「デンライナーの修理、これで全部終わりました」
そう告げてから、しばらく誰も何も言わなかった。
私の手元には、すべての項目へ印が入った確認表がある。中枢機関。正常。走行系。正常。時間移動系。正常。車内設備。問題なし。補助系統。問題なし。
ゴウカも、イスルギも、レッコウも、イカヅチも、もう壊れたまま置かれている列車ではない。いつでも走れる。いつでも、本来の場所へ戻れる。
「……終わったのか?」
モモタロスが、もう一度訊いた。
「はい」
「本当に?」
「本当です」
「途中で、やっぱりここ駄目でした、とかねえんだな?」
「最終確認まで終わっています」
そう答えると、モモタロスの顔が一気に明るくなった。
「っしゃあああああっ!」
地下いっぱいに声が響いた。
「うるさいです」
「うるせえ! やっと直ったんだぞ!」
「ミライ、すごーい!」
リュウタロスが勢いよく抱きついてくる。
「ありがとうございます。ですが、工具を持っているので少し待って――」
「やったー!」
「聞いてください」
危うくドライバーを落としかけた。
「これでまた好きな時を走れるわけだね」
ウラタロスが車内の計器を眺めながら言う。
「僕としては、この店もなかなか居心地がよかったんだけど」
「せやなあ」
キンタロスも大きく頷いた。
「長いこと世話になったな」
「……はい」
その言葉にだけ、少し返事が遅れた。
さっきまで、修理が終わったことしか考えていなかった。何か月も触ってきた列車が、ようやく完全な状態に戻った。そのことが嬉しかった。
けれど、完全に直ったということは、もうここにいなければならない理由もなくなったということだった。
*
その日の夕食も、いつもと変わらなかった。
「おいリュウタ、最後の唐揚げは俺のだぞ!」
「やだ。僕が食べる!」
「俺が最初に狙ってたんだよ!」
「知るか!」
「二人とも、食事中に暴れないでください」
箸を置いて注意する。その横では、ウラタロスが涼しい顔をして別の皿から一つ取っていた。
「ウラタロス」
「何かな?」
「今、一つ取りましたよね」
「何のこと?」
「見ていました」
「証拠は?」
「口に入っています」
キンタロスが大きな声で笑う。モモタロスとリュウタロスはまだ揉めている。
私はため息をついた。
いつも通りだった。本当に、いつも通りだった。
教習所から帰ってきた時も、出張修理へ出る前も、夜遅くまでデンライナーを直していた時も。時計店の中では、ずっとこうだった。
静かだった店が騒がしくなった。食事の量が増えた。時々物が壊れた。お客さんが来ているのに声が響いて、何度も注意した。リュウタロスが勝手に時計へ触ろうとした時には、本気で怒ったこともある。
でも、それがいつの間にか普通になっていた。
「……皆さん」
口にすると、四人がこちらを見る。
「ん?」
「どうしたん、ミライ」
私は少しだけ迷った。言わなければならない。それは、修理を始めた時から分かっていたはずのことだ。
「少し、話があります」
モモタロスが口に入れようとしていた唐揚げを止めた。
「なんだよ、改まって」
「デンライナーが直りました」
「だから、それはさっき聞いたって」
「はい」
私は頷く。
「ですから……皆さんは、もうここに留まる必要はありません」
今度は誰もすぐには返さなかった。モモタロスの眉が僅かに下がる。
「……なんだよ、それ」
「はい?」
「直ったから、俺たちはもう出てけってことか?」
「違います」
自分でも驚くほど早く言葉が出た。モモタロスも少し目を丸くする。
「そういう意味ではありません」
「じゃあ、どういう意味だよ」
「皆さんがここにいたのは、デンライナーが壊れていたからです」
戻りたくても戻れなかった。時間を走るための列車が動かない以上、ここにいるしかなかった。
「でも、もう違います。デンライナーは走れます」
もう一度、旅ができる。自分たちの行きたい時へ行ける。
「皆さんには、また皆さんの旅があります」
それを、私の都合で止める理由はない。
「私が引き留めるのは、違うと思います」
「……引き留めたいの?」
ウラタロスが訊いた。
「それは――」
答えようとして、少し止まる。
「お前はどうなんだよ」
今度はモモタロスだった。
「何がですか?」
「俺たちがいなくなって、お前は平気なのかって聞いてんだよ」
「時計店は静かになりますね」
「そういうこと聞いてねえ!」
「食費も減ると思います」
