筋肉は全てを解決する。ヤンデレヒロインの攻撃もね?   作:トマトルテ

5 / 6
Lesson5:リングの上でも筋肉があれば大丈夫

 

 ゴングが鳴る。

 

 ベッドとは古来より伝わる、プロレスのリングである! 

 多くの英雄達が、このリングの上で生まれた(意味深)と、もっぱらの噂だ! 

 

「愛ちゃん……本当に良いんだな?」

「ええ、いつもでいいわ。剛君の熱い抱擁を私にちょうだい?」

 

 自室のベッド(リング)の上で、俺は愛ちゃんと向かい合う。

 薄い衣装。むき出しの肌。滴る汗。

 始まる前から緊張で乱れる息。

 そう、俺は今まさに──

 

「マッスルタックルッ!!」

 

 ──プロレス(ガチ)を行っていた。

 

「ふふふ、捕まえてちょうだい?」

 

 場所はもう一度言うが、自室のベッド(リング)の上。

 エロい意味で言ってる? 

 こっちもガチだよ(全ギレ)! 

 

 愛ちゃんに夜のプロレスに誘われて、ウキウキで部屋に行ったら見慣れた部屋が、劇的ビフォーアフターされていた衝撃は忘れられない。

 いつの間に、拡張されてるし、ちゃんとしたロープが張られたリングになってるし。

 立ち上がっていた俺の愚息も、びっくりして一気に首を垂れたよ。

 

 ふかふかのベッドどこへ!? 

 

(愛ちゃん……意外に動きが早い!)

「あら、残念。剛君の私への愛はその程度なのかしら?」

 

 黒色のヒール女レスラーの服で、華麗に俺のタックルを避ける、愛ちゃん。

 健康的な腹筋と太ももが露になった服装に、俺は前屈みにならざるを得ない。

 そして、その状態で繰り出せる技はタックルぐらいなもの。

 愛ちゃんめ……俺の攻撃をその美貌で誘導するとは、実に策士だ! 

 

「剛君、知ってる?」

「何を?」

「プロレスは凶器を使うのは反則なのよ」

「なるほど……で? その手に持った釘バットは?」

 

 プロレスのルールを説明しながら、おもむろに釘バットを取り出す、愛ちゃん。

 

「でもね、プロレスでは反則技でも、レフェリーがカウントを数えるまでの5秒以内なら反則として取られないのよ」

「もう5秒は経ってると思うけど?」

 

 エンタメとしてのプロレスは反則や凶器も、ショーとして容認する。

 しかし、だからと言って完全な無法ではない。

 無法ではないのだが。

 

「残念。ここにレフェリーは居ないわ。だから……何をやってもいいのよ!」

「もはや、プロレスの体を為してない!」

 

 審判というルールが無い以上は、何でもOK。

 そんな、ゆで理論を展開して、愛ちゃんが襲い掛かってくる。

 

「無駄だ! チェーンソーでも傷つかない俺の筋肉に、今更、釘バット如き──」

「釘弾発射よ!!」

「それ殴るためじゃなくて、撃つための釘だったの!?」

 

 ()つではなく、()つ。

 バットの柄についているボタンを押すと同時に、無数の釘が俺に向かって飛んでくる。

 釘バットの意味!! 

 

「どんな達人も眼球だけは鍛えられないわ! 最後に見る景色は、もちろん私よね?」

「釘だけど!?」

「さあ、死んでちょうだい!」

 

 腕や胴体、顔は筋肉でガードできる。

 だが、愛ちゃんの言うように眼球には筋肉が無い。

 眼球を動かす筋肉はあっても、眼球そのものは筋肉ではないのだ。

 絶体絶(めい)ならぬ絶体絶(めい)

 釘の弾丸を眼球に受けてしまえば、さしもの俺も光を失うしかない。

 

「それはどうかな?」

 

 などと、諦めることはしない。

 筋肉に不可能などないと、筋肉師匠から教わったばかりなのだから。

 

「リバースマッスルオープン!!」

「リバースマッスル!?」

 

 上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋。

 目を動かす筋肉を増大させる。

 

