『ライジングイリュージョン』と呼ばれるカードゲームがある。
カードゲームが社会の中心となる世界に手、数多の人々を魅了した数多の戦術と雄々しくも美しいカードイラスト。
そして多くの種族からなる戦略の海を人々は潜り続け自分の戦略を手に入れていった。
王道を征き、邪道を走り、奇策を練り、多くのプレイヤーが戦いに臨んでいった。
もう5年前にもなる、世界を巻き込んだ陰謀が小学生の手により解決した戦いが終結し、かつての戦友が集う時が来た。
有り体に言えば『ライジングイリュージョン』の年齢別大会の開催が決まったのだ。
学業や家庭の事情により離れ離れになったプレイヤーが古い連絡先から各々集い、そして再び出あ…………
「「お前女だったのかよ!?」」
出会った、のかなぁ?
「あ、ああああのやんちゃ少年だったキボウくんが女の子!?うわ、おっぱいでかいでやんす!」
「変な語尾がついてガッツリオタクでしかなかったアキバが女!?あとおっぱいでかい言うな!」
ギャーギャーとボーイッシュな女の子と大きめな眼鏡をかけた女の子が互いを棚に上げて言い合っていた。
「確かにキボウくんは戦乙女のデッキを使っていたでやんすが、本人が女の子だったら確かに違和感ないでやんす。なんで今まで気づかなかったでやんすか!」
「俺に言われても困る!そう言うアキバだってロボットばっかのデッキじゃん!大合体とかしてたじゃん!」
互いのデッキ内容から性別を見分けるのはとても難しい事である。
それに子供時代は誰もが中性的な顔つきであるため勘違いし続けるのも無理はない。
「いやいやいや、というか語尾そのままなの違和感あるんだけど?その格好で?」
「あー、なんかもう使いすぎて定着しちゃったでやんす。矯正もなかなか難しいでやんす…………」
「何で使い続けてたんだよ」
勘違いされるには大きすぎる要因に呆れながらも大会の会場となる方向へ一緒に歩き始める。
思っていた性別とかなり違っているため若干気まずさはあるが、自身の現状をちょとづつ話し合う。
そこに懐かしさはたくさんあった。昔の事はよく話に出るが、案外今の話は続かない。
2人とも何かしらを隠しているのだろうか。それはそれとして己の切り札については隠している。
この後にある大会のために手の内を明かさない。それは友人関係であっても切り札が進化していることは言わないのだ。
「おーっほっほっ!相変わらずいい友情を育んでいること!私も混ぜてくださいまし!」
何だこいつ、そう思いながらいきなり交差点の角から現れたお嬢様な同年代らしき女の子が飛び出してきた。
「誰?」
「あの、本当に誰でやんすか?」
「あら?あらあら?アキバですら私の事をお分かりでない?」
「当然ですよ、お嬢様。つい先月まで性別を偽っていたのですから」
「あっ、婆やさん!つーことは、お前まさか!?」
唐突に現れたお嬢様の事は分からなくとも、一緒についてきている初老の女性については知っていた。
小学生の頃、キボウとアキバ、そしてもう1人とつるんで世界を救う戦いに挑んだメンバーの1人…………
「スナオ!?な、おお、お前も女だったのか!?」
「スナオくん!?うわまたおっぱいでかいでやんす!」
「相変わらずアキバは品のない事。いえ、乳がなくて貧乳だから品がない、ぷぷ」
「キボウくん、ちょっとあいつ殺してくるてやんす」
「待て待て、殺すなら大会で殺してやれ」
「止めはしませんのね!?」
メガネの下に鋭い殺気を宿しながらお嬢様巨乳をにらみつける貧乳。
面白いから止めない構図にスナオの命の危機を感じながら、やっぱり突っ込まなければならないところを突く。
「で、お前はそう言うキャラじゃなかっただろ。今まではいいとこの坊ちゃんだったのにお嬢様になったのはどういういきさつだ?」
「婆や、アキバの足止めだけお願いしますわ」
「承知いたしました」
「で、私の事なんですが、ほら、私ってつい最近まで令嬢であるにもかかわらず長男がいない家系でしたのよ。なので御曹司として過ごしてきたのですが、去年に長男である弟が産まれまして」
「次期当主の座を追われた、と?」
「まあ別に追われてもよかったんですが色々と投資されてきた私は今のところ幼い弟よりも当主として順位付けされてまして、男の振りをやめることができましたの」
「でもよぉ、口癖とか一年でそうなるもんか?」
「元々、こっち志望でしてよ!」
「そうなんだ…………」
元々は若干生意気さが鼻に突くような御曹司キャラであった筈なのに、ごりっごりのお嬢様に変貌を遂げたのは抑圧もあったのだろう。
それにしては適応しすぎではないか、そう思わないでもないキボウであった。
このような全員男だと思っていたら女だったという紆余曲折があったが、過去に育んだ友情は変わらない。
そのまま婆や含め4人、徒歩で大会の会場へ向かうのだが…………
「…………やっぱりだよな」
「そうでやんすね…………」
「見覚えのある顔が全員女になってるんですわよね」
