白亜くんの過去を一護に話す回。
本日も午後にもう一話投稿します。
昼下がりの瀞霊廷。
十三番隊舎近くの茶屋で白亜が約束通り一護に自身の事を話していた。
「…私は元第1十刃。黒崎隊長が思ってた通りこのチョーカーが仮面の名残」
「第1十刃!?」
「…そう。ただ、第1十刃と言っても『エスパーダ』が『刃』から『十刃』になった時の第1十刃だから、実力は帰刃込みで素のノイトラ・ジルガに負けない程度」
「素のノイトラってそれでも強えだろ」
「そう?…私は、スターク達と同じで崩玉の力を使用せず破面となった天然物。当時の名は「リーラ・バンクシー」。因みに帰刃は『露命藝術』」
「ん?お前の斬魄刀って確か、終焉美学だっただろ?」
白亜の言葉に一護は疑問を浮かべる。
「そう。破面時代に私の斬魄刀が帰刃できない程破損した。で、そのまま101の十刃落ちに成った。終焉美学は偶然虚圏に落ちてた浅打を拾って名前を聞いた」
「偶然拾った?」
「そう。多分虚圏に迷い込み命を落としてしまった新人隊士が居たんだと思う」
「そいつは?」
一護の質問に白亜は首を横に振る。
「…そうか。………そう言えば、破面で仲良かったヤツとか居たのか?」
「スタークと相棒のリリネットとは結構仲が良かった。スタークも物静かだからか邪険にしなかったし。後は、同期で美的センスも合ったのかドルドーニ」
「んで、いつから瀞霊廷に潜り込んだんだ」
「潜り込むは失敬、コレでもちゃんと中央霊術院を出て正規で死神になった」
「いや、どうやって」
「終焉美学の力を使って、できる限り霊圧を抑え、何かしら霊圧を出さなければいけない時は美学を通すことで極力死神に近い、最低でも仮面の軍勢のような霊圧に変えてた」
「………」
「最初は十番隊に配属されて、四席まで登り詰めたけどドルドーニに会って身バレして処刑されそうになった」
「………ツッコミたいところ多いが、そう言や、冬獅郎がお前のこと仕事が出来るヤツとか言ってたわ」
「松本副隊長の代わりに日番谷隊長に書類届けたりしてた。そのお陰で、処刑というところで当時の総隊長、京楽春水を始めとした、日番谷隊長、松本副隊長、後は、斬り合いで仲良くなった更木隊長と斑目副隊長、オシャレで意気投合した綾瀬川三席なんかが懇願してくれて処刑撤回となった」
「ルキアや恋次、白哉なんかもお前が破面だって知ってんだよな?」
「もちろん。私がルキア隊長の副官をしているのは私自身の監視の側面もある」
「監視って、それにしてはアイツらと仲良さそうじゃねぇか」
「ワカメ大使とチャッピーを芸術観点から評価したら気に入られた。阿散井副隊長にはなんか感嘆された」
「………因みに、どんな評価したんだ?」
「ワカメ大使が『完成されたデザインそのものが芸術品』チャッピーは『見ていると狂気と癒しの得も言われぬ感情がせめぎ合うデザインが好き』」
「…お前すげぇよ」
「そう?」
白亜は今回のスパイ行動の一部始終をそのまま一護に告げる。
「ーーー、だから私はあそこにいた。瀞霊廷に精通している元十刃なんて、彼奴等が喉から手が出るほど欲しいピースそのものだった」
「なるほどなぁ」
今回の概要に理解を示す一護。
確かに瀞霊廷の情報と破面が欲しいと考えていた犯人達にとっては元とは言え十刃、しかも第1十刃な白亜は欲しくて欲しくて堪らない存在だったのだろう。
「あ、そういや、お前の本名って破面の方の名前だよな?」
「リーラ・バンクシー」
「そう、それ。って事は、『間街白亜』って偽名だよな?」
「そう。間街は多分まがい物から、白亜は私達『虚』の仮面か白いキャンパスから取ったと思う」
「その言い方だと誰かから付けてもらったのか?」
「そう。名付け親がいる」
「へぇ~」
お茶を啜りながら一護は名付け親の予想をする。
十刃の誰かだろうか?一護は会ったことはないが仲が良かったと言うスタークだろうか?それともドルドーニ?以外に面倒見が良いグリムジョーかもしれない。大穴でウルキオラの可能性もある。ヤミーは………無いな。
「市丸ギンと東仙要」
「ぶぅっ!ゲホッ、ゴホッ、…はぁ!?」
「醜い」
予想外の人物の名前が出できたため飲んでいたお茶を盛大に吹き出す一護。
そのお茶を顔面に掛けられた白亜が苦言を漏らすが、今の一護にそれに返答する余裕は無かった。
「なんであの二人から名前を貰うなんてことに成ってんだよ!」
「……卍解習得の為に教えを請いた。その際に、中央霊術院の話になって、市丸ギンが悪ノリして霊術院に入るなら偽名が必要と名付けられた」
店員からおしぼりを受け取り、それで顔を拭きながら白亜は当時の市丸の言葉を思い出す。
「中央霊術院に入るんなら丁度いい名前がいるなぁ。東仙隊長、ボクらで考えません?」
「市丸、勝手に私を巻き込むな」
