その後も両チーム得点を重ねていき互いに譲らない展開が続いていく。練馬ジュニアはリオを主軸に攻撃をハイレベルで重ねていき、千代田区ジュニアは攻守ともに佐久早と古森が躍動する
そして第二セット終盤…
ここを決めれば第二セット奪取のチャンスだが…両者共に疲労の影が現れ出す。
リエーフは息を整えながら、ボールを見つめる。
リオが小声で囁く。
「落ち着け、リエーフ。焦るな。息を整えるんだ」
リエーフは頷き、“フーッ……”と深呼吸し、呼吸を落ち着かせ次のスパイクに備える。
コート上では両チームの選手たちがフルスピードで動く。
佐久早は鋭い眼光でボールを追い、古森が瞬時に位置を調整。
“スッ”と体を反らしてリオのスパイクを受け、トスをセッターに返す。
リオは力任せにも似た力でボールを打つ。
ーー“ドガッ!”…と強烈なスパイクを打ち込むリオ
しかしまたも古森が反応し、ボールを拾う。それを相手のセッターが綺麗に佐久早まであげる。佐久早はフェイントをかけ、“ズバッ!”とブロックの隙間を突く。
得点は21点先取制のルールに沿って、互いに20点でデュースに突入するだった。
デュースとなり、緊張感は最高潮に達する。
両チームのコーチが叫ぶ。
「ナイスリカバリー!」「落ち着け!ここ一本ブレイクしろ!」
リオは大きく息を吸い、拳を握り直す。
「必ず止める……!」
リエーフもリオに呼吸を合わせる。
一瞬の判断、一瞬の反応が勝敗を決める局面だ。
しかしこの場面で尚、
ーー“バシュッ!”
場慣れしている佐久早は強烈なスパイクサーブをリオとセッターの間に打ち下ろす。
「やらせない!!」
咄嗟にリオが飛びつき、“パシッ!”とレシーブする。
しかし流石のリオも体勢が悪くボールはわずかにコート外に落ちるかと思われたが…
「っくそっ!」
「まだだぁ!」
そこに飛びつくリエーフがカバーし、セッターに返す。
セッターはそのままアンダーで相手コートにボールを打ち込み
千代田区ジュニアのチャンスボール
すかさず古森がレシーブしセッターがそのままボールをセットする
そこに上がって来るのは勿論この男…
ーー“ドゴォンッ!”…とエース・佐久早のスパイクが轟音と共に打ち下ろされる。
「ぐっ!?」
山勘で飛び込んだリオが体を反らしながらなんとか触れるものボールは弾かれ千代田区ジュニアのポイントとなる
「やべぇな佐久草」
「向こうのエースもあれに触れてる時点でヤベェけどな。」
そして相手のマッチポイント…ここを取られれば練馬ジュニアの敗北が決定する
体育館の空気が張りつめる。
勝ったチームが東京大会の頂点に立つ。
負ければ終わり
リオは呼吸を整え、汗に濡れた前髪を指で払う。
隣ではリエーフが、背丈に合わぬほど細い肩を震わせながら、それでも真っすぐに前を見ていた。
「……絶対絶命ってやつか…はっ…面白い!」
「…ああ。絶対止めてやる!」
二人の視線の先には、千代田区ジュニアのキャプテンにしてエース──
佐久早聖臣, そしてそれを支える攻守の要の 古森元也
彼らは練馬ジュニアのメンバーとはまるで違った
圧倒的な経験も、個々の完成度も、そして勝ちたいと思う貪欲さも。
しかし――リオとリエーフにとって、この瞬間はそんな差を考えるような場面ではなかった。
コートの中央で、ボールが審判の手に乗る。
息を呑むような静けさが場を支配する中、
「このポイント!!絶対取りなさい!」
コーチの声が俺たち練馬ジュニアを震わせた。
「……来るぞ」
リオが呟くと同時に、佐久早は軽く跳び、
ーー“シュッ!!”