「だから違うっつってんだろ!」
少しだけ、いつもの空気が戻った。ウラタロスが肩をすくめる。
「ミライちゃん、それじゃ全然答えになってないよ」
「そうでしょうか」
「そうだよ」
「ミライ、僕たちいなくなるの嫌?」
リュウタロスはもっと直接的だった。四人に見られる。逃げられそうになかった。
私は視線を落とした。食卓。椅子。壁の時計。四人が来る前から何も変わっていないものも多い。なのに、今ではこの場所を思い浮かべれば、騒がしい声まで一緒に出てくる。
「……寂しいですよ」
言葉にすると、自分で思っていたよりも簡単だった。
「かなり」
「だったら最初からそう言え!」
モモタロスが声を上げる。
「言ったところで、皆さんを引き留める理由にはならないでしょう」
「そういう問題じゃねえんだよ!」
「?」
分からず首を傾げると、モモタロスが頭を抱えた。
「こいつ、ほんっと変なところで面倒くせえな……!」
「まあまあ」
ウラタロスが笑う。
「ミライちゃん。僕たちだって、二度と来ないとは言ってないしね」
「……はい」
「デンライナーが動くなら、むしろ今までより好きなところへ行けるんだ。ここへ戻ってくることだってできる」
そうだった。直ったから出ていく。そこまでは考えていた。けれど、その後のことを私は考えていなかった。
「泣きたくなったら、いつでも呼ぶんやでぇ」
キンタロスが言った。私は彼を見る。普段なら、そのまま「泣けるでぇ」と続きそうなところだった。でも今は、そうではなかった。
「……はい」
「僕たちも遊びに来るよ!」
リュウタロスが笑う。
「だからミライも遊びに来ていいんだよ。デンライナーあるんだから」
「そうですね」
少しだけ肩の力が抜けた。別れることばかり考えていた。また会うことまで、考えていなかった。
「おい、ミライ」
「はい?」
顔を上げる。モモタロスが私の前まで来た。そのまま、私と目線を合わせるように身体をかがめる。
「モモタロス?」
両肩へ手を置かれた。近い。いつもなら、この距離で大声を出されたらうるさいと思うところだった。でも、モモタロスは怒鳴らなかった。
しっかりと、私の目を見ている。ふざけている様子もない。
「助けが欲しかったら、いつでも呼べ」
肩に置かれた手へ少し力が入る。
「すぐに駆けつけてやる」
私は何も言えず、その目を見返した。言葉の意味を考える必要はなかった。本気で言っている。それだけは分かった。
「……はい」
今度は誤魔化さなかった。
「その時は、お願いします」
「おう!」
いつもの調子で返ってきた。私は少しだけ笑った。
*
「じゃあ、試運転するか!」
しんみりした空気は、それほど長く続かなかった。夕食を終えるなり、モモタロスがいつもの調子でそう言った。
「はい。そのつもりでした」
「なんだよ、先に言えよ!」
「修理が終わった以上、実際に走らせないと確認できない部分がありますので」
中枢機関は問題なく動いている。時間移動系も検査上は正常。けれど、本当に走らせて初めて分かることはある。長時間稼働した時の挙動。各車両の連結状態。振動。異音。時間移動時の負荷。実走試験は必要だった。
「で、どこ行く?」
リュウタロスが訊く。私は少し考えた。
元々なら、そろそろリアス先輩へ電話をして、冥界へ迎えを出してもらう予定だった。
でも、目の前には今まさに試運転を必要としているデンライナーがある。
「……冥界まで、お願いできますか?」
「冥界?」
モモタロスが首を傾げた。
「一誠たちが行ったところです」
「あの赤い髪の姉ちゃんに迎え出してもらうんじゃなかったのか?」
「その予定でした」
「じゃあ電話すりゃいいじゃねえか」
「それでも行けます。ただ、デンライナーの試運転も必要なので」
私は車両を見る。
「どうせ走るなら、目的地があった方がいいでしょう」
「試運転で冥界まで行く奴があるか!」
「ここにいます」
「そういう意味じゃねえ!」
ウラタロスが笑った。
「まあ、短い距離を往復するだけじゃ分からないこともあるしね。時間移動まで試すなら、悪くないんじゃない?」
「そうです」
「お前ら、話が早すぎねえ?」
モモタロスだけが納得していなかった。
私は時計を見る。八月二十日。そこまで見て、ふと思う。
「どうせなら、時間移動も試しましょう」
「どこまで戻るの?」
「一誠たちが冥界へ着く頃まで」
モモタロスがこちらを見る。
「お前、それ結構戻るぞ」
「はい」
