Skybound Ace 【Redux】 作:心ここにあらず
リオ達がサーブでのミニゲームを丁度終えた頃、続々と部員達が姿を現す。
「おぉ。やる気あるなお前ら」
「「「キャプテンちわーす!!」」」
ざっと見、20人はいないな。まぁこんなもんか。あんまり多くてもスペース取るし丁度良い。
新入生らしき奴らもいるな。お、コイツ俺と身長変わんねぇじゃん。細すぎるのが気になるが
「んじゃあ1人ずつ自己紹介してくか。まずは俺から、知ってるもの達もいるがーー」
キャプテンから順に三年生、2年生とそれぞれ自己紹介を行っていく。そして俺たち、新入生へと移る。
「雪ヶ丘中出身、日向翔陽。ポジションはWSをしてました!…俺は"小さな巨人"に憧れて烏野に来ました!俺がエースになります!」
「っ…ちっ」
「ん?」
翔陽の自己紹介に対して隣の金髪メガネが舌打ちをし睨むように翔陽を見つめる。
今のどこに気に触るところがあったんだ?あれかやっぱりチビはリベラとかにしとけとかそう言うの
「同じく雪ヶ丘中出身、神凪リオ。ポジションはWSです。…俺は…俺が俺の目標を叶える為に烏野に来ました」
「その目標と言うのは?」
「今はまだ口にするのも烏滸がましいので…」
「あら、そうなの。…まぁ良いんじゃない?頑張んなさいよ」
「うっす!」
そして1人ずつ影山…金髪メガネもとい月島、特に特徴的なものが見つからない平凡な少年、山口へと行われていく。この時点では平和だったんだ。問題は自己紹介後に発生した。
自己紹介が終わりいよいよ練習が開始されるかと思われたその時
「ねぇ」
「あ?」
「なんで"コート上の王様"が烏野にいるの?」
「あぁ!」
「うわっこっわ…普通に聞いただけじゃん。あれ、もしかして北川第一の時もそうやって当たり散らかしてたわけ?」
月島が影山へと話しかけたのだが妙に喧嘩腰である。と言うかコイツ翔陽の自己紹介辺りから機嫌が悪い。
「おい止めろ!」
「君もさ、小さな巨人とかエースとか"分不相応"なんだよ」
「なんだと!分不相応ってどう言う意味だこのやろう!」
「頭まで幼稚なんだ」
流石に言い過ぎだ。俺が止めようとするとーー
「はいはい!どうしたのいきなり」
「キャプテン!いきなりコイツが影山に絡み出したから!」
「影山に?月島が?」
間に入ったキャプテンに翔陽が説明する。確かに今日初めて会ったはずの影山…それに翔陽にも当たりが強い理由が気になるな。もし、ただムカつくとかで言ってるんだとしたらそんな奴を俺は仲間だとは認めない…
「月島もなんでそう言うこと言うの」
「…」
「答えたくないと…2人の間に何があったのか無かったのか知らないけどこれから3年間一緒にやっていくんならその自覚は持ちなさいよ。」
「「…」」
「はぁ…チームメイトはライバルでもあるけど敵ではない。別に青春漫画の主人公みたいな青酸っぱいこと言いたい訳じゃないんだけど…
ーーこのまま歪み合うなら俺は部を任される立場としてお前達を認めたくなくなってしまう」
「「っ…」」
「良いのか?お前らはまだ今日会ったばかりだ。性格が合わないとか、気に食わないとか、それは別に構わない」
「……」
「でもな。コートに立つ以上、そこに私情を持ち込む奴は信用されない」
影山の拳が僅かに震える。月島は無表情を崩さないまま、視線だけを逸らした。
「試合じゃ六人で一点を取りにいく。自分が嫌いな奴だからトスを上げない、自分が嫌いな奴だからカバーしない……そんなことを一度でもしたら、その瞬間チームは終わる」
「……」
「俺は強いチームを作りたい。そのためなら実力のある奴は誰だって歓迎する」
澤村は一拍置き、少しだけ声を低くした。
「だけど、人として最低限の線だけは越えるな」
その言葉には、怒鳴り声よりも重い圧があった。影山はゆっくりと息を吐き、
「……すみませんでした」
と短く頭を下げる。月島も数秒遅れて、
「……失礼しました」
とだけ呟いた。
「よし」
澤村は頷き、パンッと一度手を叩く。
「この話は終わり! 今日からお前らは同じ烏野だ!」
