彼奴が登場します。
今回は少し長いです。
今日も午後にもう一話投稿します。
瀞霊廷・一番隊舎の会議室。そこでは護廷十三隊の隊長達による隊首会議が行われていた。
「では、虚圏にて観測された未知の霊圧反応の調査へと赴く者は、十三番隊隊長・黒崎一護を陣頭に同隊副隊長・石田雨竜、四番隊副隊長・黒崎織姫、六番隊副隊長・間街白亜、外部協力者として茶渡泰虎、以上5名とする。黒崎隊長、兄から他に特出事項はあるか?」
「いや、特にな…あっ」
白哉総隊長の質問に問題無いと答えようとした一護だが、ふと、あることを思い出す。
「…私情で悪ぃんだが、明日浦原さんとこから俺宛の荷物が来るんだ。誰か変わりに受け取って置いてくれねぇか?まあ、出来れば顔馴染みのルキアが良いんだが」
「ん、私か?すまんが、白亜がいなくなるので少々手が開かん。と言うより浦原とはここにいる殆どの者が顔馴染みであろう」
「あ、いや、荷物の方の顔馴染みだ」
「荷物?……アヤツか?」
「おう」
「…アヤツは確か『黒崎家の守護神』だかなんだかを目指していなかったか?…なるほど、ついに追い出されたわけか」
「まあ、居場所が無くなったって言えばそうなんだが、俺の子孫の奴らどいつもこいつも、かなりの霊圧らしくてな。メンテナンスも兼ねてこっちに移住することになったらしい」
「ふむ。しかし、それなら尚の事。アヤツの相手をしている暇はなさそうだ」
「マジか〜、どうすっかなぁ」
一護とルキアが悩んでいる所に四番隊隊長・虎徹清音が手を上げた。
「でしたら、私の所で預かってましょうか?黒崎隊長には先日お茶をご馳走して貰ったので」
「いや、虎徹に頼むのはなぁ。織姫が世話になってるから奢ったのに、何なら、今回も織姫連れて行く訳だしなぁ」
「なら八番隊で預かろうか?このまま、ズルズル決め倦ねるのもコスパ悪いし、この前、私も黒崎隊長にはお茶、ご馳走して貰ったし。明日なら私の漫画とかも一緒に送られて来るはずだからさ」
「お、良いのか?悪ぃな、都y…「待て、一護」……ん?」
都依に頼もうとした一護をルキアが止める。そして、都依のはだけた肩や胸元に視線を向ける。
「…アヤツが都依殿や熊如殿がいる八番隊舎で大人しくしていると思うか?」
「………まあ、アイツもあれから百年以上経っているし
……………………………………大丈夫だろ。多分」
「おい貴様、何だその長い間は!?それに最後に多分を付けるな、たわけ!」
「あ〜、なんか色々とメンド〜なのは分かったよ。まあ、大丈夫じゃない?最悪ケイに任せるし」
「「…………」」
一護とルキアは後で景博に飯でも奢るか、菓子折りでも送ろうと心の中で誓った。
翌日
一護達が虚圏に調査へ向かった後、本来は志波空鶴の屋敷付近に届けられる(落ちてくる)はずだった荷物は転送装置の不具合により反対側の流魂街の外れに届けられた。
「で、とよ姉はいつもみたいにサボりで、ケイちゃんもとよ姉探しに行ったから、あーしがその荷物を拾いに行くって理由」
八番隊副隊長の八々原熊如が荷物を拾いに行く理由を同行している三番隊副隊長の桃源院優火と九番隊副隊長の掛詞解那に説明する。
「てか、今回のとよ姉の漫画かなりの量らしいし。黒崎隊長の荷物もどのくらいか分かんなかったからマジ助かる〜。ありがとね、ゆかちゃん、解那っち」
「いいよいいよ、困った時はお互い様だし」
「ええ。私も丁度、記事のネタを探してましたので」
そう。荷物を拾いに行こうとしていた熊如を優火と解那が偶然見つけて、事情を聞いたら二人とも手伝いを申し出てくれたのだ。
「しかし、何で荷物の座標がずれたのでしょうか?」
「あ、それはね〜、とよ姉が毎週月曜に週刊誌を頼んでいるのが原因らしいよ」
「「え!?」」
解那の疑問に熊如がなんてことはないような顔で答える。
