死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件   作:雨天

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第一話 両面宿儺討伐戦

 

 

 

 俺の名前は空。転生者である。

 元は広く浅くをモットーにアニメ・漫画を漁るオタクな男子高校生だった。それがある日目を覚ましたら赤子になっていて、周りの大人達は古文かよってくらい綺麗な言葉で話していた。

 理由は知らないがどっかの世界の転生したのだろうと呑気に喜んでいた俺はすぐに己の浅薄さを呪うことになる。

 

 転生先のお国は日本、時代は平安、オマケに呪術廻戦の世界である。

 厄ネタ満載の地獄に生まれてしまったのだった。

 

 平安とか、両面で宿儺さんなラスボスが餌を探す熊よろしくそこら辺を彷徨いてる恐怖の時代だし、何ならラスボス候補だった額に縫い目のあるメロンパンさんがガッツリ暗躍してる。

 どうせならモジュロの時代が良かったと嘆く俺氏である。しかし世界は無情、残酷にも現実を叩き付けてくる。

 

 家柄が術師の家系であるから必然的に呪霊とも戦わされる。マヂ無理リスカしょ、と手首に無数の傷を付ける日々を送っている。

 どれだけ傷付いても、心が休まることはなく、常に莫大な不安と恐怖が渦巻いている。

 それでも生を投げ出して次の転生にワンチャン賭けないのは、家族が大事だから。

 

 厳しいが俺に呪術のいろはを教えてくれた父、心が疲弊した時に優しく抱き締めてくれた母、そして何よりも大切な最愛の弟。

 そんな家族達のことを想えば、命を投げ出すことはできない。

 だから、呪霊と戦いながら宿儺とは関わらないように細心の注意を払って生きて来た。

 

 そんな俺の元に一つの仕事が舞い降りた。

 

「両面宿儺討伐……」

「あの安倍家の精鋭と菅原家余党で編成された涅漆鎮撫隊に参加できるのは名誉なことだ。それにあの日月星進隊と五虚将も揃っている。両面宿儺と言えどこれだけの戦力にお前を足せば倒せる筈だ」

「………」

 

 父は本気で俺を含めた部隊で宿儺を倒せると考えている。

 だか俺は知ってしまっている。呪術廻戦で宿儺に勝てたのは受肉体というデバフがあってこそだと。

 受肉体に対する特攻、魂の境界を直接殴る攻撃と魂の境界に術式を当てることで漸く宿儺を倒せたのだ。否、それも正確な表現ではない。

 現代の異能、完全体のフィジカルギフテッド、呪胎九相図、五条悟に並ぶ才能を持った術師、一級術師最強の男、ラルゥやミゲルなどなど、投じられる戦力全てを投じて漸くその命に手が届いたのだ。

 俺如きが平安の宿儺戦に参加したところで死傷者を減らすくらいしかできないだろう。

 それでも、

 

「俺はお前を信じている」

 

 そんな風に信頼を置かれては参加せざるを得ない。

 精々足掻いてみるとしよう。

 

 

 

 

 やはり、宿儺に対する戦力は足りなかった。

 戦場に立てば嫌でもそれを実感する。宿儺の圧倒的な呪力の気配、戦場を荒らす雷や嵐。そして死屍累々の仲間達。

 何とか俺が防御に徹することで仲間達に死人が出ないように抑えてはいる。

 それでも全員が重度の怪我を負っている。宿儺の術式に加え、所持している二つの特級呪具が余りにも強過ぎた。

 嵐を生み出す飛天、雷を生み出す神武解、それに俺の全力の防御すら容易く切り裂く御厨子。

 一つでも厄介なそれらが揃い踏みである。敵う訳がない。

 

 負傷を反転術式で治す宿儺が未だ立ち続ける俺を見る。

 

「仲間は倒れ、防御に徹するお前のみが残った訳だが……戦うのか、戦わないのか、どっちだ?」

「……俺はお前に勝てない。それは分かってる」

 

 俺は背後を振り返る。そこには戦う前に勇気を振り絞る為に軽口を叩き合った仲間がいた。

 宿儺が問いを投げる。

 