体育館に張り詰めていた空気が、少しだけ和らぐ。菅原が苦笑しながら肩を竦めた。
「いやぁ、入部初日から胃が痛くなるかと思ったべ」
「そうっすね!……」
清水も小さく息をついた。
(……良かった)
俺も胸を撫で下ろす。キャプテンの言葉は綺麗事じゃない。この人は本気で、このチームを守ろうとしている。だからこそ、影山も月島も言い返せなかったんだろう。
まぁ俺としては少々納得いかない事もあるけど、キャプテンがこれで終わりだと言うなら俺からこれ以上掘り起こすことはない。
その日の夜ーー
『そんなことがあったんだ。リオも大変だね』
「まぁね。チームメイトが私情でいがみ合ってて、それをコートに持ち込まないなんてことはプロでもない…ましてや高校生にはほぼ不可能だからね」
『うんうん』
「…話の内容的にアレだけど…やけにテンション高くない?」
『分かった!?実はね!ーー
ーーモデルにオーディションに合格しました!!』
「えぇ!すご!」
リオは自宅に帰ったあと、日課となったアリサとの電話を行っていた。やけに普段より声のトーンが高かったアリサの様子に気づいたリオが指摘するとその答えが返ってくる。
前々からモデルになりたいと聞いていたしアリサの容姿なら絶対行けると思っていたのでそれほど驚きはない。
けどーー
「心配だなぁ」
『え?なんで!』
「だってモデルってことは容姿端麗の男も多いって方でしょ?アリサを付け狙う輩がいるかも知れない…いや絶対出てくる」
『あはは!もう心配性だなぁリオは。』
アリサは離れていても自分がリオに愛されているという自覚を持つ。
『でも大丈夫!リオよりかっこいい男の子なんていないし、例え居たとしてもリオ以外を好きになることなんてありえないんだから!!』
「っ…こう言うのがほんと…」
翔陽達といる時は冷静で大人っぽさが見えるリオもアリサの前ではたじたじである。
リオはベッドに寝転がり、天井を見上げる。
「……でも本当におめでとう。アリサがずっと頑張ってたの知ってるから」
『ありがと。何回も落ちたらどうしようって弱音吐いてたのにね』
「それでも諦めなかったじゃん。そういうところ、すごいと思う」
少しの沈黙の後アリサが語り出す
『……ねぇリオ』
「ん?」
『一番に報告したかったんだよ』
その言葉に、リオは思わず言葉を失う。
今日の部活では、影山と月島の衝突に気を張り、キャプテンとしての澤村の覚悟に胸を打たれ、自分もチームのために何ができるかを考えていた。
だけど今は、ただアリサの声だけが心地良かった。
「……嬉しいよ」
『えへへ』
「でも、やっぱり少しだけ心配かな」
『またその話?』
「だってさ、モデルの世界なんて俺には想像つかないし。きっとすごい人がたくさんいるんだろ?」
『うん。すごい人はたくさんいると思う』
「……そっか」
少しだけ声のトーンを落としたリオに、アリサは優しく笑った。
『でもね、私が好きなのは、試合の時はかっこいいのに、電話だとすぐ心配してくるリオだから』
「……」
『あと、褒めるの下手なくせに、ちゃんと見ててくれるところも好き』
「……反則だって、そういうの」
顔が熱くなるのを感じ、リオは腕で目元を覆う。
体育館でどれだけ冷静に立ち回っても、どれだけ強いスパイクを打てても、アリサの一言には敵わない。
『今度の撮影、緊張すると思うからさ』
「うん」
『その時は応援してね』
「当たり前だろ。日本中の誰よりも応援する」
『ふふっ、大げさ』
「本気だよ」
窓の外では、夜風が静かに木々を揺らしている。
離れていても、声ひとつで心の距離は近くなる。
『ねぇリオ』
「なんだ?」
『インターハイ行ったら、絶対教えてね。どんなに忙しくても応援に行くから』
「じゃあ俺も、アリサが有名なモデルになってもちゃんと応援する」
『約束?』
「約束」
互いに笑い合い、どちらともなく「おやすみ」を言うまで、二人は他愛もない話を続けた。今日あった部活の話。学校の話。将来の夢の話。
不安も、期待も、全部話せる相手がいる。
