どうも、半人半妖です 作:覚め
月からの謝罪だね!(部屋から出す気はない)
「貴方には非常時用に穢れを取り除く装置として働いてもらいます」
こう言われてはや数日。玉兎にも顔見知りができた頃合い。さて、話を聞けば地上を侵攻するための兵器やら何やら?があるらしい。玉兎を攫って言うことを聞かせながら…と言うのは難しいだろう。何せ、そもそも俺自身が見知らぬ部屋から出れていないのだから。これでも合戦に参加したことがある人間だが、玉兎の力などを全然知らないため反撃が怖い。見張が2人なのもな。部屋の外にいるのがまだマシだったかな。最初は部屋の中に1人、部屋の外に1人だったし。
「…今日の体調は?」
「腕が欲しい。マトモに服を脱げない」
「ダメです。玉兎に手伝ってもらってください」
「姉の方は?あっちの方が話通じると思うんだけど」
「姉様は忙しいので。貴方に構っていられるほど余裕はありません」
「俺の腕切り落としたやつと話したくないのよね」
「貴方の心境を察する意味が何処に?」
今更すぎるが、こいつは依姫と言うらしい。豊姫の妹なんだって。へぇ。姉妹揃って人にストレスを与えるのが上手い奴等だ。かなり姉妹として似ている気がする。まあ、月の民とか言うやつ全員が地上の奴らを差別してるならこの態度も考えられなくはない。俺の被差別歴何年だと思ってんだ。二桁だな。あんまり多くないか。なんか俺以上に差別されたやついそうだからやめとくか。そんなことを考えていたら朝の体調確認が終わった。窓が割れないことは確認済み。月の科学力ってのはすげえな。
「ってわけだから、脱走するわ」
「え?え?」
「お前来い」
「え!?え!?」
対価はお前の余命。と言うわけで全力で脱出する。くたばれこの世の悪意。この前聞いた玉兎の話から考えるに、余程新人じゃなければ地上を侵攻できるものは扱えるのだろう。後、見張が1人寝てるのはどうかと思うよ。そうして1人を攫って場所を聞き出す。片腕しかないことがかなり厳しい。話を聞く限りでは、俺が閉じ込められていた部屋からは少し遠そうだ。豊姫、依姫の口ぶりからすれば俺は帰れなさそうだったし、多少の苦労は仕方ない。久しぶりに走るな、俺。
「こ、こっちです!」
「ちなみに嘘ついたらお前も共犯者にするからな」
「ひぇ…あ、あの!やっぱりこっちでした!」
この玉兎大丈夫か?もしや少し洗濯を失敗したかも…。こっちはただでさえ針のせいで不便っつーか、とても見えやすくなっている。と言うかこの時間帯は誰も廊下にいないのか?誰ともすれ違わないぞ?まあ好都合だけど。暴れる玉兎を片腕で抑えつつ、なんとか地上を侵攻するための兵器に辿り着く。玉兎を乗せ、出ようとする玉兎を俺が押し込んで閉じ込める。これで良し。後はこの兵器で地上に行けることを願うだけだ。…豊姫の言葉が脳裏を過るが、知らん。大体豊姫が死んだ時に地上を進行できなくなるのはダメだろ。
「えと、えと、」
「早くしろ。俺もこれ背中の針が痛いんだ」
「そ、そのぉ…動かすのに鍵が必要でして…」
「…は?」
「そこまでだ地上人!!脱走を企て、実行した罪は重い!!」
一番話が通じない奴が来たか。玉兎と月の民の関係からして、依姫からすれば玉兎は人質としても役に立たないだろう。ていうか、鍵ってなんだ。こう言うのはあれだろ、叩けばなんか動くだろ。動かない。依姫が何やら独り言を言い始めたので、針を一本ぶち抜く。いつの間にか再生してた。これを玉兎が指差してる穴に差し込む。なんかこう、なるだろ!無理だった。諦めか。玉兎は武器なんか持ってるわけじゃないし、俺もせいぜい針だけ。無理だったか?
「大体連れて来たのはお前らだろうに…!」
「え、何いじってるんですか!?」
「なんだこれ」
「月の羽衣、月から地上に行く時に使用するものです。」
「豊姫様!?」
「…ていっ」
針の届く位置にいたから突き出してみた。まあ、刺さらないわな。だが距離は取れた。しかもこのよくわからない羽衣の使い道も知れた。どうやって移動するのかも知らないし、そもそもどうやって使うのかもわからないが、羽衣を持ってなんとかなれと願う。豊姫の手が伸びてくる。蹴飛ばしてさっさと旅立たせてもらう。あんな無機質な部屋に閉じ込めるのも悪いと思うよ。それじゃあな!そうして俺は脱走したかったのだが、いきなり壁に叩きつけられた。痛え。
「全く…その羽衣は扱いが難しいからやめましょうって言おうとしたのに」
「豊姫が近くにいるとあれが手を出してこないな」
「依姫のこと?ええ、あの子は私のことが大好きですから。自慢の妹ですよ」
「でもこの速さなら針刺せそうだよな」
「両手が無ければ安定出来ませんよ」
つまり俺には扱えないと。どうなってるんだか。都合が悪すぎる。王手というやつか。生憎将棋は慧音に教えてもらった程度しかできないが、死ぬほど王手を取られたからよくわかるぞ。豊姫に片腕を掴まれる。振り解けない。今度こそ終わりか。羽衣はまだ掴んではいるが、豊姫にも掴まれているのでおそらく本当に終わりなのだろう。本当に片腕しかないことが響いてくる。そのまま俺はまた同じような部屋に連れて入れられた。今度は内側からまず扉が何処にあるのかわからない何もない部屋だ。気が狂いそうになる。
「体調はどうですか?」
「帰ったら…そうだなぁ」
「…体調は?」
「慧音に消してもらうか」
「脈絡のない発言…正気に戻してみますか…」
月の奴らって責任には重く向き合ってる気がする。必要なことに対しては軽いのに。