「今まで毎週で浦原商店の通販使う人なんて早々いなかったのに、とよ姉が京楽オジサマとリサ姉に無理言ってお願い聞いてもらってたから、予想してたより早くに機械の一部に寿命が来たって言ってた。浦原店長が」
「「…………」」
ほぼほぼ都依の所為なのにその荷物を本人はサボって副隊長である熊如に取りに行かせるのは隊長としてどうなのだと優火と解那は黙り込む。
「熊如ちゃん、流石に浮竹隊長に怒ったほうが良いんじゃない?」
「え?ん〜、今回の事はとよ姉知らないし、何なら今頃ケイちゃんにあーしが荷物取りに行ったこと聞かされて罪悪感で涙ぐんでるか慌ててるかもね。それに…」
熊如は一拍置いてキラキラした瞳で言い放つ。
「いざって時のとよ姉はスッっっごく頼りになるし!」
好きな人を全力で語るような熊如を見て解那は吹き出す。
「ふっ、ふふっ。いざって時は頼りになるですか。確かに隊長達は皆さんそうですね。私のところの檜佐木隊長もいつもは振り回されてる苦労人って感じですが、いざって時の背中は大きいです」
「あ、なんか分かります。ウチのイヅル隊長もいつもは猫背なのに私達を守ってくれる時は背筋が伸びるんです!何なら卍解を使っている時のほうが姿勢良いくらいですし!」
「ね〜。隊長ってそう言う人達なんだよね〜」
「ええ」
「はい!」
3人は笑いながら目的地に歩を進める。
「ここらへんですね」
荷物が落ちた場所に辿り着き、解那は辺りを見渡す。その隣で優火が大きな穴を見つける。
「あ、あそこじゃない?」
「お〜、でっかい穴。マジで荷物大丈夫かな〜?」
「取り敢えず、確認しに行きましょう」
そうして、3人が荷物に近づいたその時、
バキンッ
「しゃぁーーーーー!!! ついに出られたァァァアアア!!! 一護のヤツ、このコン様の寝込みを襲って木箱に閉じ込めるとは、何って野郎だ!……いや、待てよ。ヒゲ親父の可能性もあるか?夏梨や遊子辺りが間違って入れたなんてことも……」
木箱を中から破戒して飛び出してきたのは喋るライオンのぬいぐるみと言う珍妙な生物?だった。
「ぬっ、ぬいぐるみさんが喋ってる」
「ん?」
優火の声でライオンのぬいぐるみ、コンが優火達の存在に気付く。そして、
「切れ目クール系の美女に、金髪ミニスカ巨乳黒ギャルに、純朴そうな美少女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
愛くるしい筈のぬいぐるみという存在が愛くるしさの微塵も感じられない表情と声で高らかに叫ぶ。
「そこのお硬そうなお姉さァァァアアアン!このキュートでプリティーなコン様をその柔らかな胸の中で抱きしめてぇぇえええ!」
「ヒッ!?」
解那は自身に猛スピードで抱き着こうとして来るコンに珍しく怯えた表情を見せる。
『一骨』
「へぶっ!?」
解那まであと数十センチという距離まで飛んで来たコンは優火の放った一骨により逆方向に有った木へ叩きつけられた。
「ぐほっ!?さ、流石死神。純朴そうな美少女なのに良い拳持ってやがる……ガクッ」
「え?あ、あ〜!?ご、ごめんなさい〜!ぬいぐるみさん、大丈夫ですか!?なんか、女に汚い悪徳貴族みたいだったからつい〜!」
「ゴフッ!?」
優火の何気ない一言が、コンの身体に六杖光牢の様に突き刺さる。
そんなボロ雑巾以上のボロになったコンを熊如は拾い上げて抱きかかえる。
「何これウケる! こんなボロボロなのに超モフモフじゃん!」
「ふ、ふぉおおお!?な、何だこのギャル!?あ、良いにお〜い。柔らか〜い。………マ、ママ〜!」
「お〜、ヨシヨ〜シ。コンコンいい子だね〜」
「ち、ちょっと何やってるんですか!八々原副隊長!?」
急にコンを抱きかかえた熊如にフリーズが解けた解那が叫ぶ。
