どうも、半人半妖です   作:覚め

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愛が重いのではなく、役目が重い


監禁

「体調はどうですか?」

 

脱走した日から、この質問をして来る奴が豊姫に変わった。しかもわざわざ俺のいる部屋に来てまでだ。この部屋の扉は内側からでは豊姫にも開けられないようで、毎回扉を叩いて開けてもらっている。豊姫が開けられるならそこからなんとか脱走できそうに思えてはいたのだが。どうやらそれは不可能に終わりそうだ。世の中うまく行かないものだ。ここが世の中のうちに入るのかは別としてな。脱走して失敗したらこうなるのか。次はどうなるんだろうな

 

「…黙りですか。見たところ異常はなさそうですね。」

 

「面倒なんだよ」

 

「そうですか。まあ後数日もすれば退屈凌ぎの物くらいは出せますよ」

 

「大人しくしとけってこと?」

 

「ええ。大人しくしてもらえれば、貴方の状態を伝えることで多少の融通は通せますよ」

 

「そうだなぁ、暇なのもあるけど」

 

というわけで思いつきで扉を叩く。豊姫はかなり楽に叩いていたので俺も同じくらいの強さで叩く。するとどうだろう。開いた。俺が豊姫じゃないと気づく前に足を扉に挟み、全力で開けさせる。そのまま走り去る。やっべこんなに上手くいくとか思ってなかったわ。普通に確認の言葉とかないのか?前見た羽衣を掴んで飛べば紆余曲折あろうとも元いた場所には帰れるだろう。でなくとも地球には帰れるはず。帰れずに別の何処かへ行ったら泣いて終わりだよこれは。背中の針のせいで壁に傷つけながら走ってるんだよな。すぐに捕まりそう。

 

「っし着いたぁ!」

 

「と、いうわけで。」

 

「げっ」

 

「脱走されるとは、姉様も玉兎も詰めが甘い。」

 

「嘘だろ」

 

「貴方の行動はほとんど予想できます。何せ、貴方の知る帰宅の手段は姉様か羽衣ですから。」

 

「姉を手段に例えるの良くないと思うよ」

 

「は?」

 

そのまま切りかかって来た。常識がなさそうだ。勿論一歩引こうとしたのに速すぎて追いつけず、斬られた。依姫曰く浅く切ったから死にはしないが痛いだろうと言って来た。嫌がらせに近いぞ。起き上がり、胸から血をダラダラと出しながら立つ。どんだけ流れるんだよこれ。妖怪だからってどれだけ流しても死なないわけじゃないよな?…俺は妹紅みたいな不死身じゃないんだぞ…?

 

「まだ立ち上がりますか」

 

「いっでえ…」

 

「姉様の制止が入る前にある程度痛めつけますか…」

 

「っ」

 

痛みからすぐに膝を突く。そしたらどうだろう、鼻の上が斬られた。目が斬られたかと思ったね。怖い怖い。さてここまで来たところで何を呑気に来たのか豊姫が出て来た。依姫の態度は少し悪くなったし、なんなら拗ねてるような態度だったがまあ良い。そのまま、また別の部屋に連れて行かれるのは勘弁なので豊姫の手を払い除ける。以前より信頼されていたのか、簡単に出来た。片腕しかないのが本当に辛く思える。両腕あればそのまま針をブッ刺したのに。いや、痛いからやらないかも。

 

「…」

 

「姉様、宜しいですか?」

 

「駄目よ。そもそも今回の脱走は全面的に私の油断から来たの。私が責任を取るから、依姫からは下がってて」

 

「…はい」

 

「ふんっ」

 

「穢れを…!姉様!」

 

穢れを全力で噴出する。これで依姫はあまり近づかないだろう。玉兎は避けるだろう。豊姫は知らない。いつまで噴出できるかわからないので、痛みのある身体で羽衣を探す。両腕がないと動かせないとか言ってたけど、全身に巻いとけば割となんとかなるんじゃないか?という考えだ。が、そもそも羽衣が見つからない。おかしいな、前と同じよくわからん兵器のはずなんだけど。別の兵器も探すが見当たらない。そこまで間を開けたつもりはなかったんだけど、それでもこれくらいはできるのか。

 

「もうやめてください。貴方、自分が今どうなってるか理解してますか?」

 

「…は?」

 

「それ以上穢れを出せば、いずれ自我も忘れますよ」

 

「あれ、子供だ」

 

それを認識した途端に豊姫に抱えられた。いつの間にか針もかなり小さくなっていた。この身体、いまだによくわからない。後、なぜかは分からないが豊姫達と触れてもそこまで老けない。どうなってるのか、本当に分からない。でも帰りたいよな。胸の傷とかも治してくれると助かるんだけど。どうやらそんなこともなく、今度もまた別の何もない部屋に通された。今度は窓があるものの、そもそもの扉が内側から開けられるようになっていない。扉というより人を通すだけの穴というか。内側から出るのは無理か?

 

「…こうなってしまっては、もう貴方に退屈凌ぎの道具は与えられなくなりました」

 

「今後は体調管理もこの窓から?」

 

「ええ。少し窮屈にはなりますが、一年程経てば慣れますよ。」

 

「…豊姫の奇抜な服が見れないとかなり退屈だなぁ」

 

「月では普通です」

 

「月の奇抜な服かぁ…」

 

針を抜いて握り締め、窓に開いてる穴から通す。そのまま豊姫を刺す。ザマー見ろ。俺の針には毒がある。妹紅でも悶絶して死にかける毒だ。月の奴らでも効果くらいはあるだろ。と、そこへ依姫登場。窓を突き破る勢いで俺の右肩に刀が刺さる。窓が割れたりしないかと思ったのだが、どうやらそれはないらしい。刀が通った部分だけに穴が開いたようだ。豊姫が毒で地面をゴロゴロしている姿と、依姫がそんな豊姫を抱えて走り去る姿を見て今は満足する。くたばってくれないかな。

 

「…あれ、俺このまま放置?」




言霊がめっちゃ強い人「豊姫はこの毒で死なない」
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