BLEACH『未来奇譚篇』   作:春囃子風

10 / 28

今回は死神図鑑ゴールデン四本立てです。

明日も午前、午後に一話ずつ投稿します。


Aesthetic of the Inside-Out――反転する美学

 

死神図鑑ゴールデン「大人は汚い」

 

「ジブン、なんでそんな真っ直ぐなん?」

 

「え?」

 

五番隊舎に仕事の書類を届けに来た桃源院優火とうげんいんゆうかへ、五番隊隊長の平子真子ひらこしんじが問いかける。

 

「俺15の頃そんな綺麗な生き物やなかったで?」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんですかって………(あかん、自身の黒歴史が刺さる)」

 

数百年、汚い大人にならなければならなかった平子にとっては優火の光属性は疋殺地蔵あしそぎじぞうの毒よりも猛毒だった。

 

「そうや、あんな。世の中そんな綺麗なことばっかりやないんや。右向いてる思たら左から刺されることだってある。……なぁ、三番隊のイヅルやって、昔はもうちょっと……なぁ?」

 

何とか人生の醜さを教えようとする平子。そこらの光属性であればかなりのダメージが入るのだが、優火は闇を知ってる光属性と言う護廷十三隊特攻の様な子であった。

 

「はい、イヅル隊長からは『絶望を知れ』って教えていただきました!」

 

「(うわ、イヅルの教育ヘビーやな……)そ、そうか。ほな、絶望は知っとるんか」

 

「はい! でも私、絶望を知った上で、隊長と一緒に美味しい物を食べる時間が一番好きです!」

 

(眩しっ……!! 何やこの子。闇知っとる癖に光っとるやんけ。何で絶望知っとる方が笑顔なんや。普通逆やろ。イヅルのやつ、こんなに真っ直ぐな子よう副官に出来たな。てか、アイツこの子と一緒に飯食いに行ってるん?俺の誘いはいつも断るクセに?しかも美味しいモンを一緒に食うてるん?……何やそれ。羨ましいやん。……あかん。仕事する気なくなったわ。サボろ)

 

 

 

 

 

 

死神図鑑ゴールデン「大人は寂しい」

 

五番隊隊舎・執務室。

 

「では、失礼します!」

 

三番隊副隊長、桃源院優火が帰った後。

 

「......」

 

五番隊隊長、平子真子は机に突っ伏していた。

 

「眩し......なんやあの子......」

 

イズルの副官・桃源院優火。闇を知った上でなお笑える少女。その精神性は、平子にとっては疋殺地蔵の毒以上だった。

 

「......仕事する気せぇへん」

 

そう呟いて書類を端へ追いやった瞬間。

 

ガラッ

 

「あ、平子隊長がサボってる」

 

八番隊隊長・浮竹都依うきたけとよりが顔を覗かせた。

 

「五番隊隊長がサボってるなら、八番隊隊長の私がサボってても良いよね〜」

 

「......ウッサいわ、ボケ」

 

平子は机に突っ伏したまま手だけ振る。

 

「俺、今、疋殺地蔵以上の猛毒喰ろうてグロッキーやねん」

 

「え?」

 

都依は首を傾げる。

 

「疋殺地蔵以上の猛毒喰らって生きてるとか平子隊長、めんど〜」

 

「そこ感心するとこちゃうねん」

 

「普通、死ぬよ?」

 

「せやな!」

 

「やっぱり隊長って大変だね〜」

 

「お前が言うな!」

 

そんな感じに、平子をからかっていると都依の背中から静かな声が響く。

 

「隊長」

 

「げっ」

 

声を掛けられた都依の表情が一瞬で曇る。声がした方を振り向けばそこには案の定、八番隊三席の世敖景博よあそびけいはくが腕を汲んで立っていた。

 

「探しましたよ」

 

「ケイ〜」

 

「書類がまだ残ってます」

 

「ヤダ」

 

「駄目です」

 

「平子隊長助けて」

 

「自分で何とかせぇ」

 

「薄情者〜」

 

「今迄散々おちょくっといてそんな時だけ虫が良すぎるわ、アホ」

 

景博は平子に頭を下げ、そのまま平子に見捨てられた都依の腕を掴み、執務室から引っ張り出していく。

 

「帰りますよ」

 

「ヤダ〜」

 

「帰りますよ」

 

「ゆゆ〜」

 

「八々原副隊長は先に戻って仕事しています」

 

「ゆゆの裏切り者〜」

 

ズルズルズル......