「そんな、呪われてそうな変態ボロ雑巾なんか今すぐポイッてしてください!ポイッて!!」
「え〜、大丈夫だよ。だってこの子、黒崎隊長の義魂丸だし。あーし1度現世でチラッと見たし」
「え!?義魂丸って自分で動くんですか?」
「さ〜?黒崎隊長のだから特別製なんじゃない?」
「い、いくら黒崎隊長の義魂丸だからってこんな変態、今すぐ私の風雷で、粉々にしてしまった方が世の為です!」
「え〜、可哀想じゃん」
3人が言い争っているのをコンは不思議そうに眺めながらポツンと呟く。
「……さっきから言ってる黒崎隊長って一護のことか?アイツ、隊長じゃなくて死神代行だろ?」
「「「え?」」」
「コンが記憶喪失?」
コンを抱えたままの熊如を含む3人と一匹は六番隊舎のルキアのもとを訪れていた。
「姐さ〜ん!!」
ワシッ
ビタンッ
グニッ
「そんなふうには見えぬが?」
「あっ、ああっ、あぁ〜。この容赦の無い踏みつけ。俺様は幸せ者だなぁ〜」
「「え、え〜」」
「ルキア隊長、マジパナ〜い」
熊如の胸から飛び出し抱きついてこようとしたコンを、ルキアは慣れたように頭を鷲掴みにし、顔面を地面に叩きつけて、その後頭部を踏みつける。
そんな光景を見た3人のうち優火と解那が踏まれて嬉しがってるコンを含めてドン引く。
「ふむ、このままでは拉致があかんか」
そう言ってルキアはコンから足をどける。するとコンは何事もなかったかのようにスッと起き上がり、執務机の上に飛び乗る。
「コン、貴様の一番新しい記憶は何だ?」
「え〜と、一護が大学に通う辺りだから、尸魂界が滅却師達に襲われて、それを撃退してからちょっとの辺り?」
「……ふむ、では『一勇』や『苺花』の名に聞き覚えはあるか?」
「かずい?いちか?いや、分かんねぇ。なんか懐かしい感じはするんだけどよ」
「ふむ」
「てか、姐さん。隊長になったんだな」
「ああ、なんなら恋次と結婚したしな。先程貴様に聞いた苺花とは私達の娘の名だ」
「はあ!?姐さんとあの赤パイナップルが結婚!?…うっ、なんか頭が」
ルキアと恋次が結婚したことを聞いたコンが頭を押さえる。
(この反応、一護と織姫が結婚したことを話すか見せつければ、記憶が戻りそうだな。話しただけで記憶が戻れば良いが見せつけるとなると一護達が虚圏から帰ってきてからになるか。……そもそも、義魂丸が記憶喪失を起こすものなのか?浦原や涅隊長、零番隊の桐生殿なら分かるだろうが。だが、私に会っていて、一勇や苺花の名前に拒絶反応のような物を示さないのなら故意的なものや呪いの線は薄いと見て良いだろう)
「あ、あの〜、朽木隊長?1つよろしいですか?」
「ん?優火殿?構わんぞ」
思考の海に潜っていたルキアが優火の声で意識を浮上させて、質問の許可を出す。
そんなルキアに優火は頭を下げて申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい!多分コンさんの記憶が無くなったのは私が一骨を叩き込んだからです!」
「………一骨を叩き込む?」
ワシっ
「あっ♡」
優火の謝罪の言葉で当時の状況を瞬時に理解したルキアは頭に怒りマークを浮かべならコンを鷲掴みして窓に近づく。そして、
「飛べ!!」
窓から思いっきりコンを放り投げた。
ヒューーー……
「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!」
コンの悲鳴だけが遠ざかっていき、部屋が静寂に包まれる。そんな中で、3人はポツンと呟く
「……今の投げ方、いつも?」
「すごく慣れてましたね……」
「……あれなら生きてますね」
『コンの記憶が戻らなくても私的には不便も不憫も無いが、仲が良かった一勇のことも忘れているのはあの子が可哀想なのでな。アヤツを連れて一番隊舎まで恋次と苺花に会いに行ってくれ。もしかしたら記憶が戻るかもしれん』
