今回は瀞霊廷通信の取材回です。
次話は来週日曜日に投稿予定です。
「「噂の調査ですか?」」
九番隊舎の執務にて、副隊長の掛詞解那と三席の行木竜之介に隊長の檜佐木修兵から調査依頼が入った。
「ああ」
「……あの、隊長。そういった調査は二番隊の管轄では?」
「また、引き受けたんですか?お人好しですか?」
竜之介が隠密機動の仕事では?と疑問を投げかけ、解那が呆れた目を向ける。
「いや解那、今回はそんなんじゃねえ」
「なるほど。何時もはお人好しで、仕事を引き受けていると」
「何時もやってねぇ!てか、誘導尋問みたいな事すんな!」
「……いつの日か、浮竹隊長があそこのソファーでサボっている時に八番隊の書類をやって上げていたと聞いてますが?」
「………今回の調査内容なんだがな」
「「逃げた」」
「悪かったな!お人好しで!」
「いえ、お人好しが悪いと言いたい訳ではありません。ただ、檜佐木隊長自身、ご自愛ください。倒れてしまってはいけませんから」
「………色んな意味でお前がそれを言うのか………」
「?」
今度は修兵が解那に対して呆れた様な微笑ましい様な視線を向けた。そんな中、竜之介が脱線した会話を本筋へと戻す為に声を上げる。
「それで、その調査する噂と言うのは?」
「ああ、噂と言っても事件性がないものの真相を調査するって言う、まぁ、所謂『都市伝説』や『七不思議』なんかの調査みたいなもんだ」
「あ、なるほど。現世のオカルト雑誌に掲載されてるようなものですか」
「その『都市伝説』や『七不思議』と言うのは?」
修行と竜之介の話に現世知識がこの中では少ない解那が質問する。
「え、あ、ああ。"公共の移動手段を使用していたら、何故か見知らぬ場所に行ってしまった"とか"街の至る所に謎のシールなんかが貼られている"とか、答えが分からない都市全体で囁かれる怪奇現象や中央霊術院みたいな教育機関で起こる怪奇現象なんかの事です」
「なるほど。………しかし、それは現世で霊感がない人が霊的存在を認識できないから生じる事象だと思いますが、そうなると檜佐木隊長、尸魂界で起こった場合は原因は自ずと分かるのでは?」
「ああ、今回調査する三つの噂の原因は分かってる」
「原因が解明しているのに噂になってるってことですか?」
「……それはつまり、頭で理解できない程に信じ難い噂と言うことですか。…………まさか、あの汚物絡み?」
「「汚物?」」
解那の言葉に修兵と竜之介が首を傾げる。
「あ、いえ、黒崎隊長の改造魂魄絡みかな?と」
「え?副隊長、あのぬいぐるみを汚物呼ばわりしてるんですか!?」
「………ええ。まぁ」
「……お前、一応アレは黒崎隊長の物なんだからな」
「ええ。はい」
「まぁ、アレの正確は知ってるし、アレなら寧ろお前に汚物呼ばわりされて喜びそうではあるが――」
「もう、汚物呼びは辞めようと思います」
解那が修兵の言葉に即答した。
修兵、解那、竜之介の3人は一つ目の噂について取材する為に瀞霊廷の郊外へと向かっていた。
「噂は新人隊士の間で広まっていてな。何でも瀞霊廷の郊外に強い破面が出現するらしい。しかも、そいつは死神を襲うことはなく、なんなら話かけてきたり、困っていたら助けてくれるそうだ」
「「……間街(白亜)副隊長では?」」
修兵の言葉に解那と竜之介は一度、顔を見合わせてから応える。そんな二人を気にせず修兵は説明を続ける。
「なんでも、その破面に会った男性隊士の多くはその整った顔立ちに惚れてしまうヤツが続出だとか」
「「間街(白亜)副隊長の性別を間違えただけでは?」」
「更に、腕の立つこれまた美人な女性死神と激しい剣舞を繰り広げているのも目撃されているとのことだ」
「「朽木(ルキア)隊長との訓練では?」」
「極めつけに、その二人はなんと瀞霊廷でもっとも有名と言っても過言ではない技『月牙天衝』を放ったらしい」
「「あれ?イキナリ黒崎(一護)隊長が出てきました!?」」
