Skybound Ace 【Redux】   作:心ここにあらず

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12.

 

 

俺と翔陽が入学したのは宮城県立烏野高等学校。

 

烏野高校は、かつて宮城県を代表する古豪として全国大会に出場していた強豪校だった。

 

特に"小さな巨人"が在籍していた時代は、その圧倒的な跳躍力と攻撃力で全国へ進出。黒いユニフォームと「空を翔けるカラス」のようなプレーから、多くの選手の憧れとなっていた。 翔陽もその1人だな。

 

しかし、「小さな巨人」の卒業後はチーム力が徐々に低下。全国への道は閉ざされ、宮城県内でも青葉城西や白鳥沢といった強豪の陰に隠れる存在となっていく。

 

いつしか烏野は、かつての異名である「空を飛ぶカラス」ではなく――

 

『飛べない烏(堕ちた強豪・飛べないカラス)』

 

そう呼ばれるようになっていた。

 

 

 

 

 

入学式後、ジャージに着替えた俺達は早速体育館に向かうことにした。俺は職員室に鍵を、翔陽は先に体育館に向かう事となった。

 

その際、職員室でバレー部顧問の武田一鉄先生にもご挨拶させてもらった。バレーの知識は素人だと言っていたのでおそらく実質的な支持はコーチないしは主将が行なっているのだろうか。

 

 

そして体育館に向かう道中、自販機にて自分と翔陽の水分を購入しようとした時ーー

 

 

 

「ん?」

 

 

 

トントンと肩をつつかれた俺が振り返るとそこには、 艶のある黒髪を肩口ほどまで伸ばしたセミロングまだ伸ばした女子生徒が立っていた。多分、美少女にはいると思う。アリサさん一筋の俺にはそこまで魅力的に映らないが翔陽辺りが見たら挙動不審になるだろうな。

 

 

 

「あなた、もしかして神凪リオ君?」

 

 

「え、はい。そうですけど…どちら様ですか?」

 

 

 

咄嗟に名前を呼ばれたので返事をしてしまったが全く見覚えがない。

 

 

 

「あ、ごめんなさい。私はあなたの事を一方的に知っているだけなの」

 

 

「そう?なんですか。」

 

 

「ええ。私の名前は清水潔子。烏野高校バレー部のマネージャーよ。」

 

 

「へぇ!男バレの!」

 

 

 

 

目の前の女性は烏野高校の男子バレー部のマネージャーであるようだ。

 

 

 

 

「男バレ…希望よね?」

 

 

「えぇ。丁度今から友達が先に向かっている体育館に向かう予定なんです」

 

 

「そうなの。鍵はもらってきた?」

 

 

「はい」

 

 

 

俺と清水さんは体育館に向かってあるく。道中にいろんな事を聞いた。烏野の現状の状態とか、今年は期待の新人が多く揃っているだとか諸々

 

 

 

「「なんでお前がここにいる!?」」

 

 

「翔陽!?」「っ!?」

 

 

 

体育館の前に着くと中から翔陽ともう1人の叫び声が聞こえた。慌てて中に入るとそこにいたのはーー

 

 

 

「…影山」

 

 

「日向翔陽と…神凪リオ」

 

 

 

そこにいたのは…俺たち雪ヶ丘と中学バレーの県大会でぶつかった北川第一のセッター・影山飛雄であった。

てかめっちゃ嫌そうな顔してね?大丈夫かこれ

 

 

それもそのはず影山からすればリオと翔陽は初めて自信と同格…いや格上と認めた同い年の選手であり、高校こそは彼等を倒すと息巻いていたはずなのだが…

 

まさか同じ高校に進んでいるとは微塵も思っていなかったからである。

 

 

 

 

「お前も烏野に来てたのか」

 

 

「…あぁ。"あの烏養監督"がいるって聞いてたからな」

 

 

「あの?」

 

 

「てかさてかさ!お前強豪校には行かなかったのな!」

 

 

 

俺たちの会話を遮るように翔陽が影山に言う。

 

 

 

「…県内一の強豪校にら"落ちた"」

 

 

「「「…」」」

 

 

 

なんとも言えない空気感が流れる

 

