死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件   作:雨天

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第三話 星槳体と六眼

 

 

 

 宿儺が死んでから千年の時が流れた。

 俺と亨子は術式で今も生き長らえている。その間に呪術界は大きく変わった。

 術師を管理・統制する呪術総監部と術師の教育とサポートを行う呪術高専が設立された。

 呪術は秘匿され、かつてとは違い世間に知れ渡るようなことはなくなった。

 世間との繋がりが絶たれたことで野良の術師をスカウトする機会も大きく減り、野良の術師の呪詛師堕ちが増えた。

 呪詛師になる者が増えたのは周りからの差別が要因として挙げられる。呪術を知らぬ者からすれば、見えないものが見える者は差別の対象なのだ。

 俺は五条家を利用してそういった差別を受ける野良の術師を積極的にスカウトしている。

 それでも全体の一割も救えていないだろう。それ程世間の認知というのは重要なのだ。

 

 更に五条悟が生まれたことで呪霊の数も年々増えている。世界が均衡を保とうとしているのだ。

 術師の数は減少傾向にあるのに対し増えていく呪霊への対処に呪術界は手が追い付いていない。

 そんな訳で俺が駆り出されることが多い昨今、俺はとあるイベントに備えていた。

 

 それは天元の同化である。

 五百年に一度行われるビッグイベントであり、羂索の思惑を破壊する為の重要な機会である。

 かつて一度天元に俺の術式による若返りを提案したのだが、断られている。理由は分からん。天元なりに何かしら考えがあるのだろう。

 なので俺は羂索の狙い通りにならないように、六眼と共に星槳体の護衛を行うことにした。

 五百年前に一度羂索と戦ったが、終始俺の有利に進み、羂索が星槳体と六眼を殺すことはできなかった。

 しかしあの羂索のことである。諦めてはいないだろう。

 今回の同化でも星槳体を狙う可能性は高い。だから今回も俺は護衛に参加する。

 

 正直、星槳体の意思を無視して同化を断行するのは気が引ける。

 人殺しと何ら変わりはないからな。殺人なんて気の重たいことはしたくない。

 だから、俺はできるだけ星槳体の意思を尊重するようにしている。もし同化を拒否しても俺の術式を使えば問題はない。

 羂索の思惑通りに進めてはならないとはいえ、ある程度は受け入れなければ宿儺達と再会できないという弱みもある。

 五条悟が封印されても俺と宿儺が共闘するので羂索は脅威じゃない。そこを鑑みると渋谷事変までは羂索の手の上で踊るのも悪くないと思える。

 

 天元が同化に使えない状況で羂索はどうやって一億人呪霊を生み出すのだろうか。そこが分からない。

 単純に呪霊を代わりに使ったとして上手くいくのか、それとも死滅回游のみで満足するのか現時点では不明である。

 

 俺は一人で悩みながら星槳体の宿泊しているホテルの部屋に向かっていた。

 ホテルの部屋の前まで行くと、突如として扉が弾けた。俺は障壁で身を覆って防ぐ。

 そういえば、呪詛師集団のQが星槳体の天内理子を襲いに来てるんだったか。

 原作知識が長い人生で擦り切れていて思い出すのに苦労した。

 

 さて、落下する天内を受け止めなくてはな。

 俺は術式を発動して黄色い雲を生み出す。雲は落下する天内を優しく受け止めた。俺はふわりと雲の上に着地して天内を見る。

 間近で見るとかなりの美少女である。人気があるのも頷ける。

 

 反転術式を施しながら、俺は下手人に顔を向けた。

 そこには白い軍服を身に纏った呪詛師がいた。

 

「君達みたいな目立ちたがりは分かり易くて助かるよ。探すのに苦労しない」

「誰だ貴様は?いや、誰にせよ、ガキを渡せ。殺すぞ」

「リサーチが足りてないね。俺のことくらい知っときなよ。術師にとっては義務教育だぞ」

 

 俺のこと知らないとか術師の癖して知識が足りない。

 宿儺と同等の存在として歴史に名を残しているのだから知っているのが普通だ。

 まあ、見た目の特徴が足りないのは認めるが。

 何処にでもいる黒髪だし、顔だって良い方じゃない。でも緋色の瞳は分かり易いと思う。だから単純にコイツの知識不足だ。断じて俺の知名度が足りていない訳じゃない。

 

 俺は若干気を落としながら戦闘に入るのだった。

 

 

 

 

「こんな可愛い子を殺そうとするなんて、ちょっと正気を疑うね。あ、呪詛師に正気なんてないか。ま、美少女と美人の命を狙った時点で死刑だけど、一応言い分はある?」

「頼む、命だけは助けてくれ!マジで反省してる!二度とこんなことしない!」

「そりゃあ二度目はないよ。此処で終わりだもん。上にはちゃんと始末したって報告しとくよ」

 