そんな事を話している三人の耳に突如として解号らしい物が聞こえてきた。
『瑞祥屠りて生まれ出で、暗翳尊び老いさらばえよ』
『餓樂廻廊』
瞬間、三人の横を"牙がある口を持った白い球体の生物"が猛スピードで通り過ぎて行く。
その白い生物の口には一人の女性死神がいて、今にも噛み砕かれんばかりの力で押し潰されそうになっていた。
「え!?な、なんですかアレ!?」
「何なのかの前にあの人を助けなければ!」
「…………」
白い生物に驚く竜之介の横で解那は斬魄刀を抜こうとする。が、それを修兵が止める。
「待て」
「な!?檜佐木隊長!何を――」
「戦闘訓練のようだから横槍入れんな」
「「え!?戦闘訓練!?」」
修兵の言葉に驚く解那と竜之介。
白い生物の上顎を片手で、下顎を片足で抑えながら女性死神は自身の斬魄刀を鞘から抜く。そして、
『月牙天衝』
横薙ぎに放たれた白銀の月牙にて白い生物は一瞬のうちに横真っ二つにされた。
白い生物を斬り裂いた黒髪の女性が地面に足を付けたその時、その女性へとまるで蜘蛛の脚の様なモノが振り下ろされた。
ガキンッ
黒髪の女性は斬魄刀でその脚を受け止める。
「………」
「………」
その蜘蛛の脚を繰り出したのが噂になっている破面であろうか。仮面は無く顔の半分を包帯のようなもので隠しているが整った顔立ちをしていて"優しそうなお姉さん"と言ったような雰囲気をしている。対して、黒髪の女性死神は黒髪のミディアムロングをポニーテールにしている22歳くらいの気の強そうなこれまた美女で"頼れる姉御"のような雰囲気を出していた。
「………」
「………」
キンッ
カンッ
ガキンッ
破面は背中から生えた四本の蜘蛛の脚のようなモノで女性死神を四方から連続で攻める。対する女性死神はその攻撃を焦ることなく、自分へと到達するモノから順にいなし、弾き、流していく。
時間にすれば数舜にも満たない中での数百を超えるのではと思われるほどの激しい攻防を終え、二人は力を込めた一撃にて、互いを弾く様にして距離を取る。直ぐ様、破面は糸のようなモノを束ね、一本の大太刀を編み、上段で構え、女性死神も同じく自身の斬魄刀を上段で構える。そして――
『『月牙天衝』』
破面から放たれた橙色の月牙と女性死神から放たれた白銀の月牙が激しくぶつかり合った。
「…………」
「…………うん。流石、二枚屋さん。バッチリだわ。ロカさんも相手ありがとね」
そう言いながら女性死神、茶渡夏梨は自身の斬魄刀を鞘にしまいながら、相手をしてくれた破面、ロカ・パラミアへとお礼を言った。
「いえ、構いませんよ。夏梨様」
夏梨にそう答えながらロカは帰刃を解除し、ノーショルダーの外套の様な服装から割烹着姿へと戻る。
「私としましても、家事全般、所謂"花嫁修行"を志波家でさせて貰っていますからね。戦闘訓練も花嫁修行の一つです」
「いや、戦闘訓練は違うでしょ。……え?破面だと本当にそうなの?てか、ロカさん花嫁になるの?」
「さぁ?どうでしょう?ただ、ご奉仕のレベルを上げたいだけとも言います」
「………『家政婦のロカさん』。………現世で人気出そう」
「お〜い!茶渡!パラミア!」
「おや?檜佐木様?」
「あれ?檜佐木さんどうしたの?」
修兵が戦闘を終えた二人に声をかける。
「瀞霊廷通信の取材だ。今、大丈夫か?」
「アタシは良いよ。予定ないし」
「私も構いませんが……私の取材記事など売れるのですか?」
「「絶対売れる」」
ロカの言葉に修兵と夏梨がツッコむ。そんな中、置いてけぼりになった解那と竜之介が声を上げる。
「……檜佐木隊長。せめて、お二人を紹介してください」
「そうですよ!誰ですか、この強い人達!」
「ん?おお、こっちの死神の方が茶渡夏梨。黒崎隊長の妹で、茶渡泰虎の奥さんだ」
「黒崎隊長の妹さん!?」
「チャドさんの奥さん!?」
「よろしく。てか、そっちの男の人は生前、アタシが中学生くらいの時に一度会ってるけどね」