電話を切ったあと、リオは枕元に置いたスマホを見つめて小さく笑った。
「……負けてられないな」
アリサが夢へ向かって走り出したように、自分もコートの上で前へ進む。そう心に決めたリオは、明日の朝練のために目を閉じた。遠く離れていても、同じ空の下で頑張っている人がいる。
その事実だけで、少しだけ強くなれる気がした。
俺たちが烏野に入学し1週間が過ぎようかとする日の放課後、いつも通り部活動に勤しんだあと、練習の片付けを行っていると
「組めた!組めたよ〜!!」
「「「??」」」
体育館の扉の向こう、渡り廊下から武田先生の声が聞こえる。
「練習試合!相手は県ベスト4!青葉城西高校!」
「青城!?」「げっ!」「どうやって!」
青城かぁ〜。ちなみに及川さんとはあの日以降会ってない。連絡先も知らないしな。ちょっと気まずいのが本音。
「うぅ〜」
あ、ここにいまいたわ。青城からの熱烈オファーを断った奴。
「大丈夫だ翔陽。俺も同じ気持ちだ」
「だよな!俺よりもリオの方が酷い断り方だもんな!」
前言撤回だ。コイツは仲間なんかじゃねぇ
「いやはや、あちこちに練習試合を申し込みに行ってたから中々顔を出せなくてごめんね。」
「それは大丈夫ですけどどうやって青城と?」「まさか土下座!?」
「してないしてない!土下座得意だけどしてないよ!今回は!」
いつもはやってんのか。面白いなこの人。
「ただ今回は"条件"があってね」
「「条件?」」
「うん。…
"神凪くんと日向くん…それに影山くんの3名をフルで出すこと"…この条件を呑んでくれるならと言う申し出だったんだ」
武田先生の言葉に完全に空気が死んだ。特に2、3年生たち。そりゃそうだ。今の言葉は烏野を舐めているとしか言えないんだから。
「なんすかそれ。烏野自体には興味ないけど、うちのルーキー達はとりあえず警戒しときたいってことですか。ナメてんすか、ペロペロですか」
「あ、いや、そう言う嫌な感じじゃなくてーー」
田中さんがブチ切れて武田先生に詰め寄る
「い、良いじゃないか!こんなチャンスそう無いだろ」
「!」
そうだ。影山が入るってことは外れるのはスガさんだ。そしてそれは俺たちであっても例外じゃない。俺と翔陽が入るってことはキャプテンないしは2年の田中さんが外れるかも知れないってことだ。
レギュラーを…烏野をこれまで背負ってきた身としては到底受け入れられない筈だろう。少なくとも俺ならそうだ
「…俺もっすけど良いんすか スガさん?烏野の正セッターはスガさんじゃないすか?」
「……」
「俺は…神凪や日向、それに影山を入れた新しい烏野の攻撃が4強相手にどのくらい通用するのか見てみたい」
「「「っ」」」
「武田先生詳細をお願いします」
菅原の覚悟を見た澤村が問う。日程は来週の平日の放課後、場所は向こうの体育館か。
練習後、俺と翔陽はキャプテンの元へと走る。
「「キャプテン!!」」
「ん?」
校門前にいたのはキャプテンと菅原さん、それに清水さんの三人である
「どうした?そんな慌てて」
「あ、あの!お、俺たちの」
「俺たちのせいで試合に出れないかもって…自惚れかも知れないですけど妙に青城の監督"達"から警戒されてるんで」
澤村は一瞬だけ目を丸くし、すぐに苦笑した。
「……何言いに来るかと思えば」
隣では菅原も肩を揺らして笑っている。
「そんな顔するなって」
「でも!」
翔陽が思わず一歩踏み出す。
「実力じゃなくてこんな事で先輩たちが試合に出られないなんて、そんなの嫌です!」
リオも頭を下げた。
「俺も同じです。俺たちはまだ入部したばかりです。今まで烏野を支えてきた先輩方を差し置いてまで出たいなんて思ってません」
その言葉に、三人は顔を見合わせた。
やがて澤村が静かに笑う。
「……だから一年坊主は真面目すぎるんだ」
「え?」
「悔しくないわけないだろ」
その一言に、二人は息を呑んだ。澤村は校舎を振り返り、夕日に染まる体育館を見つめる。
「俺たちはこの一年間、このチームを勝たせるためにやってきた。レギュラーを守りたい気持ちだってある。試合に出たいに決まってる」
