今回は五番隊のオリジナル三席の登場回です。
次話は次の日曜日に投稿予定です。
『BLEACH』と『ぐらんぶる』のクロスオーバー小説を別に投稿しています。後書きにリンク貼ってますので良かったらどうぞ。
「ごべんなざいでじだ〜」
五番隊舎、中庭。
水色の長い髪をツインテールにした、大きな金色の瞳の14歳くらいの美少女が涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら土下座していた。
そして、その正面に立つ五番隊副隊長・雛森桃は困ったように頬へ手を添える。
「えっと……別に謝らなくてもいいんだけど……」
「もう二度と副隊長なんて余裕とか言いまぜん〜!」
「うん」
「飛梅なんて玉炎華で吹っ飛ばせるとかも言いまぜん〜!」
「うん」
「八十番台使ってもいいですよとかもう言いまぜん〜!!」
「…………」
五番隊三席、赫穂詩未里愛と雛森の話を隣で立って聞いていた五番隊隊長の平子真子が口を開く。
「桃」
「はい?」
「最後のはお前も止めたれや」
「使ってないですよ!?」
「当たり前や!!……ちなみに何番まで使うた?」
「…………」
「桃?」
「…………七十――」
「言わんでええ!!」
「ごべんなざい〜!!」
――数刻前。
「隊長!アタシと勝負してください!」
五番隊の執務室にツインテールを靡かせながら未里愛がドアを蹴破る勢いで入って来て平子に言い放ってきた。
「……未里愛、なんやねん。イキナリ」
「ほら、アタシってこの歳でもう三席じゃないですか」
「せやな」
「つまり、才能があるって事ですよ!」
「まぁ、無いわけではないな」
「それになんと昨日、あの大虚を一人でやっつけたんですよ!」
「ああ、報告書読んだで。最下級大虚相手に頑張ったやん」
「だから、アタシと勝負してください!」
「何でそうなんねん!!」
「だって、隊長ならアタシでももしかしたら奇跡で一本入るかもしれないじゃないですか!それに、今の自分がどの程度なのか知るためには隊長は良い物差しなんです!」
「人を定規扱いすなや!」
「まあまあ、隊長。落ち着いて」
ずっと執務室に居て話を聞いていた雛森が平子を宥める。ふと、平子がそんな雛森を見つめる。
「………」
「隊長?」
「せや。おい、未里愛。俺とやる前に桃とやりぃ」
「「隊長!?」」
平子の発案に雛森と未里愛が驚く。
「ゲームでも大ボスの前に中ボスステージクリアしなきゃあかんねん。桃と勝負して良い線行ったら相手したるわ」
「本当ですか!」
平子の提示した条件に未里愛が八重歯を覗かせながら悪ガキらしい笑顔を浮かべる。
ニヤッ。
「副隊長相手、しかも桃さんならちょうどいいかも!」
そう言って未里愛は雛森の方を向く。
「飛梅って炎ですよね? 玉炎華も炎なんで真正面から勝負できますね!」
「え〜」
「鬼道も使っていいですよ!八十番台でも!」
「えっと……本当に?」
「余裕です!」
数十分後、未里愛の情けない謝罪が中庭に響くことになることを本人だけが分かっていなかった。
――翌日
ブンッ
ザッ
フォンッ
訓練場で木刀を振っている未里愛が居た。そんな未里愛を平子が見つめ、声をかける。
「まだ、怪我治りきってないやろ。何でもう、木刀振っとんねん」
「これくらいで止まりたくありませんから!直ぐにでも桃さんに再挑戦します!」
「懲りへんなぁ、自分」
「当たり前じゃないですか!」
「昨日あんだけ泣いとったやろ」
未里愛は平子の言葉に木刀を振るのをやめて真剣な表情で平子の目を見てはっきりと言う。
「泣いたら強くなっちゃ駄目なんですか?」
「…………駄目やないな」
「でしょ?」
ブンッ
そう言って未里愛はまた木刀を振り始める。
「それに、アタシは将来なりたいものがありますから!」
「隊長か?」
「隊長になれば一番近いと思うんです」
「何が」
「炎熱系最強」
「……」
「アタシはそれを目指してます」
「……中央霊術院で習わなかったんか?」
「習いましたよ。山本元柳斎重國初代総隊長のことは。周りも皆呆れてました」
「なら――「でも」」
平子の言葉を遮り未里愛は続ける。