と鋭いインパクトでボールを放った。リオには軌道が分かる。軽く揺れるようにリオの隣コースギリギリへ向かってくるフローター気味のサーブ…ここにきて不完全ながらフローターサーブに似ているサーブを放ってきた佐久早にリオは驚愕する
誰もが…なにより佐久早本人も取れるはずないと思われたそのサーブは
「うぉぉぉぉ!!」
リオが一歩踏み込みながら飛びつき
ーー“パシィッ!!”
と音を立ててレシーブした。しかし浮きすぎた。
ボールはネット近くまで大きく上がる。
「まかせろ──!」
誰よりも早くセッターが反応しボールをセットする
「上げた!! ラスト頼む!!」
ボールはネット近くへ。
(みんなが繋いでくれたボールっ……絶対決める!)
リエーフが助走距離を確保し飛び込む。ボールの打点に向かい全力で叩く。
ーー“バギャァァァァァン!!!”
その瞬間、衝撃が腕を突き抜けた。
(触られた……!?)
ボールは佐久早の指先で方向を変え、
古森が“スッ”と滑り込んで拾う。
形が整った千代田メンバー。最後の攻撃が上がる。セッターが綺麗にセンターにトスを上げる
「ラスト!聖臣!!」
終盤に関わらず相変わらずの跳躍を見せるエースの佐久早
綺麗に仕上げられたそのフォームに
世界が止まったような感覚を覚える
そしてこの試合最大の得点数を生み出したその右腕は…
ーー“ドォォン!!!”
轟音と共に撃ち下ろされコート右隅へ、リエーフも…リオでさえ反応出来なかったボールは静かに落ちていった。
試合終了を告げる笛が鳴る。
■ 決着
2ー0 千代田区ジュニア勝利
そして練馬ジュニアの敗北。
体育館が静まり返る。次に、千代田ベンチの歓声が爆発した。
リオは着地と同時に膝から崩れ落ちた。
(……負け…た…俺が…俺達がっ)
遠くで、リエーフも俯いて肩を震わせている。
何も言えなかった。
声が出なかった。
初参戦にして県大会2位の成績に関わらず
ただ、涙だけが勝手に溢れた
佐久早が、無表情のままリオの前に立つ。
「……強かったよ、君…ええっと…神凪リオくん?」
リオの涙が一瞬止まる。
「……次は絶対負けない……」
佐久早は小さく笑った。
「…ふっ…またやろう」
それだけ言い残すと自軍ベンチに帰って行ったのだった
試合後…東京体育館の外は、まだ夕方の明るさを残していた。
けれどリオの心の中は、雨上がりのように静かで、湿っていた。
控室から出てロビーへ向かうと、
リオの母と、元プロバレー選手だった父・レオナルドが待っていた。
「リオ……!」
母の声が聞こえた瞬間、リオの喉が震えた。
負けた悔しさ、全部こらえ込んでいた涙が、
その一言で全部ほどけてしまう。
「……ママ……俺……負けた……勝てなかったよ」
ママは優しく俺を抱きしめた。
腰を折って、俺と同じ高さにして、
背中をぽんぽんと叩く
「よく頑張ったよ。リオの試合、全部見てた。すごかったよ、本当に」
「……でも……最後のスパイク、返せなかった……
反応もできなかった……
俺が……止めていれば……」
ママは少しだけ微笑んだ。そしてパパは俺の前にしゃがみ、
大きな手で俺の涙をぬぐった。
「リオ。今日負けた悔しさは絶対忘れるなよ…それが強くなるための火種となりエンジンとなるからな」
リオはゆっくり顔を上げる。
「……パパ、俺……もっと強くなれるかな」
「なれるさ。リオはパパの息子なんだ。誰にも負けない才能を持っている。それに負けてしっかり泣けるだけの努力を積み重ねれる選手は、必ず強くなれる」
その言葉で、胸の奥にしずかに火が灯るのが分かった。
試合に負けた後、リオの練習量は一気に増えた。
放課後になると、自転車で練馬体育館へ向かい、
リエーフとサーブやレシーブやスパイク練習を前の倍以上した。
「もっと高くトス上げてくれ!」
「おう! ……しっかりと打ちきる!!」
リオの跳躍は日に日に伸びていく。
リエーフもブロックの読みが鋭くなり、
二人での1対1練習はいつも白熱した。
“ドンッ!!”
“バシュッ!!”