「え?………あぁ!一護隊長のご実家にいた妹さん!」
「「遅えよ(遅いよ)」」
漸く思い出した竜之介へ修兵と夏梨が言い放つ。そして、修兵は次にロカを紹介する。
「んで、こっちが破面のロカ・パラミアだ」
「ロカと申します」
そう言ってロカは深くお辞儀をする。そんなロカを見た解那と竜之介が呟く。
「……中央霊術院では"破面は粗暴で危険"と教わるのですが、私が会った破面は例外ばかりですので粗暴で危険の方が例外なのでは?」
「……あ、でもそうなると新人隊士がロカさんに会って理解できない程に信じ難い噂となるのは分かる気がします」
「ああ、なるほど」
「?」
解那と竜之介が納得した横でロカは可愛らしく首を傾げるのだった。
ロカと夏梨の取材を終えた三人は今度は瀞霊廷内へと帰って来ていた。
「二つ目の噂はな、戦力があり得ない程集まる飲食店があるらしい」
「いや、それ『浅野軒』ですよね?席官、仮面の軍勢、星十字騎士団の店員がいますし、戦力として過剰ですよ」
「あ、行木三席。『小柳庵』の可能性もあります。四番隊の虎徹隊長や黒崎副隊長を始めとした女性死神が最近バイトしている定食屋だとか」
先程の噂と同様に予想を立てる解那と竜之介。今回の噂に該当しそうな飲食店を二つ上げる。そんな中、修兵がまたしても説明を続ける。
「その店の店員は飲食店では考えられない程の強者だとか」
「「どちらもですね」」
「通っている客も護廷十三隊の上位者ばかりだとか」
「「やはり、どちらかですかね」」
「その店は貴族街にある訳でも無いのに貴族御用達になっているとか」
「あ、これ『浅野軒』じゃないです?この前、朽木総隊長がそんな事言ってましたし」
「『小柳庵』もあり得ます。なんでも、前総隊長が足繁く通っているらしいですよ」
「そして、その店主の名前は近々、中央霊術院の教科書に載るらしい」
「「あれ?これ、またしても違うお店とかじゃないですか?」」
「そして、その店が此処だ」
そう言って修兵が店の前で立ち止まる。二人が見たその店とは――
「「やっぱり『浅野軒』!…………いや、何で『浅野軒』!?」」
噂の飲食店が浅野軒であることに予想が当たったと驚く解那と竜之介は、最後のあり得ない情報と言うノイズから更に驚愕する。二人が二重に驚いていると浅野軒の扉が開き、中から浅野軒の制服を着た小柄な金髪の美少女が出て来た。
「んじゃ、出前行ってくるぞ」
「よう。ランパード」
そう店内に言って岡持ちを持って店を出たリルトットに修兵が声をかける。
「ん?なんだ、檜佐木修兵か。いらっしゃい。今なら客少ねぇから直ぐに食えるぞ」
「いや、今日は取材に来たんだ」
「取材?………ああ、啓吾がそんな事言ってたな。なら、さっきも言ったが客が少ねぇ今は良いタイミングだろうよ」
そう言ってリルトットは浅野軒の入り口から横に避ける。
「おう」
「俺は出前届けに行くから、んじゃあな。ゆっくりしてくなら何か頼んでくれよ」
言い終わるとリルトットは飛廉脚で一瞬のうちに音もなくその場から消える。
三人はリルトットがいなくなった後、浅野軒へと入って行った。
「いらっしゃい!……お?修兵さん。ってことは、取材ですか?」
「ああ、啓吾。今日はよろしく頼む。それと、入り口でランパードとすれ違って、取材するならなんか注文してくれと言われたんでな。遅い昼飯がてら注文して良いか?」
「……アイツ、本当抜け目ねぇなぁ。なんかうちの看板娘がすんません」
「商魂逞しくて良いことじゃないか」
「そう言って貰えるとありがたいっす。んで?注文が決まってるなら聞きますが?」
「そうだなぁ、取材しながらだから伸びるとアレだし、俺は炒飯にするか。あ、大盛りで頼む。お前らはラーメン屋来たんだからラーメン頼んで良いぞ」
「では、お言葉に甘えて。私は野菜たっぷりタンメンと言うのをお願いします」