そうルキアに言われて、3人は飛んで行ったコンを拾って、そのまま一番隊舎まで来ていた。
「なぁ、何で一番隊舎なんだ?恋次って確か六番隊の副隊長だろ?」
「あ、そっか〜。コンコン記憶無いもんね。今はねルキア隊長が六番隊を率いてて、お兄さんの朽木総隊長と阿散井副隊長が一番隊を率いてるの」
「はあ!?あのムッツリ白哉が総隊長!?」
「…総隊長をムッツリなどと、やはりこのボロ雑巾は今すぐポイッした方が良いのでは?」
「あはは。まあまあ、解那さん落ち着いて」
「ん?お前ら一番隊になんか用か?」
「「「阿散井副隊長!」」」
一番隊舎を入ってすぐにお目当ての一人と出会う。
「あっ、赤パイナップルが網に入れたスイカみたいな髪型になってる!?」
「あぁん?て、何でここにこのクソぬいぐるみがいんだよ!……隊長が言ってた一護の荷物っててめぇか!?てか、誰の髪型が網に入ったスイカだ!!てめぇ百年前ぐらいにも同じような事言ってたじゃねぇか!?ぶった斬んぞ!!」
現在の恋次の髪型はバンダナを頭に巻きバンダナの上から出した長い赤髪を一本の太い三つ編みにしていた。確かに見方によっては「網に入ったスイカ」に見えるかもしれない。
「あ。阿散井副隊長、なんかコンコン、今絶賛記憶喪失中みたいでルキア隊長と阿散井副隊長が結婚していることも知らないみたい」
「記憶喪失?コイツが?……てめぇ、そんな繊細な脳ミソだったか?」
「ンだとコラッ!!」
熊如に抱かれたままのコンと恋次がガンを飛ばし合う。そこへ、
「父様〜。叔父様知らない?午後から剣術見てもらう約束してたんだけど」
恋次とルキアの娘である、一番隊三席の阿散井苺花が駆け寄ってきた。
「おい、苺花。仕事中は「父様」じゃなくて「副隊長」って呼べっていつも言ってるだろ。後、隊長のことも「隊長」か「総隊長」と呼べ」
「うっ、ごめんない、父s…副隊長」
恋次が苺花の仕事中の呼び方に注意をする。その横で苺花を見ていたコンが叫ぶ。
「長身、気が強そうな美少女!いっやっほぉぉぉぉぉぉおおお!!赤パイナップルの娘って聞いてたからゴリラみたいなのだったらどうしようって思ってたけど、流石姐さんの遺伝子!!」
苺花が予想以上の美少女だったため、喜び叫ぶコン。そんなコンを見つけた苺花がゴミを見るような目になって吐き捨てる。
「げっ、一勇とよく一緒にいたキモいぬいぐるみ!?何でコイツが居んの!?」
「一護の荷物だと」
「あ、黒崎隊長の……」
苺花が少しガッカリした様に声のトーンを下げる。
「いや、アイツは上に居んだから、流石にそんなにホイホイ降りては来れねぇだろ」
「な、誰が一勇が居なくて寂しいって言ったのよ!?」
「いや、自分で言ってんじゃねぇか」
そんな2人の話を聞いていた優火が恋次に質問する。
「あのー、ルキア隊長も言っていましたが、その「一勇」って誰なんですか?」
「ん?ああ、一護と井上……四番隊の黒崎副隊長との息子だよ」
「「え!?」」
一勇のことを知らない優火と解那が驚きの声を上げる。その横で熊如に抱かれたコンが理解が追いつかない様な表情を浮かべる。
「は?一護と井上さんの息…子?……え?一護と井上さんが!?……あ、頭が、割れそ…う」
「?ねぇ、とっ、副隊長。何でコイツ一勇を知らないみたいな態度取ってんの?」
「ああ、何でも記憶喪失らしいぞ。お前や一勇の事どころか、俺や一護が誰と結婚したかも覚えてないらしい」
「……………はぁ!?コイツ、一勇の事、なんも覚えて無いの!?あんな仲良かったのに!?バッカじゃないの!?」
コンが一勇の事を忘れたと聞いて苺花が怒る。
「いや、俺に言われても困るんだが………てか、お前、本当分かりやすいな」
「「「あ〜」」」
