今回は長編です。なので前後半に分けます。
後半は来週日曜日に投稿予定です。
尸魂界・郊外
ここは護廷十三隊が所有する訓練場の中で一番の面積を誇る訓練場『無月訓練場』。
かつて、藍染惣右介に放たれた無月によって形成された更地であり、尸魂界の観光名所として毎年トップ10に入る場所である。
因みに、この名前を聞いた現十三番隊隊長・黒崎一護は「やめろ!!」と抗議していたが現総隊長・朽木白哉、四楓院家現当主・四楓院夕四郎を始めとした四大貴族と前五大貴族、志波家当主・志波空鶴の連名が四十六室に提出された為、英雄の声は虚しく却下された。
そんな『無月訓練場』に護廷十三隊の隊長、副隊長、三席、全39名が集められていた。そして、護廷十三隊総隊長・朽木白哉が今回の集まりの主旨を説明する。
「これより、護廷十三隊上位戦力合同特殊訓練を行う」
「「「「「「はい!」」」」」」
「では、七番隊隊長・射場鉄左衛門の卍解『偃文修武』内にて全員参加型『偃文修武内肉体言語大混戦訓練』を始める」
「「「「「はい!?」」」」」
「「「「「ちょっと待て!?誰だその訓練名考えた奴!?」」」」」
「私だ」
「「ルキアかよ!?」」
朽木白哉の口から出た内容に三席達が驚き、副隊長の数名は訓練名にツッコミを入れる。そして、元凶が堂々と名乗り出たことに一護と恋次が叫ぶ。
「え!?ちょっと待てください!父さ…副隊長はこの訓練内容聞いてたんですか!?」
訓練内容に一番隊三席の赤髪ポニーテールの16歳くらいの美少女、阿散井苺花が自身の父である一番隊副隊長・阿散井恋次にこのことを知っていたのかと質問する。
「……」
「副隊長?」
「俺、聞いてねぇぇぇぇ!?」
「あ、父様も聞いてなかったんだ。でも名前考えたってことは母様は聞いてたんだよね?」
「苺花。仕事中は私のことは母様隊長と呼べ」
「あ、はい!母様隊長!」
「お前はそれで良いのかよ!?」
ルキアの指摘に一護がツッコむ。
「苺花よ。私のことは叔父様で構わぬ」
「はい!叔父様!」
「総隊長の威厳何処行った!?この似た者義兄妹!!」
さらに素でボケる白哉に対しても一護は全力でツッコむ。
「では、訓練での規則事項を伝える」
「話進めんのかよ!?」
「黒崎、話が進まんから大人しくしていろ」
「俺の所為なの!?」
一護は何故か、二番隊隊長・砕蜂に怒られた。そんな中、白哉が何事もなかったかのように規則事項を読み上げる。
「今回の混戦での規則事項は、
一つ、隊長格の卍解は原則七番隊隊長・射場鉄左衛門以外は使用禁止とする。
一つ、副隊長以下の卍解の使用は各々の判断とする。
一つ、戦闘続行不可能と判断された場合は四番隊・虎徹清音隊長自らが回収を行う。
一つ、四番隊は救護班として基本的に偃文修武外に待機。ただ、参加したいのであれば参加は可能とする。
一つ、四番隊・山田花太郎三席は絶対に一度は参加すること。
一つ、治療後の参加は自己判断とする。
以上、六つのことを規則事項とする。」
「また、最後に兄様直々にそれぞれを評価してくださいますので、怠けないように。特に、都依殿」
「うへ〜」
「何で僕の訓練参加が規則事項に入ってるんですか!?」
白哉とルキアの説明に四番隊三席・山田花太郎が声を上げる。
「訓練だからだ」
「事項内に入れなくて良いじゃないですか!?」
そんな、花太郎にルキアが一言で理由を言うが、花太郎は事項に入れたことの説明を要求する。が、
「それでは、訓練開始は今から十分後とする」
答えが返ってくることはなく白哉は訓練開始までの時間を告げるだけだった。
『卍解 偃文修武』
射場の卍解発動と共に頭のおかしい名の特別訓練が開始された。そして、開始と同時に二番隊、三番隊、五番隊の三席が一斉に十三番隊副隊長・石田雨竜を取り囲む。
「……開始早々僕を狙った理由は大体分かるが聞かせてくれるかい?赫穂詩さん?」
「何でアタシに聞くんですか?」
「連係する様にここにいる二人に声をかけていたのは君だろう」
石田の言葉を聞いて五番隊三席・赫穂詩未里愛は八重歯を覗かせながら不敵に笑う。