…コイツも翔陽と同じで勉強が出来ないタイプだったか…まぁ県内一と言えば恐らく白鳥沢。あそこ進学校だもんな。

 

 

「落ちた!"コート上の王様"なのに!?」

 

 

「あ、翔ーー」「おい…その呼び方…ヤメロ」

 

 

「っ!?」

 

 

"コート上の王様"

 

 

そう呼ばれた影山の表情はかなり険しそうであった。一見誇り高いその名であるが実はそうではない事を俺たちは知っている。

 

 

 

するとーー

 

 

 

「いや〜まさか、"あの2人に加えて北川第一のセッター"まで烏野にねぇ〜!!」

 

 

「でも絶対生意気ですよ!特にハーフ君!」

 

 

「顔の僻みやめろ田中」

 

 

「おーす」

 

 

 

そこに現れた烏野高校バレー部を象徴する黒のジャージに身を包んだ3人の青年。

 

 

 

「よく来たな。神凪と日向。それに影山!」

 

 

「「おっす!」」「…うっす」

 

 

「潔子さ〜ん!!テメェら潔子さんに指一本触れんじゃねぇぞ!」

 

 

「「「??」」」

 

 

 

真面目そうな人が話しかけたと思ったら今度は坊主の先輩が清水さんの前に達こちらを威嚇してくる。お陰で翔陽はビビり散らかしてる…ちょっとウケるんだけ

 

 

 

「止めろ田中!」

 

 

「いてっ!?」

 

 

 

真面目そうな男性がキャプテンでWSの澤村大地先輩。坊主でいかにも清水さんに惚れてそうなのが2年でWSの田中龍之介先輩。最後に田中先輩を止めてくれたのが3年で副主将のSで菅原孝支さんだ。

 

 

 

「にしてもびっくりしたなぁ。」

 

 

「「「??」」」

 

 

「お前らどっちも烏野か〜」

 

 

 

どうやら先輩達は去年の俺たちの試合を現地で観てくれていたらしい。あ、また影山が不機嫌そうな顔になった。…コイツ分かりやすすぎだろ。セッターとして致命的じゃないかそれ

 

 

 

 

「神凪は勿論のこと日向も凄かったな。バネエグいし」

 

 

「あざっす!」

 

 

「にしてもあんま身長伸びてねぇな」

 

 

 

 

田中先輩は気さくな方なようであっという間に翔陽とも距離を詰めていた。

 

 

 

「あっ…うぐ…確かにあまり変わってないですけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー小さくても俺は飛べます!!烏野の"エース"になって見せます!」

 

 

 

 

 

ふふ。コイツの志しが高いとこ好きだ俺。俺と言うスパイカーに微塵も負けるとは思っていないその気概も小さいながらにそれを弱点も思わせないポテンシャルも、本当に凄いよ翔陽。

 

 

 

「…負けねぇぞ…翔陽」

 

 

 

「…」

 

 

 

俺が小さく溢した言葉を影山だけが拾っていたことに俺は気づかなかった。

 

田中先輩は「おぉ」と目を丸くし、菅原先輩は柔らかく笑う。澤村先輩だけは、その言葉の重さを測るように翔陽を真っ直ぐ見つめていた。

 

「エース、か」

 

「はい!」

 

迷いのない返事だった。普通なら笑われてもおかしくない。身長は低い。全国レベルの実績もない。それでも、その目だけは誰より高い場所を見ていた。

 

「いいじゃねぇか!」

 

田中先輩が豪快に笑う。

 

「そういうデカいこと言える奴、俺は好きだぜ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「……ただ」

 

澤村先輩が静かに口を開く。

 

「烏野のエースになるのは、そんな簡単じゃないぞ。」

 

「はい!」

 

「今の烏野は強豪じゃない。でも、だからこそ全員が必死だ。」

 

その言葉には重みがあった。全国へ届かなくなって何年も経つチーム。それでも諦めずに戦い続けてきた三年生だからこその言葉。

 

 

「だから遠慮なく競え。ポジションは実力で奪え。」

 

「「はい!!」」

 

 

俺と翔陽は同時に返事をした。

 

その横で――

 

「……」

 

影山だけは静かだった。誰よりも口数が少ない。ただ、俺と翔陽を見つめるその瞳には、中学の頃とは違う色が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……一人じゃ勝てない。)

