前回の続きで、混戦訓練の後半です。
次話は来週日曜日に投稿予定です。
無月訓練場の中心部辺りで更木剣八と射場鉄左衛門がやり合う。
ガキンッ
ガンッ
ギャリンッ
ガガンッ
ギンッ
「ハハッ!射場!やっぱりてめぇは面白れぇな!!」
「そうですかい?」
「ああ、面白れぇからコイツも愉しみたいってよ!!」
「!?」
『呑め 野晒』
更木が自身の斬魄刀『野晒』を解放し大斧へと変え、全力で振り下ろす。
ドザァァァァァァンッ!!!
地面が割れ斬撃が飛ぶ。
「……腕力だけで斬撃飛ばさんでください」
「あ?強く振れば斬撃くらい勝手に飛ぶだろ?」
射場が避けたその斬撃は、何故か一護の方に飛んで来た。
「危ねぇ!?」
ガキィン!!
一護は瞬時に斬月を抜き放ち斬撃を弾く。しかし、そんな隙を狙わないはずが無い程、レムは十二番隊だった。
ブンッ
「こっちも危ねぇ!?」
「チッ、避けられました」
「絶対、その刀何か仕込んでんだろ!?」
「安心してください!泡の中に入っている薬品を直接注入しようとしてるだけです!」
「何処が安心なんだよ!?」
「死にません!」
「なんで、お前の能力ってそんな怖ぇんだよ!?」
「失礼な!マユリ様の疋殺地蔵の技術を流用しているだけです!」
「それでかよ!?」
そして、一護に弾かれた斬撃は八番隊隊長・浮竹都依の場所に飛んで行った。
「……」
スッ
ザァァァァァァンッ
都依は最小限、身体を捻ることで斬撃を回避する。そして、割れた地面を見ながら都依が呟く。
「…………計算違いな行動しないでよ」
「あ?」
「ここなら誰の攻撃も来ない。攻撃が来ても他の戦闘の余波と移動経路から外れてる。私は動かなくていい。……一京通りも計算したのに」
都依は何時ものだらけきった声音で話しながら、射場を指差す。
「更木隊長と射場隊長がやり合って更木隊長のエンジンが掛かって始解して、斬撃飛ばしたら射場隊長は右に避ける。そこまでは分かる」
「おう」
「その先の黒崎隊長が弾くのもまあ分かる」
「おう」
「なんであんな角度に弾くの?」
「俺のせい!?」
「隙ありです!」
「やめろてめぇ!?」
「チッ、また避けられました」
ズガァァァァンッ
更木が都依へと野晒を振り下ろす。都依はいつの間にか抜いていた脇差型のニ本の斬魄刀『冥土蓬莱』を重ねて野晒を止める。
「…ハハハッ!おい、浮竹!前回は木刀でのお遊びだったんだ。今回はちゃんとした斬り合いしようぜ!!」
「メンドッ!前回、私に攻撃モーション全部潰されて、拗ねてたくせに、絡まないでよ。コスパ悪いな〜」
「ハハハッ!安心しろ!今回はちゃんと斬ってやるからよ!!」
「何が安心なの?……しかも、モーション全部変わり続けてるし。計算するのもコスパ悪い」
『永き想いは苦痛に歪み、儚き想いは希望に満ちる 冥土蓬莱』
ガギャンッ
ズガンッ
ギャリンッ
ドゴンッ
ゴシャァァァァンッ
都依は冥土蓬莱を始解しニ本の短槍型の薙刀に変化させ、刃・柄を巧みに操り更木の天災のような猛攻をいなす。そして、
ドカァァンッ
更木の豪快な横薙ぎを冥土蓬莱で受け、飛ばされることで距離を取るが、更木は直ぐ様その距離を飛んで詰め、野晒を振り下ろす。
「ハハハッ!ゴム鞠みてぇに飛んでくな!面白れぇ!!」
「女の子にゴム鞠とかデリカシー無さすぎでしょ」
「デリカシーってなんだ斬れんのか?」
「………」
素で言ってそうな更木に最早、言葉を発することすらダルくなったのか都依が無言になる。
「………さて、ワシはどうしたもんかのぅ~」
更木がターゲットを都依に変えたことで少し頭が冷えた射場はどうしたものかと考えていると、
ポンポンッ
「ん?なんじゃ、与ウか。どうしたんじゃ?」
七番隊副隊長・輪堂与ウが射場の肩を叩き、手話で会話してきた。
『暇なら僕とやりません?』
「ワシゃええが、それだと何時もの七番隊の訓練と変わらんじゃろ?」
『変わらないと駄目なんですか?』
「……ほうじゃのう〜。よし!やるか!」