 

都依は引きずられながら連行されていった。

 

「仕事したくな〜い......」

 

「駄目です」

 

「ケイ〜......」

 

そんな声だけが廊下の向こうへ消えていく。

静かになった隊長室。残された平子は天井を見上げる。

 

「......ええ部下やなぁ」

 

ふと、平子は自身の副官である雛森桃ひなもりももの顔が浮かぶ。

 

「......今度、俺も桃を飯でも誘おっかな?」

 

 

 

 

 

死神図鑑ゴールデン「散歩の美学」

 

瀞霊廷せいれいてい。

 

「こんにちは〜」

 

白いワンピースに黒いカーディガンを羽織った金髪碧眼の少女が、鼻歌交じりに通りを歩いている。

 

「あ、終焉美学しゅうえんびがくちゃんだ」

 

「今日も建物見て回ってるね〜」

 

「白亜はくあ副隊長と同じ趣味なんだろうね」

 

護廷十三隊の隊士達も、すっかり見慣れた光景らしい。

 

「こんにちは〜」

 

「こんにちは。今日は三番街まで来たんだ」

 

「うん!」

 

少女は笑顔で頷く。

 

「じゃあ楽しんでね」

 

「はーい!」

 

そのままスキップで少女は去っていく。

 

六番隊舎・執務室

 

「……また勝手に歩いてる」

 

白亜が窓の外を見ながら呟く。そんな白亜にルキアが尋ねる。

 

「止めなくてよいのか?」

 

「……別に悪さはしない」

 

「そうだが」

 

「……好きにさせてる」

 

「珍しいな」

 

いつもの様に一通り瀞霊廷を見て回った終焉美学は橋の上で立ち止まる。

 

「……きれい」

 

目を輝かせながら見つめる先には夕日で紅く染まった街並みが広がっていた。

 

「こんなところもあったんだ」

 

美学は今日会った隊士達の顔を思い浮かべる。

 

「みんな、優しいなぁ。…また来よう」

 

嬉しそうにそう言って微笑む。それを少し離れた場所から見ていた白亜が、小さく笑って呟く。

 

「……故郷、だもんね」

 

終焉美学は浅打あさうちだった頃、虚圏ウェコムンドへ流れ着いた。そのため瀞霊廷で暮らした記憶はほとんどない。だから彼女は今日も歩く。初めて訪れる"故郷"を楽しむために。

 

なお本人達以外は、「また建築鑑賞か」くらいにしか思っていない。

 

 

 

 

 

 

死神図鑑ゴールデン「芸術家筆を選ばず」

 

午後の昼下がり、趣味の瀞霊廷の建築巡りをしていた白亜に一護が声をかける。

 

「よう。お前また『王虚の閃光アレ』を絵の具って言い張ったらしいな」

 

「誰が何と言おうとアレは絵の具」

 

「……お前、そう言うとこあるよな。そのくb…チョーカーの時もそうだったが」

 

「芸術家とは凝る者。凝らなければ駄作しか生まれない」

 

「……ならせめて普通の虚閃セロにしろよ。始解の度に毎回撃ってるそうじゃねぇか」

 

「……人間の癖って恐ろしい」

 

「は?」

 

「黒崎隊長は『王虚の閃光グラン・レイ・セロ』の出し方知ってる?」

 

「え?あ、あ〜、確かグリムジョーが言ってたな。虚閃に血混ぜるって」

 

「そう。終焉美学しゅうえんびがくの先端の宝石は私の血。だから始解状態の美学を通すと全ての虚閃セロが『王虚の閃光グラン・レイ・セロ』になる」

 

「はあ!?」

 

白亜の言う通り、終焉美学は始解する際に柄から刃の方に持ち替えて自身の手を切り、滴り出た血が鍔の部分で凝固して宝石に変化していた。

 

「中央霊術院ちゅうおうれいじゅついん時代から美学を通して霊圧を操作していたから今更この癖の矯正は難しい」

 

「………お前のこと人間臭いって前に言ったけど、どちらかと言うと人間臭いってより面倒臭いヤツだな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。