どうも、半人半妖です 作:覚め
春といっても暖かくなり始めだろうか。巫女が報酬を受け取るには少し早い時期だ。つまり備蓄生活はもうちっとだけ続くんじゃ。長えよ。最近では出てくるのが備蓄ですら無くなったからな。だが吉報だ。今夜は満月。妖怪になると空腹が多少紛れるんだ。慧音は食わないとダメっぽいけど、俺はそんなことはない。なんかほんと、わかんないけど食わなくても良い。限界超えたせいで空腹感が消えた空腹状態に近いとは思うんだけど、まあ良い。食わなくても何とかなるせいだな。
「で、どうした」
「…今夜、妹紅が来るんだ」
「不味いな」
「帰らせたと言うのに…このままでは、平が朝起きたらシワシワでよぼよぼのお爺さんになってしまう…!」
「明日一日中動けねえぞ…」
そう。満月の夜に来た妹紅は、せっかく触れ合えるのだからと言って俺にベタベタ触って来るのだ。慧音が言うには、普段人と触れ合うことが少ないからじゃないかとか言われてるが…果たして。いざとなれば毒針で刺せるので良いが、刺さった状態で呻かれると針の振動が体に響いてつらい。困ったな、あいつ面倒だ。妹紅対策に部屋に閉じ籠るのも考えたが、あいつは何故か確認もなしに部屋の扉を開けて来るので厄介。妹紅の時代でもそう言ったものは考慮されていたと思う。
「と、いうわけで。妹紅を雪かきで使うために今日は雪かきをしないぞ」
「やったー」
「それじゃあ寝るか」
「俺は別に良いが、慧音が食っちゃ寝したら太ってダメじゃないか?」
「…元々何も食べてないから、太るも何もないだろう」
「それもそうか」
妹紅襲来までいつなのか。冬も終わりなので妹紅と一緒に寝るとか無理だぞ。流石に熱い。老いるとそこら辺も融通効かないんだ。老いない妹紅にはわかるまい。不貞寝でもしてやろうかな、でも今からすることが不貞寝か。あんまり変わらないな。慧音は…なんか…もう完全に布団まで取り出してるし。寝巻き以外で寝るのか?その服で?寒くないのか?大体不貞寝するなら畳の上だろ。なってないと言うかなんて言うか。仕方がないので寝るのをやめて新聞を読み始め、新聞の天狗がまだきてないことを思い出す。
「お待たせ〜」
「本当ですよ…ぃや〜、異変解決しても寒いですねぇ」
「まあなぁ…巫女がもうちょい早めに動いてたら、多少はマシなんだろうけど。」
「たらればですねぇ…ところで、今日の雪かきは?」
「面倒臭くてな。飯もあんまり食べてないし」
「あやや…そこまで人里の備蓄は酷い、と…」
「いや、慧音が痩せ我慢してるだけ。俺はその割を食ってるだけ。あとはまあ、雪は昼に溶けるし…」
そう言って解散。新聞には春の足音がどうとか書いてあった。何とも…何とも単調な。子供に読ませるには十分だ。後は検閲だな。もう少しで寺子屋の生徒たちも通える温かさになるだろうから…しっかりと考えなければ。子供向けには少し厳しいと言える妖怪事情、関係ない妖怪の山、巫女のサボり癖やら変な館の門番の話…などなど。後はご贔屓にしてもらってる方へのコーナーはいらない。コーナーって何だよ。慧音が言うにはこういうのはコラムって言うらしいぞ。コラムって何だよ。知らねえよ。
「…今日も新聞は分からんな。」
「そうか?私は結構好きだぞ」
「妹紅は好きでもな。あと来るなら音立ててな。」
「…慧音が寝てるんだから、音立てたらダメだろ?」
「嫌なところで常識持ちやがってよ」
と言うわけだ。去年の新聞を纏める。冬休み前半のものを去年と言うのは少し厳しいだろうか?新聞をまとめて庭に放り投げる。人里は木造建築ばかりなので延焼しないようにね。そして妹紅に火を投げつけるように指示。これをあと数回。こうすると雪が溶ける。屋根の雪?知らん、後で妹紅にやってもらう。暖かくなってきたと言ってもまだ冬は冬。雪が溶けるには時間がかかるので、こうやって燃やすと速い。隣の人はもっと早く出来るらしい。人力の雪かきに勝る利便性はないだろうけど。
「じゃ、後はよろしく〜」
「よろしくって…あのなぁ平。私は客だぞ?」
「俺は招いてないから…慧音は布団に篭ったし」
「あー…慧音って昼寝で布団に篭るのか?」
「知らん。ただ場所が場所だからちょっと邪魔」
「確かに…」
恐らくは畳の跡が嫌なのだろう。後、こいつは多分今日は眠れないからな。まあ頑張って寝てくれ。妹紅を働かせ俺は適当に過ごしながら時間が流れていく。妹紅の手土産は何もなく、今夜の姿で食ってやろうかとも思ったが、身体能力で何故か負けているためそんなこともできない。毒で刺しておいてやろうかな。動かれたら困るか…じゃあ針一本抜いて刺せば良いのでは?後で慧音に話しておこう。クソ痛いだろうけどな。それに慧音が毒を患ったらそれこそ終わりだがな。やめるか。
「いだだだだ」
「っ…!」
「お、始まった」
「いっ…、よし。平はまだ掛かるか?」
「ま…だ…ぁ…、!」
「痛そうだなぁ」
「あっ妹紅」
針が刺さる。何故か俺の背中の針は出始めが一番鋭く、夜明けが近づくとともに鈍くなる。つまり今、妹紅は自分から毒を喰らいに行ったことになる。リセットしてくると言ったがもう遅いことを痛みで視界がぼやける俺の目にも分かるほどに変色した妹紅の指が示していた。俺の妖怪化が終わった時にはすでに妹紅は転げ回っていた。慧音が出していた布団を口に押し込めて声が大きくならないようにしている。あわよくば窒息も狙ってるのかもしれない。その間俺は針が当たらないように慧音から距離を取っておいた。
「天誅」
「自業自得とは言え、言わなかった私たちも悪い…か…?」
「〜っ、ぇぁ━っ」
「悶えとる」
「はぁ…やること済ませてくる」
「はーい」
平の毒の仕組み!
天子のように地上の人間が天人になった事例を見て、人は皆天人要素を持っていると解釈、月の科学力でそれを増やさせて針へ。それとは別に普通に体内で作られる毒が針に入ってる。
まあ、天人になる人間というのは多少は素養があるんでしょうけどね。