「流石、よく見てますね。一人で相手しようなんて考えなくて良かった。……狙われた理由、教えてあげます。射場隊長の偃文修武内で戦闘力が著しく低下するのは完現術者である四番隊の織姫さん、破面である六番隊の白亜さん、そして、一番この卍解と相性が悪い滅却師である雨竜さん、貴方です」
「………」
「体外での霊子操作を行えないこの卍解内では貴方は神聖弓は疎か、飛廉脚すら使えません」
「……確かにね。それに、僕はあまり近接戦闘は得意じゃ無い」
未里愛の答えを聞いて石田は眼鏡の位置を直す。そんな石田を見て、未里愛の顔が真剣なものになる。
(この余裕、アタシ達と戦える手段があることは間違いない)
他の二人も同じ様に考えたのかそれぞれが斬魄刀を構え直し、
『アタシを見ろ 玉炎華』
『近くば寄って目にも見よ 崩斬掌』
『構えろ 御刀』
二番隊三席の斬魄刀『崩斬掌』が鈍色の大盾へと変わり、三番隊三席の斬魄刀『御刀』の鍔が銀色から金色へと変わり、そして、未里愛の『玉炎華』の刀身が赫くなる。
シュゥゥ
「………なるほど、炎の放出は出来ないが斬魄刀自体に熱を持たせることは出来る訳だ」
「ええ、コレで貴方はアタシの玉炎華に触れられない」
言葉を言い終わると同時に未里愛と三番隊三席が瞬歩で移動、石田の左右から同時に斬魄刀を振り下ろす。
(行ける!)
未里愛と三番隊三席の攻撃が当たろうとした次の瞬間、石田の姿が掻き消えた。
「へ?」
ドゴッ
「ぐぽっ!?」
いつの間にか未里愛の懐へと潜り込んでいた石田が未里愛の腹部に掌底を放ち吹き飛ばす。
「はあ!」
そんな石田の後ろから次の攻撃へと移った黒髪茶色目の青年、三番隊三席・佐藤祐也が自身の斬魄刀『御刀』を振るう。
ガキンッ
石田はその攻撃を腕に静血装を纏って受け止め弾く。そして、弾いた勢いをそのままに廻し蹴りに動血装を纏い佐藤の顔面を蹴り飛ばした。
「ぐがっ!?」
石田は直ぐ様、残った銀髪の角刈りで鋭い蒼色の瞳を持つ、茶渡にも負けず劣らずの筋肉質の大男、二番隊三席・岩奏星純へと接近し蹴りを放つが、岩奏は自身の大盾『崩斬掌』でその攻撃を受け止める。
ズバッ
大盾に防がれた石田の足が斬り裂かれた。
「……」
「私の崩斬掌は触れると斬れてしまいます。弓矢を生成出来ない今の石田副隊長には申し訳ありませんが私に攻撃が通ることはありません」
岩奏が体格に似合わない優しい雰囲気と声音で諭すように石田に自身の斬魄刀の能力を説明する。
ガキンッ
ズバッ
石田は岩奏の説明を聞いていなかったのか無事な足で崩斬掌に蹴りを放つ。
「な!?何をなさっているんですか!?」
「……」
ゴガッ
スパッ
ダンッ
ズバンッ
ガンッ
ズバッ
岩奏の驚愕を他所に石田は崩斬掌に拳、肘、膝などを叩き込んでいく。その度に、石田の身体が斬り裂かれ、鮮血に染まる。
「お、お辞めください!石田副隊長!私の崩斬掌の斬撃はカウンターなどではありません!斬れ味の良い刃を殴っているようなものなんですよ!?」
「……」
岩奏の叫びが届いたのか石田の連撃の手が止まる。そして、次の瞬間。
ズババババッ
岩奏の両手足が斬り裂かれた。
「!?」
イキナリ斬られたことに驚いた岩奏の隙を突き、石田は崩斬掌を掻い潜り岩奏の真横へと移動する。
ゴッ
「グッ!?」
岩奏の脇腹へと鋭い突きが放たれ、その場に倒れ込む。
「え?え?」
殴られたお腹を抑えながら一部始終を見ていた未里愛が疑問の声を漏らす。そんな中、石田が呟く。
「完全反立」
「え?」
「僕の聖文字さ。指定した2点の間に“既に起きた”出来事を“逆転”させるんだ。今回は岩奏くんに僕が崩斬掌で受けた傷を移し替えたんだよ」
本人の言う通り、石田の身体には血は付いているものの傷が見えない。
「出来事を逆転させるだけだからね、射場隊長の卍解の中でも使用できるのさ。…さて、残るは赫穂詩さんだけだけど、どうする?」
石田は未里愛へと視線を向ける。
「ごべんなざいでじだ〜」
石田達の戦闘を皮切りに無月訓練場のあちこちで戦闘が行われていた。
『受け入れろ 終焉美学』
六番隊副隊長の間街白亜が回転し、遠心力の勢いを乗せ、杖と成った終焉美学を十一番隊隊長・更木剣八に放つ。
「ハハッ!」
更木は自身の斬魄刀を振り下ろし、白亜の殴打を受け止め、否
ゴガァンッ!!