「そんな固いこと言わんでぇ。一応、この子はボクらの弟子みたいなもんなんやし」
「ふむ」
「文句を言いながらも白亜って名前を付けてくれた東仙要は優しいと思う」
「………そうか。その東仙ってヤツとは仲が良かったのか?」
一護は東仙要と実際に対峙したことはない。前七番隊隊長の狛村左陣や現九番隊隊長の檜佐木修兵から正義感の強い男だったとは聞いている。
「……話す頻度なら市丸ギンの方が多かった」
「そうなのか?なんか正義に熱いヤツだって聞いたからお前とも合うと思ったんだが」
「正義を神聖視することも、芸術で正義をテーマにすることもある。でも、「正義」と「芸術」を両立して輝けるのは一握り。大抵は綺麗事しか言えない硝子玉になるだけ」
「そう言うもんか」
「そう。でも仲が悪い訳では無かった。決して同じ方向を向くことは無いと思ってただけだから」
「同じ方向?」
「……彼も私も、戦いに「正義」や「芸術」を求める。起源や根源が似ているからこそ、進めば進むほど交わることはない。同じ点から出発した矢印が直線であればあるほど交わることがないように」
「………」
「もっと分かりやすく言うなら彼と私はオリーブオイルとごま油みたいなもの」
「いや、ますます分かんねぇよ」
「そう?」
「市丸ギンとはどうだったんだ?」
「……先ほども言った通り彼とはよく話した。東仙要より彼の方が興味を引かれることが多かったから。……だから私は中央霊術院卒業後、十番隊の配属を望んだ」
「十番隊?あぁ~、そう言やそんなこと言ってたな」
「松本乱菊に興味があった。あのニーズヘッグやファフニールを思わせる男が大切にしたいと強く思っていた人物だから」
「で?乱菊さんに会ってどうだった?」
「ある結論に至った」
「結論?」
「そう。男はみんな豊かな女性の象徴が好きだと言うこと」
「ぶぅっ!」
「贋作は効かない」
白亜のいきなりな発言にまたお茶を吹き出す一護。
ただし今回は白亜は近くのお盆でお茶被りを防ぐ。
「ゲホッ、ゴホッ、…おい!?」
「?…ああ、男はみんな大きなおっぱいが好き」
「いや、意味が伝わらなかった訳じゃねぇよ!?いきなり何言い出すんだ、てめぇ!」
「?何故そこまで驚く?古今東西、裸婦画や裸婦彫刻は芸術として広く普及している。女性の身体が美しいものであると多くの者に認知されている証拠。また、そういったものをエロいと思うのも人としては当たり前」
本当に何言ってんだコイツみたいな目を白亜は一護に向けている。
「………はぁ、今までそれなりに多くの破面のやつらに会ってきたが、その中でもお前はかなり人間臭いな」
「……人間臭い?私が?」
「ああ。破面とか死神とかじゃなくてさ。なんつーか、お前普通に悩むし、普通に笑うし。芸術がどうとか変なこと言うけど、そういうところ、案外人間っぽい。」
白亜は一護に言われたことを頭で数巡する。
「………それは、市丸ギンが「面白くない」って言いそう」
「市丸ギン?なんで?」
「先ほども言ったが私の間街と言う苗字は市丸ギンが付けた。多分、「どんなに頑張っても人間や死神のまがい物にしかならない」から。そんな私が黒崎隊長から人間臭いと言われたら彼の宛が外れたことになる」
「あ〜」
二人の脳裏には「何や君、そんな人間みたいになって面白ないなぁ」と言いながらいつも通りの胡散臭い笑みを浮かべている市丸ギンが浮かべられていた。
「あ、居た。黒崎」
話が一区切りして二人してお茶を啜って居たところに十三番隊副隊長の石田雨竜が近づいてきた。
「おう、石田。どうした?」
「九番隊の掛詞さんがお前にインタビューをしたいそうだ」
「インタビュー?」
何だそりゃと言う顔をしている一護の横で白亜は納得した顔をする。
「多分、今回の事件について。『瀞霊廷通信』に載せる為だと思う」
「え?あ〜、あれに載せるのか」
「掛詞さんには十三番隊舎で待ってもらっているから急いで戻るぞ。間街くんにもインタビューしたいそうだから一緒にきてくれると助かる」
「ん。構わない」
「じゃあ、長い間待たせるのも悪いしさっさと行くか」
そうして、三人は十三番隊舎へ歩いて行くのだった。
「なぁ」
「?」
「リーラでも間街でもどっちでもいいけどさ、俺は今のお前を知ってる。だから俺は『間街白亜』って呼ぶ」
「…………そう。ありがとう、黒崎隊長」
リーラ・バンクシーの斬魄刀
・斬魄刀名:『露命藝術』
・帰刃:『想い描け 露命藝術』
・見た目の変化:スマートタイプの全身鎧を付けた姿になる。
・能力:鎧が砕けるとその破片が自身と同じ身長の頭の無い白い女性体のマネキンになる。自身の防御力が減るかわりに手数が増える。マネキンは破片の部位によって別の性能を持つ。腕なら腕力強化体、脚なら脚力強化体となる。