その後、黒服は執事のルゴレナ、メイドはルーネフと自己紹介を受けた。
ルーネフはメイド長だそうだ。
仕事は、やはり、姉弟の魔法の指導、それに、このリシェライ領は、魔国と国境を有しているそうで、持回りで国境の警戒をしている。なので、そっちの参加も必須だそうだ。
今まではどうしていたのかと聞きたいが、後で良いだろう。
一度にアレもコレも言われても覚えきれない。
281歳問題がなぜ見過ごされたのだろうか。
頭から嘘つき少女と見られたなら、今のうちに偽造で変えておけるがどうしようか。
魔眼を持つ者が居なくて幸いだ。
たから、こちらも安易に魔眼は使わないようにしているのだけど。
あてがわれた部屋は、今まで泊まったどの宿屋の部屋より広かった。
優秀な魔導士に対する厚遇と考えるべきか。
いや、幾ら豪華な部屋を与えられても、部屋で寛ぐ時間もとれないほど働かされたのでは意味がない。
なので、フカフカなベッドがあっても、疲れ果てて寝る者にとっては、ソファーと何ら変わらないのである。
そうはなりたくない。
ーーーコンコン
ベッドの寝心地を確認している途中で、扉をノックする音がした。
「失礼しますね…… あ!」
顔だけ横に向ける。
入って来たのは、メイドだった。
目が合うなり駆け寄ってくる。
「リベラ様ですね、あたし、メイドのビエナと申します! 聞いたのより凄く可愛い! 」
お世話係だそうだ。
どうせ、体の良い監視だろう。
「あのリベラ様、レオン様の魔法の指導もされるのですよね? 」
「そうかも……」
「お坊ちゃまから、リベラ様の体型を調べるように言いつかってまして…… 」
黙っていると、"触って宜しいですか?" と断りを入れて、体を触ってきた。
「あー、思ったより、ちゃんと大人なんですねぇ…… 」
手で撫でるように、お尻から脇腹、胸を丹念に調べられた。
「あの…… 魔法とは関係ないと思うのだけど…… 」
「お坊ちゃまは、女性がたいそうお好きみたいで、専属のメイドは、殆どお手をつけられたようで…… 」
「あたしも、餌食にする気? 」
慣れない "あたし" を初めて使った。
「たぶん…… お嫌でしたら、貞操帯をご用意しましょうか? 」
貞操帯とか存在するのか。
それって、イタズラレベルじゃなくて、本番までって事だろう。野獣なのかな?
ファンネリアお嬢様は、魔法陣への執着が酷く、魔法の勉強そっちのけで、魔法陣にのめり込んで魔学院を落第して、退学処分にされたのだとか。
一つの事に執着する変わった姉弟らしい。
女好きとか、インキュバスでもう沢山なのだけど。
フェリオは言えば触って来なかったし、どこぞの漁村の男は、いきなり最後までしてたし、両極端だ。
触られる程度ならまあ、我慢出来るだろう。
「リベラ様はどんなタイプの男性がお好みなのですか? 」
いきなり恋バナでもしたそうなメイドも珍しい。
エルフの男性は余り会った事がないと、言ったら、国の外の様子の話をせがまれた。
エルフは、森から出ると早死にするから、外の事は知らないと、いきなり重大な、秘密を聞かされた。
「そうなの? 」
「え、知らないんですかぁ? 」
ビエナが言うには、森の中なら400歳近くまで、森から出て暮らすと200歳も生きられないのだとか。
だから、241歳でも不思議がられないのか。なるほど、なるほど。
某神聖国の男は女に管理されていて、アソコに貞操帯みたいな金具をつけられて、鍵は女性が持つのだと話したら、凄く食い付いてきた。
"お坊ちゃまにもそれ絶対、必要ですね" とか平気で言う。
魔国と帝国が、やり合ってる話をすると、"お嬢様は遠い所も一瞬で行ける魔法陣の開発をなさってる" とペラペラと喋るのだった。
この子は、監視どころか、良い情報源になるかもしれない。
夕食の席、御一家が勢揃いしている所に呼ばれた。
食事がはじまる前を、ご挨拶の時間にしたようだ。
お屋敷の当主、旦那様は、ややガッシリとしたら体型の白髪混じりの濃い茶色の髪を短く刈り上げたような髪型をしていた。
奥様は、長い緑がかった髪色をして、アニメに出てくるエルフに良く似ている。
お嬢様のファンネリアはこうして見ると母親似だ。
なのに、猫背でずっと俯いてる。
さっき応接室で会った時の勢いが嘘のよう。
問題のお坊ちゃまは、至って普通に見える。
ちゃんと躾も行き届いてて、好青年にさえ見えてしまう。
ビエナの話を聞いてなかったら、一発で騙された事だろう。