筋肉は全てを解決する。ヤンデレヒロインの攻撃もね? 作:トマトルテ
ゴングが鳴る。
ベッドとは古来より伝わる、プロレスのリングである!
多くの英雄達が、このリングの上で生まれた(意味深)と、もっぱらの噂だ!
「愛ちゃん……本当に良いんだな?」
「ええ、いつもでいいわ。剛君の熱い抱擁を私にちょうだい?」
自室の
薄い衣装。むき出しの肌。滴る汗。
始まる前から緊張で乱れる息。
そう、俺は今まさに──
「マッスルタックルッ!!」
──プロレス(ガチ)を行っていた。
「ふふふ、捕まえてちょうだい?」
場所はもう一度言うが、自室の
エロい意味で言ってる?
こっちもガチだよ(全ギレ)!
愛ちゃんに夜のプロレスに誘われて、ウキウキで部屋に行ったら見慣れた部屋が、劇的ビフォーアフターされていた衝撃は忘れられない。
いつの間に、拡張されてるし、ちゃんとしたロープが張られたリングになってるし。
立ち上がっていた俺の愚息も、びっくりして一気に首を垂れたよ。
ふかふかのベッドどこへ!?
(愛ちゃん……意外に動きが早い!)
「あら、残念。剛君の私への愛はその程度なのかしら?」
黒色のヒール女レスラーの服で、華麗に俺のタックルを避ける、愛ちゃん。
健康的な腹筋と太ももが露になった服装に、俺は前屈みにならざるを得ない。
そして、その状態で繰り出せる技はタックルぐらいなもの。
愛ちゃんめ……俺の攻撃をその美貌で誘導するとは、実に策士だ!
「剛君、知ってる?」
「何を?」
「プロレスは凶器を使うのは反則なのよ」
「なるほど……で? その手に持った釘バットは?」
プロレスのルールを説明しながら、おもむろに釘バットを取り出す、愛ちゃん。
「でもね、プロレスでは反則技でも、レフェリーがカウントを数えるまでの5秒以内なら反則として取られないのよ」
「もう5秒は経ってると思うけど?」
エンタメとしてのプロレスは反則や凶器も、ショーとして容認する。
しかし、だからと言って完全な無法ではない。
無法ではないのだが。
「残念。ここにレフェリーは居ないわ。だから……何をやってもいいのよ!」
「もはや、プロレスの体を為してない!」
審判というルールが無い以上は、何でもOK。
そんな、ゆで理論を展開して、愛ちゃんが襲い掛かってくる。
「無駄だ! チェーンソーでも傷つかない俺の筋肉に、今更、釘バット如き──」
「釘弾発射よ!!」
「それ殴るためじゃなくて、撃つための釘だったの!?」
バットの柄についているボタンを押すと同時に、無数の釘が俺に向かって飛んでくる。
釘バットの意味!!
「どんな達人も眼球だけは鍛えられないわ! 最後に見る景色は、もちろん私よね?」
「釘だけど!?」
「さあ、死んでちょうだい!」
腕や胴体、顔は筋肉でガードできる。
だが、愛ちゃんの言うように眼球には筋肉が無い。
眼球を動かす筋肉はあっても、眼球そのものは筋肉ではないのだ。
絶体絶
釘の弾丸を眼球に受けてしまえば、さしもの俺も光を失うしかない。
「それはどうかな?」
などと、諦めることはしない。
筋肉に不可能などないと、筋肉師匠から教わったばかりなのだから。
「リバースマッスルオープン!!」
「リバースマッスル!?」
上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋。
目を動かす筋肉を増大させる。
「筋肉を膨らませて眼球を覆う!!」
「うわッ! 目が裏返って……気持ちわる」
「待って、そういうガチ目な罵倒は心に響く」
筋肉の膨張で、眼球に膜を作ることで釘を防ぐことに成功する。
だが、愛ちゃんのドン引きした罵倒は、防ぐことが出来なかった。
さしもの筋肉も、心までは覆えなかったか……。
「とにかく! 防いだ今が反撃のチャンス!! 釘の無いバットはただのバットだ!!」
「く…! なんで、このバットは釘バットなのに、釘が無いのよ!?」
「愛ちゃんが全部撃ったからだよ!!」
バットを握りしめて、悔しそうに叫ぶ愛ちゃんにツッコミを返しながら、再びタックルをしかける。
何でタックルにこだわるのかって?
女の子相手に殴るとか蹴るとか出来る訳がないだろ!!
男として最低だよ、それは。
「愛ちゃん! タックルの勢いで、間違ってお尻とかおっぱいに触るかもしれないけど、許して!! 間違いだから!!」
「こんなに意図を感じる間違いも、聞いたことが無いわね」
まあ、真実はその姿勢なら、顔はおっぱいに突っ込むし、手は違和感なくお尻に触れるからだが。
人として最低? 同意の上だから!
「でも、いいわ。迎え入れてあげる」
「愛ちゃん…!」
迫るタックル。
柔らかく構える愛ちゃん。
そして──
「私の練習した技でね?」
──ふわりと、愛ちゃんが飛び上がる。
そして、タックルでツッコんできた俺の首の上に、足をかける。
「どう、虎の顎に見えるかしら?」
(両脚で相手の頭部を挟んだ!? まさか、この技は──うぉ!? 太もも柔らかッ!)
そして、両足の柔らかな太ももで頭を挟み込んでくれる。ありがとうございます!