 俺はコークンと名乗った呪詛師に触れる。蒼炎がコークンの体を覆い、炭化させる。

 肉の焦げる匂いに眉を顰めながら、俺は死体から離れて天内と黒井さんの容態を確認する。

 怪我は反転で治療済み。一時的に気を失ってるだけで時間が経てば気がつくだろう程度だ。

 

 俺がソファに座って待機していると悟と夏油君が後から合流する。

 下にいたちょっと強めの呪詛師は倒して来たらしい。

 

 夏油君は焦げた死体を見て咎めるように口を開いた。

 

「殺したんですね」

「情報は引き出したし、生かす意味もないからね。有用だってんなら生かしたけど、大して強くもなければ魅力のある術式でもない。税金で生かす価値なし」

「命に価値を付けるのはどうかと思います」

「そりゃ、君の価値観だろ?俺は命には優劣があるタイプだ。誰もが君と同じ価値観を共有している訳じゃない。それに呪詛師の命すら大事に抱えてるといつか大切な命を手から溢すぜ。何が大切で何を切り捨てるべきか、ハッキリしといた方が良い」

 

 特に呪詛師の命なんて紙切れよりも価値がない。徒に命を奪う奴等の命に特別な価値なんてない。

 これは俺の価値観でしかないから押し付けはしないけど、夏油君のような性格だと術師を続けるのは疲れてしまいそうだ。

 平安みたいに命の価値が軽いと楽なんだがな。戦国も良かった。余計なことを考えずに人の命を摘み取れたから。

 

「このガキンチョが星槳体ね」

 

 悟が天内に顔を近付ける。寝込みを襲う変態に見えなくもない。

 あ、天内が目を覚ました。悟が鋭い鞭打を喰らっている。良く洗練された一撃である。

 

「下衆め!!妾を殺したくば、先ずは貴様から死んでみせよ!!」

「理子ちゃん落ち着いて。私達は君を襲った連中とは違うよ」

「嘘じゃ!!嘘吐きの顔じゃ!!前髪も変じゃ!!」

 

 天内が夏油の地雷を踏んで悟と共にギリギリと雑巾絞りされている。人間にして良い所業じゃない気がする。

 

「寝起きでいきなり知らん奴に囲まれて怖がってんだろ。許してやれよ」

 

 俺は悟と夏油を宥めて天内を救出する。

 可哀想なことに敵意剥き出しの猫みたいになっている。

 

「黒井さんも無事だよ。ほら、あそこで呪霊の上に乗ってる」

「黒井!!」

「お嬢様!ご無事ですか!?」

「爆発で受けた傷は治してるから問題ない筈だよ」

「思ってたよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってんだろうから、どう気を遣うか考えてたのに」

「ふん!!如何にも下賤な者の考えじゃ」

「あ゛?」

 

 天内の物言いに悟がキレる。中学生の戯言なんて聞き流せば良いのに。

 

「良いか、天元様は妾で、妾は天元様なのだ!!貴様のように同化と死を混同している輩がおるが、それは大きな間違いじゃ。同化により妾は天元様となるが、天元様もまた妾となる!!妾の心!!魂は同化後も生き続け─」

「待ち受け変えた?」

「井上和香」

「聞けえ!!」

 

 天内の言葉は二人には届かなかった。

 二人は呑気に待ち受けの話に興じている。

 

「あの喋り方だと友達もいないじゃろ」

「快く送り出せるのじゃ」

「学校じゃ普通に喋ってるもん!!」

「あっ」

「……学校!!黒井!!今何時じゃ!?」

「まだ昼前…ですがやはり学校は─」

「五月蝿い!!行くったら行くのじゃ!!」

「おい、まさか……」

 

 悟が嫌な予感がすると言いたげな顔で俺を見た。

 俺は想像通りだと頷いた。

 

「馬鹿だろ!!高専にいた方が遥かに安全!!学校なんざ諦めろ!!」

「嫌じゃ!!妾は学校に行く!誰にも邪魔させんぞ!!」

 

 悟が悩ましげな顔で俺に視線を寄越す。

 俺は少し思案してから答えた。

 

「良いんじゃない?どうせお別れになるんだから、できるだけ居させてあげよう」

「はぁー…ったく。ゆとりめ」

 

 悟は溜め息を吐きながらも受け入れたようだ。

 夏油君は初めから否定する気はない様子。

 

 こうして星槳体護衛任務が幕を開けたのだった。

 

 

 





・オリ主
千年の間に遥かに強くなった。
可愛ければ男でも良い派。
五条悟とは師弟関係。

・天元
星槳体と六眼いるし、オリ主の術式使わなくても平気やろ!という楽観的な考えをしている。
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