死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件   作:雨天

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第六話 完全体フィジカルギフテッド

 

 

 

「天内、俺の後ろから出ないように」

「う、うん」

 

 天内は怯えながらも返事をして俺の背後に隠れた。

 俺は甚爾に向けた掌から術式で炎を出す。

 火炎放射の要領で甚爾に向けて炎を放てば、甚爾は軽く空を飛んでそれを避けた。

 

「空飛んでる!?」

「空間を面で捉えて蹴ってるんだよ。ワンピの月歩みたいなもん」

「成程?」

 

 陽キャっぽい天内でも月歩は知ってたようだ。

 まあワンピは義務教育だから当然か。

 

 さて、そんな下らないことを考えている間にも戦況は変わっていく。

 甚爾は肩に巻いた呪霊の口から刀を取り出す。

 それは原作真希も愛用の何でも切れる釈魂刀だ。

 

 俺は障壁を230展開して防御体制を取る。

 しかし甚爾の振るう釈魂刀の前では豆腐も同然だ。

 だが、俺の目的の時間稼ぎは間に合った。

 

 甚爾に向けて掌を向けた。

 術式に呪力を流し込んで発動させる。

 

「極の番《光焉》」

 

 そこから放たれるのは極限の光の奔流。それは甚爾を飲み込み遥か彼方へと吹き飛ばした。

 薨星宮の外壁が破壊されてクレーターができる。甚爾は何とか地面に降り立つと体の調子を確認する。

 

 今の光焉は極の番だけあってかなりの威力を誇るのだが、当たる直前に天逆鉾で防御されてしまったからダメージは薄い。

 短期決戦が望ましいのだが、中々そうもいかない。

 

 ゴジラよろしく呪力放出で消し飛ばせば良い話なのだが、それをすると薨星宮が消滅するので使えない。

 ならばどうするか。

 

「領域展開《滅失破却(めっしつはきゃく)》」

 

 俺は敢えて領域を閉じずに展開する。

 そして術式対象を俺と天内以外に設定し、領域に付与した術式を発動させる。

 

 それはありとあらゆる破壊の嵐であった。

 炎と風、水と土、雷と氷、闇と光。それらが領域内を蹂躙し、更地へと変える。

 領域の効果範囲は俺達から甚爾までの距離である。

 

 甚爾は完全体のフィジカルギフテッド。呪力を持たない故に結界を素通りできる。しかし術式効果まで無視できる訳じゃない。

 なので敢えて逃げ道を作るのと効果範囲を絞る縛りで領域の展開速度を飛躍的に上昇させた。

 これにより甚爾は領域から逃れることはできず、まともに術式の嵐を受けることとなった。

 

 その時点で決着はついていた。

 しかし、最強の術師へ一矢報いる為、領域解除後甚爾はボロ雑巾のような体で俺の背後の天内を狙った。

 俺は何とか突き飛ばして回避させようとしたが、ギリギリで天内は釈魂刀で胸を切り裂かれた。

 

 そこで甚爾は倒れて意識不明の状態になり、倒れ伏す天内が残った。

 俺は慌てて天内に反転術式を施す。しかし魂を切り裂かれた傷は深く、魂そのものが傷付いているので治すのも困難だ。

 

「空…私、死ぬの?」

「そんなことねえさ。俺が必ず助けてやる」

 

 俺は普段とは違う反転術式回路を構築して天内を治療する。

 少しずつだが確実に天内の怪我は治っていく。

 俺は安堵の息を吐いて治療に専念した。

 

 十数分もすれば天内の怪我は完治して、問題なく動けるようになった。

 俺は甚爾の死体を担いで外へ向かう。

 道中で黒井さんが撃たれて倒れていたので治療した。

 

 そして三人でエレベーターに乗り、上を目指す。

 薨星宮の外へ到着した俺達は壮絶な現場を目にすることになる。

 

 悟と夏油君が瀕死の重症で倒れていたのだ。

 俺は慌てて反転を施した。そうすれば二人は息を吹き返して生死の境から帰って来た。

 先ず、意識を保っていた悟が現状を確認する。

 

「どういう状況?」

「伏黒甚爾は殺した。天内は天元との同化を拒否したから俺が保険を使う時が来たって感じだな」

「そうか。天内はこっちで預かるから師匠は天元様のとこへ行ってくれ。保険も制限時間があるだろ?」

「あぁ。そうさせて貰うよ。後は任せた」

 

 俺は悟に天内達と甚爾の死体を任せて薨星宮へ蜻蛉返りした。

 そして階段を降りて大樹の根元まで行く。

 

