今回は眠八號の名付け回です。
この作品ではこう名付けました。
次話は明日投稿予定です。
『BLEACH』と『ぐらんぶる』のクロスオーバー小説を別に投稿しています。後書きにリンク貼ってますので良かったらどうぞ。
尸魂界・郊外
そこでは常磐色の瞳を持つ黒髪のストレートセミロングの12歳くらいの美少女が巨大虚と対峙していた。
ガキンッ
「ん〜、硬いですね」
「はっ!てめぇみてぇなガキの斬撃なんざ蚊に刺された程も効かねぇよ!」
そう言って巨大虚は少女、十二番隊三席・涅レムへと拳を振るう。レムは拳を避け、距離を取る。
「なら、斬れなくても良いです。それに、傷が少ない方がマユリ様が喜びます!」
そう言って、レムは斬魄刀を構え直しながらニコリと笑う。
『哀死愛された 夢儚』
瞬間、レムの周りに赤味がかったピンク色の泡が出来上がる。レムは夢儚を優しく振るい、剣風で泡を巨大虚へと飛ばす。
「何だ、この泡は」
パチン
泡が巨大虚に触れて割れる。
「…………」
泡に触れた箇所を巨大虚は観察するが変わったところは見当たらない。
「何も起こらないではないか」
「はい!」
「……?」
「泡自体は無害ですよ!」
「ならば何の――」
スゥ……
「あ」
「……何だ」
「今、吸いましたね?」
レムが可愛らしく笑う。
十二番隊舎・技術開発局
「マユリ様!終わりました!」
レムが先程の巨大虚を持ち上げて十二番隊隊長・涅マユリの元へと駆けてくる。そんなレムを見てマユリが質問する。
「殺してはいないだろうネ?」
「はい!寝ています!」
レムの言う通り、巨大虚は白目を向いて舌を垂らし動かない。
「結構」
「どうします?」
「どうするも何も――」
ニィ……
「地下の個室に送ってあげようじゃないかネ」
「はい!」
――二十年前、技術開発局。
「八號」
「はい、マユリ様!」
「八號、次の実験の準備を――」
マユリと眠八號の会話を技術開発局に用が有ってお邪魔していた四番隊副隊長の黒崎織姫と十三番隊副隊長の石田雨竜が見ていて、織姫がおずおずとマユリに訊ねる。
「あの、涅隊長」
「何かネ、黒崎織姫」
「八號ちゃんって……名前なんですか?」
「眠八號なのだから八號に決まっているだろう」
「でも、ずっと八號ちゃんって呼ぶの、ちょっと可哀想じゃないですか?」
「何が可哀想なのか理解できんネ」
何を言っているんだと本気で思っているように話すマユリ。そんなマユリに何と伝えれば良いかと悩みながら隣の石田に助けを求めるように話を振る。
「石田くんもそう思わない?」
「…………」
「石田くん?」
石田は織姫の質問に答えず、じっと眠八號を見つめる。そして、徐に口を開く。
「……僕はむしろ、皆が彼女を『ネム』と呼んでいる方が気になるかな」
「え?」
石田は眠八號の目線と合わせるように屈んで、目を見ながら言葉の続きを話す。
「僕にとって『涅ネム』は――別の人だからね」
そんな石田の目をじっと見つめ返しながら眠八號が言葉を発する。
「私は別に八號で構いませんが」
「でもなぁ……」
「本人がそう言っているなら――」
「全く、くだらんことで時間を浪費するものだネ」
「涅隊長?」
話を聞いていたマユリがため息を一つ吐いて言葉を紡ぐ。
「ならば――レムでいいだろう」
「……レム?」
「REM睡眠だヨ」
「「「…………」」」
「身体が動く程の浅い眠り――」
マユリは八號を見ながら、何でもないように言い放つ。
「コイツのネムと違う喧しさにピッタリだと思うがネ」
「「「…………」」」
石田、織姫、眠八號がマユリを見つめる。
「何かネ?」
「いえ!何でもありません!ねぇ、レムちゃん!」
「はい!」
「気に入った?」
「はい!八號より名前っぽいです!」
「別に名前として付けたつもりは――」
「ありがとうございます、マユリ様!」
「…………」
「?」
「……フン」
眠八號…レムからお礼を言われて苦虫を噛み潰したような表情をするマユリを石田が無言で見る。
「…………」
「何だネ、石田雨竜。その気色悪い顔は」
「いや」
「言いたいことがあるなら言いたまえ」
「相変わらずだな、と思っただけさ」
「意味が分からんネ!!」
後日。
彼女、眠八號の名前が正式に『涅レム』と成った。
「誰が姓まで与えろと言った!!」
「隊長の被造魂ですし、眠八號より事務処理が楽なので」
「技術開発局の事務都合で私の姓を付けるな!!」
「涅レムです!」
「君も嬉しそうに名乗るんじゃないヨ!!」
――現在。
尸魂界・郊外でレムは今度は中級大虚と対峙していた。
『哀死愛された 夢儚』
夢儚で生成した泡が割れ、内部の気体と割れた時に発生した飛沫を中級大虚が体内に入れる度にその動きを遅くしていく。
「効いてます!」
が、巨大虚とは基礎能力が違うためか、なかなか眠り切らない。さらに、
「ハッ!」
「!?」
自分の霊圧で無理やり意識を覚醒させる。
「脳を眠らせる能力か。厄介だが、霊圧で覚醒させれば問題無い」
「………」
この戦闘を近くで観察していたマユリが通信機でレムに言う。
『レム』
「はい!」
『次へ移りたまえ』
「はい!」
レムは元気良く返事をして夢儚を構え直し、笑顔で解号を唱える。
『過略卍解』
するとレムの背後に大きな卵子を思わせる半透明なピンク色の球体が出現する。
