死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件 作:雨天
「はあっ!?さっさと高専戻った方が安全でしょ!!」
悟が電話相手に抗議している。現在地は天内の通う廉直女学院中等部のプールサイドである。
俺と悟に加えて夏油君と黒井さんも居合わせている。
悟は電話相手の担任教師夜蛾からの命令を聞いて悪態を吐く。
憤る悟を夏油君が宥める。
「ああは言っていたが、同化後彼女は天元様として高専最下層で結界の基となる。友人、家族、大切な人達とはもう会えなくなるんだ。好きにさせよう。それが私達の任務だ」
「理子様にご家族はおりません。幼い頃に事故で…それ以来私がお世話して参りました。ですからせめてご友人とは少しでも─」
「それじゃあ、アナタが家族だ」
「……はい」
夏油君と黒井さんが感動シーンを繰り広げている。
割って入るのは無粋だろう。
「傑、監視に出してる呪霊は?」
「あぁ。冥さんみたいに視覚共有ができれば良いんだけどね。それでも異常があればすぐに─」
夏油君はそこで言葉を途切れさせると真剣な眼差しで校舎の方を見た。
「悟、空さん。急いで理子ちゃんの所へ」
「あ?」
「2体祓われた」
「Qの残党かな?盤星教の差し金なら厄介だなぁ…」
言いながら俺は走り出した。
皆と作戦会議する意味も込めて速度は合わせている。
「天内は!?」
「この時間は音楽なので、音楽室か礼拝堂ですね」
「レーハイドゥ!?」
「音楽教師の都合で変わるんです。後、此処はミッションスクールです」
「空さんは礼拝堂、黒井さんが音楽室、私と悟は
「了解」
「承知致しました」
俺と黒井さんが礼拝堂と音楽室に繋がる廊下を駆け抜けていく。
黒井さんは申し訳なさそうな顔をした。
「そんな顔しないで。元から分かっていて来させたんですから。落ち度あるとすれば俺達の方だ」
「そんなことはありません!最初から高専に身を隠しておけば、学友が危険に晒されることもなかった筈です」
「我儘通すにはリスクがつきもの。それを承知で飲み込んだんなら、仕方のないことだと思うよ」
そう言って俺は黒井さんと分かれて礼拝堂に向かう。
最早速度を合わせる必要もない。俺は建物を破壊しない程度の速度で移動する。
呪力出力も千年の間にかなり伸びた。呪力強化術も洗練され、フィジカルなら誰にも負けないと自信を持てるようになった。
呪力総量もかつての宿儺を超えており、ただ呪力を垂れ流すだけで大抵の奴は屈服するようになった。
さて、そんなことを考えている間に礼拝堂に到着する。
俺は勢い良く扉を開け放った。
「天内!!」
「なっ…なな…」
「「「え〜〜〜〜!?」」」
「何、理子彼氏!?」
「違っ…いとこ!!いとこだよ!!」
「背も高いし、落ち着いた雰囲気でカッコいいー!!」
「コラ!!皆さん静粛に!!はしたないですよ!!」
「先生だって気になる癖に」
生徒達から反感を買いながらも気にせずに教師が俺の方へと歩いてくる。
「困りますよ。身内とはいえ勝手に入られては」
「一応入校許可は取ってありますよ。ほら」
俺は胸に下げてる許可証を見せる。
すると教師は渋々引き下がった。
そして最後にサラッと紙に何やら書き記して俺に手渡す。
「後これ、私のTEL番」
「おぉーぃ!!条例違反!!」
教師と生徒は愉快な喧騒を繰り広げる。
俺は騒ぎに紛れて天内を抱えて窓から外へ飛び出す。
お姫様抱っこで走っていると天内が俺の頭をポカポカ叩く。
「馬鹿者!!あれ程皆の前に顔を出すなと─」
「呪詛師が襲撃を仕掛けて来た。悟と夏油君が相手してるけど、学校には居られないわな。このまま高専に向かう。友達巻き込みたくないだろ」
そう口にすれば、天内は何も言うことなく大人しく従った。
天内には悪いが受け入れて貰うしかない。同化すると決めた時点で普通の生活は送れないのだ。
俺が天内を抱えて走っていると前方に人影が見えた。
「ん、俺の前に立つとか正気か?」
「そいつさえ渡してくれれば退くさ」
「天内がいつの間にか人気者に!?変な虫が付かないように護らなきゃ!」
俺がふざけているとケータイが着信音を鳴らした。
俺は天内を降ろして電話に出る。
相手は夏油君であった。
内容は天内の首に三千万の懸賞金が懸けられているとのことだった。