「筋肉を膨らませて眼球を覆う!!」

「うわッ! 目が裏返って……気持ちわる」

「待って、そういうガチ目な罵倒は心に響く」

 

 筋肉の膨張で、眼球に膜を作ることで釘を防ぐことに成功する。

 だが、愛ちゃんのドン引きした罵倒は、防ぐことが出来なかった。

 さしもの筋肉も、心までは覆えなかったか……。

 

「とにかく! 防いだ今が反撃のチャンス!! 釘の無いバットはただのバットだ!!」

「く…! なんで、このバットは釘バットなのに、釘が無いのよ!?」

「愛ちゃんが全部撃ったからだよ!!」

 

 バットを握りしめて、悔しそうに叫ぶ愛ちゃんにツッコミを返しながら、再びタックルをしかける。

 何でタックルにこだわるのかって? 

 女の子相手に殴るとか蹴るとか出来る訳がないだろ!! 

 男として最低だよ、それは。

 

「愛ちゃん! タックルの勢いで、間違ってお尻とかおっぱいに触るかもしれないけど、許して!! 間違いだから!!」

「こんなに意図を感じる間違いも、聞いたことが無いわね」

 

 まあ、真実はその姿勢なら、顔はおっぱいに突っ込むし、手は違和感なくお尻に触れるからだが。

 人として最低? 同意の上だから! 

 

「でも、いいわ。迎え入れてあげる」

「愛ちゃん…!」

 

 迫るタックル。

 柔らかく構える愛ちゃん。

 そして──

 

「私の練習した技でね?」

 

 ──ふわりと、愛ちゃんが飛び上がる。

 そして、タックルでツッコんできた俺の首の上に、足をかける。

 

「どう、虎の顎に見えるかしら?」

(両脚で相手の頭部を挟んだ!? まさか、この技は──うぉ!? 太もも柔らかッ!)

 

 そして、両足の柔らかな太ももで頭を挟み込んでくれる。ありがとうございます! 

 

「ふふ、スケベ♡」

「ハッ!? しまった!」

「もう逃がさないわよ。鼻血をいっぱい流させてあ・げ・る?」

 

 俺の動きを止める、愛ちゃんの完璧なフェイント。

 太ももの柔らかさに囚われた俺は、完全に頭をロックされてしまう。

 なんて冷静で的確な判断力なんだ!! 

 

 

「──虎王(こおう)!」

 

 

 そして、俺の顎に叩き込まれる、左からの猛烈な膝蹴り。

 

「グフッ!? ク…太ももの感触を楽しんでいたせいで、筋肉の反応が遅れて…! なんて、高度な罠を…!」

「剛君が煩悩(ぼんのう)に侵されて、凡庸(ぼんよう)な罠にかかっただけよ」

 

 首と顎の筋肉で、致命傷は防いだが、力を入れていなかったために、脳が揺さぶられる。

 そして、力なくベッド(リング)の上に膝をついてしまう。

 

「──これで虎王、完了!」

(腕が捻られて、痛──おっぱい柔らか!!)

 

 そして、そのまま愛ちゃんが倒れた俺の腕を捻り上げ、肩関節を極める形で地面に叩きつける。

 おっぱいが、しっかりと捻られた腕に当たっており、俺の下心も完璧に極められている。

 

「ふふふ、ここからどうやって逆転するのかしら? 私が剛君の腕をへし折るのと、どっちが早いかしら?」

「た、立てん…!」

 

 相手は女性。

 だが、完全に技を決められた状態からでは、立ち上がれない。

 いや、俺の愚息はおっぱいと足の感触と、愛ちゃんの甘い臭いで、完全に立ち上がっているのだが。

 

「それじゃあ、カウントを始めるわよ? 1~2~」

 

 少しずつ、俺の腕を捻る力を上げていく、愛ちゃん。

 それに対して、何とか抵抗を試みるが、やはり立ち上がれない。

 Lesson5。幼馴染みに、虎王を決められたらどうするべきか? 

