今回はBLEACH版『ケンミンSHOW』みたいな回です。
次話は来週日曜日に投稿予定です。
それから、来週日曜日からシルバーウィークに別のBLEACHコラボ小説を投稿予定です。
ガララッ
「おっちゃん!2人!」
「はいよー!」
五番隊隊長の平子真子が自身の副官である雛森桃を連れてお好み焼き屋へ入る。
「たまには副官と飯でも思うてな」
「ありがとうございます、平子隊長」
そんな会話をしながら店内の空いている席を探していると、
「……」
「おいしーい」
窓際の席に六番隊副隊長・間街白亜と、具象化した終焉美学が仲良くお好み焼きを食べている姿を見つけた。
「あれ、白亜くん」
「……雛森副隊長」
雛森が白亜に声をかけると終焉美学も嬉しそうに手を振る。
「桃ちゃーん!」
「美学ちゃん♪」
雛森は自然と美学の隣の席へと座る。
「ちゃんと野菜も食べてる?」
「うん!」
「えらいえらい」
まるで姉妹の様に雛森は美学の頭を撫でる。
「えへへ〜」
「……」
そんな2人を見ながら白亜は黙々ともんじゃを食べていた。
ガララッ
「邪魔するで」
今度は七番隊隊長の射場鉄左衛門と副隊長の輪堂与ウが来店してきた。
「お、平子隊長やないか」
「おぉ射場」
6人は席も近かったので自然と合流し、仲良く食事会が始まろうとしていた。そう、ここまでは。
数分後。
「……おい、平子隊長。ちょっと待ちんさいや。何でお好み焼きの生地に最初からキャベツも具も全部混ぜてグチャグチャに男らしくねぇ焼き方しとるんです、それは」
「あ? 何言うてんねん射場。これが『お好み焼き』の基本やろが。具と生地をいっぺんに混ぜて、ふっくら焼くから美味いんやんけ。何やその、クレープみたいに薄く生地伸ばしてキャベツ山盛りにしとる不器用な焼き方は」
「これが『お好み焼き』じゃ! 混ぜるなんぞ言語道断! 丁寧に生地を敷き、キャベツの旨味を蒸らし、そこに焼きそばと卵をガシッと重ねる! この職人技のような階層美こそが至高じゃろうがぃ!」
「いやいや、それ『モダン焼き』の出来損ないやん。っていうか、それもう『お好み焼き』いうより『焼きそばのクレープ包み』やろ。そもそも、お前んとこのそれ、ほぼ『キャベツと麺』やんけ」
「なんじゃとコラぁ! 広島の歴史を愚弄する気か! 麺が入っとるからこそ一歩も引かん満足感があるんじゃろうが! 関西風の、あのマヨネーズでベタベタにして、どこ食うても同じ味の小麦粉の塊と一緒にせんでつかぁさい!」
「マヨネーズをなめるなや! あのソースとマヨの黄金比が織りなすハーモニーがええんやろ。お前のとこの、あの甘ったるい『オタフクソース』一本槍のゴリ押し感こそ男らしくないわ。もっと出汁の味を愉しめや、出汁を」
「オタフクソースは広島の魂じゃ! あれをハケでたっぷり塗って、鉄板の上で焦げた香りを嗅ぐだけで白飯が3杯食えるんじゃ! そもそも、そっちの混ぜ焼きは家でも誰でも作れるズボラ飯じゃろうが!」
「誰でも作れるからこそ、愛されとんのやろが。お前のはひっくり返すん難しすぎて、素人がやったら大惨事やんけ。…っていうか、射場。お前、さっきから『広島風』って言うとるけど、広島の奴らは『風』って付けたら怒るんちゃうん?」
「……(ピキッ)……平子隊長。今、何て言いました?」
「え? 『広島風』って……」
「……広島風じゃない……ッ! これが『お好み焼き』で、そっちのは『関西焼き』じゃあああ!!! 喧嘩売るなら、トコトン買うたるけぇのぉ!!」
「うわ、めんどくさ! スイッチ入ってもたわ! 逆にな、逆にな? お前らのが『モダン焼き』の派生形なんや! 『逆様』が真実を写すこともあるんやで?」
広島風か関西風かで揉める2人に青筋を浮かべた店主が近づく。
「喧嘩なら外でやれ。……あと鉄板の前で大声出すな。危ねえ」
「「すんません」」
店主の一言で静かになった2人。だが、
「納得いかん!」
「ワシもじゃ!」
決着が付いていないと、目でバチバチと火花を散らしながら2人は同時に白亜を見る。
「おい白亜!」
「どっちがお好み焼きとして芸術的じゃ!?」
そんな2人の言葉に白亜がどう答えるのか、店内が静かになるのだから他の客もなんやかんや気になっていたらしい。
