SNSで見るのと公式で見るのと全然違ぇじゃねぇかッ!!   作:モルペコ

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どんどん盛るペコ

 

 某SNSやイラスト投稿サイトなんかで、ゲーム本編は知らないのにキャラクターだけは見たことがある──そんな経験、一度くらいはないだろうか。

 

 俺にはある。

 

 「このキャラ可愛いな」と思っても、肝心のゲームはスマホの容量不足だったり、ジャンルが違ったりで結局遊ばない。だから詳しい設定もストーリーも知らない。

 

 それでも、そのキャラクターだけは何度も目にする。

 

 一時期なんてタイムラインを埋め尽くす勢いだったし、イラスト投稿サイトを覗けば毎日のように新しい二次創作が投稿されていた。どうやらゲーム本編以上に、キャラクターだけが一人歩きして人気になっていたらしい。

 

 そんな俺は「へぇ、この子人気なんだなぁ」くらいの認識で、自分の好きな作品を追いながら平和なSNSライフを送っていた……送っていた、はずだった。

 

 

 

「初めまして! 私、ルリ! よろしくね!」

 

 ──目の前には、前世で嫌というほど見かけた少女がいた。

 

 突然ゲームの世界へ転生し、しかも明らかに主人公ポジションの連中が集まる学校へ入学することになり、その上、SNSで何度も見た人気キャラクター本人が笑顔で挨拶してくる。

 

 情報量が多すぎて脳が追いつかない。

 

 普通なら「異世界転生!?」とか、「ゲームの世界!?」とか、「推しキャラが目の前に!?」とか思うんだろう。

 

 だが、人間という生き物は案外どうでもいいことが最初に気になったりする。それは俺も例外ではなかった。

 

(……あれ?)

 

 ルリと名乗る金髪の少女を見つめる。

 

(……SNS(二次創作)で見た時より胸、小さくね?)

 

 最低である。いや、違う。違うんだ。

 

 俺が悪いんじゃない。

 悪いのは、あの「盛る」という文化だ。

 

 二次創作とは時として、公式設定すらねじ曲げる。

 人体の一部を数割増しに描くなど日常茶飯事。そのイメージを何百枚も浴び続けた結果、俺の脳内では"ルリ=もっと大きい"という認識が完全に出来上がってしまっていたのである。

 

 認知というものは、案外簡単に書き換えられるらしい。

 

――――――――――――――

 

 

 

 ゲームの名称は『スカイネット・アビリティーズ』

 略称は『スカアビ』……なんか、異能力を持った者たちが集まる学校で色々する話……らしい!!!

 俺はそこまでしか知らねぇ!!!

 

 俺もびっくりしたよ、中学生生活最後の身体検査で俺に『異能力』が宿ってることが発覚して予定してた進路を全て蹴り伏せてここ『空網市異能力者支援学園』(長いので学園と呼ぶ)にぶち込まれた。

 

 正直俺がここがスカアビとか言うゲームの世界だと理解したのも割とさっきでな。

 

 それまではよくあるラノベや学園バトル物のゲームの世界に転生か……とか思ってたんだが、ようやく何の世界かわかって安心……はできてないな。俺、この世界のこと何も知らねぇもん。

 

 主人公?なんか『委員長』って呼ばれ方してるのは知ってる。

 学生集めるタイプのゲームらしい、つか学園タイプのソシャゲゲで主人公先生じゃねぇのかよ。

 

 ストーリー?しらん。なんかわりと鬱鬱しいらしい……詳しくはしらん。マジで。

 

 ラスボス?知らねぇって。

 

「えっと……あのぉ……もしもし?」

「っ!っす。」

 

 いろいろ考えている内に相手をまたさていることに気が付き、咄嗟に息が抜けるような返答したできない俺。くそ!このコミュ症が!変なことばっかり考えてるからだぞ!!

 

「な、なんか邪魔しちゃったかな?ごめんね?」

「いや、こちらこそ……なんか……すんません。」

 

 オイなんかえらい気まずい空気じゃねぇか!?初対面の自己紹介でお互い謝り合うという謎の空間が完成しちまったなぁオイ!?

 

 オイオイオイ、なんだこの気まずい空気!

 何か!何か話題を!

 天気か!いや教室の中だぞ!?こんなところでんな話題するか!

 趣味!初対面で重い!却下ぁ!