「いいのか?」
「何がですか?」
「今までの夏休みとか」
一瞬、意味が分からなかった。でも、すぐに理解する。
「なくなるわけではありませんよね?」
「まあね」
ウラタロスが答える。
「ミライちゃん自身は、その時間を全部経験してる。時間を遡ったからって、免許を取ったことも、仕事をしたことも消えるわけじゃない」
「なら問題ありません」
人間界には、まだその時刻の私がいることになる。でも、同じ場所へ戻るわけではない。私は冥界へ行く。そして人間界へ戻る時には、今日ここを出た後の時間へ戻ればいい。
「それなら、一誠たちから見れば、本当に少し遅れて合流するだけになります」
「いや、それを『少し遅れて』って言うのか?」
「結果としては」
「なんかズルくねえか?」
「時間を走る列車なので」
「便利な言葉にしてんじゃねえ!」
*
荷物をまとめて、店の戸締まりを確認した。数週間分の滞在になるかもしれないので、それなりの荷物にはなった。時計修理用の工具も最低限は持っていく。
必要な物を確認してから、私は店内を振り返った。カウンター。壁に並んだ時計。作業机。食卓。何度見ても、いつもの時計店だった。
でも次に戻ってきた時には、ここにモモタロスたちはいない。
「……行きましょうか」
それだけ言って、地下へ降りた。
デンライナーの車内には、もう灯りが点いている。完全に直った列車。その先に置かれている一台の二輪車へ目を向ける。
マシンデンバード。普段のデンライナーは自動で走るが、任意の時へ向かわせる時には、この車両から操作するらしい。
「……これに乗るんですね」
「そうだ。けど、待て」
跨がろうとしたところで、モモタロスに止められた。
「何ですか?」
「それだけじゃ動かせねえ。こいつがいる」
そう言って、モモタロスが取り出したのは一枚のパスだった。
「ライダーパス……」
「デンバードからデンライナーを動かす時には必要なんだよ。今日は貸してやる」
「いいんですか?」
「お前が運転するんだから仕方ねえだろ」
「ありがとうございます」
受け取ったライダーパスを手に取る。それから私はマシンデンバードへ跨がった。教習所で何度もやったように姿勢を整え、モモタロスから教えられた場所へライダーパスを差し込む。
直後、電子音が響いた。それに応えるように、デンバードの計器類が起動し、続いてデンライナー各部から駆動音が返ってくる。
「……繋がりました」
「よし。これで動かせる」
私はハンドルを握り直した。
「大丈夫か?」
「はい」
モモタロスへ頷く。
「今回は、ちゃんと免許を持っています」
「これに二輪免許が必要なのかは知らねえけどな!」
言われてみればそうだった。
「無免許ではないことが重要です」
「そこ気にするなら最初から無免許運転すんな!」
聖剣騒動の時に聞いたような言葉だった。私は聞かなかったことにした。
「それじゃ、行こうか」
ウラタロスの声。ライドベンダーの時とは違う。触れただけで、すべてが頭へ流れ込んできたわけではない。デンライナーを操作するための特殊な部分はモモタロスたちから教えてもらった。
でも、二輪へ跨がり、身体を支え、ハンドルを握る感覚は、もう知らないものではなかった。
私は前を見る。行きたい方を見る。スロットルを捻った。
デンバードそのものが走り出すわけではない。代わりに、列車全体から低い駆動音が響いた。
「……動きました」
「当たり前だろ! 直したのお前だぞ!」
車体へ僅かな振動が伝わってくる。私は計器へ視線を落とし、すぐに前へ戻した。異常なし。
ゆっくりと、デンライナーが動き始める。長い間この地下で眠っていた列車が、本来の役目へ戻っていく。
*
走り始めてからも、私は何度も計器を確認した。走行系。問題なし。連結部。問題なし。各車両からの応答も正常。
「ミライちゃん、そんなに固くならなくても大丈夫だよ」
ウラタロスが言う。
「試運転ですので」
「ちゃんと走ってるでしょ?」
「今のところは」
「真面目だねえ」
それはよく言われる。
やがて通常走行の確認を終え、次の段階へ入る。目的時刻を設定する。一誠たちが冥界へ向かった日。さらに、グレモリー領へ到着する頃。
「行ける?」
リュウタロスが訊く。
「やってみます」
デンバードを操作する。列車の前方、何もなかった空間へ一本のレールが伸び始めた。さらにその先へ。列車が進む分だけ新しい線路が現れ、後ろでは役目を終えた線路が消えていく。