「……」
「でもな」
澤村は二人へ向き直る。
「それ以上に嬉しかったんだよ」
「嬉しい……ですか?」
「お前らを見てると、烏野はまだ終わってないって思える。…知ってるだろ?」
澤村は語り出す
「去年までの俺たちは、どこかで『今の力で戦うしかない』って諦めてた。でも、お前らが来てから毎日新しい刺激ばっかりだ」
「神凪の圧倒的な高さとパワー。日向の常識外れの運動能力。影山の精密なトス」
「どれも俺たちにはない武器だ」
澤村は笑う。
「そんな武器があるなら使わない理由なんてないだろ」
リオは何も言えなかった。すると菅原が一歩前へ出る。
「俺さ」
優しい笑みを浮かべながら続ける。
「正セッターを取られたくないって気持ちはある」
「!」
「だから影山には負けるつもりないし、毎日必死だ」
影山の名前を出しながらも、その表情に濁りはない。
「でも、もし影山の方が今は勝てるっていうなら、その現実から目を逸らすつもりもない」
「……」
「悔しいからこそ追い抜く。競争ってそういうもんだろ?」
菅原はリオと翔陽の肩を軽く叩いた。
「だから変な遠慮はいらない。全力でポジション奪いに来い」
「その代わり」
その笑顔が少しだけ鋭くなる。
「「俺たちも全力で取り返すから!!」」
「……はい!」
翔陽が力強く頷く。リオも自然と頭を下げた。
「それに元々、ポジションのコンバートについても色々と考えてたところでもあるしな」
「そうなんですか?」
「あぁ。ほら、うちって高さが足りないだろ?」
確かに、ウチだと月島と俺が並んで一八八センチ。次いで影山の一八〇センチだ。
普段の生活なら一八〇センチでも十分大柄だが、バレーの世界では一九〇センチを超える選手も珍しくない。全国を目指すなら、烏野の高さは決して恵まれているとは言えなかった。
澤村は腕を組みながら続ける。
「だから、ミドルブロッカーに誰かコンバートできないかって話も出てたんだ」
「ミドルに……」
「今のままだと月島一人に負担が集中する。ブロックの要は最低でも二枚欲しいし、速攻を絡められる選手も増やしたい」
「だから新入生も含めて、一から適性を見ようってことですか」
「そういうことだ。もちろん無理に変えるつもりはない。でも、チームが強くなるならポジションなんて固定観念に縛られる必要はないからな」
なるほど。確かに、ウィングスパイカーには攻守両面の総合力が求められる。一方でミドルブロッカーはブロックと速攻が生命線だ。
適性さえあれば、チーム全体の戦力は大きく底上げされる。
「まぁ、お前はそのままレフトで育てるつもりだけどな」
「あ、そうなんですか?」
「神凪の武器は高さだけじゃない。レシーブもサーブもスパイクも全部高いレベルにある。そんな選手をミドルに置くのは正直もったいない」
そう言って澤村は笑う。
「コンバートを考えてるのは、別の奴らだ。と言うかぶっちゃけ日向、俺、田中の三人の誰かだな。日向は身長のハンデはあってもあの跳躍力があるし、田中もあの運動神経で練習すればなんとかカバー出来るだろうからな。」
なるほど、確かに翔陽のバネがあれば多少の高さは問題ない。会って間もないけど田中さんの運動神経の高さも知っている。
「ま、そう言うことだ。つまりお前達が気にする必要は全くない!」
「そうそう!」
「それでも申し訳ないと少しでも思うなら俺たちの分まで頑張んなさいよ」
「「はい!!」」
リオはどこに進学させるべき?
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烏野
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青城
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白鳥沢
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県外