射場の言葉に与ウが笑顔になり、斬魄刀の腹に指文字で解号を刻む。
『生め 祭命』
与ウの斬魄刀の刀身が、厄祓いに用いられる人形札を何枚も連結したような形状へ変化する。
「わかっちょると思うが、式神は霊圧の外部放出じゃから出せんぞ?」
「……」
「それに刀身が長くなるちゅうても、そこまで極端じゃないじゃろ?」
『ええ、そうですね』
「なら何故解放した?」
『隊長の卍解内で隊長と一緒に戦えるように色々試したいので』
「…………ほうか」
「……(こくん)」
偃文修武外、四番隊特別救護所。
「花太郎くん。そろそろ、訓練に参加してきて良いよ」
「え?良いんですか?」
治療者が減ってきたので織姫が花太郎に訓練に参加してきて良いと言う。
「うん。治療しなきゃいけない人も少なくなったし、それに一度は参加しないとダメなんだよね?」
「はい。なんか、そうらしいですね」
「なら、今なら瓢丸にエネルギーが結構溜まってるし丁度いいんじゃないかな?」
「あ、確かにそうですね!なら、このエネルギーの放出も兼ねて行ってきまーす!」
「うん、いってらっしゃーい」
そう言って花太郎は戦線へと向かった。
ズルズルッ
「ただいま〜」
それと、入れ替わる形で気絶した仙太郎の首根っこを掴み引きずるようにしながら清音が帰ってきた。
「あ、清音ちゃん。お帰りなさい」
「ただいまです。織姫さん。……花太郎くんは?」
「訓練に参加しに行ったよ」
「ああ、そうなんですね。それにしても朱色瓢丸が放出できないこの状況でどうやって戦闘するのか、思った通り良い訓練になりそうね。総隊長に頼んで強制参加させて良かったかも」
「…え?」
「ん?」
雛森、優火、苺花の三方向からの波状攻撃を日番谷は冷静に一つ一つ丁寧に対応していく。
「桃源院、阿散井、攻撃するときは波状攻撃とするか同時とするかは必ず決めろ。どっち付かずが一番対応されやすい」
「「は、はい!」」
「雛森、踏み込みが少し甘い。もう半歩前に踏み込めば今の斬撃は威力が上がる」
「ありがとう!」
「阿散井、お前のその爪のような刃は相手の刀を絡め取るのにはうってつけだが、そればかり意識するな。手札の一つとして、狙える時に狙え」
「はい!」
「桃源院の勇気姫による能力向上は10分に一度だな?上がる度にほんの僅かだが膂力に振り回されている。自身の能力の時間はどんな時でも把握出来るようにしておけ」
「分かりました!」
アドバイスしながら日番谷は氷輪丸を一振りして三人まとめて吹き飛ばす。
「はぁ、はぁ、はぁ、……隊長ってやっぱり強いですね」
「ふぅ、……まあ現死神で最強の十三人だからね」
体勢を立て直しながら呟いた優火の言葉に雛森が答える。
「……あの、桃副隊長、優火副隊長。隊長に見てもらいたいものがあるんです。私を主軸に戦って貰っても良いでしょうか?」
ふと、苺花が雛森と優火に伺いを立てる。
「え?私は構わないけど」
「……もしかして、苺花ちゃん。三席でもう使えるの?」
優火は承諾し、雛森は苺花がやろうとしていることを察する。
「はい」
「…うん、それならシロちゃんに相手を頼むのは申し分ないね。……なら――」
雛森と優火が苺花を中心にして構える。
そんな三人を見て日番谷は考える。
(阿散井を中心に置いて、……主軸にして戦うつもりか?だが、雛森ならそう言った意図は隠す様に動くはず。……てことは、訓練ということを加味して普段はやらない力技……)
「……なるほど、三席でもう使えるのか」
苺花が慈氏郎の剣先を日番谷に向け構える。そして――
『卍解』
苺花から膨大な霊圧が放出し、偃文修武内の為、またたく間に空気に混ざり、まるで苺花の話周りの空間が滲んでいるかのように揺らめく。
『白王慈氏郎』
苺花の髪が白金に変わり、雷を身体に纏う。そして、片方の肩に雷で出来たマントをかけ、ソレが風で靡く。
「シロちゃん隊長。行きます!」
「…シロちゃん言うな」
キンッ
カンッ