時の中にだけ存在する道。デンレール。
警笛が鳴った。特徴的な響きが、周囲へ長く伸びていく。その音を聞いた瞬間、モモタロスたちの顔つきが少し変わったように見えた。懐かしいのだろう。彼らにとっては、これが本来の日常なのだから。
「行くぞ、ミライ!」
「はい」
スロットルを開く。デンライナーが加速した。レールを刻む音が速くなり、外の景色が崩れて光の帯へ変わっていく。
時計の針とは違う。時計は時を刻むものだ。この列車は、その時そのものを走っている。
八月二十日から、私がすでに過ごした日々を遡って、一誠たちが冥界へ到着する頃へ。
教習所でエンストしたことも、古い時計を直したことも、免許を取ったことも、夏祭りを覗いたことも、この人たちと食事をしたことも。何一つ消えない。全部持ったまま。私は過去へ向かった。
*
時刻を合わせた後、次に越えるのは人間界と冥界を隔てる壁だった。
「これが次元の壁……」
前方の景色が大きく歪む。普通の線路なら、そこで終わっていたと思う。けれどデンレールは止まらない。何もない空間へ線路が伸び、デンライナーがその上を走る。
車体へ伝わる振動が僅かに変わった。私は反射的に計器を見る。
「異常ありません」
「試運転中なの忘れてなかったんだ」
「忘れるわけがありません」
ウラタロスに返しながら、再び前を見る。光が薄れる。そして。
「……紫色」
最初に目へ入ったのは、空だった。人間界とは違う色。その下に、見たことのない大地が広がっている。
「ここが……冥界」
思っていたより普通の景色もある。でも、やっぱり違う。空を見るだけで、別の世界へ来たのだと分かった。
その冥界の空へ、デンレールが伸びていく。本来なら列車が走る場所ではない高さを、デンライナーは進んでいた。列車が通る先にだけ線路が生まれ、通り過ぎた後からは消えていく。紫色の空を、一本の鉄路が渡っていた。
「見えてきたよ」
ウラタロスの声。前方を見る。大きな建物。城と呼んだ方が近い。その手前に駅があった。
「あそこですか」
「たぶんな」
モモタロスが答える。
駅には人影が多い。兵士のような人たち。整列したメイド。楽隊までいる。そして、その中に見覚えのある赤い髪が見えた。
「……リアス先輩」
その近くには、一誠たちもいる。私にとっては、かなり久しぶりだった。向こうにとっては、おそらくほとんど時間が経っていない。
「そろそろだな」
「はい」
進路はもう定まっている。私はデンバードを自動運行へ戻し、差し込んでいたライダーパスを抜いた。
「モモタロス」
「ん?」
「これ、ありがとうございました」
借りていたライダーパスを差し出す。モモタロスはそれを受け取りながら、鼻を鳴らした。
「忘れて持ってくんじゃねえぞ。大事なもんなんだからな」
「忘れていません」
「ほんとか?」
「今返したでしょう」
「まあ、そうだけどよ」
私はデンバードから降り、荷物を持った。駅はどんどん近づいてくる。デンライナーは速度を落とさない。停まる予定もない。ここで降りる。
「皆さん」
四人を見る。時計店ですでに言いたいことは言った。だから、今さら長い言葉は必要なかった。
「今まで、本当にありがとうございました」
「だから今までじゃねえって言ってんだろ」
モモタロスが鼻を鳴らす。
「また会うんだからよ」
「……そうでした」
ウラタロスが手を振る。
「じゃあね、ミライちゃん。また今度」
「元気でな」
キンタロスが頷く。
「はい」
「また遊ぼうね、ミライ!」
「次は時計に触らないと約束してください」
「えー?」
「返事は?」
「はーい」
最後にモモタロスを見る。時計店で言われた言葉が、まだ頭に残っている。助けが欲しかったら、いつでも呼べ。すぐに駆けつけてやる。
「忘れんなよ」
モモタロスが言った。
「はい」
「絶対だからな」
「……はい」
駅がすぐそこまで迫っていた。警笛が鳴る。冥界の紫色の空へ、特徴的な音が大きく響き渡った。
「それでは」
私は四人を見る。
「また」
「おう!」
モモタロスが笑った。
「またな、ミライ!」
*
次の瞬間。私は荷物を持って、ホームに立っていた。
目の前を、デンライナーの車体が走り抜けていく。大きな走行音と風。ゴウカが通り過ぎる。続いて、イスルギ。レッコウ。イカヅチ。
列車は一度も速度を落とさない。そのまま駅の線路を走り抜け、再び空へ向かって伸びるデンレールへ乗っていく。
