異世界の石   作:井ノ中蛙

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第56話 家庭教師

 

 

 

 夕食の席には呼ばれたものの、夕食は部屋に用意されていた。

 御一家と一緒とはならなくて、ちょっとホッとした。

 世間話からどんなボロが出るか分からない。

 いきなり、意地悪な事を言って来なかったし、悪い人達ではなさそうだ。癖があるのは、否定しない。

 ビエナもお坊ちゃまとカードゲームで下着姿にされた事があると言うし、お坊ちゃまからカードゲームの誘いは断った方が良いと、アドバイスも貰ってる。

 脱衣麻雀じゃないんだから。

 

 翌日、その問題児の魔法を教える為に部屋へと向かう。

 レオンお坊ちゃまの魔法の属性は土だ。

 土魔法の魔導書もお屋敷側が用意してくるている。

 驚いた事に、魔族とエルフの使う魔導書は違った。

 同じ魔法だと言うのに、呪文も違うとか、案外、魔法っていい加減なものだったりするのだろうか。

 字は鑑定眼を使わないと読めない。

 これは、魔眼はバレるな。

 仕方ない、その時は何かで誤魔化すしかないだろう。

 

 そんな風に気構えて行ったのに、当のお坊ちゃまは、何も変な事をしてこなかったし、変な誘いもして来なかった。

 魔眼をなるべく見せないように、気を遣った。

 途中までは、屋敷の護衛の魔導士から教わっていたのだとか。

 はじめから、土球を作るのではなく、今ある石などを飛ばす段階は済ませてあった。

 自主練習として、アースボール(土球)の呪文の暗記を課した。

 レオンの家庭教師は1日おきに午前中だけで予定が組まれてる。

 いきなり "飛んでみせろ" とか "カードゲームをしよう" とは言わず、指導者に師事する者の態度を外れるようなことはなくてひと安心だ。

 何故1日おきかと言うと、弟と姉を交互に教えるような日程になっているから。

 しかし弟は、夏が過ぎ冬を越えた頃には魔学院へ行ってしまうそうだから、教える期間は半年もないと思われる。

 冬には、国境警備の仕事が回ってくるそうなので、もっと短くなるか。

 

 姉も弟もエピソードが盛り沢山で、一度に全てを伝えると収集がつかなくなるので、レオンお坊ちゃまから先に紹介する事にしよう。

 姉はその後に改めてと言う事で。

 

 

「先生、 土球の呪文は既に覚えておきました、実際に撃てるのも確認しましたよ 」

 

「え、 誰か立ち会ってくれたのですよね? ひとりで勝手に魔法を放ってませんよね? 」

 

「警備のムルサルに裏庭の隅で、ちゃんと危険がないよう立ち会わせました……」

 

「そうですか…… 」

 

 警備の人は5~6人はいたと思う。

 どれがムルサルなのかは、まだ区別がつかない。

 エルフあるあるで、15歳のレオンすら大人と変わらないほど成長してて、十分過ぎるくらい早熟だ。

 どことなく残る、微かなあどけなさを見つけては、15歳なんだと納得して安心した。

 元々が高身長の多い種族らしいから、ひと目で子供と思われるのも仕方ないか。

 初級魔法だから、別に予習して先に進みたがるのは分からなくもない。

 

「ただ、狙った所へ思ったように行かなくて…… 」

 

「じゃあ、見ててあげるので、実際にやってみましょうか……」

 

 場所を裏庭に移す。

 既に日傘代わりのタープガ貼られ、その下にはガーデンテーブルとイスが用意されていた。

 その先の壁際には盛土がしてあり、的代わりの木の棒が刺してある。

 

「見てて下さい…… 」

 

 レオンは片手を掲げ、呪文の詠唱をはしめる。

 "母なる大地に宿りし精霊よ……"

 エルフの呪文は精霊の力を借りて魔法を行う。

 なので、呪文は全て枕詞のように精霊に語りかける言葉が含まれる。

 初めは俺も口にしなくとも心の中で呪文の詠唱をしていたけど、最後のトリガーワードだけでも、発動するのに気づいて、今は呪文すら思い浮かべてない。 

 

「手が下がっているからでは?」

 

 土球は的の根元のやや右に外れて盛土に当たって消えた。

 手を気持ち上に上げるよう手を添えて持ち上げてやる。

 

「逆に手がいいのでしょうか? 」

 

「さあ? 」

 

 特にそんな事、気にしたこともなかった。 左腕を上げて再度詠唱をはじめるレオン。 

 やはり、土球は的の下の方には逸れてしまう。

 見ると、左腕もやや下がっていた。

 

「こう、もう少し上げるようにしては? ……キャッ」

 

「あ、大丈夫ですか? 」

 

 利き手の方が良いと思ったのか、右腕を上げる際に俺の背中を少し押した。

 俺は左腕を上げるよう手を添えていたの前に倒れるのを防ぐように、彼の左腕につかまる格好になる。

 レオンの左手は俺を支えるようの動いた。

 手のひらが、当たった所が胸だったといだけだ。

 たまたまだろう、その時はそう思った。

 土球が何度も撃てるのを確認してからでないと、槍には進めない。

 使う魔力が、槍の方が多いからだ。

 

 何度か土球を放って、休憩をとる。

 当然のようにお茶が出てくる。

 今さら、お金持ちなのをお茶請けの焼き菓子を見て思った。

 この前は赤いジャムだったのが、今度は黄色のジャムだ。

 子供でもないのに、手が伸びてしまう。

 

「先生は、海から来たんですよね?」

 

「ええと、 ……そうですね」

 

「海には何処から来たんですか? 」

 

「さあ…… 土地勘が無いもので名前は知りませんが、何処かの漁村のような所だったと思いますけどね…… 」

 

「何族の漁村とかは? 」

 

「さあ…… 」

 

 何度か同じ質問はされてはいた。

 その度に人族か魔族か分からない人達と、言って誤魔化していた。

 

「エルフじゃなかったんですよね?」

 

「そうですね…… 」

 

 ポロリ、ポロリと聞かれるのは外の世界の話ばかりだ。

 エルフは、森から出ないから外の事に興味があると言うのは本当らしい。

 

 ただ、俺がまさか、セクハラを受ける側になるとは、思わなかった。

 椅子から立ち上がる際にレオンが手を貸してくれたのだけど、尻の辺りをパスパスと、埃を払うように触られた。

 埃を払うように、だ。

 避けようとする前に手が引っ込んだから、何も出来ない。

 少しずつ、少しずつ、レオンはセクハラをしてくるようになった。

 

 正直に言うとそろそろ宜しくないと思う。

 "同性同士はいや?"

 ビエナにそう聞いた。

 淫獣は、精を吸わないとダメだから。

 そろそろ切れて来たのだと思う。

 ヴァンパイアの体の時とは違う、性欲ではなくて食欲に近い欲求だ。

 一度、自分でしてみたけれど、全然良く無かった。

 欲しいのは飽くまでも "精" なのだ。

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