どうも、半人半妖です 作:覚め
「寒いな」
「寺子屋に暖炉はないからな」
「やはり買うべきか…?」
「慧音は妹紅で暖を取れるから別に良いだろ。俺は取れないし」
「いやそれもそうなんだが…」
そうなら早く竹林から妹紅を呼べば良いのに。何をそこまで渋るのかは分からないが、何か事情があるのだろう。ちなみに暖炉がない理由は火事になったらどうするんだという慧音自身の思考の末だ。俺が来た時にはすでに無かった。驚きだな、まあ言うほど驚きではないが。聞けば稗田家も暖房はなく、厚着したり動物の毛皮だったりで暖を取っているらしい。ちなみに寺子屋に毛皮はない。慧音は布の厚い普段着を着用している。俺は年中同じ服なので割愛する。確かに寒くはある。
「買おうか?服」
「要らない。キツいのは夏だからな。」
「…家から出ないのにか?」
「夏に来る妹紅がな」
「あぁ。」
寺子屋において、と言うより俺と慧音において、妹紅とは冬間に欲しい暖房器具である。慧音も極端に暑い日はあまり近寄るなと釘を刺している。妹紅の体温は素で俺たちより高い。妹紅が風呂に入った後の風呂の温度は、慧音曰くいつもより暖かい気がするとも言っていた。俺?一番風呂だからわからない。何せ俺が慧音が入った後の風呂に入ると妹紅がニヤニヤしながら聞いてきたりするからだ。あいつが面倒。それを避けるために一番風呂に入っている。
「里の備蓄は足りている。麦がまだ取れるから、余裕はあるはずだ。各家庭の備蓄もあるしな」
「寺子屋の備蓄は?」
「ある。妹紅がたまに持ってきてくれるのも含めれば足りるさ。平にも手伝ってもらいたいんだがなぁ」
「竹林で迷って死ぬのは嫌だ。」
寺子屋を出ようと思ったら竹林経由すれば良いか?と考えていた時期があったのだが、妹紅がいたりそもそも迷うから狙った通りに進めなかったりして無理だった。断念したよ。それが発覚した時の慧音はそれはそれはうるさかった。何をどうしてそこまで怒るのか分からなかったな。さて今年の冬だが。雪降るかね。雪が降ると人通りが極端に少なくなるから道を歩けるんだよな。そういう時期じゃないと出歩きたくないんだよな。下手すれば老いるし。今年も慧音に連れられて行った七夕祭りではちゃんと老いた。
「そう言ってる間に降ってきたな。」
「まだ先は長いのになぁ…んで、妹紅は来るんだっけ」
「今夜な。寺子屋も冬の間は休業だ、存分に食事を楽しもう!」
「妹紅は飯必要ねえけどな」
「そう言うのはやめないか、平」
実際妹紅に聞いてみたのだが、飯を食う必要は本当にないらしい。餓死しそうになったら自害してリセットしてるとか何とか。腹減らないとかじゃないらしい。よく分からん。老いるよりはマシだろう。動きづらくなるくせに動かないと死ぬ気がしてならない。俺の体質の問題かな?そうかも。大体、半人半妖なのに何でそこまで老いるんだよ。変な話だな。なんかおかしいんじゃねえのか。後天的に妖怪になる方がおかしいわな。と、降り始めた雪を見ながら思う。
「平、昼ごはんにしよう」
「はいよ」
「私も平も今日はあまり動いてないだろう?少し少なめだが、良かったかな?」
「動いてねえのは事実だし。何なら俺は寝起きだし。」
「…冬が近づくと寝る時間が増えるよな、平は。」
「そう?」
昼飯は味噌汁と白米と漬物。いかんせん飯に無頓着なので名前がわからない。多分慧音はわかっているんだろう。慧音自身の話では、妖怪になる前はちゃんとした村娘?だったらしい。嫁修行でもやってたのかと聞いてみたら肯定された。妖怪になればそれが無駄になるんだから嫌だよなぁ。慧音は俺よりマシな扱いだったのかな。わからん。食後は本屋から買った本を読みながら過ごす。今日みたいな異変もなく寺子屋もなく用事もない日はとても休みやすくて助かる。
「とはいえ、明日は朝から雪かきか。」
「妹紅がいるなら溶かせば良い」
「そう簡単には行かない。結局降り積もるし、雪を焼いても溶けるわけじゃない。後周りの目がな…平は良いだろうけど、私は良くないんだ」
「寺子屋としてか?わからんことを…」
「平も一応教職なんだから、多少なりともそれらしい言動をだな…」
「やだー」
正直言って教職に就いてるだけ感謝されるべきだと考えているけどね。他にも寺子屋自体はあるが、何故かここに子供を預けようとする奴らが多くて困る。慧音が信頼されていると言うことの証明だろう。俺が入ってもこの寺子屋を選ぶ親の数に変わりはなかったそうだ。羨ましい。俺と同じような者なのにこうも違うのか。いや、こればかりは住んでいた地域の問題か。慧音の説教らしきものを聞き流し、今朝寝ている俺にぶち込まれた新聞を読む。妖怪の山がどうとか、魔法の森の魔法使いがどうとか。そんな感じの話題ばかり。
「子供向けにしてもらったらどうだ?」
「外の世界の文を読めるとまでは行かなくても、ある程度は読めるべきだろ。新聞くらいはな。…あ、慧音は読めなかったか」
「…ふん。それがなくても歴史は伝えられる」
「満月の時に書いてたアレ、漢字どうしてたんだよ」
「いや、あの姿になるとスラスラと出て来るんだ。…何故だろうな?」
慧音もよく知らない理屈で書いてたらしい。こいつ本当に大丈夫か?こう言う性格だから半人半妖でも生きて来られたのな?妹紅でさえ不死者になったら身を潜めてたのに、人前に出て来るもんなあ…全く訳が分からん。俺も本来なら妹紅と同じような暮らしがしたかったよ。慧音に見つかったのが運の尽きと言うわけか。クソみたいだな。慧音が俺の買った本を読み始めた。今日はここまでと決めた栞を動かさなければどう読んでも良いとは言ってあるから良いんだが、行動が早い。
「むぅ…読めない」
「明日から本屋で絵本買って来るか?」
「流石にそれはバカにしすぎだろう。漢字が使われている本で頼む」
「慧音が今読んでるやつもそうなんだけどな」
慧音のフォルム別解説
慧音(人間)→漢字に弱い
慧音(妖怪)→幻想郷の歴史に関することが頭に入って来るようなもので、幻想郷が関係する文に出て来る漢字に強い。