最後尾が駅を抜ける。その先へ、何もない空中に新しい線路が現れる。デンライナーが紫色の空へ駆け上がっていく。通り過ぎた後から、レールが消えていった。
私はその姿を見送った。小さくなる。さらに遠くなる。そして、もう一度だけ警笛が聞こえた。遠く。それでも、はっきりと。
「……また」
小さく呟いた。やがて列車の姿が見えなくなる。
そこまで見届けてから、私は向かい側のホームへ顔を向けた。
リアス先輩。朱乃さん。祐斗。小猫さん。アーシアさん。ゼノヴィア。ギャスパーくん。そして一誠。
全員がこちらを見ていた。特に一誠は、私とデンライナーが消えていった空を何度も見比べながら、口を大きく開けている。
「…………」
「一誠?」
「いやいやいやいや、待て待て待て!」
ようやく再起動した一誠が、勢いよく私を指差した。
「お前も列車持ってんのかよ!?」
「持っていませんよ」
「今ので来ただろうが!」
「あれは私のものではありません」
「じゃあ誰のだよ!?」
「時計店に居候していた皆さんのです」
「居候が列車持ってんのかよ!?」
一誠の声が駅いっぱいに響いた。
「なんなんだよ、お前の時計店! この前まで変な連中が住み着いてるだけでも十分おかしかったのに、今度は列車まで出てきたぞ!」
「前からありましたよ」
「知らねえよ!」
一誠は頭を抱える。それでも何か思い出したように、今度はデンライナーの消えていった空を指差した。
「というか、さっき俺たちが乗ってきた列車はそのまま空飛んでたのに、なんであっちはわざわざ空中に線路まで出てくるんだよ!? しかも通った後から消えてたぞ!」
「デンレールです」
「名前を聞いてんじゃねえ!」
「そういうものなので」
「便利な説明で済ませるな!」
今度は私自身へ視線が戻ってくる。
「あとお前! あの列車、駅に停まってねえよな!?」
「停まりませんでしたね」
「なのになんで普通にそこに立ってんだよ!?」
「降りましたので」
「いつだよ!?」
「今です」
「見えなかったんだけど!?」
「そういう降り方なので」
「どういう降り方だよ!」
随分元気だった。アーシアさんはまだ驚いた様子で、私とデンライナーが消えた方向を交互に見ている。
「あの……ミライさん」
「はい」
「今の方々に、送っていただいたんですか?」
「はい。デンライナーの修理が終わったので、試運転も兼ねてここまで送ってもらいました」
「試運転!?」
当然のように一誠が食いついた。
「試運転で冥界まで来たのかよ!?」
「短い距離だけでは確認できないこともありますので」
「いや、規模がおかしいだろ!」
久しぶりに聞いた一誠の大声だった。私にとっては。向こうにとっては、たぶん何も久しぶりではない。
私は荷物を持ち直した。紫色の空。巨大な屋敷。初めて見る冥界の景色。そして、私にとっては随分久しぶりの皆さん。
「細かい話は、また今度で」
「今聞きたいんだけど!?」
「長くなりますよ?」
「もう十分わけ分かんねえよ!」
私は少しだけ頭を下げた。
「ともかく、お待たせしました」
「だから待ってねえよ! 俺たち今着いたところだって!」
推しのゲヘナ生を教えてください 推しが選択肢にいない場合は、感想欄で教えてください!
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空崎ヒナ
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天雨アコ
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銀鏡イオリ
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火宮チナツ
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陸八魔アル
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浅黄ムツキ
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鬼方カヨコ
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元宮チアキ
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