「ならばどうする?逃げるか?」

「俺はヒーローじゃない。大勢を救うなんてことはできやしないし、大団円を迎えることも叶わないかもしれない。それでも、今、俺はお前に挑む覚悟をした」

「何故だ?何がお前に覚悟を決めさせた?」

「仲間達の想いだよ。お前を倒すという仲間達の意志を継ぐ」

「ならば、来い」

 

 俺は全身に呪力を漲らせて宿儺の元へと全力で駆けた。

 直後、嵐と雷が俺に降り注ぐ。それを予期していた俺は術式『障壁』で防ぎ、前へ進んだ。

 宿儺の眼前に迫り、一撃を叩き込む。長い戦いで疲労していた宿儺は防御が間に合わず、直撃を受けた。

 黒い火花が咲き乱れ、宿儺に少ないないダメージを与える。

 

 それでも、宿儺の命までは遥か遠く。まるで呪力に衰えを見せない。

 圧倒的な彼我の差。それを自覚してなお戦意は衰えない。

 

 嵐が吹き荒れ、雷が舞い踊る。その最中で俺は反転を回して自分を治し続けながら宿儺が掌印を結べないように全力の拳を叩き込む。

 術式『身体強化』を重ね掛けして肉体を飛躍的に強化する。それでも宿儺の御厨子は俺の体を切り裂く。

 嵐に雷に斬撃を喰らいながら、宿儺と殴り合う。体力勝負は呪力量で劣る俺が不利だ。

 だから致命的な一撃を叩き込む。その隙を見計らう。

 

 宿儺が戦いに愉悦を見出し凶悪に嗤う。

 

「良いぞ!もっと魅せてみろ!」

 

 俺は無言で黒閃を叩き込んだ。生まれ持った天性の勘が黒閃の出し方を教えてくれる。

 しかし宿儺も負けじと黒閃を放ってくる。

 

 戦場が破砕し、大地すらあやふやになる。飛んでいるのか落ちているのか、ハッキリしないまま拳を繰り出し続ける。

 宿儺に対し、下手な術式は意味を為さない。だから俺の持つ最高の術式達で最大の火力を宿儺にぶつける。

 

 宿儺が黒閃を腹に受けて、一瞬意識を飛ばす。

 その隙を逃さず、俺は奥義を放つ。

 

「極の番《吐暴》」

 

 蒼炎と稲妻、嵐と土塊、光と闇が一斉に放たれ宿儺を貫いた。

 大地に巨大な穴が空き、その下に宿儺と共に落下する。

 俺は体勢を立て直して綺麗に着地する。対する宿儺は地面に激突する。

 

 俺は傷だらけの自分の体を見回して苦笑する。

 

「覚悟を決めても案外死なないもんだな」

 

 死ぬ気で戦った。もう充分やったさ。

 だからこれ以上を望むのは我儘というものだろう。

 

 宿儺が起き上がり、笑みを浮かべる。

 

「今のが貴様の最大火力か」

「奥義だからな。一度に複数使用、それも三つ以上はキツいんだぜ」

「貴様が複数の術式を持っているのは分かっていた。障壁では説明の付かない防御があったからな。何故最初から攻撃に使わなかった?」

「お前相手に下手な術式じゃ意味がねえし、術式発動する前に掌印結ばれて領域展開されて終わりだからな。だから術式を発動する隙を作った。ま、その結果距離が開いて領域喰らうのが目に見えてる状態になっちまったが」

「終わりか?」

「言ったろ。俺は覚悟を決めた。死ぬ気で戦う覚悟だ。領域を使われても死ぬまでは戦い続けるさ」

「そうか、なら耐えろよ─領域展開《伏魔御廚子》」

 

 宿儺の背後に大量の生物の骨とお堂が具現化する。

 それを認識した瞬間、全身を斬撃が覆った。目すら切り裂かれて前が見えなくなる。

 俺は反転で目を治して何とか前を見る。ボロボロの宿儺が不敵に笑っている。反転は使っているが俺と同じで出力は衰えている。

 

 俺は一歩足を踏み出した。爪先が切り裂かれ血が流れる。痛みが全身を駆け抜けても、一歩一歩着実に歩く。

 そして宿儺の目の前に立ち、腕を大きく振りかぶってパンチを顔面に叩き込んだ。

 宿儺は仰け反ったが倒れはしない。俺は全身を切り裂かれながら何とか拳を宿儺に届かせる。

 