白亜ごと吹き飛ばす。
『生め 祭命』
『がおれ 飛熊』
『雷命輝きて聞き入れ給え、静風纏いて静まり給え 嵐神』
『踏み込め 衝羽根』
白亜と変わるように七番隊副隊長・輪堂与ウ、八番隊副隊長・八々原熊如、九番隊副隊長・掛詞解那、十三番隊三席・斑目志乃がそれぞれの斬魄刀を始解させ、四方から更木に斬り掛かる。
「はぁぁ!!」
更木は無造作に斬魄刀を振り一振りで4人全員を吹き飛ばした。そんな更木の脳天に幅広い刀が振り下ろされる。
ガキンッ
「……更木隊長、暴れ過ぎじゃ」
「…はっ!射場。ただ俺とやり合いたいだけだろ?」
「…さあ、どうでしょうのぅ?」
「ハハッ!!」
ガキンッ
ガンッ
ガシャンッ
更木と射場が斬り合いを開始する。
「……更木隊長取られた」
そんな二人を体勢を立て直した白亜が見つめる。
「なら、僕とやろうか」
「……」
『開け 藤孔雀』
ガキンッ
「…綾瀬川三席」
「死角から攻撃したんだけど、普通に受け止められたね」
十一番隊三席・綾瀬川弓親の鉤爪が扇子のように幾重にも開いた斬魄刀『藤孔雀』を白亜に振り下ろしてきたが、白亜は直ぐ様振り向き終焉美学で受け止める。
「……綾瀬川三席、なんか嬉しそう?」
「ん?ああ、こんな十一番隊が好きそうな卍解の中で皆で混戦だよ?楽しくならない訳がないよね」
「……そう」
ガキンッ
ガンッ
キンッ
白亜対弓親が始まる。
(綾瀬川のヤツ、瑠璃色孔雀が使えねぇこの状況を喜んでやがんな)
「はぁ、なんで更木と射場がやっとんねん」
九番隊隊長の檜佐木修兵と五番隊隊長の平子真子が白亜と弓親、更木と射場の戦闘を並んで近くで見ていた。
「俺達も戦いますか?」
「アホ、それで訓練なるんは隊長だけやろ。ここは隊長として下のもんの成長の為に一肌脱ぐもんや」
パシッ
話している間に後ろから顔面へと放たれた蹴りを平子は受け止める。
「なら、アタシとやろうよ。平子」
そう言って平子の手を振りほどくように勢いよく足を戻して体勢を立て直したのは、長い黒髪をうなじで一つにまとめた強気な美人、十番隊三席・有沢竜貴だった。
「竜貴ちゃん。取り敢えず、隊長は付けてぇな」
「ええ〜、元クラスメイトだろ~。それとも可愛い娘には隊長って呼ばれたい趣味か?」
「なわけあるかい」
「でも、可愛い娘には皆"初恋の人"って言ってたそうじゃん?」
「誰から聞いたん?」
「ひよ里ちゃん」
「アイツ!!」
軽口を叩きながら竜貴はファイティングポーズを取る。
「あ、でも、流石に隊長二人を相手出来るなんて思ってないからさ。悪いけど、檜佐木隊長、平子貰うね?」
「ああ、構わねぇぞ」
「せやから隊長付けぇ!……はぁ、しゃあない。いっちょ揉んだるわ、竜貴」
言い終わると同時に平子から隊長としての底知れない雰囲気が漂う。
「……胸は揉むなよ?」
「揉まんわ!!」
平子と竜貴が戦う為に少し場を離れる。そんな中、檜佐木は周囲を見渡す。
「さて、俺も誰かとやり合う…ん?」
『吼えろ 蛇尾丸』