『呪詛師御用達の闇サイトで期限付き。明後日の午前11時までだそうです』
「成程ね。事情は分かった。そのまま高専に向かってくれ、俺は呪詛師の相手をする」
『そっちにもいるんですか!?応援に向かいます!』
「いや、一人で大丈──切られた。まあ、良いか」
適当に目の前の奴をボコって帰るだけだ。然程時間も掛からないだろう。
「呪術師は年中人手不足なんだ。転職するなら歓迎するよ?」
「2、3、4人…皆同じ背格好じゃ。式神か?」
「いやぁ、職安も楽じゃねえだろ。そのガキ譲ってくれればそれで良い」
「増えた!!5人じゃ!!」
警戒する天内に対し、俺は終始冷静に立ち回る。
二人の男を引き合わせて頭から衝突させる。
「式神が消えん!!どれが本体じゃ!?」
「式神じゃなくて分身だよ。全部本体のね」
更に男二人が俺の方まで駆けて来て、挟み撃ちする形で拳を繰り出す。
しかし拳が俺に当たることはなく、その手前で止まる。
「んだコレ!?」
「距離を引き伸ばしてんの。さっきのはその反転、距離を縮めてぶつけたの」
俺はそう言って男二人の顔面に拳を叩き込んだ。男達は一撃で倒れ伏した。
「本体含め最大5人の分身術式。どれが本体かは常に自由に選択できるんだろ?本体が危うくなったら安全な分身を本体にする。良いもん持ってんじゃん。欲しくなっちゃうなぁ」
「何故俺の術式を知っている?」
「術式看破の術式を発動してるだけ。便利なもんだろ。六眼は素でこれができるんだぜ?怖えよな」
六眼の恐ろしさは身を持って知っている。
悟は俺の直弟子だから、その圧倒的な才能を目の当たりにしている。環境さえ整っていれば、宿儺だって倒せる強さになる。
「あ、そうそう。俺の術式は暴食。食べた相手の呪力と術式を奪うの。呪力出力も上がるんだ。術式反転は溜め込んだ術式達を吐き出すだけだから意味ないんだよね。人に与えるとかもできないから、自分だけが際限なく強くなる。だから俺の等級は特級なの」
「特級!?まさか…お前があの、千年前から存在する最強の術師!!」
「漸く気付いた?寝返るなら今の内だよ?五条家は才能ある奴大歓迎だから」
「クソッ…!」
呪詛師の男は逃げ去ろうとした。なので俺は呪力の塊を飛ばして男を気絶させた。
術式で縄を取り出して封印の術式を込めてから男を縛り上げる。
「コレで良し。さ、高専に向かおうか」
俺が天内に話し掛けたタイミングで天内のケータイが鳴る。
俺は嫌な予感がして渋い顔をした。
「黒井からじゃ」
天内がケータイを開くと目を見開く。
そして焦った表情と声で俺に写真を見せてくる。
「どっ、どうしよう黒井が…!!黒井が!!」
画面には拘束された黒井さんが映っていたのだった。
◇
「すいません。私達のミスです。敵側にとっての黒井さんの価値を見誤っていた」
「奪還すれば良い話だ」
「相手は次、人質交換的な出方で来るだろ。天内と黒井さんのトレードとか、天内を殺さないと黒井さんを殺すとか。でも交渉の主導権は天内のいるこっち。取引の場さえ設けられれば後は俺達でどうにでもなる。天内はこのまま高専に連れて行く。硝子辺りに影武者やらせりゃ良いだろ」
「ま、待て!!取り引きには妾も行くぞ!!まだお前らは信用できん!!」
「あぁ?このガキ、この期に及んでまだ─」
「助けられたとしても!!同化までに黒井が帰って来なかったら?まだ、お別れも言ってないのに…!?」
「んー…俺は天内を連れていくべきだと思うよ」
俺の言葉に悟が胡乱な瞳を向ける。
俺は指を立てて根拠を示した。
「一つ、天内を俺達の手元から離したくない。二つ、顔が割れてる以上影武者は無意味。寧ろ黒井さんの生存率を下げる可能性がある。三つ、俺達なら何が起きても大丈夫」
「……はぁー…その内拉致犯から連絡が来る。もしあっちの頭が予想より回って、天内を連れていくことで黒井さんの生存率が下がるようならやっぱお前は置いていく」
「分かった。それで良い」
「逆にいえば途中でビビって帰りたくなってもシカトするからな。覚悟しとけ」
天内は意志の強い瞳を悟に向けた。
引く気はないらしい。覚悟が決まっていて大変宜しい。
後は黒井さんを助け出すだけである。
俺達は拉致犯からの連絡を待つのだった。
・オリ主
認識阻害の術式を使って普段は呪力量を誤魔化してる。
呪力総量は魚の二倍以上ある。
呪力放出するとほぼゴジラ。