今回は瀞霊廷通信を読んだ十三番隊の日常です。
次話は来週日曜日に投稿予定です。
とある午後。
十三番隊舎の休憩所にて副隊長の石田雨竜が『瀞霊廷通信』を読んでいた。
「…………」
石田はそこに書かれている
『今話題の瀞霊廷三つの『都市伝説』を徹底解明!脅威と驚愕のその全貌!?』
と言う記事を無言で読み、一度顔を上げてから再度その内容に目を通していく。
「…………」
「ん?石田?どうした?」
「それ、今日配られた『瀞霊廷通信』ですよね?」
そこへ隊長の黒崎一護と三席の斑目志乃が声をかけてきた。
「………黒崎」
「あ?」
「この記事、どう思う?」
「どれ?」
そう言って一護は石田から渡された瀞霊廷通信の記事を読んでいく。
「……なん……だと」
記事を読んでいた一護の頬に一筋の冷や汗が垂れる。
「……何が書いてあるんです?」
「…………」
一護は隣で聞いてきた志乃に瀞霊廷通信を無言で渡し、石田へと問いかける。
「石田、この記事の信憑性は?」
「書いたのが檜佐木隊長だ。しかも、本人に話を聞いている」
「………そうか」
「……その反応だと、君も聞かされていなかったようだね」
「だから驚いてんだよ!」
「……え〜、なんですかこの記事。てか、竜之介、アイツ大変そうだなぁ」
一護から渡された瀞霊廷通信を読みながら志乃が呟く。そして、驚愕している二人に質問してきた。
「ところで、お二人は何に対して驚愕しているんですか?」
「志乃、一番驚くことが書いてあるだろ」
「いや、候補…と言うかおかしな事しか書いてないんですが」
志乃の言葉に一護と石田は一度顔を見合わせてから言う。
「「夏梨(さん)が月牙を放てる事」」
「そこ!?一番まともそうなとこじゃないですか!?」
「いや、兄貴の俺が知らねぇだぞ!?かなりの事だと思うが!?」
「僕も初めて聞いたんだ。……茶渡くんはこのことを知っていたのだろうか?」
「いやいやいや! 待ってください! まずこのロカ・パラミアって破面! なんで月牙天衝を撃てるんですか!?」
「絡新妖婦ならできるだろね」
「え?」
志乃の疑問に石田が答える。
「彼女の帰刃、絡新妖婦《rrt》ティルレニア《/rt》《/ruby》。《ruby》反膜の糸で相手の記憶や情報を取り込んで技を再現できるんだ。月牙もそれで再現したんだろう」
「以前、『無月』まで再現したって聞いたな」
「無月!?」
石田の説明に一護も補足をする。確かに無月まで再現できるのなら月牙天衝を再現するなど他愛のないことだろう。
「じゃ、じゃあ、この『餓樂廻廊』は!? これ斬魄刀の始解ですよね!? どこでこの破面が!?」
「ん〜、それは分からん。てか、誰の始解だ?」
「前に資料で読んだことがある。この始解は刳屋敷剣八のものだったはず。……なら痣城剣八だろうね」
「え?」
「彼女は過去に痣城剣八と接触している。恐らく、その時に絡新妖婦を通して記憶から刳屋敷剣八の情報を読み取り、そこから『餓樂廻廊』を再現したと考えれば説明はつく」
「……石田、お前詳しいな」
「君が知らなさすぎるんだ」
「うるせえ」
「じゃあ! 元星十字騎士団が飛廉脚で出前してるのは!?」
「それはリルトットだからね。合理的だと考えたんだろう」
「合理的!?」
「瞬歩より飛廉脚の方が足場となる霊子を滑走する性質が強い。岡持ちを運ぶなら上下動や振動を抑えやすい」
「あ〜、確かに。石田が前に応用でスケボーみたいな事してたもんな。汁物運ぶならもってこいだ」
「ラーメンなら尚更だ。走るより適している」
「出前の技術として飛廉脚を評価しないでくださいよ!!」
淡々と評価する石田に志乃がツッコむ。そして、次の質問を投げかける。
「じゃあ第三十刃だったティア・ハリベルがラーメン屋で働いてるのは!?」
「ロリとメノリの付き添いだろ」
「恐らく再教育プランの監督役だろうね」
「即答!?」
「それにほら」
そう言って石田は瀞霊廷通信に載っている一文
『ロリ・アイヴァーン、本日六度目の接客態度を注意される』
というところを指差しながら話す。
「……むしろハリベルは必要だ」
「確かに」
「納得するところなんですか!?………じゃあ中央四十六室の阿万門ナユラ様と霞大路家当主がバイトしてるのは?」
「二人とも貴族の中じゃかなり庶民寄りだろ」
「正確には温厚・改革寄りと言うべきだろうが、浅野軒で職業体験をしていても不自然ではないね」
「不自然ですよ!!………この『神出鬼没の童顔年上キラー』は?」
「水色だろ?」
「小島くんだね」
「いや、その反応が一番おかしいんですよ!?ご友人なんですよね!?」
「確かに友人だが、……昔からあんなだぞ」
「うん、昔からだね」
「…………」
「むしろ変わってねえから驚くところねえだろ」
「百年以上変わってないことに驚いてください!!」
志乃は叫んだあとに呼吸を整える。
「はぁ、はぁ、はぁ、…ふぅ。……つまり」
「おう」
「破面が月牙天衝と他人の始解をコピーできるのは」
「ロカ・パラミアなら普通だね」
「元星十字騎士団が飛廉脚でラーメンの出前をするのは」
「合理的だよ」
「元十刃と貴族がラーメン屋で働くのも」
「それぞれの事情を考えれば妥当だろうね」
「百年以上、女性関係が変わらない謎の美青年も」
「小島くんだからで説明がつく」
「なのに――」
志乃が記事の夏梨が載っているところを指差す。
「一護隊長の妹さんが月牙天衝を使うのだけ『なん……だと』なんですか!?」
「「知らなかったからな(ね)」」
「………妹だからと言って全て兄に話すとは限りませんよ?」
「……そういうもんか?」
「そういうもんです」
志乃の言葉に一護が尋ねるとそういうものだと返ってくる。そんな二人を見ながら石田がふと一護に尋ねる。
「……そもそも黒崎。君は夏梨さんに自分の能力について逐一報告しているのか?」
「あ」
「…………」
石田の疑問に志乃がそれ聞いちゃうんだと言うように声をあげ、一護が無言になる。石田は次々と質問…というより尋問のようなことをしていく。
「卍解の変化は?」
「…………」
「新しく習得した技は?」
「…………」
「一護隊長?」
「……いや、でもそれは」
「夏梨さんからしたら貴方は兄ですよ?」
「…………」
志乃の正論に一護は押し黙る。そして、ボソリと呟いた。
「……そうだな」
「…………」
「それはそれとして、どうやって月牙使えるようになったんだ?」
「結局気になるんですね」
「そりゃ気になるだろ。俺だって親父から教わったわけじゃねえんだぞ」
月牙に関しては流石に無視できない一護であった。