お前女だったかカードゲーム   作:蓮太郎

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2 恋する乙女はとてもつおい

 

「離せっ、はーなーせー!私はカイザーの所に行くんだ!」

 

「今のキボウちゃんが言ってもドン引きされるだけでやんす!」

 

「そうですわよ!ふられるよりも悲惨な末路が待ってますわ!」

 

「じゃあどうすればいいんだよ、私は一刻も早く告白して一番になりたいんだ」

 

「急に落ち着きながら発狂しないでくれでやんす」

 

 怖い以外何者でもない豹変と落ち着きに親友がドン引きしてなお引かぬ姿勢は強化したいところだ。

 

 まさか、快活な少年(少女だったが)であった人が湿度高めな乙女に変貌するとは誰も思いもしなかっただろう。

 

 それはそれとして、周囲のライバルたちが開会式の宣言が終わると同時に散り散りに離れていく。

 

 何を隠そう、この会場だけでなく屋外の一定範囲までが大会の施設とされているのだ。

 

 なので、室内だけでなく外でバトルを行い、観客を賑やかにさせる必要もある。

 

 バトルは勝率はもちろんのこと、戦いに華を持たせる必要がある。

 

 …………よく考えたらカイザー神楽坂以外女の子だから華もへったくれもないのでは?

 

 冷静になればなるほど華に意識を向かせる必要なないのだが、そんな事は誰も気づかなかった。

 

「とりあえず、カイザー神楽坂がそう簡単に負けるわけありませんわ」

 

「私はもちろん、他のやつらも昔に比べたら強くなってるはずなんだけど?」

 

「カイザーも同じでやんす。強くなったカイザーに挑む前に、他の面子でカードを温めておく必要があるとおみうでやんす」

 

「そうかな…………そうかも…………」

 

「(流石ですわ、口車なら誰よりも強い女…………!)」

 

 口八丁で他人を動かすことが得意なアキバに唆され、初っ端からカイザー神楽坂に突撃することはやめさせることに成功。

 

 ひとまず他のライバルたちに矛先を向けてほとぼりが冷めるまで放置するのが目的である。

 

 思考が別方向へ向いたら多少は落ち着いてくれるだろう。

 

「とりあえず近くのやつをぶっ飛ばしてカイザーに近づいて行って…………」

 

 本当に落ち着いてくれるのだろうか?

 

 そのような心境が脳裏をよぎるが賽は既に投げられている。

 

 とにかく目についた奴をぶっ倒そう。

 

「キボウ、だよな?そうであれと言え」

 

 ずん、と重い足取りとは裏腹にひらひらと軽そうなフリルを纏った影が三人に背後に現れる。

 

 振り返ると、そこには白と黒の生地で作られた可愛らしいゴスロリを着こんだ巨女が居た。

 

 ゴスロリ衣装から見える腕や足は太く、筋肉として非常に隆起している。

 

 身長も180㎝を優に超える高身長であり、そして圧倒する筋肉に可愛らしさを備えるギャップがあるといって過言ではないだろう。

 

「お、オーガ!いきなりの登場は心臓に悪いやんすね」

 

「何を言ってるんだお前は最初にアタシに目をつけてたのはお前らの方だろうが」

 

 確かに、会場に到着してすぐに目についたのが彼女ことオーガである。

 

「いえいえ、元々体格が良くて柔道着がデフォの貴女がその格好で居たらびっくりするじゃありませんの?」

 

「行く先々でそれを言われるんだが…………」

 

「アンタにも何があったのよ。見た目通りかわい子ぶるような奴じゃなかったわよね」

 

「ふん、この阿左美(あざみ)オウカ、自分の好きなように生きて何が悪い?」

 

「あれ?鬼柳院(きりゅういん)じゃなかったでやんすか?」

 

 アキバがオーガこと阿左美オウカに名字が違う指摘をした途端、オーガがすんと表情を失った。

 

「…………両親が離婚して母方に引き取られた」

 

「あっ」

 

「だからまあ、なんだ、名字は気にするな!」

 

 そこそこ重い事情を抱えていたことに絶句するが、本人が気にするなと言ったら気にしない方針にした方がいい。古来からそのような空気読みがある。

 

「じゃあ、もしかしてその服装も…………」

 

「…………お母さんに大会に出るからいい服着たいって言ったらこれ出された」

 

「お母さん、分かってるでやんすね」

 

「どこがだ!?に、似合わないだろ!」

 

「つまり今まではお父さんの服チョイスだったってコト…………?」

 

 顔を真っ赤にしながらだんだんと綺麗な靴で地面を踏みつけるオーガであるが、今までの粗暴な面は相当なりを潜めていることに関係者は気づいていた。

 

 少しでも口答えしようものなら拳とカードが飛んできたところなのに何も暴力行為がない。

 

 それだけでも相当な成長であると言えよう。

 

 暴力的な面は父親の影響だったのかもしれないと思う一同であった。

 

「で、私に用があるってことはバトルってことでいいんだな?」

 

「そそそそ、そうだっ!積年の恨み、今ここで晴らさせてもらう!」

 

「そういえば負け越しでしたわね」

 

「うるさい!というかお前は誰なんだ!?」

 

「私を誰だと思っていますの!?」

 

「スナオちゃんは変化が大きすぎて分かりにくい筆頭でやんすよ」

 

 スナオの変貌に流石にオーガが気づけるはずもなく、どこかでキボウが引っかけた女だと思っていたようだ。

 

 金髪は共通しているとはいえ、そこまで気づけるほど親しくはないのだ。

 

「とにかく!キボウ、お前にバトルを申し込む!」

 

 びしぃ、と幼少期から無駄に鍛え上げられてきた指を突きつけ初戦の相手として指名した。

 

 特に誰と戦うなど決まりはなく、早ければ早いほど後続のバトルを観戦して最終盤面を見て対策を立てられるという利点がこの大会のルールとして存在している。

 

 断る理由はない、真正面から受けて立つほかない。

 

「いいわ、さっさとぎったんぎったんにしてあげるわよ」

 

「…………やっぱ、さっきから色づいてないか?」

 

「黙れ、殺すぞ」

 

「何でアタシより殺伐としてるんだよ」

 

 オーガもドン引きするほどの焦りと殺意を感じながら、幸先が不安になる。

 

 しかし、殺気が強いからと言って負けるつもりは無い。

 

 互いに持つのは過去よりも進化したデッキ、間違いなく白熱した戦いになるだろう。

 

「とりあえず机を用意して…………」

 

「おい、椅子を持ってきたぞ」

 

「あ、さんきゅー」

 

 ちょっとだけ準備時間の呑気な時が挟まって。

 

「っしゃあ、いくぜ!」

 

「へっ、やっぱりアンタはそうでなくっちゃあなぁ!」

 

 互いの投資が厚く燃え上がる、新たな戦いの時代が幕開ける。

 

「「バトル!!!」」

 

 賭けるのは互いのプライド、勝利と栄光と恋路を目指して二人は今、ぶつかり合う!

 

「…………なんか変な感情が混ざってないか?」

 

「さっさと倒してカイザーの所に行く、さっさと倒してカイザーの所に行く、さっさと倒してカイザーの所に行く…………」

 

「おい、こいつ様子がおかしいぞ!?」

 

 本当に大丈夫かは、バトルの勝敗で分るだろう。

 

 

 




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