“ガキィッ!!”
体育館に二人の音だけが響く。
父レオナルドはプロの視点から、
リオに技術の細かいアドバイスをくれた。
・スイングは肘の高さを一定に
・ステップは“右→左→右”のリズムを崩さない
・強く打つより、正確にコースを決める
そして毎晩、フォームチェックをしながら言う。
「リオはまだまだ跳躍力も上がるな」
その言葉を信じて跳び続けた。
時にリオとリエーフ達に勝ち抜いた千代田区ジュニアの佐久早と古森。
彼らはすでに東京の天才コンビとして知られ始めていた。
試合の映像を何度も見返すたびに、リオの胸に悔しさが蘇る。
そしてそれはリオの強さの源となっていった
彼らとの試合からリオは自らの体を徹底的に扱き倒し一日も無駄にすることなく練習を続けたのだった。何よりあの試合の勝敗を分けたのはリオと佐久早との違いだと本人が納得してしまっているのだから…
無論そんなことはなくあの試合を見ていたものなら分かるはずだが個人的な実力で言えばリオと佐久早の実力は拮抗していた。そしてなにより佐久早本人もリオの実力を高く評価していた。試合後のインタビューにて佐久早本人も
『ええ…とても素晴らしく強いチームでした。特に7番の彼…今年はワカトシくん…去年まで宮城のチームで腕を鳴らした牛島くんを思い出しましたね。』
『はい…なにより彼は僕より下の世代ですからね。今の時点で五分…ならコレからはどうなのか想像も付きません…そして何より彼には世界最強のコーチが付いていますからね』
と最後に笑いながら答えていたのだった。インタビューアーもまさかここまであの辛口であり無口の佐久早が認めているとは思わずリオのことを個人的に聞いてしまったほどであった。
この記事とインタビューをきっかけに本人の意図とはいざ知らず全国優勝チームを最も苦しめたとして練馬ジュニアと佐久早本人が…あの佐久早本人が認めた数少ない選手…それも年下の選手が認め苦しめたとして広く認知されるようになってしまったのだった。
あれから更に一年…リオとリエーフは更に身体と技術が成長した姿が体育館にて見られた。
特にリオは、小学生離れした“読み”と“空中での攻撃の手段”に磨きがかかり、父の教えも相まって、攻撃の質が飛躍的に上がっていく。
身体能力 × ハーフ由来の手足の長さ × 父仕込みの技術 × 悔しさ
その全てが、リオを子供とは思えない領域へ押し上げていた。
そして小6。最後の一年。練馬ジュニアは、明らかに「全国を狙いにいくチーム」へ変貌していた。
● 地区大会—軽く(ダイジェスト)で流していきます!
ーードパァァァァァァン!!ーー
「ナイスリオ!」「やべぇだろあいつ…」
「あれが神凪リオか…」
「東京No.1プロスペクト…」
突出した実力を持つリオとリエーフの活躍もあり
リオたち練馬ジュニアは、もはや敵なしだった。
4.東京大会――準決勝「青梅ジュニア戦」
準決勝。相手は都内屈指の堅守・青梅ジュニア。
体育館の空気は張り詰めている。
青梅のエース、左利きの中学生顔負けのスパイカー・三条が不気味に笑った。
「よう、噂のハーフ君か。見せてみろよお前の実力」
リオは笑い返す。
「黙って待ってなよ…いやでも理解するから…」
ーーバギャァァァァァァン!!
「ぐはっ!」
リオのスパイクはブロックに現れた三条ともう1人を吹き飛ばし一度も止められることなく決め切っていた
そしてもう1人…
ーードォォォォン!ーー
「あいつもやべぇ!神凪だけじゃなねぇぞ!」
「ナイスリエーフ!」
リエーフがその身長と跳躍力で相手のブロックの上からボールを叩き込んだった。
そして…
チームの支柱である三条の心が折れたことで
明確にどちらが格上なのか判別されたのだった
そしてこの試合も危なげなく快勝し終わってみれば…
どの試合も 21-8、21-10 のようなスコアばかりでの圧勝。
地区大会を“完全優勝”で突破し、勢いそのままに東京代表決定戦へ向かった。
● 都大会決勝――
相手は江戸川区ジュニア。
リベロの切れ味と中学レベルのセッターを持つ強豪チーム。
大会No.1セッター・浦添の正確トスと、小学生離れしたミドルブロッカー・甲斐の高さが脅威だった
◆第1セット
最初の10点は拮抗。
リオのスパイクが炸裂すれば
――ドパァァァァァァン!!
