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「グランさん……!もう一度、お願いします!!」
「いや、少し休憩にしよう。続きはその後だ」
「はい……わかり、ました」
緊張の糸が切れたのか、ベルは地面に座り込んだ。大粒の汗を流し、全身で呼吸を行っている。
「二人とも、お疲れ様」
「ありがとう、ネルティ」
「ありがとうございます、ネルティさん」
ネルティから
「ベル、段々と剣筋が良くなってきているな。最初に比べると、見違える程に変わってきているな」
「ええ。動きも良くなってきてるし、確実に強くなっているわ」
「本当ですか⁉︎ありがとうございます!」
グランとネルティの評価に、ベルは下を向いていた顔を上げ、喜びの笑みを浮かべていた。それ程までに、グラン達の言葉が嬉しかったのだ。グラン達もまた、ベルの成長を喜んでいた。
「僕、強くなりたいです!」
そんなベルの願いを聞いたのは、もう数年前のことだ。グランがベルのもとで生活をしていた当初は、様々なことを学ばせる為、多くのことをベルに経験させていた。
そんな生活を送る中で遂に訪れてしまったのが、グラン達が迷宮都市──『オラリオ』に帰ることだ。ロイマンとの契約で、一週間程度の短い期間ではあるが、グランは都市外に出る権利を手に入れていた。
そんなグラン達がベルのもとを去る前日の夜、ベルは自らの願いをグランに伝えた。その言葉を最後まで聞き遂げたグランは、ベルの正面に立ち、その小さな手を握った。
「ベル。今から私の言うことを、しっかり守れるか?」
「やります!……いや、できます!!」
ベルもまた、その小さな手でグランの手を強く握る。
「私はまた、必ずここに戻ってくる。その日まで体を鍛え、知識を身につけ、経験を積むんだ」
「その三つ……だけですか?」
「ああ。君が強くなる為には、この三つが大切なんだ。少しづつでいい、着実に自分の糧にしていくんだ」
「はい!」
それが、グランとベルの最初の別れ。泣きそうになりながらも、涙を堪えグラン達を見送るベルの姿を、グランは
「あの、アルフィアに……甥っ子がいたの⁉︎」
「ああ。信じられないと思うが、事実だ。この一週間、ベルの住んでいる村で、生活をしていたんだ」
オラリオに帰還したグランは、これまでの生活のことを、ネルティに全て話していた。一通り話を聞いたネルティは、エルフだとは思えない程表情がころころと変わっていた。
「甥っ子って、ことは……アルフィアには他に兄弟か姉妹がいたの?」
「双子の妹だと聞いている。村に住んでいるのは、妹さんの実子だ。そして……ベルの面倒を見ているのは……あのゼウス様だ」
「か、神ゼウスがどうして⁉︎アルフィアの血縁なら、神ヘラの方じゃないの⁉︎」
「妹さんが亡くなる前に、ゼウス様に託したらしい。このようなことを言うのはアレだが……正直ゼウス様で良かったと思っている」
「……確かに、神ヘラよりはまだ、神ゼウスの方が良いわね」
二大派閥が存在していた頃の時代を知る者なら、あの女帝の派閥がどれだけ恐ろしいか、身をもって知っていることだろう。特に主神となれば、眷属だけでなく、他の神々すら恐れおののく程だ。そんな女神の愛を、一心に受けていたゼウスは、その部分だけを見れば尊敬できる。
「それでだ、ネルティ。君も、ベルに会ってみないか?」
「私も?それは全然いいけど……そんなに早く、都市外には出られなくない?」
「ああ。早くても、数年後。だが、確実に年甲斐に出る方法がある」
グランはそう言い放ち、ネルティにロイマンとの契約書を見せた。それを一瞥したネルティは、形の良い瞳を大きく開いた。
「よくこれを、あの『ギルドの豚』が許したわね」
「まあ……これだ」
と、グランは手でお金の方を作った。それを見たネルティは、納得したように、なるほどね。と呟いていた。『ギルドの豚』と称されるだけあって、金銭的利益が絡むと、楽に交渉が行える。
「それで……ベル君だったっけ?その子は今何をしているの?」