苺花の反応に副隊長3人も理解するが言葉にはしない。しかし、ここにはそれを言葉にして声に出す空気の読めないバカが一匹いた。
「え?あ〜、なるほど、嬢ちゃんはその一勇ってヤツが好きなのか」
ガシッ
「オホ♡」
コンの言葉で苺花は顔を赤らめながら頭に怒りマークを浮かべ、コンを鷲掴みして熊如からぶんどる。そして、
「飛べ!!」
コンを手から離し、そのままサッカーボールの様にコンを思いっきり蹴り飛ばした。
「流石、姐さんの娘だァァァァ!!」
コンは叫びながら綺麗な放物線を描いて飛んで行った。
「苺花、そんなもん蹴ると足汚れるぞ」
「父様が変なこと言うから思いっきり蹴っちゃったじゃん!!」
「俺のせいかよ!?」
「ウッサい!母様と叔父様に言いつけるから!!」
「おい!ルキアと隊長出すのは反則だろ!?」
そんな父娘漫才を繰り広げる恋次と苺花の隣で副隊長3人は苺花の蹴りに感嘆の息を漏らしていた。
「お〜!流石、苺花ん!パナイ蹴り〜」
「……かなり良いのが入ったけど、コンさん大丈夫かな?」
「あの汚物なら大丈夫だと思いますよ」
八番隊舎付近。そこでは、八番隊隊長の浮竹都依が同隊の三席である世敖景博と歩いていた。否、彷徨っていた。
「ゆゆ〜。私の所為なのに重い荷物運ばせてごめ〜ん。どこ〜、ゆゆ〜。……グスンっ」
「……隊長、戻りましょう。大丈夫ですよ。八々原副隊長が貴方のことを嫌いになるなんてことありませんから。貴方だって本当はわかってるでしょ?」
都依は景博からの「浦原商店の転送装置が壊れて荷物の座標がズレました」の一言で自身の過剰通販が原因である事を理解し、さらにそれを熊如一人に運ばせてしまったことに罪悪感を覚えたのだ。さらには、熊如が一向に帰ってこないので「もしかして嫌われた!?」と慌てふためきこの数時間、ずっと八番隊舎付近を彷徨っていたのである。
「……ケイ、人の心は移り変わりやすいんだよ。例え一那由多分の一も可能性が無いとしても、絶対は無いんだよ」
「……那由多と言う普段は絶対聞かない桁が出て来た時点で有り得ないと言っているようなものでは?そもそも、そんなに嫌われたくないのであれば、普段からそれこそ一那由多でも良いのでちゃんとして下さい」
「……ケイがいじめる。ゆゆ〜、どこ〜?ゆ……ケイ、止まって」
「?」
景博の前を歩いていた都依が突然立ち止まって後ろの景博を前に出さないように片腕を横に延ばす。そんな都依の突然の行動に疑問符を浮かべる景博。すると、
ヒューーーーー
ドガンッ
「!?」
丁度、都依達の進行方向に空から黄色い物体が降ってきた。
「……痛っててて。流石、姐さんの娘。良いお御足を持ってらっしゃる……ん?」
空から降ってきた黄色い物体、コンが起き上がり、そして、近くにいた都依を見つける。
「美、美女……! しかも、このだらしなさ、このはだけ具合、まさに俺様が妄想し続けた『理想の脱力系お姉さん』そのもの!! お姉さァァァアアアン! このキュートでプリティーな俺様を、今すぐその真っ白な鎖骨の間に挟んでえええええええ!!」
『影から支えろ 黒宝』
都依目掛けてジャンプしたコンの影から黒い縄が出てきてコンを空中に縛りあげる。
「グエッ!な、なんだこの縄!?」
「………浮竹隊長。コレは何でしょう?敵…ですか?」
空中に固定されて慌てふためくコンを自身の斬魄刀を始解させ、油断なく構えて景博が都依に問う。
「あん?…おいてめぇ、この金髪チャラ男!コレ、てめぇの能力か!?このコン様を縛りあげるとは太え野郎だ!!」
「いや、あんなセクハラを大声で叫びながら突っ込んでくる不審物がいたら止めるのは普通でしょう」
「………あ〜、ケイ、大丈夫。多分だけどこの子、黒崎隊長が言ってた荷物の義魂丸だわ」
「へ?は?こ、この不審物が黒崎隊長の義魂丸?セクハラ発言を大声でしていた、この不審物が?」