 そこには座り込んで結界を維持する天元の姿があった。

 

「やぁ、相変わらずの引きこもりぶりだね」

「私が此処にいないと国内の主要結界は崩壊し、呪霊との戦いと呪術ノウハウを一からやり直すことになるからね」

「最初っから俺の術式使っておけば良かったんだよ。星槳体なんて不確定要素の大きい手段取る必要なかったろ」

「それは完全に私の慢心だった。まさか伏黒甚爾が介入し、天内理子が同化を拒否するとは」

「素直に想定が甘かったな。例えお前達が因果で結ばれていようと、人間の意志はそれを超えていく。人間の可能性を舐め過ぎた結果だ。ちゃんと反省しろよ」

「あぁ、分かっているさ。これからはちゃんと君の術式を頼ることにする」

「全く…それじゃあ、術式使うぞ」

 

 俺は天元の胸に触れて心臓の位置に手を置く。

 術式反転による若返りが行われ、ゴリゴリと呪力が削れていく感覚を覚え、天元が若返るのが目に見える。

 そうして数分もすれば天元は全盛期の美しい姿を取り戻していた。

 

「素晴らしいな。これが君の術式の効果か。完全に肉体が全盛期のものへと戻っている」

「その代わり有り得ん程呪力消費するけどね」

 

 一気に五百年分も巻き戻したのでかなり呪力を消耗した。

 まあ、それでも半分も減っていないが。千年の間にかなり呪力量も増えたし、呪力効率も上がって消耗はかなり抑えられてる方だ。

 それでも馬鹿にはならない呪力消費であるので、老化の術式の燃費の悪さを痛感する。

 まあ、流石にこれで呪力の消耗も大したことなかったら無法だもんな。仕方ない。

 

「天元も辛い生き方選ぶよなぁ。結界の維持なんて他の術師に任せて出歩いてみれば良いじゃん。外は楽しいぜ」

「……君となら、外を歩んでみるのも悪くないかもな」

 

 天元は照れ臭そうにそう語る。

 俺は笑みを浮かべて答えた。

 

「最高のデートにしてやるよ。だから、いつかこんなカビ臭いとこから出て来いよ」

「あぁ、そうしてみるよ」

「約束だぞ!?言質取ったかんな!!絶対だぞ!!」

 

 俺は天元から言質を取ってガッツポーズを取って喜んだ。

 旧友とのデート(遊ぶだけ)なんて楽しみ過ぎる。

 

 そうして俺は目的を終え、ついでに約束を取り付けて薨星宮を去ったのだった。

 

 

 

 

 後日、甚爾の遺体は伏黒家の墓に入れられた。

 遺品である呪具の数々は俺が預かりコレクションしている。

 呪具はどれも特級に分類される代物で、とても個人が所有して良い量じゃなかった。

 まあ、俺も神武解と飛天を所持しているから人のことは言えないが、にしても持ち過ぎである。

 効果も特級らしく破格だ。天逆鉾は術式の強制解除。釈魂刀は魂さえ観測できればあらゆる物を切れる。万里の鎖は端さえ見られなければ何処までも伸びる。

 この三つのみで15億は下らないだろう。

 

 甚爾はこの呪具を高専に売り付けて生活すれば良かったのではと思わなくもない。

 そうすれば術師殺しとして生きる道を選ばずに済んだろうに。

 

 まあ、死人にうだうだ言っても詮ないことだ。

 これらの呪具は有り難く頂いておく。

 

 天内と黒井さんについては、呪術界の協力者窓として暮らすことを決めたようだ。

 黒井さんが一般企業で働いて天内を養うのだとか。

 ハッピーエンドを迎えて嬉しい限りである。やはりうろ覚えになって来たとは言え原作キャラはなるべく救いたいからな。

 

 死滅回游も起こさせない。

 真人を探し出して確実に祓う。そうすれば伏黒の姉である津美紀さんを助けられるかもしれない。

 

 まあ、まだまだ先の話だ。

 俺はのんびりと任務を遂行しながら目的の為に動くとしよう。

 

 そういえば、総監部からの命令で俺は呪術高専の特別顧問に就任することになった。

 東京高と京都高両方の特別講師である。休みなんて、ないんだろうな…。

 

 そうして俺は社畜として働き続けるのだった。

 

 

 





・オリ主
天内が切られた瞬間大焦りした。最後っ屁がヤバすぎンゴ。

・黒井美里と天内理子
天内はいつも通り廉直女学院に通っている。
黒井は仕事探し中。その内五条家から優良会社を紹介される。
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