「あ、僕は前に日番谷隊長が食べてた冷やし醤油ラーメンと言うのを」
「あいよ!」
啓吾が調理の為に厨房へと入る。すると啓吾と入れ替わる様に店員がお冷を置きに来た。
「どうぞ」
「あ、どう……も」
お冷を貰った竜之介が店員の顔を見て言葉尻が遅くなる。
「何?」
「………破面?」
「あ?破面がラーメン屋で働いてちゃいけないっての!?」
「いいえ、そんな!?」
竜之介の言葉に食ってかかる黒髪ツインテールの破面。するとその後ろに、短い金髪に褐色肌で口周りを仮面の名残りで隠している美女の破面が現れ、お盆でツインテールの破面の頭を叩く。
ゴンッ
「痛っ!?」
「お客様に突っかかるな。ロリ・アイヴァーン」
「ちょっと!なんで叩くのよ!?ハリベル!あのアンタの従属官達止める時みたいに名前呼ぶだけで良いでしょ!?」
「お前が言っただけでは直さないからだ。今日でもう六回目だぞ。メノリ・マリアや今日一緒にお試しでバイトに入った瀞霊廷の貴族の娘達を見習え」
「ぐっ!」
褐色の美女、ティア・ハリベルの正論にぐうの音も出ないツインテールの破面、ロリ。そんな二人を見て、修兵が声をかける。
「お、ちょうど良いや。今回の取材の為にアンタらにも話を聞きたかったんだ」
「……えっと、檜佐木隊長。コチラの破面の方々が浅野店長が教科書に載る理由なんですか?」
修兵の言葉に解那が質問する。
「ん?ああ、いや、違うぞ。それに取材するのは教科書に載る件じゃないからな」
「「え!?そうなんですか!?」」
「おう。てか、そっちの方は内容に関して教科書に載るまでちょっとした箝口令が敷かれてるからな。取材しても記事にできん」
「「箝口令!?」」
「ただ、辞退しただけなのに大事ですねぇ。ほい、大盛り炒飯、タンメン、冷やし醤油、おまち!」
修兵の言葉に料理を持って来た啓吾が反応する。
「それに関しては仕方ないだろう。なんてったって尸魂界史上たった二人しか居ないんだから。それに、最初の一人からかれこれ二百年以上立っている訳だし、更には近い時期に承諾したヤツも居るんだ。まぁ、タイミングが良くも悪くもあったってことだな」
「はぁ〜、俺はただのラーメン屋の店長なだけなんですけどねぇ」
「いやいや、店長。それは無理あるでしょ。……と言うよりさ、啓吾。このチャーシュー、ちょっと薄くない?」
「お前は急に会話に入って来て文句言うなよ!水色!!」
可愛らしい顔立ちをした黒髪の20歳くらいの美青年、小島水色がチャーシューを箸で持ち上げる。
「いや、でもこれは薄いでしょ」
「え?マジ?……本当だ。普通の半分くらいしかねぇな。うちのチャーシューメン、厚切りチャーシューが売りなのに」
「誰が切ったの?」
「……今日入った瑠璃千代ちゃん」
「……今日入ったばかりの人の失敗は店長の責任ですね。餃子のサービスでもして下さい」
「確かにお前の言う通りだから餃子はサービスしてやるが、敬語で話している時点で俺をおちょくる気満々じゃねえか。てか、もし断ったら誰に手ぇ出す気だった?」
「やだなぁ〜。そんな事するわけないじゃん。ただ、ちょっとハリベルさんにこのあと空いてるか聞こうと思ってたけど」
「よりによってハリベルさんかよ!?」
「……すまないが、仕事が終わったら直ぐに虚圏に帰る予定だ」
「いや、ハリベルさん!?律儀に答えなくて良いですからね!?」
「……そうなのか?」
「コイツはぞんざいに扱って良いやつなんですよ」
「ん?何?じゃあコイツなら突っかかって良い訳?」
啓吾、水色、ハリベルの会話にロリが入って口撃対象を見つけたと嬉々とする。が、そんなロリに啓吾が言う。
「コイツに突っかかったらロリちゃん程度ならあしらわれて終わりだよ」
「ん〜、尸魂界に来て僕も見た目が年上の人しかタイプじゃないことが分かったから、ロリさんはタイプじゃないんだよ。ごめんね」
「なんで私がふられた様な会話になってんのよ!?」
