前回投稿したことある優火ちゃんの卍解習得エピソードです。
一応、ほんのちょっと加筆がされています。
今日も午後にもう一話投稿します。
ある日の三番隊隊舎の執務室にて三番隊隊長である吉良イヅルは副官である桃源院優火に質問していた。
「桃源院さん」
「はい?」
「君は自分が死ぬのは怖くないのかい?」
「怖いですよ?」
「......」
「でも皆が助かるなら良いんです」
「それは答えになってないよ」
イヅルの瞳がやけに悲しそうなのが優火の記憶に残っていた。
そんな会話から数日後の複数人であたる任務。
いつもの様に任務を遂行していざ帰ろうとした時にそれは起こった。
十を超える大虚の群れ。最下級大虚のみとは言え、副隊長一人と隊士数名ではまさに絶望だった。
三番隊副隊長、桃源院優火はボロボロで背中には今にも崩れ落ちそうな隊士数名がいた。
(私が残ればいい)
(みんなは逃がせる)
「届かせろ 勇気姫!」
いつもは優しい淡い光が今回は淡くともまるで弱々しい。
「勇気姫?」
「あんたはそれで本当に良いの?」
気づいたら勇気姫の声が目の前から直接聞こえた。優火はここが自身の精神世界の中であると理解する。
「良いよ」
「嘘を付くんじゃないよ!…………アタシはあんたの半身なんだ。あんたが、優火が心からここで死んでも良いと思っているのはわかる」
「ここで私が頑張ればみんなが生きられるんだよ!?」
「あんたのその口癖の「みんな生きてますから」のみんなにあんた自身が入っていないじゃないのさ!」
「!……でもっ」
桃源院家の家訓は「力を見誤る事なかれ」力は悪ではなく、本質を失ったモノが悪なのだ。
優火の生家である桃源院家は現在、尸魂界の中流貴族。桃源院家の勢力が最も大きかった頃は上流貴族に名を連ねていた。当時は貴族らしく清濁併せ呑む事をしていたが、その根幹は自身の守りたいモノの為に武力・権力などの力が必要だった為である。ただ、力とは多く持ちすぎれば守りたいモノを壊すか、はたまた、守りたいモノを矢面に立たせなければならなくなる。当時の桃源院家当主はこの様な本末転倒を良しとしなかった為、上流から中流に自ら落ちる決断を下した。
優火自身も貴族街で人の醜いところをそれなりには見てきたので、この世が子供に聞かせる寝物語のように綺麗なだけの物では無いことはわかっているが、それでも醜いだけの世界でも無いとは心の底から思っている。
『私は持ち過ぎるのが怖かった』
『家訓の通り持ち過ぎれば大切なモノを失うから』
『だから私は好きな「笑顔向日葵」のグッズも身に着けるのは必ず1つまでって決めていた』
『……ねぇ、勇気姫。私は生きたくない訳じゃ無いんだよ。ただ、皆が生きていてくれるのが嬉しいんだ。幸せなんだ。なのに、私まで生きて、幸せになって良いなんて。それは持ち過ぎじゃないかな……』
現実世界では突然棒立ちとなった優火に、庇われていた隊士が心配して声をかける。
「ふ、副隊長?大丈夫ですか?」
優火に返事がない。そんな中、最下級大虚の一体が優火に向かって虚閃を放ってきた。
「副隊長!」
隊士の一人が優火に思いっきり抱きついて虚閃を避ける。
「おい!副隊長どうしたんだ!?」
「……気を失ってるみたい!?」
「なっ!?どうすんだよ!?」
「私に聞かれても分かんないわよ!」
「……泣き言言ってないで早く立て!今は一刻も早くここから逃げる事が先決だろうが!」
一人の隊士の喝が飛ぶ。
「おい、あんた。副隊長、背負って走れるか?」
「…大丈夫。副隊長が最後に掛けてくれた勇気姫の能力がまだ残ってる」
「良し。他のやつらでこいつと副隊長を囲むようにして後退するぞ」
「分かった。ただ、お前ら、副隊長は死んでも守れよ?」
「もちろん。この人は俺達三番隊の光だ。決して沈ませたりしない」
「……でも、それなら私達も出来る限り生きて帰りましょう。私達が犠牲になったらこの子の笑顔が曇るわ」