「私が与えた鍛錬をこなしている。武器の扱いを教えるのは、次に会った時にと約束しているんだ」
「その方が良いわね。まだ未熟な体で無理に武器を扱えば、体が壊れる可能性が高いし、自身の喪失にも繋がるかもしれないからね」
「ああ。ゼウス様にも頼んでいる。次に会う時が、楽しみだ」
笑みを浮かべるグランの顔を、ネルティは楽しそうに見つめていた。
次にグランがベル達のもとに訪れたのは、それから四年後のこと。11歳となったベルは、当然のことだが大きく成長していた。小さかった背も、幼い体付きも、口調も。全てが大人びていた。そんな立派に成長したベルの姿に、グランは少し泣きそうになっていた。
そんなベルだが、初めてネルティ──
最初は、アルフィアの血縁ということで警戒していたネルティだが。そんなベルの姿を見て、すっかり仲を深めていった。途中、ベルを見るネルティの目が少し怖かったが。
「グランさん、これで……!」
「ああ。今日から、武器の扱い方を教える」
「はい!」
ようやく臨んだことが現実となったからか、ベルは喜びを全身で表していた。その様子に、まだまだ子供だの、とゼウスが呟いた。彼の横で、ハトホルは子供だもんねー、と言い。ネルティもそうですよ、と頷いていた。
今回、グラン達が滞在できる日程は、約半月。その間、グランとネルティは様々な武器を、ベルに使わせていた。無論、まだ子供ということもあり、扱えない武器もあるが。その中でベルの動きにあっていたのが、剣とナイフの二つだった。
「近接戦闘……その中でも、ベルは
「そうね。足も速いし、思い切りもいい。私的にはナイフの方が良いと思うけど……グランはどう?」
「私も賛成だ。ベル、君はどちらが良い?」
「僕も、ナイフの方が良いと思います。振りやすいし、僕の動きにも合いますから」
「なら、決まりだな。早速、練習としよう」
「はい!」
グランとネルティの感想としては、ベルには
(最初の頃が懐かしいな)
隣に座るベルの姿を見て、数年前からの過去を、グランは思い出していた。それ程までに濃く、大切な日々であったからだ。
「どうしたの?グラン。上の空になっちゃって」
「いや、何でもない。そろそろ、続きをしようか。ベル、立てるか?」
「はい、大丈夫です。いけます」
再び、剣戟の音が木々の間を木霊する。訓練が終わりを迎える頃、疲れ果てたベルをグランが背負い、ネルティが武器を背負って家に帰っていく。家で待っているゼウスとハトホル、そしてグラン達三人で食事をする。それが、この家での日々となっていた。
だが、この先の夜で起こる
「どくのだ、グラン!儂は、夢を叶えにいくのだからな!!」
「ただの覗きでしょう!もう何度目ですか⁉︎」
「何度でもじゃ……それが、男の浪漫だからの」
「ドヤ顔で、そのようなことを言わないでください!」
毎度恒例、ハトホルとネルティ、そしてベルのいるを覗こうとするゼウスVSそれを阻止しようとするグラン。最初の時は、完全に油断していたグランだったが、二度目以降は何とか阻止に成功している。
相手は彼の『神聖浴場』の覗きを、歴史上ただ一柱成功した神物。忘れたなどない。大神ゼウスという存在は、こういうものなのだと。
「お主も男だろう!何故儂の邪魔をする⁉︎」
「ベルの教育によくないからです。そもそも、久しぶりにあったベルが……
「男の道を、伝授したまで」
「だからそのドヤ顔をおやめください」
なんてやり取りが、夜の村に響いていたとか何とか。
そんな楽しくも騒がしい日々は、終わりを迎えていた。食事の席で、グランは自分たちが帰還することを、ベルに伝えた。そして、もうここには来れないことも、ベルに話していた。最初は、悲しそうにするベルであったが、次の瞬間には頭を下げていた。
「グランさん、ネルティさん、そしてハトホル様。今まで、本当にありがとうございました」
「気にしなくて良い。これは、私達から提案したことなんだ」
「そうよ、ベル。貴方はとても頑張ってた。まずは自分を褒めなきゃ」
「ええ。二人の言う通り。私達も、貴方と会えて良かった」