甲斐のブロックでリエーフや他の選手のスパイクを難み
――バシィィィィン!
そして浦添のセットにて多彩な攻撃を実現させていく
――パシッーパシッ!
江戸川は多彩さで上回り、練馬は警戒を強める。
だが11点目からこのままでは不利かと思われたその時…
リオが“第2の武器”を出す。
ーードパァァァァァァン!
それは相手のブロックにコースを読まれドンピシャで張りつかれたその時
リオは体の重心を無理やり変えストレートからライト方向クロス
いわゆる 「インナースパイク」 を打ち込んだった
21-17でセットを奪う。
◆第2セット
江戸川は甲斐を中心に“速攻とクイックフェイント”を混ぜ、練馬の守備を揺さぶる。
リオがレシーブで粘るが、相手の多彩な攻撃を完全には止めきれない。
15-18とリードされる。
その後相手のミスで得点を取り返す
(やっとやり甲斐のある相手が出てきたか…)
リオは心の底から沸き上がる熱を感じた。
――こんなところで…東京で…負けるわけにはいかない。
そしてここでリオの秘密兵器…
"第三の武器"を繰り出す
リオからのサーブ…いつもは下からのアンダーサーブが基本のリオであったが…密かに父のビデオやプロの試合の映像を見返し何度も"それ"を練習していた
リオはいつもより数歩ほど後ろに下がりボールを静かに構え、
ほんの一瞬、深く息を吸った。
その瞬間——
空気が変わった。
―― フワッ!
ボールが天井付近までぐん、と伸びる。次の瞬間、
リオの身体は地面を蹴り裂くように跳んだ。
―― ドンッ!
蹴り上げた足が床を抉り、跳躍の勢いでリオの影が細く伸びる。
腕がしなり、
肩がひらき、
風を裂きながら全身の力を一点へ集める。
(ここ……!!)
―― ドガァァァァン!!!
手のひらに収束したエネルギーが、
ボールの側面を思いっきり叩きつけた。
衝撃音が体育館の隅まで刺さる。
相手コートへ向かったボールはリベロ横のコートに突き刺りその瞬間、
威力で床板がわずかに揺れた。
リベロ
「(見え……なかった……!)」
「は?小学生で!!」「え、何今の!?」
「ジャンプサーブで決めたぞあの子!!」
審判の手が、少し遅れて上がる。
そこからリオはサーブで連続3得点し、18-18の同点へ。
―― 『サービスエース!!』
そこから相手の焦り見え初め…
最後はリエーフのワンタッチブロックでボールが大きく上がり、
リオが走り込み、跳び、
空中で体を捻り――
――ズガァァンッ!!
20-12。
東京大会、昨年決勝で苦渋を呑まされた練馬ジュニアが念願の初優勝を飾った
その後も練馬ジュニアの快進撃は続いた
全国大会では、東京代表としての誇りと、絶対的エースとしての責務を背負いながら、リオは全ての試合において圧倒的なスタッツを誇った
各県の強豪との戦い。
仙台のレシーブ特化チーム、
大阪の攻撃特化チーム、
福岡の全員攻撃型、
そして北海道の高さとパワー。
どの試合も接戦だったが、
リオの存在が全ての局面で均衡を破った。
・前衛:高さと体幹でパワースパイク
・後衛:バックアタックで得点量産
・レシーブ:予測力で拾い続ける
今大会を機にリオは全国各地から“小学生全国No.1エース” と呼ばれるまでに成長したのだった。
全国チャンピオンとして終えた小学校最終年。
だがリオはまだ満足していなかった。
(中学でも、高校でも……もっと高みへ…土をつかされた相手だっているしそいつが認めたまだ見ぬ怪物たちもいる…)
全国制覇のその先へ——
リオたちの新たな物語が幕を開ける。