『手繰れ 絆繋』
一番隊副隊長・阿散井恋次の蛇のように刀身が伸びる斬魄刀『蛇尾丸』と片眉だけが特徴的な形にそられている短い黒髪の好青年、六番隊三席・行木理吉の柄の先端に鎖が付いている斬魄刀『絆繋』がぶつかり合い、互いに弾かれる。そして蛇尾丸は刀身が戻り、絆繋は鎖を操り理吉の手に戻る。
「はっ!理吉。随分と絆繋の扱いが上手く成ってんじゃねぇか」
「ええ、まあ。白亜副隊長に気に入られましたんで」
「……それは、なんだ、……ご愁傷さん」
「慰めないでくださいよ!?余計に惨めになるじゃないですか!!」
叫びながら理吉が再度絆繋を投擲する。そして、鎖に指を引っ掛けまるで生きているかのようにうねる。
「おっと」
恋次は蛇尾丸を通常の刀のように振るい、絆繋を弾く。が絆繋はそのまま、自身で勝手に体勢を立て直したかように今度は恋次目掛けて振り下ろされる。
そんな絆繋の動きを見ていた修兵がポツリと呟く。
「まるで手で振るかのような軌道してんな」
「檜佐木隊長様の『風死』様も鎖が付いておりますものね」
いつの間にか修兵の隣には二番隊副隊長・大前田希代がちょこんと立って修兵に質問してきた。
「確かに鎖が付いているのは同じだが、根本が違う」
「根本?」
修兵はそんな希代に驚くことなく、絆繋の解説を続ける。
「俺の風死は投擲も前提に置いている。鎖鎌と同じさ。投げて、鎖で軌道を変えて、また引き戻す。最初からそう使うための形をしてる」
修兵は恋次を目標に縦横無尽に飛び回る絆繋の刀身を目で追う。
「だが、理吉の絆繋は違う」
「違う?」
「ああ。あれは刀だ」
「…………」
「刀を、武器を投擲する奴なんて普通はいない。それに絆繋の刀身も、そんな使い方を前提にした形状じゃない」
理吉が鎖を引く。
飛んでいた刀が急激に軌道を変え、恋次の死角へ回り込む。
「刀同士の戦いなら、どちらが先に切先を相手へ届かせるかが重要になる。だったら――」
修兵が希代を見て僅かに笑う。
「届かないなら、届くようにすればいい」
「届くように……」
「足が速くねぇなら。刀の射程が短いなら。先端にロープや鎖を付ければ、子供でも分かるくらいリーチは長くなる」
「……」
「でも、誰もやらない」
「なんでです?」
「簡単だよ」
修兵は鎖を手の延長のように操る理吉を見る。
「そんな刀をまともに扱えるようになるまで鍛えるのは、普通に刀を振るより血の滲む努力が必要だって――それこそ、子供でも分かるからだ」
そう言い終わると同時に修兵は希代に向き直る。
「んで、大前田は俺に用か?」
「はい!お相手様をお願いしたく思います!」
そう言って希代は修兵にお辞儀をする。
「……二番隊らしく奇襲とか考えなかったのか?」
「考えましたよ。ただ、希代には隊長格様達に上手く奇襲出来る保証がありませんでしたので」
「訓練なんだから保証がなくても挑戦してみても良かったんじゃないか?」
「ええ、訓練ですから、挑戦しようと思います。ですから――」
ガンッ!