 

「うぉおおお! 右腕に全ての筋肉の力を収束させる!!」

「嘘!? 片腕で、私ごと自分の体を持ち上げて…!? 素敵!」

 

 答えは簡単。自由に動かせる片腕で、相手ごと自分を持ち上げるのだ。

 ベッド(リング)に右腕を突き立て、限界まで力を籠める。

 上腕二頭筋・上腕三頭筋を解放し、岩の様に盛り上げる。

 そして、片手腕立て伏せの要領で、自分と愛ちゃんを持ち上げていく。

 

「あん!? 下から突き上げられたせいで、ロックが外れて…!」

「悪いけど、そのまま振り落とさせてもらう! 怪我しないでね! 愛ちゃん!」

 

 体を浮かせたことで、極められていた肩は解放される。

 後は、腕に絡まった愛ちゃんを、振るい落とせば──

 

「キャッ!? お、落ちちゃう…!」

 

 ──おっぱいと太ももと股間が、俺の腕にギュッと密着する

 落ちないように愛ちゃんが俺の腕に全身でしがみついてきたのだ。

 

「ダメだ……出来ない! 俺には、愛ちゃんを振り落とすことなんて出来ない!」

 

 股間! 

 いや、愛する女性が傷つく可能性を、無視するなんて男として出来ない。

 

 太もも! 

 いや、愛ちゃんが俺を傷つけることはあっても、俺が傷つけるのは違う。

 

 おっぱい! 

 俺は愛ちゃんに、ヤンデレではない本物の愛を教える伝道師なのだから、おっぱい。

 

「愛ちゃん、もっとおっぱいを押し付けて! (愛ちゃん、落ちないようにしがみついて!)」

「本音と建前が逆になってるわよ?」

「いくよ! 愛ちゃん!」

「どっちの意味でイクのかしら?」

 

 俺はグッと右腕を曲げて、タメを作る。

 そして、勢いよく解き放ち、その反動で──ジャンプする。

 

「マッスルジャンプ!!」

「きゃッ! 凄い……右腕だけで、私ごとジャンプしちゃったわ」

 

 空中に飛び上がった俺を縛るものは何もない。

 そう、俺は筋肉で自由を勝ち取ったのだ!! (BGM:キン肉マン)

 自由になった筋肉で愛ちゃんを左腕から引きはがし、空中でお姫様抱っこに変える。

 そして、そのまま、ベッド(リング)へと着陸。

 気分はマッスルスパークを決めた感じである。

 

「カウントは要るかな?」

「ふふふ……降参よ」

 

 愛ちゃんは、俺の言葉にそう返して、片腕を首に絡ませる。

 じっとりと滲んだ汗が、お互いの肌に触れて、得も言われぬ匂いを醸し出す。

 

「それで……勝者は敗者に何を望むのかしら?」

 

 細く白い指を、汗で濡れた胸の谷間に滑らせる、愛ちゃん。

 俺の目が動揺で左右に滑る。

 動く範囲? 左右のおっぱいの幅だけですが、何か? 

 

「それはもちろん……」

 

 ゴクリと唾を飲み込み、延長戦(意味深)に入ろうとする、俺。

 そして、そのまま愛ちゃんを、ベッドの上に連れて行こうと思い──

 

「……愛ちゃん。そう言えば、俺のベッドは?」

「あら、おかしなことを聞くわね。リング(ここ)がベッドよ」

「もしかして、どっかに持って行ったんじゃなくて、マジで改造してたの? これもDIYで?」

「もちろんよ。でも、安心してちょうだい、剛君」

 

 茶目っ気たっぷりにウィンクして、愛ちゃんが俺の頬を撫でる。

 

「建築士免許も取って壁も変えたから、今度は防音効果もバッチリよ?」

 

 エッチな声が聞こえないようにとかなら、大歓迎だけど、実際の所はチェーンソーの音とか何だろうなぁ……。

 

「いや、あの……今日の寝る場所は?」

「そこになければ、ないわね。今度の休みの日にダブルベッドでも、買いに行きましょう?」

 

 そうして、本日の寝床はソファの上に決定するのだった。

 愛ちゃんめ。筋肉の回復力を落として、俺を殺すに作戦に出て来たか……。




主人公はおっぱい派ですが、作者は尻派です。
感想・評価の程よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。