死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件   作:雨天

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第五話 因果からの脱却

 

 

 

 21時になって、拉致犯から連絡があった。

 拉致犯は取引場所を沖縄にあるビルに指定。俺達はその条件を飲んで飛行機で沖縄に向かうことにした。

 

 翌日の9時、沖縄に到着した俺達は指定されたビルへと足を運んでいた。

 飛行機に乗る際は悟が乗客を六眼で呪詛師か判定し、飛んでいる最中は夏油君の虹龍で飛行機を覆って安全を確保。下手な陸路より安全に来れた。

 

 さて、ビルの中だが、当然多くの人間が待機している。

 呪詛師と思われる気配は感じられない。皆非術師だ。制圧も簡単だろう。

 

「じゃ、正面突破で行こうか」

「そうですね。手っ取り早く行きましょう」

 

 夏油君と頷き合ってビルの内部へと足を踏み入れる。

 正面扉からの堂々とした登場に非術師達が慌てる。銃を取り出して発砲して来たので、障壁で悟以外を覆って防御する。

 

 防がれたことに驚く非術師を適当にボコって倒す。

 どいつもこいつも格闘技の心得さえない素人だ。弱すぎて欠伸が出る。

 

「黒井さんは最上階?答えろ」

「は、はい!最上階の奥の部屋に監禁してます!」

 

 非術師から情報を吐き出させて最上階へ向かう。

 道中何度も奇襲に遭ったが全て返り討ちにした。全員盤星教の信者だろう。

 ここまで派手に動けば直に盤星教は解体される。呪術界へ与える影響が大き過ぎた。

 流石に天元の同化を阻止しようとするのは無謀だし、危険極まりない。

 最悪呪術界が基盤からひっくり返る。それだけ天元の存在は重要なのだ。

 

 天元は結界で日本を覆っている。その結界が呪霊の発生を抑制し、同時に補助監督の扱う結界術の底上げも行っている。これがなくなれば日本は呪霊で溢れ返り、補助監督の帳なども機能が劣化する。

 つまり天元とは呪術界の要であり、それがいなくなるということは呪術界の崩壊を意味する。

 なので総監部からすれば天元を信仰する盤星教は邪魔でしかない。理由さえあればすぐにでも解体するだろうと思われる。

 

 羂索と繋がってる総監部の若造共も天元が同化に失敗してしまえば自分達の立場が危うくなることは理解してる。

 だから保険として俺が護衛任務に加わることを了承したのだ。

 

 さて、そんなことを考えている間にビルの最上階最奥の部屋へと辿り着く。

 部屋の中には手足を縛られた黒井さんが転がっていた。

 天内が黒井さんに駆け寄る。

 

「黒井!!」

「お嬢、様…?」

「助けに来ましたよ。意識はハッキリしてますか?この指何本に見えます?」

 

 俺は右手の指を立てて黒井さんの意識が問題ないか確認する。

 幸い黒井さんの意識に問題はなく、縛られていた影響で体の節々に痛みがあるくらいだった。

 

「救出成功だね。この後はどうする?」

「折角沖縄来て、それに思ったより早く黒井さんを救出できたんだ。行くでしょ、沖縄観光」

 

 悟はワクワクした顔でそう語る。任務であちこち駆け回るとはいえ、沖縄にまでは来たことがないからか、とても純粋に楽しもうという魂胆が見える。

 

「ま、折角ならね。楽しもうか」

 

 そうして俺達は黒井さんの救出に成功するのだった。

 

 

 

 

「「めんそーれー!!!!」」

 

 悟と天内が口を揃える。

 買い物を終えた俺達は水着に着替えて海水浴に来ていた。

 

「何回来ても良いものだ。心が澄んでいくのが感じられる」

「おい!師匠も見てみろよ!ナマコだぞ!ナマコ!」

「楽しそー」

 

 悟と天内はテンションMAXではしゃいでいる。

 ナマコを投げ付けあったり、水を掛け合ったり、楽しそうに遊んでいる。何でも楽しい年頃だね。

 

「俺は美人の水着姿を目に収めとくとしよう」

「他の女性に現を抜かしてると奥さんに怒られますよ」

「亨子は妾を作っても良いって言ってくれてるよ」

「貴方からすれば大体の人は赤子同然でしょう」

「そんなことないよ。千年生き長らえても案外性癖は変わらないものさ」

 

 夏油君と談笑していると、夏油君がそろそろ出発の時間だと気付く。

 

「悟!!時間だよ」

「あ、もうそんな時間か」

 

 夏油君の言葉に天内が見るからに落ち込む。

 

「………まあ、出発は明日でも良いんじゃないかな」

「ですが……」

「天気も安定している。それに沖縄の方が東京よりも呪詛師の数が少ない。それに飛行機に乗ってる時に懸賞金の期限が切れた方が都合が良いし」

「……悟はどうする?」

「俺も師匠に賛成」

 

 夏油君が悟に近寄り何事か話す。

 悟と夏油君は熱い友情を交わして滞在を一日延ばすことを決めた。

 