 

県大会。あの日…雪ヶ丘との試合で自分は初めて負けた。

 

“不相応な王様”として君臨してきた中学時代。

 

自分が正しい。

 

自分のトスが正しい。

 

周りが合わせればいい。

 

そう信じていた。だが――それでは勝てなかった。

 

試合後。日向は真正面から言った。

 

『お前一人じゃ勝てねぇ。バレーは六人だ。』

 

 

試合が観にきてくれたOBである"あの先輩"も言い放った。

 

『飛雄…確かにお前のトスは凄い。けど、それを決めるのはスパイカーだ。自分が全部やろうとする限り、お前は本当の意味では勝てない。』

 

あの言葉は腹が立った。

 

悔しかった。

 

認めたくなかった。

 

だが、時間が経つほど理解してしまった。

 

北川第一で孤立した最後の試合。

 

誰も自分のトスを打たなくなったあの瞬間。

 

あれが答えだった。

 

 

(俺一人じゃ……勝てない。)

 

 

だから変わる。変わらなければ、この二人には一生勝てない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺は」

 

 

 

影山が小さく口を開く。全員の視線が集まる。

 

 

「神凪。」

 

「ん?」

 

「日向。」

 

「?」

 

 

 

ほんの少しだけ間を置き、影山は真っ直ぐ二人を見た。

 

 

 

「……今度は負けねぇ。」

 

 

 

その声に以前のような棘はない。ただ純粋な闘志だけが宿っていた。

 

翔陽はニヤッと笑う。

 

「望むところだ!」

 

俺も自然と口角が上がる。

 

「いいじゃん。今度は同じチームだけどな。」

 

「……だからだ。」

 

影山は短く答えた。

 

「レギュラーも、試合も、全部だ。全部勝負してお前らに勝つぞ」

 

その一言だけで十分だった。馴れ合うつもりはない。だが敵でもない。

 

互いを認めたからこそ、絶対に負けたくない。そんな空気が三人の間に流れていた。それを見た菅原先輩が苦笑する。

 

 

 

 

「一応同ポジションなのは俺だけどな」

 

「あ!すみません!そう言う意味じゃなくてーー」

 

「あぁ分かってるわかってる。別に俺を軽視した訳でもないんだろ?2人とはちょっと因縁?的なもんがありそうなのは俺だって分かってるから」

 

 

 

むちゃくちゃ良い人だこの人。影山の言いたいことや思いを汲み取ってくれた菅原先輩。

 

 

 

「ま、何はともあれーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー俺たち烏野バレー部はお前達3人を歓迎する!!今日から宜しくな」

 

 

 

 

「「「っ…しゃあす!!!」」」

 

 

 

 

 

俺の…俺たちの高校バレーへの挑戦がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リオ!部活行こうぜ!」

 

 

 

 

 

 

後日、教室の違う俺を翔陽が呼びにくる。高校に入って生徒の人数も増えたことで俺たちは初めてクラスを離れることとなった。まぁ隣だからいつでも会えるんだけども

 

俺たちが体育館へ向かうとそこにはもうーー

 

 

 

 

ーードパァァァァン!!

 

 

 

 

アイツ…

 

 

 

「うぉぉぉ!スゲェ威力!"ジャンサー"打つようになったのか影山!」

 

「あ?おう。負けてられねぇからな」

 

 

 

 

翔陽が話した通り影山がジャンプサーブの練習を行っていた。確かに今のは威力としては十分…あとはコントロールがどんなもんかって感じか

 

 

 

 

「まだ先輩達来ないしミニゲームでもしようぜ!」

 

「つっても3人じゃどうしようないぜ翔陽」

 

「ならサーブで勝負しようぜ」

 

 

 

俺たちは影山の提案したサーバでのゲームを行うことにした。ルールは簡単だ。ネットを超えコート深くのライン上にペットボトルを置き、そこを狙い撃ちするだけ。

 

 

 

「まずは俺からだ」

 

 

 

そう言うのは影山だ。影山は必要歩数を確保し狙いを定める。…そしてーー

 

 

 

ボールを高く上げたあと、ダダンッ!と勢いよく助走し跳躍と同時に右腕を振り抜く。

 