ドックン
球体のなかには膝を抱えた少女のような二つのシルエットが浮かび上がる。
『夢儚之結女』
ズルッ
球体から、10歳くらいの何処か『涅ネム』を思わせる顔が瓜二つの少女が二人、まるで産み落とされたように出て来る。
パリン
球体が割れ、出現した双子に纏わりつき、ピンク色の着物に変化した。
「……三人?」
突然出現した少女を見て中級大虚が呟いた。
「違いますよ」
戸惑う中級大虚にレムは満面の笑みで答える。
ニコッ
「私の卍解です!」
ザッ
「!」
中級大虚に双子の一人が殴りかかって来た。中級大虚はその拳を躱す。
「……?」
中級大虚は自身の身体にある違和感を覚える。
「何だ……身体が軽いぞ」
「はい!」
「貴様、何をした?」
「調子、良くなったでしょう?」
ガキンッ
ガンッ
ゴッ
レムの卍解が発動してから数分、中級大虚の動きは良くなり、レムと双子が押され始めていた。
そんな戦闘をマユリは焦ることもなくただただ、無言で見つめている。
「ハッ!ハハッ!ハハハハハッ!!なるほど!!」
「?」
中級大虚が急に笑い出す。
「まさか、相手を強くする卍解……いや、卍解はその双子の召喚か。そして、この卍解を発動した場合、始解での脳への睡眠薬は全てリセットされる。しかも、卍解ではその睡眠薬は生成されない!!」
「………」
「卍解発動直後、俺の調子が良くなったのはそのため。手数を増やす変わりに始解でのアドバンテージが無くなるとは、何とも……しかも、手数が増えても童が二人増えただけ。何とも」
そこで中級大虚は言葉を止め、そして大声で言い放つ。
「何とも弱い卍解だ!!」
そんな中級大虚にいつの間に近付いていたのか、肉声が届く範囲に居たマユリが呆れた声音で言う。
「愚かだネ」
「何……?」
「生物の脳というものは、常時最大効率で稼働させれば良いというものではない」
「…………」
「休息もまた、正常な機能の一つなのだヨ」
「……何が言いたい?」
「いや、君はそこまで頭のキレが良かったと自分で思っているのかネ?」
「……は?」
「それと、頭を使ったら欠伸や深呼吸やらで身体に空気を取り込むのが正常な機能なんだヨ」
ニタァ
「君、さっきの大声を出す時、深呼吸したかネ?」
「!?」
頭が冴えているからかマユリの言っていることが理解出来る。いや、出来てしまう。そんな中級大虚に今度はレムが言う。
「私の夢儚之結女は、その休息をさせません」
「……あ、ああ」
中級大虚が頭を押さえながらその動きを止めて行く。
「そろそろ、脳が熱によって思考の低下を起こす頃かネ。ああ、立てなくなってきたということは自律神経も乱れてきたネ。レム」
「はい!」
レムは笑顔でマユリに返事をして中級大虚に視線を向け、ペコリと頭を下げた。
「おやすみなさい!」
この言葉を最後に中級大虚は意識を失った。
「……で」
「何かネ?」
技術開発局で一護と石田はマユリに質問していた。
「過略卍解って何だよ」
「聞いて分からなかったのかネ?」
「分かんねぇから聞いてんだよ!」
マユリの返答に一護は叫ぶ。そんな一護の隣で石田が合点がいったと言うふうに話し出す。
「なるほど、『過程を省略した卍解』…という意味か?」
「ほう」
「過程?」
「通常、卍解へ至るには斬魄刀の具象化と屈服が必要になる。彼女は――」
「その過程を技術的に省略しているのだヨ」
石田の言葉を遮りマユリが答える。そんなマユリに一護はレムを見ながら質問する。
「……それ、大丈夫なのか?」
「何がだネ?」
「いや、色々とだよ!!」
石田はマユリに静かに問う。
「……完成しているわけではないんだな?」
「当然だろう」
「…………」
「完成などという言葉を私に使わせる気かネ?」
石田の言葉にマユリは若干の嫌悪感を滲ませながら言い放つ。
「現段階では、本来の卍解へ至る過程を外部から補っているに過ぎん。レム自身がその過程へ到達すれば――」
「どうなる?」
ニタァ
「その時になれば分かるヨ」
マユリの答えに一護がため息を吐きながらレムに、正確にはその後ろにいる瓜二つの顔をした常磐色の瞳を持つ黒髪のストレートボブの10歳くらいの二人の少女に視線を向け、レムに聞く。
「そういや、その二人は?」
「?」
「卍解で出てきた二人だよ。同じ顔してる奴」
「ああ!」
一護の言葉を聞いてレムが右に居る方へオーバーに両手を向ける。
「こっちが哀壊です!」
今度は左に居る方に両手を向ける。
「こっちが愛創です!」
ペコリ
レムに紹介された二人、哀壊と愛創が無表情で頭を下げる。
「「…………」」
そんな二人を見つめていた一護と石田だったが、一護がふと呟く。
「……どっちが?」
「だから、こっちが哀壊で、こっちが愛創です!」
「同じにしか見えねぇ」
「全然違いますよ!?」
「……僕にも違いが分からないな」
「ええ!?」
そんな話を聞いていたマユリが呆れたように口を開く。
「当然だろう。外見上の差異は無い」
「じゃあなんでレムは分かるんだよ?」
「知らんヨ」
「知らねぇの!?」
石田がレムの視線と同じになるように屈んで訊ねる。
「……その名前も涅マユリが?」
「いいえ!」
石田の言葉を違うと言ってレムは嬉しそうに二人を見る。
「私が付けました!」