 不意に宿儺が呪具を両方手放した。

 上腕の両手を合わせ、開く。

 

「《(カミノ)(フーガ)》」

 

 そこには網膜すら焼き尽くすような炎が出現していた。

 一瞬で領域内が炎に包まれた。

 

 

 

 

「カハッ…」

 

 俺は余りの喉の渇きに術式で水を生み出して飲み干した。

 炎に包まれる中で何とか意識を保っていた。強い体に産んでくれた母に感謝だな。

 

「これすら耐えるか」

 

 炎が治まり、焦土と化した大地の上で宿儺は嗤う。

 俺は領域展開直後で術式が使えず、呪具も手放した状態の宿儺に対し、術式を発動する。

 それは極の番以外の俺の切り札。

 

 宿儺の腹に拳を叩き込む。世界が罅割れ、空間が軋む。

 大地が大きく揺れ動き、宿儺は体勢を崩して膝をつく。宿儺は吐血して口元を手で押さえた。

 

「今のは……振動か?」

「大正解。百億万点やるよ。だが、もう正直これで全部だ。出し切ったぁー…」

 

 切り札を放った俺の右腕は拉げており、使いものにならない。

 俺はその場に背中から倒れて空を仰ぎ見た。

 

「綺麗な空だ…」

 

 蒼呟く俺の前に宿儺が立ち塞がった。

 

「天晴れだ。貴様の名を聞こう」

「空、家名はない。やるならさっさとやってくれ」

 

 宿儺は上腕の右腕を俺に向ける。

 そこで宿儺は突然力を失ったように背中から倒れた。

 

「ふっ。俺も限界だ。気付いているか?とっくに呪力は尽きている」

「え゛……結構削ってたんだ」

「貴様の極の番をまともに喰らったのが要因だ。あの時に反転を使い過ぎた。その上で領域まで使ったからな」

「やりぃ。あ、でもどっちも止めを刺す奴がいない!!」

「裏梅は五虚将の一人に足止めをされているからな。引き分け、という奴だ」

「クソッ!動け俺の体!無理する場面だぞ!」

「愉快な奴だ」

 

 ジタバタ暴れる俺を見て宿儺が笑みを溢す。

 随分と優しい笑みだ。ラスボスとは思えない。

 宿儺はポツリと言葉を落とす。

 

「腹から溢れ出る呪詛を振り撒き続けるのが俺の身の丈だと思っていた。それがどうだ。俺をここまで追い詰めた者は、仲間の為に戦っていた」

「忌み子として生まれりゃそうもなるさ。別に、生き方なんて今からでも変えられるだろ」

「貴様は俺が憎くないのか?」

「憎む要素がねえよ。俺は暴れるお前を討伐する為に戦ってただけで、お前が生き方を変えるなら、別に戦う必要なんてないだろ」

「そうか……そうだったんだな」

 

 宿儺は満足気に呟いた。

 

「俺とここまで戦えた奴は初めてだ」

「そりゃそこまで強けりゃなぁ。対等な相手なんていないだろ」

「貴様こそ俺が友と呼ぶに相応しい」

「それ宿敵って書いて友と読む奴だろ!?嫌だぞ俺は!!こんな戦い二度としたくない!!」

「良いじゃないか、親友」

「なんかランクアップしてる!?友達いないからっていきなり親友認定は重すぎませんか!?」

「何だ、嫌か?」

「むぅ、断り難い言い方しやがって……喧嘩くらいなら偶にしてやる」

「ケヒヒ。喧嘩か、したことがないな」

「裏梅とはしないの?しないか」

 

 俺は裏梅の宿儺への心酔ぶりを思い返す。あれは狂信者の類である。

 

 それにしても、親友か。

 俺も友達少ない勢だから初めてだな。

 

「悪くない気分なのが悔しいぜ」

 

 俺は笑みを浮かべてそう口にしたのだった。

 

 

 

 

 





・オリ主
術式は『暴食』。喰らった相手の呪力と術式を奪う。
複数の術式所持は本来能が焼き切れるが、オリ主は転生特典で無限に保有できる。
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