「お〜、珍しくケイがバグってる」
コンを一護の義魂丸だと当たりを付けた都依が景博に説明するが、景博はあの後輩思いで真面目に仕事をする一護の義魂丸が目の前のセクハラ不審物であることを理解できず、バグりだす。そんな中、
『雷命輝きて聞き入れ給え、清風纏いて静まり給え 嵐神』
「え?ぎゃあああ!?」
コンに風と雷の衝撃波が直撃する。
「ナイスです、世敖三席!この汚物、浮竹隊長にまでセクハラをしようとしたのですね!!やはり、この世から消し去るべきです!」
嵐神を始解させ、2本のエストックを構えながら解那が言い放つ。
「あ、とよ姉〜」
「……!あ、ゆ…ゆゆ〜。私のこと嫌いになってない?ごめんね〜!本当にごめん〜!」
解那の後からやって来た熊如に都依が抱きついて謝りたおす。
「お〜、とよ姉〜。ヨシヨ〜シ、大丈夫だよ〜。あーしがとよ姉を嫌いになるわけないっしょ」
「ゆゆ〜」
「……え〜と、八々原副隊長、1つお聞きしたいのですが、あの不審物は…?」
「ん?あ〜アレは黒崎隊長の義魂丸のコンコン」
「本当に黒崎隊長の義魂丸なのか…………にわかに信じ難い」
景博はコンが一護の義魂丸であることをまだ疑っていたが、熊如からもそうであると言われ、一応、現実であることを受け止める。
「あれ?なんかコンさんの様子、変じゃない?」
そんな中、一人だけコンの身を按じていた優火が異変に気付く。
「お、おおお!?く、苦しい」
「え!?さ、流石に斬魄刀はやり過ぎでしたか!?」
急に苦しみだしたコンを見て自分の所為かと解那が慌て出す。そんな周りを気にする余裕もないのか、コンは頭を抱えたまま蹲る。
「あ、頭が割れ…る」
コンが苦しみ出す少し前の虚圏。
一護、石田、茶渡、織姫、白亜は謎の霊圧が発生している目的地に歩を進めていると目的地方向から現れた敵と遭遇していた。
「キモい!!」
その敵と言うのが無数のマネキンである。
一護達が次々と襲いかかってくるマネキンを吹き飛ばす。
「何でこのマネキン、全部が全部虚《ruby》ホロウ《/rt》《/ruby》の仮面がコンの顔してんだよ!?」
そう、先程から一護達に襲いかかってくるマネキンの顔は全て白色のコンの顔そっくりであった。
「無駄口叩いてないで手を動かせ黒崎!」
石田も《ruby》銀嶺弧雀の連射で次々とコンマネキンを沈めていく。
「つっても石田、このままじゃ埒が明かねぇ」
「全員が同じ見た目なら、多分だけど、どこかにコイツらを生み出している親のような存在がいるはずだ」
「どこかってどこにだよ」
「僕達の目的地なのは間違いない。そして、こう言う場合は敵の層が厚い方向の可能性が高い」
「マジかよ。かなり分厚いぞ」
「……みんな、下がって。道を作る為に絵の具をぶち撒ける」
「「「「「!?」」」」」
『受け入れろ 終焉美学』
白亜が何をしようとしているのかを瞬時に理解した一護達は白亜の後ろに避難する。そして、
『王虚の閃光』
白亜の放った絵の具が一直線にコンマネキンを吹き飛ばす。
「…道、出来た」
「お前、相変わらずだな」
「……そう?」
一護達は白亜の作った道を突き進む。するとそこには巨大なコンの顔から大樹の様に根を伸ばした存在がいた。
「キメェ!?」
その存在のあまりにもあんまりな姿に一護が叫ぶ。
「…醜い。ただ、アレが所謂親で間違いない」
そう言って白亜が、コンの鬣をモチーフにしたトゲの先端部を指す。そこにはまるで果実の様にコンの顔があり、その顔が地面に落ちる度、その顔から身体が生え、コンマネキンが出来上がっていた。
「いや、キメェよ!?」
「……あの感じ、ルキアや恋次と一緒に戦った破面の能力に似ている」
「!!本当かい茶渡くん?」
「ああ。ただ、アイツの顔はコンではなく牛の頭蓋骨の様なものだったし、出していたヤツも普通の頭蓋骨だった。それに服も着ていた」