ガギャンッ
「……いや、『逆撫』の能力がヤバいのは知ってるから、訓練で使わないのは分かってるんだけどさ。始解させられないってちょっと心に来るね」
軽口を叩きながら『脚光』を付けた脚で繰り出す竜貴の蹴りを、平子は自身の斬魄刀『逆撫』で全て受け流す。そんな中、竜貴は平子が始解しないことに少し拗ねる。
「アホぬかせ。逆撫の匂いはアレ俺の霊圧や。偃文修武内で出したかて、効果あらへんわ」
「なら、虚化」
「訓練やろ」
「……ならさ、平子に虚化使わせるのがアタシの目標かな」
「……マジで言っとるん?」
「ああ、マジだよ」
「いや、無理やって意味やないで。……竜貴、ジブン俺からその手札出させるだけのモンをもう持っとるんかって聞いてんねん」
「ああ、そっち。マジで持ってるよ」
そう言って竜貴は不動立ちになり平子を見つめる。そして――
『卍解』
瞬間、竜貴の周りの空気が爆発したかのように突風が吹き荒れる。
『脚光閻出』
脚光が消え、竜貴が淡く水色に輝き出す。
「……ホンマに一護の友人は皆おかしいわぁ。てか、脚光消えたやん。環境系や概念系の卍解なん?」
「いや、違うよ」
平子の言葉を否定し、竜貴が不敵に笑って言い放つ。
「アタシ自身が卍解さ」
『卍解 御刀』
「ほう、三席でもう卍解を習得しているのか」
佐藤祐也の卍解を目にした砕蜂が呟く。
「え!?佐藤さん卍解使えるんですか!?」
「うん、使えるよ」
「何で!?」
卍解を使った佐藤に未里愛が尋ねる。
「頑張ったからね」
「頑張ったから!?」
「うん。血反吐吐いて、ボロボロになって何度も骨折れたし、本当に頑張った」
「……えっと、精神世界で自身の確執と直面したりとかは」
今度は解那が佐藤に訊ねる。
「無いですよ。普通に具象化出来るようにして、普通に屈服させました」
「「「「「「…………」」」」」」
砕蜂含め、その場に居た六人全てが無言になる。そして、全員が思った。
((((((普通に凄いけど、普通だ))))))
「えっと、祐也さん?因みに能力って?」
今度は熊如が尋ねる。
「霊圧が上がります」
「……ん?」
「霊圧が上がります」
「そんだけ?」
「はい」
「概念系みたいに見た目も変わって無くない?」
「変わってますよ、ちゃんとほら」
そう言って佐藤は自身の御刀の鍔を指差す。
「始解では鍔が銀から金に。卍解だと金から白金に変わってます」
(((((地味!!)))))
「でも、単純だからこそ偃文修武内でもそのまま使えます」
シュンッ
「…ほう」
ガキンッ
佐藤が瞬歩で砕蜂の死角に回り込み、御刀を振るう。砕蜂は佐藤の方を振り向かず、自身の斬魄刀を抜き御刀を止める。
「私に抜かせたか……三席の卍解としては中々だな」
「ありがとう御座います」
「一護さ〜ん」
「ん?おお、花太郎」
ガンッ
近付いて来る花太郎を呼ぶ一護。
「どうしたんだよ?」
ガキンッ
「あ、いえ、僕も訓練に参加するんですが、何なら一護さんか石田さんに相手してもらった方が良いかなぁ〜て思ってまして……」
「あ〜、そういや、何故か名指しで参加するよう言われてたもんな」
キンッ
「本当に何でなんでしょうね」
「さっきから斬月で防がれます!?」
先程からレムは一護に夢儚を振るっているが、全て斬月で防がれていた。
花太郎もなんやかんや一護との付き合いが長いからか、チラチラとレムを見てはいたが自分から指摘する事は無かった。そんな中、
ドゴォォォォォンッ
凄まじい炸裂音が響く。
ザッ
「……僕としたことが、何時も"絵の具"ばっかり飛ばしているから美学ちゃん自体厄介なことを忘れてたよ」
「弓親!」
炸裂音のした方から弓親が飛んで来て着地する。
そんな弓親を追って、終焉美学をバトンのようにクルクルと回しながら白亜がトコトコ歩いてくる。そんな白亜を見ていて、ふと、一護がある違和感を覚える。
「ん?何で終焉美学回してんのに風切音が聞こえねぇんだ?」
「あ、確かに無音ですね。言われると違和感があります」