希代が言葉の途中で修兵に飛び蹴りを入れる。修兵はいつの間に抜いたのか、斬魄刀の峰で希代の足裏を止める。
「白打で行かせていただきます」
「……最近の女子は足を早く出すのが流行りなのか?」
「さあ?希代は拳より足の方が威力があるからと教えられただけですので」
「誰から教わったんだよ」
「砕蜂様から」
「ああ」
無月訓練場の別の所でも、とある二人が斬魄刀を構えて対面していた。
「……ちょっと、これ私に不利すぎない?」
「そうですね」
「否定してよ」
「事実なので」
十番隊副隊長・松本乱菊が自身の斬魄刀『灰猫』を半身で構えている。対する三番隊隊長・吉良イヅルは既に『侘助』を始解させ、自然体で隙なく立っていた。
「それで、松本副隊長。僕とやるんですか?灰猫が使えないのに」
「さっすが、吉良隊長、お優しい〜。うちの隊長とは大違い。……まあ、でも、不利だろうと良いじゃない」
「?」
「あの時の続き。……今度こそ最後までやりましょ、イヅル」
松本が不敵に笑う。そんな松本を見たイヅルは最初は目を丸くするが直ぐ様コチラも不敵に笑う。
「……ええ。松本さん」
ガキンッ
言い終わると同時に斬魄刀同士がぶつかり合う。
「ちょっと待って!? 一発でこんな重かったっけ!?」
「一発なので二倍ですよ」
「百年以上経っても嫌な能力ね!!」
「褒め言葉として受け取ります」
「朽木隊長、お願いします!」
『我に牙と盾持たせ 衝突』
七番隊三席・小椿仙太郎が自身の斬魄刀『衝突』を始解させ片側が杭になった大鎚へと変化し、六番隊隊長・朽木ルキアに対して構える。
「うむ、小椿三席。掛かってくると…ん?」
ドドドドドッ
ルキアが仙太郎に応えようとすると、何処からか地響きのような音が響いてくる。そして、
「ふざ」
ドドドッ
「けん」
ドドドドドッ
「なぁぁぁ」
ドドドドドドドッ
「こんのぉ、ワキクサアゴヒゲ猿ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ゴオゥゥ!!
「危ねえ!?」
何処からともなく豪速で現れた四番隊隊長の虎徹清音が勢いそのままで仙太郎に飛び蹴りを繰り出す。が、仙太郎は何とか身体を捻り飛び蹴りを回避する。
「チッ!避けるな!!」
「無茶言うんじゃねぇ!?隊長になってもお転婆が治ってねぇじゃねえか!!このチビ!!」
「うっさい!黙れ!!なんでアンタの解号がそれなのよ!?」
「知るか!?斬魄刀に言え!!」
「アンタの斬魄刀でしょうが!!」
「だから俺の魂なんだろ!?」
「そこがムカつくのよ!!」
「理不尽だろ!!」
急に現れて仙太郎に理不尽にキレ散らかす清音に対してルキアが呆れるように呟く。
「『紐解け』も診天によく合った良い解号だと思うが」
「分かってるわよ!!」
「なら何故怒る」
「私だって浮竹隊長みたいな解号が良かったの!!」
「子供か」
隊長の言葉とは思えない言葉を大声で喚く清音は仙太郎を指差しさらに叫ぶ。
「私と私の中の美しい浮竹隊長の幻影に謝んなさい!!」
「後半知らねぇよ!!」
「浮竹隊長はもっと美しくて優雅で慈愛に満ちて――」
「本人普通にゲラゲラ笑ったりする人だっただろうが!」
「解釈違いよ!!」
「本人だぞ!?」
喚き散らす清音に仙太郎も昔の感覚で言い返す。
「出歯亀野郎が!!隊長にもなって浮竹隊長の同人誌描いて金欠になってる奴が何言ってやがる!?」
「乙女の秘密を暴露すんなあぁぁぁぁぁ!!!」
ゴウンゥ!!
