異世界の石   作:井ノ中蛙

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第58話 土魔法

 

 

 

「飽くまでも理想は、と言う事です……」

 

 "今ときの若者は、そんなの気にする人なんていませんよ" とでもいいだけだ。

 優秀な避妊具でもあるのかと思えば、出て来た言葉は、"避妊の魔法陣" だった。

 そう言えば、カトリーナから貰っていた魔法陣の見本の紙はまだあるだろうか。

 影収納から取り出すと、やはりあった。

 本当なら、ライブザバン王国の何処かの町で魔法屋をしても良いか思っていた時もあったのだけど。

 なぜ魔導士になったのだっけ……身分証が必要とかだったか。

 既に遠い事のように感じられた。

 何の因果か、エルフの家庭教師をやっている自分がとても、滑稽に思えて仕方なかった。

 レオンは女好きだし、某ラノベに似てなくもない状況だ。

 家庭教師側と言う立場の違いだけじゃなくて、他にも色々違うし、彼は優秀な魔導士になれるとは思えない。

 妻は何人でも増えそうではあるが。

 

「先生、鑑定眼をお持ちなんですね? 」

 

 早速、情報が漏れたらしく、魔法の練習の際にレオンがそう言ってきた。

 "試しにゲームでもしましょう" と、ビエナが警戒するよう進言してきた展開になる。

 使うのはサイコロだ。

 日本の物とは違い、各面に1〜6の数字が刻まれている。六面体なのだけは共通だ。

 それを2個、同時に振って目の強い(数の多い)方が勝ちと言うものだ。

 

「サイコロの目を読める訳ではありません…… 」

 

「えー、じゃあ何が鑑定出来るんですか? 」

 

「片方のサイコロが魔道具だと言う事は分かります…… 」

 

 メイド達の刺すような視線がレオンに集まった。

 コイツ、このサイコロ使って色々しでかしていたらしい。

"でしたらカードゲームで" とは言わない所を見るとカードも魔道具の疑いが濃厚だろう。

 

「じゃ、このサイコロは何の仕掛けもないでしょう? 何をかけましょうか?」

 

「やる必要ありますかね? 」

 

「先生の鑑定眼、使う所を見たいだけなんですよ………」

 

 いや、賭け事に鑑定眼は関係ないだろうし、使い所がないと思うのだけど。

 それでも "やらない" と断ると、レオンはメイド2人(リリアとニモナ)に何やら小声で指示をした。

 一旦、部屋を出たメイドは、すぐにまた戻ってくる。

 

「どちらか一人、下着を穿いてない方を鑑定眼で、見て下さい…… 」

 

 さすがクズだけある。

 させる事が最低レベルだ。

 

「どちらも穿いてませんね…… 」

 

 そう告げると、レオンがメイドに目配せした。

 スカートに手をかけて、捲り上げると下半身を露わにするメイド。

 

「さすが先生です 」

 

 すっごく嫌な雰囲気。

 わざとらしいメイドの笑顔が更にそれを倍増させてる気がする。

 

「はい、もういいですか? 魔法の練習をはじめますよ? 」

 

「先生は、まじめですね…… 」

 

「不真面目な人を先生と呼ぶのは間違いだと思いませんか? 」

 

「そんな先生もいても良いと思うんですけどねぇ…… 」

 

 "なら、インキュバスに師事したら良い" と言いかけて飲み込んだ。

 この子は、エルフ版インキュバスみたいなものだ。

 そう思えば納得がいく。

 インキュバスなのに魔法が得意なんだ、凄いね、偉いね、と褒めてあげたい。

 こんな子が入学する魔学院は、大変だ。

 卒業するまでに何人の女生徒と関係を持つのだろう。

 ある意味青春ではあるが、羨ましくなんかない。そんな青春、物語の中にしか無いと思っていたのに、現実に起こり得るとか、納得いかないのだけど。

 ばあちゃん魔法に、"もげろ" とか言う魔法があったならいいのにな。

 まあ、無いものは仕方ないけどね。

 

 その日を境に、魔法の練習の日はまず、メイドの下着を着けてない方を当てると言うのが恒例になっていた。

 毎回、2人と下着はつけてこなくなった。

 正直に言うと鑑定眼で、スカートの中までは分からない。ビエナから聞いたメイドのポケットの使い方で判断しただけだ。

 右にはキレイなもの、左には汚れた物をしまうようにするのが習わしなのだとか。

 下着はどちらにしまうかと言えば、やはり左だろう。

 白いエプロンの左のポケットが少し盛り上がり気味なら、何か入っているはずだ。そこを見て判断しただけの話だから。

 "先生もたまに脱いだらいいんですよ" なんて訳の分からない提案は聞く耳も持ち合わせていないから。

 風魔法使いなら警戒する所だが、土魔法でスカートを捲られる心配はほぼ無いから、良いのだけど。

 土球、土槍、土壁、と順調に魔法を覚えていくお坊ちゃま。

 土弾や、土盾と言ったアレンジ物も問題なく習得した。

 たぶん、最初に教えて人が基礎を良く練習させたのだろう。

 体内魔力を自覚させるとか、集中させ方とか。

 人から教えて貰える環境は羨ましいが、だからと言って自分の限界があがる訳ではない。

 地面から槍が生えるアーススパイクは、今迄にの魔法とは違う。

 レオンが習得に手こずる初めてパターンだ。

 そこにある土を使う系統だから、本来なら出来やすい筈ではあるが、中級魔法の域ともなると、発動させるだけでもひと苦労だ。

 

「先生が下着を穿いてなければ、もっと集中出来ると思うのですけど…… 」

 

「はい、全く関係ありませんし、協力する気もありませんからね……」

 

「え〜、アーススパイクでスカートを捲ろうとは思えば、出来そうな気が……」

 

「場所を間違えたら、大怪我にもなりかねません、 絶対にしないで下さい……」

 

 そんな、不純な動機でやろうてしていたとは思わなかった。

 下着をつけてない女性のスカートを捲るだなんて、……男ならやりかねないか……。

 その発想は頭になかった。

 まあ、年頃の男の子なら、仕方がないのかもしれない。

 事故が起きたら、取り返しがつかないこともないのが、異世界らしい。

 ポーションでどうにかなってしまうのだろう。

 大怪我ともなると、かなり高価なポーションでないと治らないと聞いたが、この屋敷は金持ちだから……。

 俺が心配する事ではない。

 危険性も説いたし、注意もした。

 後は、本人次第だ。

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