「……黒崎隊長も、山田三席も美学ちゃんの能力知らないんだ」
「え?『王虚の閃光』放てることじゃねぇの?」
「それは、彼の種族特性と美学ちゃん自体の構造上の仕様だよ。美学ちゃん自体の能力は――」
トンッ
白亜が跳んで来た。
「不味い!避けろ!」
「!!」
「わっ!」
「おっ!」
弓親の言葉に一護が反応し、花太郎とレムを脇に抱えて避ける。そして、白亜の振り下ろした終焉美学が地面にぶつかる。
ドゴォォォォォンッ
白亜が破面であることを考慮してもあり得ないほどのクレーターが出来る。
「何だよあの馬鹿力!?」
「アレが美学ちゃん本来の能力、ベクトル操作だよ」
「ベクトル操作?」
「美学ちゃんを回すことで発生する遠心力を全て攻撃方向にぶつけたんだ。因みに、風切音がしなかったのは抵抗力すら巻き込んでいて風を切ってないから音が鳴らなかったんだよ」
「…アイツの斬魄刀、そんな能力だったのかよ」
「凄いですね〜。ん?あ、涅三席、頬に切り傷が」
「あ、さっき跳んで来た地面の破片で切れました」
「待ってて下さい。僕の瓢丸で治しますから」
「ありがとう御座います」
『満たせ 瓢丸』
レムの頬の切り傷を瓢丸が吸収し治す。
「あっ……」
「どうした?」
「瓢丸がいっぱいになりました」
そして瓢丸がメス型の朱色瓢丸へ変化する。
「じゃあ朱色瓢丸を――」
「撃てないんじゃない?」
「え?」
「いや、傷のエネルギーとは言ってるけど朱色瓢丸は君の霊圧だろ?偃文修武内じゃ撃てないでしょ」
弓親の言葉を聞きながら花太郎は朱色瓢丸を振るが霊圧が放出されない。
「……ど、どどどっ、どうしましょう!一護さん!?」
「いや、俺に聞くなよ!?」
焦る花太郎の手の中で瓢丸が赤い光を出し、点滅しだす。
チカッ…チカッ…
「…………なんか点滅してるんですけど」
「大丈夫なのか?」
「僕に聞かないでくださいよ!!」
点滅速度が上がっていき、完全に赤く輝き出し、今度は放電したような音を立てる。
バチッ
瓢丸の表面に亀裂みたいな光が広がって行く。
バチッ……バチバチッ……!
周囲が白亜含めて離れ始める。
「え、ちょっと!? 皆さん何で離れるんですか!?」
「いやそれ絶対爆発するだろ!!」
「持ってるの僕なんですよ!?」
「山田三席!危ないと思ったらすぐ手を離して!」
「手を離していいんですかこれ!?」
もう誰も分からない。
そして――
ドクンッ
突然、光が全部瓢丸へ吸い戻される。
「…………?」
「「「「「………」」」」」
「……爆発しませんでしたね」
直後。
ズズズズ……
瓢丸そのものが変形し始める。
朱色のメスが薄く伸びて透明になっていく。短刀より長く、刀より短い程度のガラス製の外科用メスへと。そして透明な刀身の内部には、
サラ……
赤い宝石の砂みたいなものがまるで砂時計の砂のように詰まっていて、動かす度にサラサラと綺麗な音を奏でていた。
「…………」
「……花太郎」
「はい」
「それ、知ってるやつか?」
「知らないやつです」
「だよな!?」
「どうしましょう?」
「……取り敢えず、構えてみたら?」
「え?こうですか?」
花太郎は白亜の提案通り変化した瓢丸を構える。そして、白亜は終焉美学を回し、構えた瓢丸へと終焉美学を振る。
「え!?ちょっ――」
ガギィィィィィィィィンッ
白亜が吹き飛ばされた。
「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」
コレに一番驚いたのは花太郎本人である。何故なら、衝撃を一切感じなかったから。
「おい、何だその面白そうなの?」
花太郎の耳には今、最も聞きたく無い声が聞こえた。花太郎が声の方を振り向くと、そこには最凶の笑みを携えた更木が立っていた。そして、更木は変化した瓢丸へと野晒を振るう。
(あ、終わった)
花太郎は自身の死を覚悟した。が、
ガギィィィィィィィィンッ
更木が仰け反った。