「殺す気かよ!?」
理不尽な廻し蹴りが仙太郎を襲うが、仙太郎は身体を反らし何とか回避する。そんな二人を見て、ルキアがポツリと呟いた。
「……いや、清音が悪いだろ」
そんな呟きを聞いてか聞かずか、清音は今度はルキアに叫ぶ。
「朽木さんは悔しくないの!?」
「何がだ」
「この猿の解号よ!」
「良い解号ではないか」
「そうじゃなくて!浮竹隊長の――」
「清音」
「何よ!」
「斬魄刀の名も解号も己の魂から生じるものだ」
「…………」
「つまり小椿三席……仙太郎の魂には、それほど強く浮竹隊長の教えが残っているということだろう」
「…………」
「朽木……」
ルキアは仙太郎の方を向き、しっかりと言い切る。
「仙太郎よ、誇ればよい」
「……おう」
「…………」
そんなルキアの言葉を聞いていた清音が漏らす。
「…………ずるい」
「だから子供か!!」
「私だって浮竹隊長の魂を刻み込みたい!!」
「言い方が怖ぇよ!!」
「とにかく仙太郎!私と戦いなさい!!」
「最初からそのつもりだ!!チビ!!」
「朽木さん!ちょっと借りるわよ!」
「構わぬ」
「俺には聞かねぇのか!?」
「安心しなさい!斬魄刀は解放しないであげるから!!」
「ふざけんな!お前の『診天』、始解すると人斬れなくなるからだろうが!!」
「アンタを解放した『診天』で斬っても"不摂生"しか診断されないわよ」
「至って健康だ、チビ!!てか、お前救護班だろ!?参戦して大丈夫なのかよ!?」
「安心しなさい。織姫さんと花太郎くん置いてきたから。それに今回は参加してもいいのよ!!」
「その規則作った奴出てこい!!」
「兄様だ」
「総隊長ォォォ!!」
無月訓練場のとある場所。
「黒崎隊長! 実験に付き合ってください!」
「訓練って言え!!」
十二番隊三席・涅レムが十三番隊長・黒崎一護に向かってズレたことを叫び自身の斬魄刀を解放する。
『哀死愛された 夢儚』
「?泡が出ません!?」
「そう言う環境なんだよ!!」
夢儚のピンク色の泡が出ないことに驚愕するレムに一護がツッコんだ。
「山田三席!また負傷者です!」
「は、はい!こちらへ!」
「花太郎くん、こっちは私が治すね!」
「お願いします、黒崎副隊長!」
ここは、偃文修武外に設置された即席の救護場所。そこでは、清音の抜けた穴を埋めるべく、四番隊副隊長・黒崎織姫と同隊三席・山田花太郎が奮闘していた。
チカッ……
「……?」
花太郎が腰の瓢丸を見る。
「なんか、光ったような……?」
「山田三席ー!」
「今行きます!!」
「シロちゃん!」
「日番谷隊長だ」
「シロちゃんさん!」
「桃源院、何でお前までそう呼ぶ!?」
「桃さんが呼んでるので!」
「理由になってねぇ!」
「シロちゃん隊長!」
「…………」
「?」
「阿散井三席」
「はい!」
「日番谷隊長だ」
「はい、シロちゃん隊長!」
「直ってねぇ!!」
五番隊副隊長・雛森桃、三番隊副隊長・桃源院優火、一番隊三席・阿散井苺花が十番隊隊長・日番谷冬獅郎と対峙する。そんな中、何故か副隊長、三席の女子グループに"シロちゃん"呼びが伝染していた。
「いいじゃない、シロちゃん」
「お前が元凶だろうが!雛森ィィィィィィィィ!!」
「シロちゃんさん隊長、始めますよ!」
「増やすな!!」
「シロちゃん隊長! 行きます!」
「だから――もういい!! 来い!!」
『弾けろ 飛梅』
『届かせろ 勇気姫』
『朝灼に導け 慈氏郎』
雛森は祭祀刀のように変化した『飛梅』を振り右側から、優火は淡く輝き出し『勇気姫』で自身にバフをかけ左側から、苺花は片方が剣のように異様に長く反対側には爪のような形の短い曲刃が四方に伸びるようについている特殊な金剛杵のように変化した『慈氏郎』を突き出し正面から、それぞれ同時に日番谷へと攻撃を仕掛ける。
ガキンッ
パシッ
ダンッ
日番谷は飛梅を氷輪丸で受け止め、空いている片手で優火の腕を掴み、慈氏郎を足裏で地面へと踏みつけ、三人の攻撃を防ぐ。そして、
『蒼天に座せ 氷輪丸』
ピキッ
「!?」
氷輪丸に接触していた飛梅が凍りつく。
「霊圧を外に放出できねぇが接触してりゃあ、凍結くらいはできる」
「……はっ!」
雛森は飛梅の梅焔を刀身に纒わす形で発動させ、氷を溶かし一瞬濃い霧を発生させる。その隙に三人は日番谷から距離を取る。
「……シロちゃん隊長って可愛い名前して怖いんですね」
苺花が呟く。
「シロちゃん言うな。それから、隊長をなめるな」
『伸びろ 鬼灯丸』
『踏み込め 衝羽根』
ガキンッ
十一番隊副隊長・斑目一角の三節棍『鬼灯丸』と十三番隊三席・斑目志乃の静形薙刀『衝羽根』がぶつかり合う。