グラン達の送る言葉に、ベルは静かに涙を流していた。隣で見守っていたゼウスは、豪快ながらも優しくベルの頭を撫でた。抑えきれない涙を、ベルは服の袖で拭き取り、声を押し殺していた。グラン達もゼウスと同じように、ベルの頭を撫でていた。
「ベル。ここではお別れだが、私は先にオラリオで待っている」
「はい。後数年したら、僕も必ず行きます!」
村を発つ日の朝、見送りに来ていたベルとゼウス。大事そうにグランから貰ったナイフを手にするベルに、グランは声をかける。励ますように、導くように。
「それまでは、私達が教えたこと、忘れないでくれ」
「必ず、ベルの役に立つはずよ」
「頑張ってね。応援してるから」
「本当に、ありがとうございました!!」
深く頭を下げ、ベルは最後に感謝を告げた。隣に立つゼウスも、神としてではなく、一人の祖父として頭を下げた。
「三人とも、本当に感謝している。世話になった」
そんなゼウスにグランは近づき、耳打ちをする。まるで、
「そう思うのでしたら、
「わかっておる。儂は旅に出ると、ベルにはそう伝える」
そんなグラン達の様子を、ベル達は首を傾げて見ていた。
「何の話をしていたの?」
元の位置に戻ったグランに、ネルティが尋ねるが。グランは、何でもない、と言った。とても、ネルティ達には聞かせられない話だからだ。そんな話を断ち切るように、グランはわざとらしく咳をして、流れを変えた。
「短い間だったが、本当に楽しかった。ベル。君と冒険ができる日を、私は待っている」
「私もよ。待っているわ、ベル」
「楽しみに待ってるね」
「はい!」
元気よく、別れの悲しみなど吹き飛ばすほど腕を振るベルに、グラン達も大きく手を張った。それは別れではなく、再会の証なのだから。
「はい、更新お疲れー」
「ありがとうございます、ハトホル様」
背中から聞こえるハトホルの声に、グランは感謝を告げ机に視線を移す。紙に書かれた【ステイタス】の写しを確認し、予想はしていたがそれを実感すると、何とも言えなくなってしまう。
「やっぱり、伸びないねー。ちょっとでも伸びるだけでも、ありがたいことなのかなー?」
「ここまで数値を上げれば、伸びにくいのも仕方ありません。前回もそうでしたし、
グランバルト。
Lv.7。
力:S999
耐久:B719→B720
器用:A846
敏捷:S999
魔力:C658
《アビリティ》
耐異常:E 閃走:E 速攻:F 治力:G 覇光:G
《スキル》
【
・戦闘時、『力』と『敏捷』に高補正。
【
・
・『治力』及び『耐異常』に高補正。
・環境不調時、その環境に適応。
《魔法》
【セケム・セプター】
・時限式段階強化魔法。
「【ステイタス】が伸びなかったのは、残念だけどー。来るんでしょ、遂にあの子が」
「はい。今頃は、もう都市に着いているかもしれません」
「そういえば結局ー。私の【ファミリア】に入るんだっけー?」
「【ファミリア】探しはベル自身の手で、と決めています。もし何派閥が巡ってダメそうでしたら、私達の【ファミリア】に勧誘いたします」
「なるほどねー。最初の冒険ってわけかー」
グランの考えを悟ったハトホルは、そう結論づけた。
「この先は、ベルの進む道です。あの子が自分で選び、歩むことを私は望んでいます。【ファミリア】決めは、その一歩目です」
「確かに、その方があの子に為になりそうだね。例え【ファミリア】が見つからなくても、私達がいるからねー。そういうところは、ちゃっかり甘いんだからー」
「揶揄わないでください。この件にはネルティも賛成していますし、ベル本人もです」
村に訪れられない間、グランはある
「団長、ハトハル様。応接室にて、
扉を叩く音とともに、団員の声が伝わってくる。その声にグランとハトホルは目を合わせ、頷いた。
「噂をすれば、何とやら。だねー」
「ええ」
(遂に、この日が来たのか……)
グランは窓の外を眺め、
(アルフィア。貴方の託した想いは、必ず私が)
原作よりつよつよベル君、誕生。ベル君に剣技を褒められた主人公君は、夢の中でザルアルにボコられたり。