破裂するような爆発音と共に放たれた豪速球のボールが対象へと迫るものの

 

 

 

「っ…ちっ」

 

 

「「おっしい〜!!」」

 

 

ボールは僅かにそれペットボトルの左側…つまり"アウトライン"を通り過ぎていった。威力は本当に申し分ない。制球もそこまで悪くない。本当に半年で良くここまでのサーブを打てるようになったな。

 

 

 

「んじゃあ次俺な!」「俺がトリかよ」

 

 

 

そう言いボールを持ったまま助走歩数を確保する翔陽。

 

翔陽はボールを左手で抱えたまま、右手をゆっくりと開き、そして強く握り締める。骨が軋むほど力を込めた拳を一度だけ見つめると、そのまま胸元へ当てた。

 

 

"これ"は俺と翔陽が考えたそれぞれが瞬間的に極限の集中へと没入するためのルーティーンだ。

 

 

鼓動を感じ、――よし…と小さく頷き、肩を一度だけ回す。

 

その動作には一切の無駄がない。翔陽の視界に映るのは、ボールとコートだけ。

 

静かに助走へ入った次の瞬間、その一歩一歩が爆発的な推進力へと変わり、全身の力が一球へと解き放たれた。

 

 

 

ーードパァァァァァァン!!

 

 

 

 

影山のスパイクサーブとほぼ同程度の威力で放たれたボールはペットボトルへ一直線に突き進む

 

 

 

しかし

 

 

 

「あぁクソッ!!」

 

 

 

翔陽本人は打った感触で何かに気づいたらしい。

 

その原因が明らかになった。なぜならボールはペットボトルに当たる数十センチ手前で急カーブし対象から僅かに逸れ"右側"を通り過ぎていった。

 

 

 

「ぐぉぉぉぉ!!」

 

 

「はは!分かるぞ翔陽。力んじまうと変な回転掛かっちまう時あるよなぁ」

 

 

「クソっ」

 

 

 

影山は1人悔しそうな表情を浮かべている。…まぁ理由はなんとなく分かる。恐らく同じ失敗でも翔陽はコース内へと打ち込んでいるのに対し自分はコート外…つまりは試合ではアウトとされるのだ。

 

ミニゲームでもそんだけ悔しがれるのは才能だな。

 

 

 

 

「うし!最後は俺だな」

 

 

 

 

そう言ってエンドラインへ立つと、ボールを胸の高さで静かに持ち上げる。

 

一度だけ軽く宙へ放り、その回転を目で追う。落ちてきたボールを音もなく受け止めると、親指で空気穴をなぞり、指先の感覚を確かめた。

 

 

体は自由に動く。指先の感覚も問題なし…うん…良く見える。

 

 

 

大きく息を吐きーー

 

 

 

「…行くぜ」

 

 

 

 

そう呟いた直後だった。リオはボールを真上へ放り上げる。

 

普通のトスよりも、"明らかに高い打点"に放り投げられたボールに鼓動するようにリオの右足が床を踏み締めた。

 

床が軋むほどの音を鳴らせ全力で跳躍する。

 

高く。

 

誰よりも高く。

 

右腕が弓のようにしなり、全身の力が一点へ収束する。

 

 

「ッ――!!」

 

 

 

 

 

――ドォォォォォォンッ!!

 

 

 

 

轟音と同時に放たれたボールは次の瞬間ーー

 

 

 

 

 

 

――ゴンッ!!

 

 

 

乾いた衝突音が体育館へ響いた。ペットボトルの正面に衝突し、数メートル先まで吹き飛ぶ。

 

ただ一本だけ倒れたペットボトルが、床を転がる音だけが響いていた。

 

 

 

「……それでこそ挑戦しがいがあるぜ」

 

 

 

影山が思わず呟く。

 

 

「また威力上がったんじゃねぇかリオ!」

 

 

翔陽は"いつものこと"だからなのな特に驚きも見せずただはしゃいでいる。

 

 

 

「あっぶねぇ……ギリだったな」

 

 

 

当の本人だけが、何事もなかったように苦笑しながら着地していた。

 

 

 

 

 

 

 




烏野に決定しました!

リオはどこに進学させるべき?

  • 烏野
  • 青城
  • 白鳥沢
  • 県外
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