そんな中、白亜はもんじゃ用の小ヘラを置き、少しだけ考え答える。
「……それは、ミケランジェロの『ダヴィデ像』とドナテッロの『ダヴィデ像』、どちらが芸術的か比べろと言っているようなもの」
白亜は冷たい視線を2人に向け言い放つ。
「……どちらにも失礼」
白亜の一言で店内が静まり返る。
「「…………」」
平子と射場は顔を見合わせ、
「……せやな」
「……ワシらが悪かった」
と、同時に頭を下げた。
「はい、美学ちゃん。あーん」
「あーん♪」
「……」
与ウは何も言わず、雛森に世話を焼かれている美学の皿へ射場のお好み焼きと平子のお好み焼きを半分ずつ取り分ける。
「わぁ!二つとも食べられる!………どっちも、おいしい!」
「「…………」」
子どもの純粋さに、大人二人が論争の馬鹿らしさを悟るのだった。
余談「第二ラウンド」
沈下した火は食べ方でまた再炎した。
「……ふぅ。まぁ、焼き方の違いは百歩譲って認めんこともないですがね、平子隊長。……って、おい、ちょっと待ちんさいやッ!!!」
「うわっ、ビックリした! 何やねん急に大声出して。せっかく綺麗に焼けたお好み焼きがビクッてなったわ」
「何をしよるんですかあんたは! 何でお好み焼きをわざわざ小さく箸でちぎって、小皿に移して食おうとしとるんですか!」
「は? 何って、皿に移して箸で食うんに決まってるやろ。熱々やねんから。お前こそ何やその、鉄板の上でお好み焼きに直接ヘラ突き立てて。危ない清音みたいになっとるぞ」
「これがお好み焼きの『正装』じゃろうがぃ! 鉄板の上の熱々を、ヘラでカツッと四角く切り出し、そのまま口へ運ぶ! これぞ男の、いや、お好み焼きの醍醐味じゃろうが!」
「いやいや、絶対口の中大火傷するやん。恋次の蛇尾丸で喉元突かれるくらい熱いわ。何でそんな修行みたいな食い方せなあかんねん。皿に移して、ちょっと冷ましてからハフハフ食うのが粋っちゅーもんやろ」
「冷ましたらお好み焼きの命が死ぬんじゃ! 鉄板の上で『ジュウジュウ』言いよる、その最高潮の瞬間を口に叩き込むから美味いんでしょうが! 皿に移した瞬間、湯気と一緒に旨味が逃げるんが分からんのですか!」
「大げさやなぁ! 皿に移したって美味いもんは美味いわ。大体お前、ヘラで直接食うたら、口の端にソースベッタリ付くやん。それ、全然『男らしく』ないで? 泥棒ひげみたいになってるで、射場」
「……そんな細かいこと気にしとるけぇ、関西風は甘っちょろい言うんじゃ! そもそも、お好み焼きっちゅーのは鉄板を囲んで、みんなで熱さを分かち合うコミュニティの場。皿に隔離した時点で、それはもうただの『キャベツ焼きの遺骸』じゃ!」
「遺骸言うな! むしろ、みんなで一つの鉄板から直にヘラで食う方が、今の時代どうなん? って話よ。ほら、隣の桃とか白亜のトコの美学みたいな女の子が、そんな野蛮な食い方できるわけないやろ。皿と箸は、優しさや。マナーや。お前に足りんのは、そのデリカシーや、射場」
「ぬ、雛森副隊長や間街副隊長の終焉美学をダシに使うとは卑怯な……! しかし! 広島の女子はみんなヘラで豪快に、かつ美しく食うとりますわ! 郷に入っては郷に従え、鉄板の前ではヘラに従えじゃ!」
「ここは瀞霊廷やっちゅーねん。お前の郷は流魂街やろ。……あ、おい! 射場! お前今、ヘラで俺のエリアのお好み焼きまで侵略してこようとしたやろ!」
「あぁん!? 誰が平子隊長の薄っぺらい混ぜ焼きなんか食いますか! 自分のヘラの可動域を広げとるだけじゃ!」
「嘘つけ! 目が完全に『そっちの美味そうやな』の目になってたわ! ほんま、見た目は極道やのに、食い意地だけは一角並みやな!」
「アイツを出すな! ……よし、そこまで言うなら勝負じゃ! どっちの食い方が、より『お好み焼きを愛しとるか』、今ここで白黒つけたろうじゃないですか!」
「え〜……めんどくさいわぁ……。でもまぁ、逃げたと思われるんも癪やしなぁ。ええよ、受けて立ったるわ」
「……輪堂副隊長、まだ余裕ある?そば飯頼もうと思う」
「……(こく)」
「も〜、美学ちゃん。口にソース付いてるからじっとして」
「ん〜、ん!桃ちゃんありがとう!」
なお、その頃には誰一人として隊長二人の話を聞いていなかった。