「……牛の頭蓋骨はルドボーンって破面。アイツはヤミーに潰されたけど、もしかしたら骸骨の実だけは残ってたかもしれない。それと、身体がマネキンなのは、あの親の霊圧を見て分かった。アレは私の露命藝術」
「「「「「!?」」」」」
「私の虚としての斬魄刀は砕け散った。でも、その破片がどこにあるのかは知らない」
「なるほど、つまりその破片と骸骨の実を何者かが拾い上げ、一つにまとめ、あの改造魂魄の顔をした大樹を作り上げたと」
「いや、どこの誰だよ。その前衛的な馬鹿」
「コンちゃんのファンだったのかな?」
「……取り敢えず、アレは壊すべき。最悪、破片でもあれば浦原喜助か涅隊長が原因を究明してくれる」
「まあ、それもそうか」
そう言って一護は2本の斬月を折り重なる様に前に出し、白亜は終焉美学をバトンの様に回し始める。
『『卍解』』
『天鎖斬月』
『死甲斐美術館』
『滅却師完聖体』
『巨人の右腕』
『盾舜六花』
石田は無数の光の羽根を背中に出現させ、茶渡は右腕を黒と赤の鎧で覆い、織姫は六花を呼び覚ます。そして、
『月牙天衝』
『公開・黒虚閃』
『星くず』
『巨人の一撃』
『六天砲盾。私は拒絶する』
5人の最大火力が大樹のコンの顔部分を吹き飛ばした。
戻って現在、瀞霊廷。
「……思い出した」
苦しみ出していたコンが静かになったと思ったらふと呟いた。
「そうだ。俺様の記憶、アイツらから貰ったバッチが暴走して……」
「「「コンちゃん!」」」
コンが尸魂界に旅立つ日の朝。コンに10歳くらいの3人の女の子が抱きついていた。
「おいおい、お前ら。ずっとお別れって訳じゃないんだ。また直ぐにでも会えるさ」
「本当?」
黒髪ショートボブの大人しそうな雰囲気の子、黒崎凛護が聞いてくる。
「ああ、お盆とかには帰ってこれるさ。ただ、尸魂界の一護や一勇のヤツは俺様が居ないと心配なんでな」
「うう、コンちゃんが居ないとアタシのサンドバックが」
「……私も専用のサッカーボールが減る」
コンをサンドバック扱いしたセミロングの茶髪をサイドテールにした子、黒崎姫愛とサッカーボール扱いしたオレンジ髪ショートヘアーの子、黒崎頼一がおもちゃが減ると悲しむ。
「姫愛、頼一!てめぇらはもう少し凛護の淑やかさを見習え!」
この3人が巷で『黒崎家のお転婆三姫』と呼ばれて有名な黒崎家の三つ子の姉妹である。
「コンちゃん。コレ、お守り。私達3人で作ったんだ」
そう言って、凛護はコンの顔をした白色のバッチを手渡す。
「コンちゃん、巻き込まれ体質なのに力とか全然ないからさ〜。アタシらでコンちゃん守れる様にお守り作ったんだ」
「…因みに、バッチの形を整えたのは私」
3人で作ったと言うコンバッチを見て、コンは笑みを溢す。
「ふっ、お前ら見た目は遊子や夏梨そっくりなのに中身は一護やあのヒゲ親父そっくりだな」
「私達のご先祖様のこと?」
「おうよ。アイツらみんなお人好しだったからな〜。………凛護、姫愛、頼一、あんがとな」
コンはそう言って大切そうにコンバッチを胸に付けた。
しかし、このコンバッチがコンの霊圧を奪い、尸魂界への輸送中に穿界門の狭間に落ち、時間軸が少しズレて虚圏へと落ちた。コンの霊圧を吸収し、また、虚圏へと落ちた事により使用されていた材料のルドボーンと露命藝術の欠片が覚醒、今回の事件が発生したのである。
「あ、バッチ!?アイツらに貰った俺様のバッチは!?」
記憶が戻ったコンは自身が凛護達から貰ったバッチを身に着けてない事を思い出し慌て出す。
「え、え?貴方、最初からそんなもの付けてませんでしたよ?」
急に雰囲気が変わったコンにたじろぎながらも解那は、バッチなど最初から付けていなかったと答える。
「ど、何処だ!?俺様と一緒に送られた荷物の何処かに……」