「おい、ロリ。遊んでないで皿洗い手伝え」
「メノリは黙ってなさい!」
「なら私と一緒にテーブル拭いてください」
「ナユラ!アンタも黙ってて!」
「貴女がお黙りなさい」
ゴンッ
「ぐあっ!?」
ロリに手伝えと言う金髪無造作ヘアーの破面、メノリ・マリアと薄紫色の長髪で麻呂眉の19歳くらいの美少女、阿万門ナユラ。そんな二人に理不尽にキレるロリの頭を厨房から出て来た金髪の長髪をカチューシャでオールバックにした19歳くらいの美少女、霞大路瑠璃千代が麺棒で叩き、そのまま制服の襟を掴んでズルズルとスタッフルームへと連れて行く。
「………なんで四十六室の阿万門様と霞大路様がラーメン屋で働いているのですか?」
そんな光景を見た解那がナユラと瑠璃千代が此処で働いていることに対して修兵に質問する。
「貴族の中では此処で働いたことが一種のステータスになるそうだ。んで、今回はそのことや、破面の更生施設という面を持ち始めた『浅野軒』という店について店長に取材しようと思ってな」
「更生施設とかじゃないです。ただのラーメン屋です」
「まだ、それ言うか。あ、ついでに水色。お前も取材して良いか?」
「僕?まぁ、構わないけど」
「じゃあ、取材させて貰うな」
そう言って修兵は啓吾と水色に取材をし始めた。
浅野軒での取材を終え、三人は九番隊舎への道を歩いていた。
「あれ?檜佐木隊長、三つ目の噂の取材は今日はしないんですか?」
「それとも、九番隊舎にその方が来てくださるとかですか?」
九番隊舎へと帰ろうとしている修兵の後を歩きながら竜之介と解那が質問してきた。
「ん?三つ目の噂の取材ならもう終わったぞ?」
「「………え?」」
既に取材を終えたとあっけらかんと言う修兵に、解那と竜之介が間の抜けた声を漏らす。そんな二人に修兵が噂の説明をしだす。
「この噂はそれこそ瀞霊廷版の『都市伝説』の様なものでな。ある怪人物についてだ」
「「怪人物?」」
二人は修兵の言葉に今日会った人達を思い浮かべる。そして、
「「………候補が多すぎますね」」
かなり失礼ではあるが反論できないことを呟く。修兵はそのまま最後の噂について説明を続ける。
「曰く、その人物は黒崎隊長と長い付き合いであるとか」
「……妹の夏梨さんですかね?」
「その夏梨さんと仲が良かったロカさんかもしれません」
「曰く、何時も違う女性と居るとか」
「「………ん?」」
「曰く、神出鬼没で何処に住んで居るのか分からないとか」
「「……………んん?」」
「曰く、"童顔の年上キラー"と言う異名を持っているとか」
「「…………………」」
修兵の説明で解那と竜之介は無言で顔を見合わせる。そんな二人の脳裏には先程会った黒髪の青年の顔が浮かび上がった。
「んで、その噂の怪人物こと、小島水色に話を聞いたわけだ。いや〜、アイツだけ所在が分からなかったから、浅野軒で会えたのは幸運だった」
「「……………」」
「ん?どうした?」
無言になりだした解那と竜之介に修兵がどうかしたのかと尋ねる。すると竜之介が堰を切ったように騒ぎ出した。
「え?え!?あの人、一護隊長のご友人だったんですか!?」
「いや、黒崎隊長の友人の啓吾と仲良いんだから分かるだろ」
「分かりませんよ!?てか、浅野さんもご友人なんですか!?」
「そうだぞ。てか、お前、茶渡みたいに生前のアイツらに会ったことねぇの?」
「ありませんよ!?僕が生前会ったのは妹さんやチャドさん、雨竜副隊長、織姫副隊長、後は精々、竜貴さんくらいですよ!!」
「あ、そうなんだ」
竜之介の叫びに答えながら修兵は今の状況で無言のままの解那を見る。解那は立ったまま思考が停止したかのように固まっていたがふと言葉を漏らす。
「………黒崎隊長の男性の友人は見た目が可愛い程、女に意地汚くなるのでしょうか?」
「おい。それはいくらなんでも失礼だ…………いや、否定し辛ぇな」
解那の言葉に対して、強く否定できない修兵であった。