「ふふ、スケベ♡」
「ハッ!? しまった!」
「もう逃がさないわよ。鼻血をいっぱい流させてあ・げ・る?」
俺の動きを止める、愛ちゃんの完璧なフェイント。
太ももの柔らかさに囚われた俺は、完全に頭をロックされてしまう。
なんて冷静で的確な判断力なんだ!!
「──
そして、俺の顎に叩き込まれる、左からの猛烈な膝蹴り。
「グフッ!? ク…太ももの感触を楽しんでいたせいで、筋肉の反応が遅れて…! なんて、高度な罠を…!」
「剛君が
首と顎の筋肉で、致命傷は防いだが、力を入れていなかったために、脳が揺さぶられる。
そして、力なく
「──これで虎王、完了!」
(腕が捻られて、痛──おっぱい柔らか!!)
そして、そのまま愛ちゃんが倒れた俺の腕を捻り上げ、肩関節を極める形で地面に叩きつける。
おっぱいが、しっかりと捻られた腕に当たっており、俺の下心も完璧に極められている。
「ふふふ、ここからどうやって逆転するのかしら? 私が剛君の腕をへし折るのと、どっちが早いかしら?」
「た、立てん…!」
相手は女性。
だが、完全に技を決められた状態からでは、立ち上がれない。
いや、俺の愚息はおっぱいと足の感触と、愛ちゃんの甘い臭いで、完全に立ち上がっているのだが。
「それじゃあ、カウントを始めるわよ? 1~2~」
少しずつ、俺の腕を捻る力を上げていく、愛ちゃん。
それに対して、何とか抵抗を試みるが、やはり立ち上がれない。
Lesson5。幼馴染みに、虎王を決められたらどうするべきか?
「うぉおおお! 右腕に全ての筋肉の力を収束させる!!」
「嘘!? 片腕で、私ごと自分の体を持ち上げて…!? 素敵!」
答えは簡単。自由に動かせる片腕で、相手ごと自分を持ち上げるのだ。
上腕二頭筋・上腕三頭筋を解放し、岩の様に盛り上げる。
そして、片手腕立て伏せの要領で、自分と愛ちゃんを持ち上げていく。
「あん!? 下から突き上げられたせいで、ロックが外れて…!」
「悪いけど、そのまま振り落とさせてもらう! 怪我しないでね! 愛ちゃん!」
体を浮かせたことで、極められていた肩は解放される。
後は、腕に絡まった愛ちゃんを、振るい落とせば──
「キャッ!? お、落ちちゃう…!」
──おっぱいと太ももと股間が、俺の腕にギュッと密着する
落ちないように愛ちゃんが俺の腕に全身でしがみついてきたのだ。
「ダメだ……出来ない! 俺には、愛ちゃんを振り落とすことなんて出来ない!」
股間!
いや、愛する女性が傷つく可能性を、無視するなんて男として出来ない。
太もも!
いや、愛ちゃんが俺を傷つけることはあっても、俺が傷つけるのは違う。
おっぱい!
俺は愛ちゃんに、ヤンデレではない本物の愛を教える伝道師なのだから、おっぱい。
「愛ちゃん、もっとおっぱいを押し付けて! (愛ちゃん、落ちないようにしがみついて!)」
「本音と建前が逆になってるわよ?」
「いくよ! 愛ちゃん!」
「どっちの意味でイクのかしら?」
俺はグッと右腕を曲げて、タメを作る。
そして、勢いよく解き放ち、その反動で──ジャンプする。
「マッスルジャンプ!!」
「きゃッ! 凄い……右腕だけで、私ごとジャンプしちゃったわ」
空中に飛び上がった俺を縛るものは何もない。
そう、俺は筋肉で自由を勝ち取ったのだ!! (BGM:キン肉マン)
自由になった筋肉で愛ちゃんを左腕から引きはがし、空中でお姫様抱っこに変える。
そして、そのまま、
気分はマッスルスパークを決めた感じである。
「カウントは要るかな?」
「ふふふ……降参よ」
愛ちゃんは、俺の言葉にそう返して、片腕を首に絡ませる。
じっとりと滲んだ汗が、お互いの肌に触れて、得も言われぬ匂いを醸し出す。
「それで……勝者は敗者に何を望むのかしら?」
細く白い指を、汗で濡れた胸の谷間に滑らせる、愛ちゃん。
俺の目が動揺で左右に滑る。
動く範囲? 左右のおっぱいの幅だけですが、何か?
「それはもちろん……」
ゴクリと唾を飲み込み、延長戦(意味深)に入ろうとする、俺。
そして、そのまま愛ちゃんを、ベッドの上に連れて行こうと思い──
「……愛ちゃん。そう言えば、俺のベッドは?」
「あら、おかしなことを聞くわね。
「もしかして、どっかに持って行ったんじゃなくて、マジで改造してたの? これもDIYで?」
「もちろんよ。でも、安心してちょうだい、剛君」
茶目っ気たっぷりにウィンクして、愛ちゃんが俺の頬を撫でる。
「建築士免許も採って壁も変えたから、今度は防音効果もバッチリよ?」
エッチな声が聞こえないようにとかなら、大歓迎だけど、実際の所はチェーンソーの音とか何だろうなぁ……。
「いや、あの……今日の寝る場所は?」
「そこになければ、ないわね。今度の休みの日にダブルベッドでも、買いに行きましょう?」
そうして、本日の寝床はソファの上に決定するのだった。
愛ちゃんめ。筋肉の回復力を落として、俺を殺すに作戦に出て来たか……。
主人公はおっぱい派ですが、作者は尻派です。
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