「………」
ニイィ
更木の笑みが深くなる。
「ハハハッ!おい、それ構えとけ!!」
ガギィィィィィィィィンッ
ガギィィィィィィィィンッ
ガギィィィィィィィィンッ
更木の連撃が全て弾き返される。
「あ!」
そこでレムが気付く。
「どうした?」
「中の赤いの、少し減ってます」
「じゃあ使えば元に戻るんじゃない?」
「……花太郎のヤツが保つかな?」
「「無理じゃない(ですか)?」」
数分後、もとに戻った瓢丸を持ったまま真っ白になった花太郎が立っていた。
「射場隊長」
「ん?朽木総隊長、なんですかい?」
「偃文修武発動可能時間は後どれ程だ?」
「……30分ってとこですかのぅ~」
「そうか」
そう言った一番隊総隊長・朽木白哉が自身の斬魄刀『千本桜』を抜く。
「ならば、そろそろ私も行こうか」
訓練場の中心に立った白哉は解号を唱える。
『散れ 千本桜』
サァァァ
千本桜が本当に散った。
「「「「「………え?」」」」」
それを見ていた数人が素っ頓狂な声を上げる。
「あ、操れないんだ!」
そんな中、未里愛が言う。そう、未里愛の言う通り、千本桜の変形は斬魄刀の能力であるため可能だが、操作には霊圧を必要とするため、操れず本当に散るのである。
「………て事は、明確に弱体化した現死神最強に挑めるってことだよね!?こんなチャンス滅多に無いじゃん!!総隊長〜!お相手お願いしま〜す!!」
「構わぬ」
そう言って未里愛は白哉に突撃し、白哉は了承する。そんな一幕を見ていた一護が恋次に呟く。
「……おい、なんか嫌な予感するぞ」
「奇遇だな。俺もだ」
未里愛が近付くと、一瞬、白哉の身体が振れる。すると
ブワッ
散った千本桜が舞い上がる。
スッ
そして、その中の1枚を白哉は人差し指と中指で摘む。
ヒュンッ
瞬間、未里愛の頬を何かが通り過ぎる。
ツゥー
「え?」
未里愛の頬に一筋の鮮血が流れた。
「血?」
未里愛が頬に触れと、指先に付いた赤い液体が血であることで頬が斬れたことに気付く。
ザギンッ
遥か後方から何かが刺さる音が聞こえた。未里愛は音がした方を見る。そこには岩の表面に桜の花弁のような刃が一枚突き刺さっていた。
「…………千本桜?」
『刻景・千本桜』
「へ?」
未里愛はその言葉でもう一度白哉を見る。そこには舞い上がる桜の花弁を今度は2枚、指の間に挟んでいる白哉が居た。
「……謝れば助かりますか?」
「避けて構わぬ」
そして、戦場に花弁が散る。
「戦場では、予想外の方向から攻撃が飛んでくることがある。常に警戒し備えよ」
白哉が歩く度に花弁が舞い上がり、弾丸より速い刃が放たれる。
「総隊長、千本桜使えないんじゃないんですか!?」
「使ってはいない」
「使ってるじゃないですか!!」
「これは投擲だ」
「屁理屈!!」
「うわっ!?」
「気をつけろ!!何処から飛んで来るか分から、危ねぇ!?」
「副隊長以下は避ける事だけ考えろ!何故か、撃ち落とせない程強い!!」
「千本桜ばかりに気にしすぎだ、愚か者」
「え?ぐぼっ!?」
千本桜を避ける事だけ考えていると近くの隊長格に伸される。
「がおぉぉ!?総隊長こっちにも飛ばしてきたんだけど!?」
「白亜副隊長!そっち行きました!」
「分かってる。……あ、後ろからも来てる」
「シロちゃん隊長!後ろ!」
「分かってる!あとシロちゃん言うな!」
「花太郎くん!?戻ってきたの!?」
「千本桜が飛んできたんですよぉぉ!!」
まさに、地獄の30分であった。
「コレにて訓練を終了する」
「これより各々の評価を伝える。先ず――」
地獄を乗り切った者達が、地獄を作り出しておきながら涼しい顔して評価を開始する総隊長に何とも言えない視線を向ける。白哉はそんな視線など知らぬと言うように評価を淡々と述べていく。
「次に、八番隊隊長・浮竹都依」
「………」
「戦場把握能力は申し分ない。また、更木隊長と斬り結べるだけの技量は見事である。……が、その把握能力を従来の仕事にも回せ。世敖三席への手当てが足りぬ」