過去のライバルチーム、イロモノチーム、王道組、一匹狼たち、それぞれ同年代の少年
「見ろよ、あのタッパのデカいゴスロリはオーガだぞ」
「パンクな子、もしかしてドクロくんじゃないでやんすか?」
「あの高貴そうなオーラ、貧乏貴族のセンリで間違いありませんわ」
かつて男だと思っていた相手が全員女だったという異常事態。こんなことがあり得るのかと全員が思っているだろう。
「ということは、カイザー神楽坂も女の子でやんすかね?」
「こんな状況だと多分そうだろうな…………」
カイザー神楽坂というのは当時の『ライジングイリュージョン』で最強だった子供のことである。
世界の危機を救ったのはキボウだが、純粋な技量ではカイザー神楽坂の方が上なのだ。
今のところ負け越していることがその証拠である。キボウもキボウで相当追い詰められなければ勝てなかったという事実があるので否定は一切できない。
そんなカイザー神楽坂も女の子かぁ、そう思っていた矢先に大会準備のアナウンスが始まる。
『只今より開会式を行います。カイザー神楽坂より、開会の言葉があります』
同年代の中でもトップと言って過言ではないプレイヤーの開会宣言、これがないと大会は始まらない。
今回の大会は会場内にいる参加者と適当にマッチングし、勝敗を一定数稼ぐというもの。
カイザー神楽坂もシードは無しで参加するというのだから皆、闘志が燃えている。
いつでも最強に挑めるのだ、プレイヤーとして燃えない者は少なくない。
会場に備え付けられていた壇上に1人、
「…………えーーーーー、なんだ、その、今回の参加者の男女比が俺と俺以外かになりましたが、特に配慮とかせずに全員ぶっ倒したいと思います。何で強い奴ら全員女なんだよ!1人くらい男が居ろよ!野郎、ぶっ倒してやる!」
参加者唯一の男という異例の事態に明確に動揺しながら開会というより殲滅の宣言を上げ、そしてスタッフに引き摺り下ろされていた。
呆然とせざるを得ない宣言であったが、全員倒すという言葉だけは皆の印象に残っていた。
確かに参加者はカイザー神楽坂以外、外見はともかく女の子だ。
男一人に負けてたまるかという感想がほとんどの参加者の胸の中で延焼していく。
「流石はカイザーでやんすね。これだけの人数に全員倒すと宣言でやんす」
「腕が鳴りますわね。私もこの数年で成長しているんですわ!」
もちろんアキバとスナオ打倒カイザー神楽坂、目指せ優勝と見た目に反して熱く燃えている。
その一方で。
「キボウにも負ける気はしませんわ!…………キボウ?」
ぽけっと開幕宣言を見ていたキボウの様子がおかしい。
目が点になったように、何かに集中しているように、想定外の物をみたように固まっていた。
そのまま動かないキボウを訝しげに、少し心配しながら様子を見るスナオであったが、アキバが肩をつつくと硬直したまま飛び跳ねて、そしてガシャンと奇妙な音を立ててそのまま着地した。
そして、ギギギと油が切れたロボットの様な音を立てて二人に首を向け…………
「私達…………友達だよね?」
「こっ、このアマ…………っ!?」
「じっとりとしたメスの顔をしてるでやんす!?」
思わぬ一目ぼれ、そして死にそうなほど拗らせているそれを見て雲行きが怪しくなる一行。
いきなりメス味を覚醒さえたキボウの恋は叶うのか、それは未来のみぞ知る。
〜人物紹介〜
熱血系の少年っぽい服装で小学生時代を過ごした女の子な主人公。世界を滅ぼせる神である『虚月海神ファレクサマーレ』を倒せる実力を持つ。
言動や服装により周囲から男だと思われていた。
成長期に入り身体が女性的になってきたが服装のセンスは割とラフで短め。
変わらず男だったチャンピオンに一目惚れしてしっとりし始める。
大きなメガネをかけたオタク風味な女の子。世界を救った当時のメンバーの1人。
中性的な見た目とブカブカな服装、そして特徴的な口癖により小学生時代は男と思い込まれていた。
キボウ達と離れ離れになった先でいじめにあったりしたが、持ち前の根性でいじめっ子の弱みを握り脅し返して学校に平穏をもたらした経歴がある。
元財閥御曹司な女の子。世界を救った当時のメンバーの1人。
長男が今までいなかったため男装して男の子として育てられていたが、肉体の成長と共に精神が女に寄っていくことに苦悩を感じていた。
弟が生まれ責務から解放されたことにより感情が爆発しガッチガチのお嬢様になる。
なお、スナオの両親は自分達が男児を産まなかったせいでかなり壊れるところまで来ていたことを知りかなり後悔している模様。
自分らしく生きる事で皮肉な御曹司からコメディチックなお嬢様になったことに前向きになれた。
キボウのその後はこちら(ネタバレあり)https://syosetu.org/novel/359408/#
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