「はっ!どのくらい強くなったか見てやるよ、志乃!」
「……今更兄貴面しないでください。斑目副隊長」
「……いや、前にも言っただろ?俺との関係知られたらお前が危険だと思ったから隠してたって。今ならお前は三席。危険だなんだって言わなくても良いんだよ」
「分かってますが分かりません。と言うか分かりたくない。危険だからと遠ざけといて強くなったから兄妹みたいに接しようなんて無理な話だと思うよ、一角兄ぃ」
「………」
「てか、私的には一護隊長や雨竜副隊長がお兄さんなら良かったよ」
「よりによってアイツら選ぶのかよ」
「はあぁぁぁあ!?危険だからと遠ざけることもせず、それどころか親身になって戦い方を教えてくれたんだよ!?アンタなんかと大違いなのに「よりによってアイツら」なんて、ふざけんな!!」
一角の言葉に激昂し志乃は衝羽根で突きを繰り出す。その突きを一角は半身になって避ける。
ビュンッ
志乃はそのまま横払いに移行し一角を薙ぎ払う。一角は鬼灯丸で受け止め、鎖部分で絡め取ろうとするが志乃は直ぐ様衝羽根を縦に回し、掬い上げるように石突で一角の顎を狙う。
「おっと!」
「チッ」
志乃は一角に攻撃が入らなかった瞬間、後ろに飛び距離を取る。
「随分と戦い方が上手く成ってんじゃねぇか」
「…雨竜副隊長から、攻撃を繰り出すときは一手二手先を考えて出すように教わってるから」
「石田の野郎」
「そして、一護隊長からはこう教わったわ」
そう言って志乃は衝羽根の柄の一番端を両手で持ち上半身を捻る。そして、
ブゥオンッ!!
バットを振るように衝羽根を横に薙ぎ払う。
「打つときは全力で躊躇うなって!!」
「危ねぇ!?」
一角は身体を反らしてフルスイングを避ける。
「アイツらうちの妹に何教えてやがる!?」
「……あ、雨竜副隊長から、もう一つ教えてもらったことがあったわ」
「あ?」
「「もし、君を避けてきたヤツが危険に晒させたくなかったなんて言ってきた時に、自分でその言葉に釈然としないモノがあったなら取り敢えずそいつを殴ってみると良い」って。んで、「後の事は殴ってから考えれば良い」ってさ」
「石田、お前本当に何教えてんだよ!?」
「…と言う訳で一角兄ぃ、全力で殴らせろ!」
そんな志乃の言葉に一角が笑いながら鬼灯丸を構える。
「上等だ!! だったら兄貴に全部ぶつけてこいや!!」
「だから兄貴面すんな!!」
ガキィン!!
八番隊副隊長・八々原熊如と同隊三席・世敖景博の二人に、九番隊副隊長・掛詞解那と同隊三席・行木竜之介の二人が対峙していた。
『がおれ 飛熊』
熊如が自身の斬魄刀『飛熊』を始解させネイル状にし、さらにその上から気を熊の手袋のようなグローブにして纏い、解那へと攻撃する。
『雷命輝きて聞き入れ給え、静風纏いて静まり給え 嵐神』
解那は斬魄刀『嵐神』をニ本のエストックに変えて迎え撃つ。
「がおっ!」
「……」
ガキンッ
「が〜おっ!」
「……」
キンッ
「ががお〜っ!!」
「……」
ガギィンッ
「ありゃ、全部防がれた」
「……かけ声が可愛すぎてずるいですね」
「マ?解那っち、ありがとう〜!」
「褒めてませんよ」
解那の苦言を褒め言葉だと勘違いした熊如がお礼を言う。
「それにしても、射場隊長の偃文修武ってややこいね〜。あーしの「がお噛み」や「熊っ手」って気と霊圧混ぜてたから遠くに飛んでたんだって分かったわww」
ガキンッ
「お互い、始解は近距離戦確定。卍解はどちらも弱体化して決定打に欠けますからね」
ガンッ
「ね〜」
キンッ
無駄口を叩きながらも熊如と解那は互いに攻撃の手を止めない。
そんな自身の隊の副隊長二人を見ながら鍔迫り合いをしていた金髪チャラ男なイケメンの景博と気弱そうな好青年の竜之介がお互いを弾くように距離を取る。
「…軽口叩きながらあの攻防繰り広げてるよ」
「隊長格や上澄みの副隊長格の方は皆さんあんな感じですよ。実際、うちの浮竹隊長なんかは「ダル〜」とか言って最下級大虚くらいなら一瞬で細切れにしてました」
「……隊長ってやっぱ化け物なんですね」
「ええ、まあ。……個人的には、もう少しだけ真面目に仕事をしてくれれば助かるのですが。あと、服をしっかり着てほしいです。目のやり場に困るんですよ」
「……世敖三席って結構初心ですよね?」
「いや、女性の肌を見るなんてよろしくないでしょ?こっちが恥ずかしくなってきます」
「……見た目と違いすぎる」
「?…それ、よく言われるんですが、どういう意味なんでしょうか?」
「世敖三席は今のままで良いってことです」
「はあ…?」
そんな四人の戦闘区域に踵落としが入れられた。
ドカァァァンッ!!