 

 すると、ドアがガラリと開き一人のくたびれた男性が入ってくる。彼は教室を一瞥してサラリと言葉を告げる。

 

「はい、みなさん静かになったね。俺は担任のハルノだ。宜しくね。」

 

 先生と言う学生生活において絶対とも言うべき存在が入ってきたのを皮切りに、さっきまでガヤガヤしていた教室も一気に静寂に包まれてしまう。

 

 ルリ……さんも、軽く会釈して近くの先に戻っていく……と、とりあえず当面の危機は脱した。

 

 この世界において、ただ一つ確かなのは、この世界には『異能力』という特殊な力を持って生まれる人間が一定数存在するということ。

 

 そして、その力を正しく扱えるよう育成し、現代社会で問題なく生活できるよう支援するために作られたのが、この『学園』らしい。

 

 ……まあ、説明だけ聞くとずいぶん真っ当な学校である。

 

 これから何が起きるかなんて、ゲーム未プレイの俺には知る由もないんだけどな。けど、ソシャゲの舞台になる学校なんだ……きっとろくでもないことばかり起こるに決まってる。

 

 俺はそんなの巻き込まれるのはごめんだ……本音をいうと少し興味はあるが、ソレでも命懸けで戦うとか嫌だ……普通に怖い。

 

 と、なればどうするべきか……何せ何も知らないからな。

 主人公と関わるべきなのか関わらないべきなのか、と言うか主人公って誰だ!?俺知らんよ!?誰だ!?誰が委員長だ!?

 

 普通こういう転生主人公ってさ、「ここは○章の序盤だから~」とか「この後イベントが起きる!」とか言い出すじゃん?

 

 俺?無理無理!!そんな便利な攻略知識あるわけねぇ。知ってることと言えば、「ルリは人気」と「よく胸を盛られる」くらいだ。任期の理由も知らないし!見た目はたしかに可愛いけど!

 

 こんな知識で何を攻略しろっていうんだ!!

 攻略サイトを読まずに高難度レイドへ放り込まれた初心者の方が、まだ情報量あるぞオイ!!

 

「よし、それじゃあ席についてくれ。」

 

 担任――ハルノ先生がパン、と手を叩く。

 その一言で、まだ立ちす組んでいた生徒たちは思い思いの席へ散っていく……

 

「さて、まずは簡単にこの学園について説明する。」

 

 先生の話が始まる。

 

 教室の空気も自然と引き締まり、さっきまで雑談していた連中も静かになった。

 

 ……お、これは真面目な説明パートか?これは聞いておいた方がいいな、ゲーム知識ゼロの俺にとっては、攻略本より貴重な情報源である。

 

 頼むぞ先生……!!できれば、誰が主人公なのかも教えてくれ。マジで!!

 

 「さて、入学早々で悪いが、まずはこの学園について簡単に説明しておこう。」

 

 ハルノ先生が教壇に軽く腰を預けながら話し始める。

 

「ここには異能力を持つ人間だけが集められている。理由は単純。能力の制御方法と社会との付き合い方を学ぶためだ。」

 

 教室のモニターに資料が映し出される。

 俺も慌てて視線を向けた。

 いや、ゲーム知識ゼロなんだから真面目に聞け。

 こういう説明パートは一発限りの攻略本みたいなもんだ、聞き逃したら終わる。

 

「能力は人によって千差万別だ。炎を出す者もいれば、物を動かす者もいる。身体能力が上がるだけの者もいれば、本人ですら用途が分からない能力を持つ者もいる。」

 

 なるほど。

 テンプレと言えばテンプレだ、逆に安心する。

 

「能力の暴走事故は年々減ってきているが、それでも毎年一定数発生する。だから国は能力者を保護・教育するため、この学園を設立した。」

 

 ……ふむ。

 思ったよりちゃんとしてる。

 もっと秘密組織とか人体実験とか、そういう胡散臭い施設かと思ってた。

 

 いや、ソシャゲだし。

 どうせ裏設定で地下に研究施設とかあるんだろ?

 知ってる知ってる。

 

「卒業後は一般企業へ就職する者、公的機関へ進む者、能力犯罪対策局へ所属する者など進路は様々だ。」

 

 おぉ。

 意外と未来は明るそう……今のところ。絶対"今のところ"だけど。ゲームなんだから、そのうち世界滅亡級イベントくらい来るだろ。ソシャゲ主人公って、平和な学園生活送らせてもらえないし。

 

「もちろん、この学園生活では能力を用いた実技訓練も行う。」

 

 その一言で教室の空気が少しざわつく。

 

 あぁ。やっぱりあるのね……異能力バトル。

 

「今日はそのために、お前たち一人ひとりの能力を測定する。」

 

 測定?

 

 ゲーム開始直後のステータス確認イベントみたいなものか。

 周囲の生徒たちも少し緊張した様子を見せている。

 

 ……そういえば、俺の能力の話もしなきゃだな。

 

 

 

 

 改めましてこんにちは!俺の名前は『鳥谷(トリヤ)ノボル!』異能力名は『催眠』!

 相手に催眠術をかけてある程度操れる能力です!

 

はい!!やられ役及び竿役決定!解散解散!!!!

 

 

 

 

 

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