お前女だったかカードゲーム   作:蓮太郎

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3. チャンピオンの憂鬱

 

「何でっ!俺以外!女なんだよ!!!」

 

 皆の1戦目が終わりそうな頃、カイザー神楽坂は誰もいないところで膝をつき嘆いていた。

 

 既に向かってきて初手告白をかましてきた相手を3分で叩きのめし、そして現在隠れている。

 

 それもその筈、過去に戦ってきた少年たちがまさか全員異性であった。

 

 せめて一人くらいは男であれと願ったが、チャンピオン権限で見せてもらった参加者一覧を見て希望は打ち砕かれた。

 

 男一人、それ以外は女、一見ハーレムに見えるがそんな生易しいものではない。

 

 カイザー神楽坂は全員とバトルしたことがある。何故ならチャンピオンとして挑戦される立場だからだ。

 

 そして全員が肉食獣である事もよーく知っている。

 

 見た目はなよっとしていてもチャンピオンに挑む気概を持つ者が弱いわけが無い。

 

「実家からも嫁探しをせっつかせてるし、まだ独り身で居たいんだ俺は…………!」

 

 神楽坂グループという財閥の御曹司である故に自由奔放な毎日を過ごしてきていた彼であるが、年貢の納め時と言ったところだろう。

 

 草むらで隠れ、人目を避けて移動するカイザーであるが、蒼い服に赤と青のメッシュが入った髪色と自然にそぐわない色が緑に合わず目立っている。

 

「お、カイザーだ!」

 

「囲め囲め!」

 

 もちろん即、見つかる訳である。

 

「なんだよもおおおお!さっき囲まれてたところから逃げてきたんだぞ!」

 

「だからだよ!」

 

「こっちの挑戦を受けろ!」

 

「アンティだアンティ!」

 

「神楽坂グループが良いところなのは知ってるんだぞ!」

 

「うおおおおおお!ふざけんじゃねえぞおおおお!」

 

 家柄が良いのが問題なのか、思春期を迎えていい男を望んでいるのが問題なのかは分からない。

 

 それでも彼の身柄はとても貴重な物だ。

 

 同年代チャンピオンを手駒にしたという事実は誰にも無視できないのだから。

 

「やってやろうじゃねえかこの野郎!全員ぶっ飛ばしてやる!」

 

「神楽坂さん、ルールなので一人づつお願いします」

 

「こういう時だけ出しゃばって来るなよスタッフが」

 

 再び4人ほど囲まれたカイザーはまとめて相手をしてやろうとしたが、どこからか現れたスタッフに注意されてしまった。

 

 また勝利する際にカードの精霊による爆炎で姿をくらますという手段は難しくなると予感し始めていた。

 

 こうなればキリがない戦いが始まる。

 

 負けるつもりは無いが、変な条件を勝手につけられる可能性は否定できない。

 

 全てのルールに神経を研ぎ澄ませなければならなくなったカイザーは額から汗を流し、そしていつもより真剣な表情でカードを取り出す。

 

 下手したら世界を救う戦いの時よりも真剣かもしれない。

 

 何故かチャンピオンという立場より純潔というプライドを守る戦いになっているのだが、今のカイザーにそこまで考える余裕はなかった。

 

「よっしゃぁ、2番手の骨幹(ほねみき)コツ、婚姻チャンスいっきまぁす!」

 

「俺はまだ純粋な学生生活を楽しみたいっっっ!!!」

 

「「バトル!!!」」

 

 互いの思いがぶつかり合い、そして高らかに宣言する。

 

 カイザーにとって色々とかけた戦いが、今始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイザー!バトルを申し込むっす!」

 

「頼むからインターバルをくれ、もう5戦やったところなんだ…………」

 

 逃げも隠れもしていないカイザー神楽坂はそれはもう疲れていた。

 

 連戦に次ぐ連戦、最強ゆえに大盤振る舞いな戦い方をする故に消耗も馬鹿にならない。

 

 戦う相手が雑魚であるなら特に問題はなかったのだが、年齢別かつ以前に優秀な成績を収めた者たちが集まるこの大会で気を抜くことは出来ない。

 

 ひょんなことから敗北するという事はよくあることだ。カードのデータを出来るだけ頭に叩き込もうと、瞬時に全てを判別できるわけではない。

 

 一枚一枚から繰り出すコンボは多種多様、それを全て把握することは到底不可能なのだ。

 

 そんな者が居れば有名になっているのは間違いないだろう。

 

 なにせ、全ての戦略を把握していることに他ならず、それを操ることができたら究極の存在になっているのだから。

 

 限られた手段で戦うカイザー神楽坂はよくやっている方だろう。

 

「ふうー、水が美味い…………」

 

 知らぬ間に新しいカードが産まれるこの世界に置いて、戦い続けることはとても厳しい道のりである。

 

 僅かな物資で戦いを強要されることもあり、この大会も同じと言えよう。

 

 スタッフから自主的に渡された水も、他参加者は申請しなければ水も貰うことさえ出来ない。

 

 カイザー神楽坂はスポンサーでありチャンピオンである。そしてバトルに対して誠心誠意向き合っている男である。

 

 外部からの持ち込みによって奇妙なカードを大会中に使わせないようにする措置である故にちょっとした格差が出来ているのだ。

 

 大会のスタッフが悪い奴だったら終わりではと思った君、それを言い出したらキリがないほど事件が起きているため本当にキリがないぞ。

 

「どれだけ俺に夢中なんだよ、俺だってこんなことになると思わなかったんだってのに…………」

 

 休憩中、立て札を置かれているため他の参加者は近寄ってくる事はなかった。

 

 インターバルは必要だ、と言いたいところだが今は真剣勝負の場。

 

 疲労の合間を突く戦法もあるため虎視眈々と狙われているのも仕方ないのだ。

 

「お疲れ様、チャンピオンも大変だね」

 

 座っている横に1人、いきなり同じく座ってきた。

 

 いきなりの事で身体を震わすカイザーだったが、またバトルを挑まれるのかとデッキを構える。

 

「待って待って、今はバトルするつもりはないから」

 

 隣に座った人物、それは津久葉キボウであった。

 

「…………色々あると、色々大変だよね」

 

「お前も何があったんだ」

 

 2人も過去に交流はあった。もちろん最高のライバルとしての交流だった。

 

 キボウが女の子だったことは今日初めて知ったカイザーだが、そのキボウもなぜか疲れているような雰囲気を出している。

 

 恋に燃える彼女の身に一体何があったのか、少し時間を遡ろう…

 





〜人物紹介〜

カイザー神楽坂(本名、神楽坂太郎)
神楽坂グループの御曹司であり、当時の強者たるチャンピオン。
今ももちろん強く、研鑽を怠らない姿勢は誰もが尊敬するだろう。
しかし、彼の才能は『ライジングイリュージョン』のみであり、ほかは平凡かそれ以下というちょっとしたコンプレックスを持つ。
カードゲームだけで生きていけると思うほど愚かではなく、しかし万が一あの時のように世界の危機が訪れた際に真っ先に前線で戦おうとする勇者である。
この大会の唯一の男として参加したので色々と胃が痛い。
キボウとの関係は同年代でタメを張るライバル、戦績も引き分けでありいつか決着をつけたいと思っていた。
まさか湿気るとは思うわけないじゃないですか。

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