマスカットの粒が2つ並んだようだ。
「あら、ちゃんと、大人なのねぇ……」
あなたの前では誰も貧相にしか見えないだろう。
俺は頭のてっぺんから足の爪先まで彼女に洗われた。
「何処かのお嬢様だったの? 」
「いえ、別にそんな……」
"普通、洗わせてくれないのよ" と言われ、確かにお嬢様育ちなのだなと痛感させられた。
思えば、いつも誰かに世話されてきた。
他人に体を洗われる事に慣れていたようだ。
髪を乾かす魔道具は別の部屋にあって、そこで髪を梳かされた。