TS転生者は推しのアイドルを救いたい   作:アキレスけん

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 ハーメルンの特殊タグの機能って面白いよね。


02.彼女を救いたいならアイドルになればいいじゃない

 〇月××日――。

 

 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!

 「おれは幼稚園で可愛い幼女に話しかけられたとおもったらその子が星川怜奈ちゃんだった」

 

 思わずポル〇レフ構文を使ってしまうほどにびっくりした……。

 

 

 俺は前世の経験から人付き合いがそれほど得意ではない。ぶっちゃけるといじめられていた影響で人が怖いのだ。

 そのうえ曲がりなりにも成人ほどまで生きていた男であり、2度目の幼稚園というのはとても居づらい場所だった。

 

 だからその日も俺は一人で過ごしていた。みんなが積み木やお絵描きで遊んでいるなか、何をすることもなく部屋の隅で目立たないように体育座りをしていると、俺に話しかけてきた女の子がいたのだ。

 

 そう、俺の推しこと星川怜奈ちゃんである。

 

 名前を聞いたときは本当にびっくりした。予想もしてないところから急にストレートパンチが来たような感じだ。

 同姓同名の他人の空似かとも思ったけど、怜奈ちゃんだと言われると面影が感じられたのだ。

 

 

 ……逆行転生したら推しと一緒の幼稚園だったとかできすぎでは? 恣意的なものを感じます! やっぱり神様が俺に怜奈ちゃんを救えと言っているんだよ!!

 

 あまりにびっくりして挙動不審になってしまったけど、そんな俺にも怜奈ちゃんは優しかった。幼少の頃から天使かよ。

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 あれから怜奈ちゃんは俺に構ってくれるようになった。お姉ちゃん気質の怜奈ちゃんは俺のような陰キャを放っておけないようだ。良い子すぎる。

 俺はというと、推しと話ができる幸福と罪悪感が入り混じって『あ……う……』などと言葉にならない呻き声をあげるのみ。ゾンビかな?

 

 怜奈ちゃんは前世で見たときと同じく光り輝いていた。いやもちろん物理的な意味じゃないよ? オーラというか何というか、見てるだけで人を元気にさせるような何かがあるのだ。

 さすがは今世紀最高のアイドル。推しが尊すぎて辛い。

 

 そして、俺は思った。

 

 怜奈ちゃんと友達になっておけば、来る悲劇の日を回避することができるかもしれない、と。

 

 事故のことはわかっていても、どうやってそれを回避するかが問題だった。何の接点もない俺が怜奈ちゃんに干渉することは当然ながら難しい。匿名で手紙を送って『この日あなたは事故にあいます』なんて言っても質の悪いイタズラだと思われておしまいだろう。

 

 だが、長年の友人からの言葉ならどうか?

 直接的に事故に遭うからと言わなくても、いくらでも手段はありそうだ。前もってその日に予定を作ってもらうとか、近くにいて様子を見るとか、色々。

 

 つまり、俺と怜奈ちゃんが友達になるのは怜奈ちゃんを救うための必然だったんだよ!!!!

 ナ、ナンダッテー!!

 

 

 

 ……下心なんてないよ? ホントダヨ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 小学校に入学した。

 俺と怜奈ちゃんは順調に仲良くなり、小学校も無事同じ学校に通うことになった。しかも、クラスまで同じである。これはもう本格的に運命の予感がする。

 今世の俺は怜奈ちゃんにとっていわゆる幼馴染というポジションになるのだろうか。家族ぐるみで交流もあるし、かなり親密な関係と言えるかもしれない。

 

 そんな俺は相変わらず怜奈ちゃん以外とは上手く話せていない。

 

 う、うるさいうるさい! 前世いじめられっ子を舐めるなよ!! 悪意がないってわかってても知らない人に話しかけられると心がヒュッってなるんだよ!!

 怜奈ちゃん? 怜奈ちゃんは別に決まってるだろ常識的に考えて。天使だぞ? 俺を害することなんてあるわけないじゃないか。

 

 怜奈ちゃんはそんな俺に少し呆れながらみんなとの交流を取り持ってくれている。だから俺も怖いけど、少しずつ頑張っている。

 前世持ちの男なのに幼女に頼ってるってどういうことだよ。自分が情けないが怜奈ちゃんがすこぶる良い子なのがわかって嬉しくもなる。

 

 俺の推しは、やっぱり見せかけだけじゃなかった。それがわかって、何より嬉しい。前世の頃から怜奈ちゃんも大好きだったけど、いま俺は自分の見る目があったことに誇りを感じているほどだ。

 生まれながらのスーパーアイドルがよ……。

 

 絶対、怜奈ちゃんを救わなきゃ。

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 怜奈ちゃんがアイドルになりたいと言い出した。テレビで見たアイドルがとっても可愛かったと珍しく興奮気味に語っていた。

 怜奈ちゃんの心を奪うアイドルに軽く嫉妬したが、それはそれ。

 怜奈ちゃんがアイドルを目指したのは小学生の頃だと、前世のインタビューでもそう答えていた。やはり前世と同じ展開をなぞっているのかと納得する反面、不安にもなる。

 俺は果たして本当に怜奈ちゃんを死の運命から救うことができるのか。怜奈ちゃんが死ぬことすら前世と同じく定められた事象で、どうやっても運命は変わらないのではないか。

 

 そんな不安が顔に出ていたのか、怜奈ちゃんに心配されてしまった。

 推しを心配させてどうする!!! 笑顔で何でもないよと言ったら、怜奈ちゃんはほっとしたように息を吐いた。

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 怜奈ちゃんに俺も一緒にアイドルを目指すと伝えた。怜奈ちゃんは少しびっくりしたあと、喜んでくれた。俺の両手を取ってぴょんぴょんとはしゃぐ姿はとっても可愛かったです。