グニッ
「ん?なんか踏んだか?」
バッチが無いことに焦っているコンの上から、一護が落ちてきた。空中に黒腔が開いているところを見るにどうやら白亜が虚圏から直接尸魂界に繋げたらしい。
「……て、てめぇ、一護!何しやがる!!」
「ん?なんだコンか。そんな所いたら危ねえだろ」
「てめぇが俺様の上に落ちてきたんだろうが!!」
コンが顔を上げ、一護に飛び掛かろうとして動きを止める。
「一護、お前が手に持ってるそれって……」
「ん?ああ、やっぱお前のか。てか、このバッチの所為で虚圏が大騒ぎだったぞ。お前の顔したマネキンが大量に暴れててよ」
「いや、それはバッチが暴走したからで流石に俺様の所為では………てか、そのバッチはどうなるんだ!?」
「…流石に危ねえからな。十二番隊に預けることになるだろ」
「じ、十二番隊って、あの白玉野郎の所かよ!?…なぁ、一護。頼むから精々下駄帽子の所にしてくれねぇか?お前だって覚えてるだろ、俺様があそこでナイスバルクに改造されたのを!?そのバッチが無事に返ってくる未来が見えねぇ!!」
かなり力強く言ってくるコンに驚きながら一護は肯定する。
「…ああ、まあ、そうだな。てかこのバッチ、そんなに大切な物なのかよ」
「そりゃそうだろ!アイツらが俺様のお守りにって作ってくれた物なんだから!!」
「アイツら?」
「お前の子孫の三つ子だよ」
「………へぇ」
コンの話を聞いた一護は少し笑ってから手に持っていたバッチをコンに投げ渡す。
「なら、てめぇが持ってろ。ただ、かなり危ねえ物みてぇだから、1度浦原さんには見てもらうからな」
「……一護、すまねぇ」
「おう」
コンとのやり取りが一段落した所で一護はふと、何でコンがここに居るのか疑問に思い周りを見る。すると、不可解な物を見たと言う様に動きを止めてる都依達が目に入った。
「何やってんだ、お前ら?つうか、掛詞。何で斬魄刀解放してんだよ?」
「え、あ、コレはその汚物を…」
「汚物?……………白亜」
「ん?」
一護は解那の汚物と言う言葉に一瞬疑問符を浮かべるが、直ぐにその言葉が何を指しているのか理解し、同時に何が起きたのかを大体察する。それから、自身の後に黒腔から降りてきた白亜を呼ぶ。
「お前、バッティングセンターって知ってるか?」
「………了解」
一護は白亜に質問しながら背中に背負っている大剣の方の斬月に手を伸ばす。白亜は一護の台詞と行動で何をやろうとしているかを理解し、大事そうに胸にバッチを付けているコンに近づく。そして、
ガシッ
「おっ♡…ん?この手の感触、お前、もしかして男?」
「おい、コン。もし、一勇に会ったらよろしく言っといてくれ」
「へ?」
コンが一護の言ったことを理解する前に白亜が直ぐ様セットポジションに入る。
「真ん中ストレート」
「ぶっ飛べ!!」
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
白亜がコンを思いっきり一護の方にぶん投げ、そのコンを一護が斬月で思いっきり打ち上げた。
「おー、飛んだ飛んだ」
「……ホームラン」
「ナイスバッティングです、黒崎隊長」
「あーし、あんなホームラン初めて見た〜」
――その日、尸魂界上空を黄色い流れ星が駆け抜けたという。
世敖景博の斬魄刀
・斬魄刀名:『黒宝』
・解号:『影から支えろ 黒宝』
・見た目:漆黒の鞘と柄、白銀の鍔。始解しても形状は変化しないが刃の影が少し揺らめきだす。
・能力:自身か対象の影から黒い縄を出現させ、縛り拘束する。対象にできるのは一人または一体のみ。拘束されたものは空中だろうがその場に固定される。
・具象化した姿:黒髪ショートツーブロックの15歳くらいの美少女。口ピアスに地雷系メイクを施して、ピシッと軍服を着ている。