「それ、目指しちゃ駄目な理由にはなりませんよね?」
「……せやな」
「女なら最強を目指さないと!」
「それはちょっとちゃうんやない?」
――二日後
「桃さん!」
五番隊の執務室に未里愛が今度はしっかり手でドアを開けて入ってきて、頭を下げる。
「再戦、お願いします!」
「え?傷は大丈夫なの?」
「はい!大丈夫です!」
「え、でも……」
どうしたものかと雛森が悩んでいると平子が口を開いた。
「ええやん、桃。相手したりぃ」
「え!?隊長!?」
まさか、平子が了承するとは思っておらず雛森が驚く。平子は雛森の目をじっと見つめる。
「はぁ〜、分かりました。未里愛ちゃん、その再戦を受けます」
「本当ですか!!」
「ええ」
「やった〜!!」
雛森が了承してくれて、喜ぶ未里愛。そして、一頻り喜んだ後、雛森を真っ直ぐ見つめて言い放つ。
「今日こそ勝ちますよ!」
「うん、頑張ろうね」
「今日は泣きませんから!」
「う、うん」
「七十番台も使っていいですよ!」
「え?」
「お前ホンマに反省したんか?」
五番隊舎、中庭
五番隊副隊長・雛森桃と同隊三席・赫穂詩未里愛が斬魄刀を鞘から抜き、構えて向かい合っていた。
『弾けろ 飛梅』
『アタシを見ろ 玉炎華』
飛梅の梅色の炎弾『梅焔』と玉炎華の輝く朱色の炎弾『玉炎』が正面からぶつかり合う。玉炎が押し負け、梅焔が未里愛へと迫るが、未里愛は驚くことなく直ぐ様横に避け、雛森へと肉薄する。
『縛道の六十二 百歩欄干』
雛森は生成した無数の光の棒を肉薄してくる未里愛へと投げつける。未里愛は一度止まり体勢を整え、直ぐ様飛んで来る無数の光の棒から自分に当たるものを見極め玉炎華で弾き飛ばしていく。
キンッカンッキンッガッガッガッガガッギンッカンッ
そんな未里愛を見つめ雛森は思う。
(…最初の撃ち合いからそうだけど、先日より対応力が上がってる。しかも、焦って大幅に横に避けたりしていない)
実は今回、雛森は未里愛が百歩欄干を前回と同じ様に躱すと考えていた為、未里愛の左右に設置型に改良した『破道の十一 綴雷電』を『縛道の二十六 曲光』で隠していた。
(偶然か、予測したのか。どちらにせよ、凄い成長速度)
「桃さん!」
「!?」
ガキンッ
百歩欄干を捌ききり、雛森に近付いていた未里愛が雛森を呼びながら玉炎華を振るう。雛森は直ぐ様飛梅で玉炎華の刃を止める。
「桃さん、"今の"アタシを見ろ!!」
「!?」
真剣な眼差しで雛森を見つめて未里愛が叫ぶ。
「アタシが太陽みたいに眩しくて直視出来ないんだろうけど、ちゃんと見ろ!」
「……ふふっ」
未里愛の少しズレた言葉に雛森は笑みを溢す。
「未里愛ちゃん、また調子乗ったら痛い目見ちゃうよ?」
「安心して下さい!今度は気抜いたり、侮ったりしませんから!!」
「調子に乗らないとは言わないんだね」
「アタシには無理ですから」
「あははは」
いつもの悪ガキのような笑顔で言い放つ未里愛に今度こそ雛森はたまらず噴き出す。
笑い合いながらも二人は斬魄刀に力を込め、弾かれるようにして距離を取る。
「じゃあ、これくらいは対処できなきゃね」
『破道の七十三 双蓮――』
『破道の四 白雷』
雛森は前回、未里愛が避けることも相殺することも出来なかった双蓮蒼火墜を発動しようとするが、未里愛はすかさず、白雷にてその発動自体をさせないように対処してきた。そして、直ぐ様雛森へと接近戦へ持ち込む為に駆け出す。
が、やはり雛森の方が一枚上手だった。
『縛道の七十九 九曜縛』
「うぇ!?」
未里愛の体を九つの黒点が囲い、中心目掛けて縛り上げる。
「痛ただだだだだ!?」
「で?どうする?」
九曜縛の拘束力が上がっていく中、雛森は未里愛へと笑顔で聞いてきた。
「ご、ごべんなざいでじだ〜」
「…………負けたぁー!!」
九曜縛が解かれた未里愛が地面に大の字で仰向けに倒れるが、直ぐ様上体を起こして大声を出す。
「桃さん!」
「は、はい!?」
「もう一回!」
未里愛の言葉に雛森は一瞬目を丸くするが、直ぐ様笑顔で答えた。
「……うん!」
そんな二人を遠くから見ていた平子が呟く。
「仕事もせぇよ、お前ら」