 その後はカヌーに乗ったり、皆でうどんを食べたりした。

 そして最後に水族館へと足を運んだ。

 

 天内が悠々と泳ぐ魚達を眺めている。

 俺は黙って見つめる天内に声を掛けた。

 

「綺麗だな」

「……そうじゃな」

 

 天内はそれ以上何も言わなかった。

 自由に泳ぐ魚達を見て、どんな思いを抱いたのか。それは俺には分からない。勝手に推し量るのは無粋だ。本人が口にしないのなら、それ以上追求する必要もない。

 

 

 

 

 翌日の15時。俺達は呪術高専の筵山麓に到着していた。

 

「皆お疲れ様、高専の結界内だ」

「これで一安心じゃな」

「……ですね」

「………」

「悟、本当にお疲れ」

 

 悟は疲れた顔で術式を解いた。

 見るからに疲弊している。碌に寝ていないのだろう。

 

「二度とごめんだ。ガキのお守りは」

「お゛?」

 

 天内が悟の発言にキレた瞬間、悟の腹から刀が突き出た。

 悟の背後には刀を手にした口元に傷が付いた男がいた。

 

「アンタ、どっかで会ったことあるか?」

「気にすんな。俺も苦手だ。男の名前覚えんのは」

 

 悟が術式で下手人、伏黒甚爾を引き剥がす。

 それに合わせて夏油君が呪霊で甚爾を飲み込んだ。

 

「悟!!」

「問題ない。術式は間に合わなかったけど、内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった。ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんだよ。マジで問題ない。天内優先」

「俺が天内を薨星宮まで連れてくよ。二人は襲撃犯の相手して」

「了解。じゃ、天内は任せた」

「行くよ、二人とも」

 

 俺は天内と黒井さんに声を掛けて薨星宮へと向かった。

 残穢は残さないように移動する。

 しかし足跡や匂いで場所は割れるだろう。時間稼ぎでしかない。

 

 高専の最下層にエレベータで辿り着くと、黒井さんが立ち止まった。

 

「理子様。私はここまでです。理子様…どうか…」

「黒井、大好きだよ。ずっと!!これからもずっと!!」

「私も…!!大好きです…」

 

 二人のやり取りを邪魔しないように俺は空気に徹する。

 満足した天内は黒井さんから離れて俺の元へと来た。

 

 そうして二人で奥まで進む。

 

「ここが…」

「あぁ。薨星宮本殿。国内主要結界の基底。階段を降りたら門を潜ってあの大樹の根元まで行くんだ。そこは高専を囲う結界とは別の特別な結界の内側。招かれた者しか入ることはできない。同化まで天元様が守ってくれる」

「………」

 

 天内は黙って階下を見る。

 俺は暫し沈黙した後にもう一つの選択肢を示す。

 

「それか引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」

「……え?」

「悟達も協力してくれる筈だ。何なら五条家の力を使って保護する手もある」

 

 天内は理解が追い付かないという表情で俺を見る。

 

「最初から君には二つの選択肢があったんだ。君は同化する以外考えてなかっただろうけど。君が同化を拒否した時の保険として俺がいたんだ」

「保険?」

「俺の術式で天元の肉体を若返らせて、術式をリセットする。そうすれば同化の必要はなくなる。ま、今までは天元の要望で同化を行っていただけなんだ。だから君はそれを拒否しても良い」

 

 天内が瞳に涙を浮かべる。

 今まで気丈に振る舞っていた分、想いが溢れる。

 

「私は生まれた時から特別で、皆とは違うって言われ続けて。私にとっては特別が普通で、危ないことはなるべく避けてこの日の為に生きて来た。お母さんとお父さんがいなくなった時のことは覚えてないの。もう悲しくも寂しくもない。だから同化で皆と離れ離れになっても大丈夫って思ってた。どんなに辛くたって、いつか悲しくも寂しくもなくなるって……でもっ、でもやっぱりもっと皆と…一緒にいたい。もっと皆と色んな所に行って、色んな物を見て…もっと!!」

「帰ろう。皆が待ってる」

「うん!」

 

 天内に手を差し出した、その時。

 入口の方から銃弾が飛来した。

 

 俺は咄嗟に障壁を張って銃弾を防ぐ。

 天内の前に立って、下手人に視線を向けた。

 

 そこには無傷の伏黒甚爾が立っていた。

 

「二人相手して怪我もなしか」

「星槳体さえ殺せれば良かったんだがな。お前とはできるだけ敵対したくねえし」

「二人が負けたんなら仕方がない。俺が相手しよう、術師殺し」

 

 俺は掌を甚爾に向けて戦闘体制を取るのだった。

 

 

 





・五条悟と夏油傑
ボロ負けした。二人とも瀕死の状態で転がってる。
外は戦闘の余波で崩壊している。

・伏黒甚爾
最強の術師を舐めてる。禪院家にいた頃に碌な教育を受けなかった弊害。
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