「「「「!?」」」」
砲弾が着弾したかのような衝撃を四人は避ける。そして、景博の後ろから声が聞こえる。
「混戦状態だと、こういった乱入者が現れることを想定しておけ」
「!?」
『影から支えろ 黒宝』
景博は瞬時に自身の斬魄刀『黒宝』を始解させ自身の影から黒い縄を一瞬出現させるが偃文修武内の為、一定量伸びたところで消える。しかし、奇襲者の意識をそちらに一瞬だけでも向けさせることに成功した景博は斬魄刀を構え防御体勢を取る。
ドカッ
「くっ!?」
蹴り飛ばされた景博は受け身を取り、起き上がり、直ぐ様体勢を立て直した。
『備忘とせよ 条玻瓈』
景博の近くにきた竜之介が斬魄刀を始解させ、自身の周りに巻物を出現させ、コチラも乱入者を見つめる。
「ふむ、三席にしてはなかなか良い反応だな」
乱入者、二番隊隊長・砕蜂が二人をそう評価する。
そんな砕蜂に熊如と解那が左右斜め前から身体を屈ませて視線の下から同時に攻撃し、さらに後ろから、いつから来たのか三番隊三席・佐藤祐也と五番隊三席・赫穂詩未里愛が斬魄刀を振り下ろす。
ヒュンッ
砕蜂は回転蹴り一発で四人全てを吹き飛ばす。
「「!?」」
「くっ!」
「ぐえっ!」
副隊長二人はなんとか反応し防御するが、三席二人は直撃をくらい吹き飛ばされた。
「ふむ、六対一か。お前達に取っても私に取ってもそれなりに良い訓練になりそうだ」
砕蜂が楽しそうに不敵に笑う。
パシッ
スッ
サッ
ヒョイッ
竜貴の蹴り、肘鉄、正拳突き、低空の廻し蹴りを平子は止め、避け、いなし、躱す。
「……ん〜、隊長相手だと先ず当たらないな。いまいち決定打にかける」
「実験結果みたいに言うなや」
「実験ってか、訓練なんだからこんなもんでしょ」
「……なんか、違う気がすんねん」
「そうかな?……よし!次は死神らしく斬魄刀使うか!」
「いや、斬魄刀って。…竜貴、斬魄刀腰に差してないやん」
平子が竜貴の腰に刀が差していないことを指摘する。
「いや、あるよ。ほら」
そう言いながら竜貴は腰に付けていた赤い紐で括られた漆黒の佩楯を平子に見せる。
「………斬魄"刀"?」
「ああ、ちゃんとした斬魄"刀"だよ」
『蹴り飛ばせ 脚光』
始解と同時に佩楯が輝き出し、竜貴の足を覆い、鈍い鉛色の脚鎧へと変化する。
「いや、何処が刀やねん」
「刀だよ」
そう言って竜貴が平子に蹴りを放つ。
「!?」
ザンッ
平子は瞬歩で回避するが後ろにあった岩に蹴りが当たると岩が斬れたように亀裂が入った。
「斬れるなら斬魄刀でしょ?」
「……蹴りを斬撃に変えたんか?いや、これは…」
「あ、分かった?アタシの斬魄刀『脚光』の本当の能力は足裏から霊圧を放出出来るようにすること。岩が斬れたのは"斬れる程鋭い蹴り"を放ったからさ」
「……なんで、一護の友人ってこんなんばっかなん?」
「一護の名前出すなよ。褒められた感じしないじゃん」
「褒めとらんわ!」