 

 俺は考えたのだ。怜奈ちゃんを死の運命から救うには、できるだけ怜奈ちゃんの側にいることが重要だ。

 別にアイドルじゃなくてもいいのかもしれないが、人の友情というのは意外と儚いことを俺は知っている。小学校のとき仲が良かった友達なんて、少しのきっかけで疎遠になるのが当然だ。それが成長というものかもしれない。

 趣味の違い、交友関係の違い、進学する学校の違い……。些細なきっかけだけど、子供の世界というものは驚くほどに狭い。今がそうだからといって、怜奈ちゃんと俺がずっと友達でいられるという保証もないのだ。

 

 だから俺は、怜奈ちゃんと同じ夢を目指す。同じ中学校にも行くし、怜奈ちゃんと疎遠にならないように自発的に努力することにした。

 人と接するのが怖くて、鈍くさい俺がアイドルなんかできるのか不安だが、怜奈ちゃんのためなら俺は何だってする覚悟だ。

 

 幸い、今世のパパとママのおかげで人並み以上には容姿に恵まれている。アイドルとしての輝きは怜奈ちゃんと比べるまでもないが、何とか食らいついていってみせるさ。

 

 怜奈ちゃん、一緒に頑張ろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 中学校に入学した。もちろん怜奈ちゃんと同じ中学校だ。まあ小学校が同じならそうなる可能性は高めよね……俺と怜奈ちゃんは家もかなり近いし。

 いちおう事前に怜奈ちゃんに聞いておいた。これで違う中学校へ進学予定だったら両親に『友達と同じ中学校じゃないと嫌だ』と駄々をこねなくてはいけなかったから最初から同じで良かった……。中身成人男性が両親にわがままを言う姿とかホラーすぎるだろ。

 

 中学に入った俺たちはアイドルになるための練習を一緒にしている。歌の練習をしたり、ダンスの練習をしたり、笑顔の練習をしたりなど様々だ。

 アイドルというのは早い子だと子供の頃から活動しているものだけど、どうやら怜奈ちゃんは中学生のうちはアイドルになるつもりはないらしい。義務教育のうちはしっかり学業に専念すると言っていた。そんな堅実な怜奈ちゃんも可愛い。

 

 俺も少しずつ対人恐怖症を治すために頑張っている。怜奈ちゃんや家族以外ともちょっとはまともに喋れるようになってきた。アイドルになるのなら不特定多数のファンたちと向き合わないといけないのだ。泣き言を言ってなんかいられない。

 俺が前世怜奈ちゃんから生きる意味をもらったように、アイドルの光はきっと誰かを救える尊いものだから。怜奈ちゃんのためという邪な動機であっても手を抜いてはいけないのだ。

 歌もダンスも全然得意じゃないけれど、怜奈ちゃんと一緒に練習していると思うと辛くないから不思議だ。たぶんなんか脳から幸せ物質みたいなものが漏れている。

 

 怜奈ちゃんのご両親もうちの両親もとても理解のある親で、アイドルになるという夢を応援してくれている。習い事で一緒にボイストレーニングの教室とダンススクールに通わせてくれているぐらいだ。

 

 うちの親なんてすでにもう俺がアイドルになれることを微塵も疑っていなくて、うちわなどのグッズを自作してたりする。親バカここに極まれりといった感じである。

 

 怜奈ちゃんは日に日に可愛く美しくなっていって、眩しさで目がつぶれそうなほどだ。

 

 あーっ! いけませんお客様!! もう少し、もう少し輝きを抑えてください!!!

 

 ウソ♡ いつまでもずっと輝いていてね♡ 生まれながらのスーパーアイドル♡ ちゅき♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 今日は高校の入学式だった。当然のごとく俺と怜奈ちゃんは一緒の高校に進学。ここまで来るともうどちらの両親も『そりゃそうだよね』という納得の表情である。いつも一緒にいるもんね、俺たち。

 怜奈ちゃんは学力でも上の中くらいはある。俺も成績自体は平均より上だがそれは前世の知識や経験があるからであって、怜奈ちゃんはそんなこともないのに頭がいい。サスガダァ……。

 

 高校生にもなったことだし、本格的に始動だ。ある程度新しい環境にも慣れたら、とうとうアイドルを目指してオーディションなどを受けていこうと怜奈ちゃんとも話している。

 

 高校生になった怜奈ちゃんはそれは麗しく、一緒に街を歩けば見知らぬ人の視線を集める存在である。

 髪先を少し外ハネにしたエアリーカットの黒髪。背丈は168cmと女性にしてはかなり高めで、脚もびっくりするほど長い。腰の位置が高すぎてびびる。漫画の世界の住人かなってぐらい。

 一見スレンダーな感じにも見えるが女性らしさを象徴する胸やお尻は程よく肉付きがよく、カッコ良さと可愛さが奇跡的なバランスで同居していた。モデルでも全然通用すると思う。

 黒いツリ目は気が強そうな、冷たそうな印象を与えるが実は全然そんなことはない。人並に笑って、人並に怒って、人並にふざける。そんな親しみやすさだって持っている。

 

 中学生時代でもたくさんの男子から告白されていた怜奈ちゃんだ。より魅力的になった高校生怜奈ちゃんはなおさら男子にモテるだろう。俺がしっかり守護らなきゃ……。

 

 とりあえず、ブレザーの制服に身を包んだ怜奈ちゃんはしっかり拝んでおいた。中学はセーラー服だったから、ダブルで美味しい。ありがたや~……!

 

 

 

 

 

 〇月××日――。

 

 俺が受かってもしょうがないだろうが!!!

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