「……確かにそうだな。良し、みんなで生きて帰るぞ!」
「「「おう!(ええ!)」」」
精神世界に外での声がノイズ混じりに響く。
「………あんたが死んだら、イヅルや今あんたを守ってくれている隊士たちは幸せかい?」
「…………」
優火は自身の自己犠牲がどれ程の自分よがりであるかを、自分が好きで付けている向日葵のキャラグッズの笑顔がどれだけ欺瞞であることかを理解し、俯き涙を流す。
そんな優火の頭に優しく手を置いた勇気姫が優しく愛おしい感情のこもった瞳で優火を見ながら言う。
「アタシはあんたにも幸せでいて欲しいんだ。あんたは幸せになって良いんだよ。もしあんたの幸せを奪うヤツが現れたらアタシがぶん殴ってやるさ。それが例えあんた自身でもね」
生きていてほしいんです
みんなに
自分自身にも
「みんな、ありがとう」
「…!…副隊長、良かった」
優火の意識が戻り、隊士達が安堵する。
優火は隊士の背中から降ろしてもらい、隊士達を自身の後ろに下がらせ自分は最下級大虚達の前に立つ。しかし、今回は隊士達だけを守る為に前に立つのではない。
「みんな生きて帰るんだ!」
優火は笑う。そして少しだけ泣きそうな顔で……
「――私も」
『卍解』
『光福・死羅勇気姫』
その瞬間、膨大な霊圧が優火から溢れ出す。しかし、その霊圧は見たものが涙を溢れさせる程優しい光だった。
放たれた優しい光が天へと昇って行く。そして、
「雪?」
隊士の1人が自身の手のひらに落ちてきた白雪を見つける。
「いや、確かに雪っぽいが違う。副隊長の霊圧だ」
そう、この雪状の霊圧は先程、天へと昇って行った優火の霊圧がまるで白雪の様に降ってきたのである。
「!?見て、キズが!」
『アタシの卍解、光福・死羅勇気姫は振り積もる死羅勇気(白雪)に触れた仲間のキズと心を癒す』
キズが治っていくことに驚いている隊士達の姿を優火の目を通して見ている勇気姫が優火にだけ聞こえる声で卍解の能力を話す。
「キズだけじゃない。身体も軽い!」
『心が癒されたお陰で活力が出たんだろう』
「……よし、コレなら最下級大虚に遅れを取らない!」
「ええ!副隊長のお陰で無事に逃げられそうね」
「ううん。もう、大丈夫だよ」
「え?」
『優火が他人だけじゃなく、自分も生きるって決めて掴んだ卍解なんだ。ただ、皆を回復させるだけな訳ないだろ?』
『GYAAaAaa!?』
突然、最下級大虚達が燃え出した。
『死羅勇気は味方が触れれば癒しを与える薬となり、敵が触れれば浄化の炎が燃え広がる毒となる』
最下級大虚達は炎を消そうと藻掻くが降り続く死羅勇気を避けることなど出来ず、炎は全身に燃え広がる。そして、
「一骨」
優火の一骨が最下級大虚の仮面を粉々に粉砕した。
任務からみんな無事に帰ってきてから翌日。三番隊隊舎の執務室ではいつも通り黙々と仕事を熟しているイヅルとニコニコしながら仕事をしている優火の二人がいた。
「隊長!」
「どうしたんだい?」
「私も生きて帰って良いみたいです!」
「......」
「勇気姫に怒られました!」
「そうか」
(本当に良かった)
彼女の笑顔がより一層輝かしいものになったことをイヅルは心の底から喜んだ。
桃源院優火の斬魄刀。
・斬魄刀名:「勇気姫」
・解号:「届かせろ 勇気姫」
・見た目:形状に変化は無いが淡く白色に輝き出す
・能力:斬魄刀が輝き続けている間、10分間隔で「体力向上」「状態異常耐性向上」「疲労軽減」「自然治癒力向上」のバフを重ねていく。上昇率は彼女の力量により変化。また、解号を聞いた仲間に上昇率は半分程で重ねがけは出来ないが同様のバフをかける。
・卍解:「光福・死羅勇気姫」
・見た目:始解と変化無し
・能力:上空から雪のような淡く輝く光を降らす。その雪に触れた敵は発火し、仲間は若干回復する。
・具象化した姿:銀髪ロングでグラマラスな姉御肌の鬼のお姫様。