「え!?ケイ、そんなの貰ってるの!?」
「辞退してます」
「なんで!?」
「だから困っている。浮竹隊長、働け」
「ヤダ〜」
「……はぁ」
即答する都依に景博がため息を漏らすのであった。
「次に、七番隊副隊長・輪堂与ウ」
『はい』
「今回、祭命の能力が大幅に制限されることを理解した上で始解し、射場隊長との戦闘を選んだな」
『はい。偃文修武を使ってる隊長と一緒に戦うことになった時、僕だけ何も出来ないんじゃ困るので』
「その判断は正しい。卍解とは敵のみを利する状況を作るものではない。隊長の能力下で己が如何に動くべきかを知ることは、副隊長として必要なことである」
「……(こく)」
白哉の言葉に与ウが少し嬉しそうに頷く。
「今後も射場隊長との訓練を継続せよ」
『はい!』
「……与ウ、明日からもう少し訓練厳しくするけぇのぅ。覚悟はええか?」
『もちろん』
「次、二番隊副隊長・大前田希代」
「はい!」
「格上を相手に、勝算がないことのみを理由として戦闘を避けなかった点は評価する」
「ありがとうございます!」
「また、砕蜂隊長から学んだ白打を適切に用いており、技術の継承という点でも申し分ない」
「はい!」
「だが――」
白哉が言葉を発する前に希代の顔が曇る。自身で何がダメだったのか分かっているらしい。
「……はい」
「岩奏三席に救援されるまで風死の鎖から脱せなかった点は課題とする」
「……精進します!」
「次に、九番隊副隊長・掛詞解那」
「はい」
「状況変化への対応は良好であった。敵対していた八々原副隊長との即時共闘にも迷いがない」
「訓練ですので」
「実戦でも同様に判断せよ」
「…はい」
解那の返答に横で聞いていた修兵の口の端が少し上がっていた。
「次に、十番隊副隊長・松本乱菊」
「は〜い」
「自身が不利であることを承知で隊長格に挑んだ事を評価する」
「ありがとうございます」
「……松本さん」
「何、イヅル?」
「今度は、灰猫有りでやりましょう」
「……良いの?」
「ええ、お互い不完全燃焼でしょ?」
イヅルが不敵に笑う。
「……ほんと、いい性格してるわ。アンタ」
「どうも」
「次は、十二番隊三席・涅レム」
「はい!」
「黒崎隊長を相手に夢儚の直接接触による作用を試したな」
「はい!実験です!」
「訓練だろ!?」
レムの言葉に一護がツッコむ。
「実験です!」
「そこ譲らねぇの!?」
「偃文修武により通常の散布が阻害される中、別の発動経路を確認した点は評価する」
「ありがとうございます!」
「なお、黒崎隊長への執拗な追撃については――」
「必要なデータ収集です!」
「おい待て、今の評価してくれ総隊長!」
「黒崎、お前はいつになったら大人しくなるんだ」
何故かまた、砕蜂に注意された。
「なんでだよ!?」
「一番隊三席・阿散井苺花」
「は、はい!」
「雛森副隊長、桃源院副隊長と連携し、格上の日番谷隊長に挑んだその威儀を評価する」
「ありがとうございます!」
「また、卍解による高速機動も荒削りではあったが将来性は遺憾無く発揮していた。これからも精進せよ」
「はい!叔父様総隊長!」
「苺花よ、総隊長は要らぬ」
「はい!叔父様!」
「そっち抜くなよ!威厳取り戻せよ!総隊長!!」
白哉の天然に一護がツッコんだ。
「三番隊三席・佐藤祐也」
「はい」
「卍解を習得し、その状態でも基本に忠実な戦闘を維持していた。申し分ない」
「ありがとうございます」
「以上だ」
「はい」
「…………」
「…………」
「終わり!?」
白哉の評価を聞いていた未里愛が叫ぶ。
「他に何を言えというのだ」
「いや!他になんかありません!?三席で卍解ですよ!?」
「習得しているものを習得していると評価して何になる」
「そうですけど!!」
「特に問題なかったみたいで良かった」
佐藤本人は注意や酷評などが無かったことを喜んでいた。そんな佐藤に未里愛が詰め寄る。
「若くて!三席で!卍解使えて!砕蜂隊長にも総隊長にも褒められて!普通に性格良くて!なんなんですか佐藤さん!?」
「……頑張った?」
「またそれ!!……名門の出だったりしません!?」
「普通の家だよ」
「実は何か特殊な種族とか!」
「死神だね」
「斬魄刀に秘密が!」
「霊圧が上がるよ」
「知ってる!!」
聞けは聞くほど『佐藤さん』が分からなくなる未里愛だった。
「十番隊三席・有沢竜貴」
「あ、はい!」
「隊長格に挑む度量、また、二人同時に相手を出来ないと自身の技量を過大評価も過小評価もしない自己分析力は目を見張るものがある」
「ありがとうございます」
「ただ、まだ卍解で出来ることの整理がされておらず、もたついたところが有ったことは課題とせよ」
「ありゃ、見られてたか」
「が、自身が掲げた目標を達成したことは見事である」
「……へへっ、ありがとうございます!」
白哉と竜貴の会話を平子は苦笑いを浮かべながら聞いていた。
「次に、四番隊三席・山田花太郎」
「は、はい!」
「先の瓢丸の変化について、説明せよ」
「…………」
「山田三席?」
「僕にも分かりません!」
「そうか」
「すみません!」
「謝罪は不要だ。技術開発局及び虎徹隊長と共に解析せよ」
「はい!」
「だが、結果として更木隊長の攻撃を凌ぎ切ったことは評価する」
「えっ」
「戦場において救護を行う者が、真っ先に倒れていては意味がない」
「……はい」
「他者を救うのであれば、まず己が生き残れ」
「……はい!」
白哉の言葉に花太郎は背筋を伸ばした。
「二番隊三席・岩奏星純」
「はい」
「風死で拘束されていた大前田副隊長を助ける為、己の力量を正しく認識した上で、成功の保証なき行動を選び、目的を果たした事を大いに評価する」
「ですが、檜佐木隊長には殆ど効いていませんでした」
白哉に褒められたが岩奏自身は殴った修兵にダメージらしいダメージを与えられなかったと落ち込む。
「それがどうした」
「……え?」
「貴様の目的は檜佐木隊長を倒すことではなく、大前田副隊長の救出であったはずだ」
「はい」
「ならば貴様は目的を達した。威力の多寡は評価に関係せぬ」
「……ありがとうございます!」
白哉の言葉にお礼を言う岩奏の隣で修兵が訊ねる。
「それにしてもあの時の気配遮断は凄かったな。あれも砕蜂隊長仕込みか?」
「いえ、気配遮断は使ってません」
「え?」
「私は影が薄いのか、よく忘れられるんです」
修兵は岩奏の容姿をまじまじと観察する。2メートル近い体躯、筋骨隆々の肉体、銀髪の角刈り、鋭い蒼色の瞳、ケツアゴ。
「…………」
ケツアゴ。
「その容姿で!?」
「岩奏は殺気や敵意、自己顕示欲なんかが薄いせいか忘れ去られることが多いのだ」
修兵の叫びに砕蜂が説明し、続けて呟く。
「……私も偶に見失う」
「砕蜂隊長が!?」
「…希代だけが何故か見つけられる」
砕蜂の言葉に希代がニコニコしながら答える。
「ええ、岩奏様はこんなに大きいですから」
「ほんとにな!?」
「……あれ?」
「どうしたの?一護くん」
全員の評価を終えた辺りで一護がふと声を漏らす。
「そういや、マユリと阿近は?」
「最後に……十二番隊隊長・涅マユリ、並びに同隊副隊長・阿近」
白哉が呑気に近付いて来るマユリ達を一睨みして言い放つ。
「貴様らは一度も戦闘に参加していないな」
「当然だヨ」
「理由を述べよ」
「この程度の訓練で私自身の戦闘データを取って何になるのかネ。それよりも――」
マユリの言葉に訓練場周辺を見ると、いつの間にか計測機器がいたるところに配置されていた。
そして淡々と阿近が報告する。
「偃文修武発動下における霊圧外部放出阻害率、境界面の変動、斬魄刀能力の発生点による影響差、内部循環型能力への干渉率……一通り採りました」
そんな二人に一護がツッコむ。
「お前ら最初から何してたんだよ!?」
「訓練ですが?」
「だからレムには実地データを取らせたのだヨ」
「本当に実験だったのかよ!!」