Skybound Ace 【Redux】   作:心ここにあらず

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8.

 

 

観客達がいまだ大きくざわめく中俺達は"試合が行われていた"であろう会場を上から見つめていた。

 

 

 

「やばいっすね今の中坊」

 

 

 

同じく試合を見つめていた、後輩の田中が呟く。いや確かにヤバかった。"色々と"。ここにいる観客、応援団、スカウト…全員が同じ意見なのは間違いないだろう。

 

 

なぜ、皆が驚いてるかって?

 

 

それはーー

 

 

 

先ほどまで行われていた雪ヶ丘中学対北川第一の試合。俺たちの目当てはぶっちゃけ北川第一であった。宮城県内では屈指の名門だし、今大会も優勝候補だと噂されているほどだったからな。

 

でも俺達の期待はある意味打ち砕かれたと言っても良いだろう。

 

 

なぜなら、その北川第一に対してまさかのストレートで雪ヶ丘が完勝してしまったからである。勿論、雪ヶ丘など聞いたことのない学校なだけあり前情報は何も手に入らなかったがまさかここまでとは想像もしていなかった。

 

 

特に現時点で"ウシワカ"クラスの大砲である2番の神凪リオと1番の日向翔陽…彼らは今すぐに高校に上がったとしても十二分に通用する実力を有している。

 

 

 

「北川第一相手にストレートか。今のうちでも絶対出来るとは大きくは言えないな」

 

 

「そこは言いましょうよ!大地さん!」

 

 

 

「はいはい。中学生と張り合わない田中」

 

 

「菅さんも!?」

 

 

「…」

 

 

「どうした清水」

 

 

 

 

俺は会場…と言うより雪ヶ丘をまっすぐ見つめる我が烏野のマネージャーへと視線を向ける。

 

 

 

「ん。彼…やっぱりどこかで見たことあるような気がして」

 

 

「?あのとても中学生に見えない2番くん?」

 

 

「…うん」

 

 

「潔子さんと!?あのイケメンハーフ君め!」

 

 

「こらこらどこにいくつもりだ田中!」

 

 

 

俺は清水の言葉に嫉妬した田中の首根っこを捕まえて抑える。

 

それにしても、本当に彼らは何者なんだろうか。あれほどの実力があってなぜここまで無名でいられたのかどうにも不思議でしょうがない。

 

 

 

「アイツらがうちに来てくれたら…」

 

「それは厳しいかもな」

 

「ん?なん…ってあぁ…」

 

 

 

 

 

そう言う菅の見つめる先にいたのは、うちと同様に新しい戦力を求めこの会場に来たであろう各高校のライバルたち。白鳥沢を筆頭に青葉城西、伊達高などなど宮城の強豪がズラリである。

 

 

 

 

「名門相手じゃあウチは期待薄だなぁ」

 

 

「…でも…」

 

 

「どうした清水」

 

 

「彼等が本当に来てくれるなら」

 

 

「まぁ何にせよ俺ら"今それどころじゃない'。やるべき事をやるだけだ」

 

 

「「おう!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合を終えた俺は翔陽にチームメイトを任せ、トイレへと足を運んでいた。そして皆と合流する直前、目の前に男が待ち伏せていることに気づいた。

 

 

 

 

「先ほどの試合を見せてもらった」

 

 

 

 

そう言い放つのは背丈は俺とそう変わらない… 左胸に校章(エンブレム)から想像するに"白鳥沢学園"の生徒なのは間違いなさそうだ。

 

それとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー"強者特有のプレッシャー"

 

 

 

 

この男にはそれがある。俺自身それと対峙するのは父を除いて3人目、2人目はジュニアの時に対戦した佐久草以来の感覚である。

 

 

 

 

「アンタ誰?」

 

 

「俺のことを知らないのか」

 

 

「生憎と他所に目を向ける余裕なんてないもんで」

 

 

「北川第一にあの内容で負かした上でその発言か…ふっ…どこまでもユニークな男だな。まぁいい。俺の名は"牛島若利"。白鳥沢学園・高等部に属しているものだ。」

 

 

 

 

白鳥沢…ね。名前は聞いたことあるな。確か、北川第一と並んで県内の強豪と君臨している学校の一つだ。そして目の前の男はそこの高等部であると。

 

 

 

 

「んで。その牛島さんが何のようですか?」

 

 

「単刀直入に言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー白鳥沢へ来い。」

 

 

 

俺は思わず苦笑した。

 

 

「いきなりですね。」

 

「回りくどいことは好きではない。」

 

 

牛島は表情一つ変えず続ける。

 

 

「神凪リオ。お前には全国…いや世界でも戦える才能がある。だが、才能だけでは全国では勝てない。」

 

「……」

 

「人間は環境以上には成長しづらい。」

 

 

 

その言葉に俺は少し興味を惹かれた。牛島は淡々と話し続ける。

 

 

 

「…少し話をしよう。例えば、筋力は、自分より重い負荷を与えなければ強くならない。技術は、自分より高い技術を持つ相手と毎日向き合わなければ磨かれない。判断力は、自分より速い展開の中で何度も失敗と修正を繰り返して初めて身につく。精神力も同じだ。」

 

 

「…」

 

 

「常に勝利を求められる環境でしか、本当の意味では鍛えられない。つまり──」

 

 

 

牛島は一度言葉を区切る。

 

 

 

「才能を伸ばすのは才能ではない。それは"環境"だ。」

 

「……」

 

「どれほど優れた種でも、痩せた土では限界が来る。栄養が足りなければ根は張れない。水が足りなければ葉は広がらない。それは植物も、人間も変わらない。だから強豪校は強豪であり続ける。強い選手が集まり。強い練習になる。強い練習が、さらに強い選手を生む。」

 

「…」

 

 

「その循環が毎年繰り返される。白鳥沢には、その循環がある。」

 

 

 

牛島は自分の胸にある紫のエンブレムを軽く叩く。

 

 

 

「全国レベルのスパイカー。全国レベルのブロッカー。全国を知る指導者。全国を前提にした練習。それらが毎日、お前の基準になる。基準が上がれば、成長速度も上がる。逆に、基準が低ければ成長はそこで止まる。人は、自分が毎日見ている景色以上には成長しにくい。」

 

 

 

俺は黙って聞いていた。ここまで筋の通った勧誘は初めてだった。

 

 

 

「そして何より…白鳥沢には"俺"がいる」

 

「っ…随分な自信ですね」

 

「??ただ、事実を述べているだけだが?」

 

「マジで言ってんのかこの人」

 

 

 

俺本人を前にして己の方が優れていると豪語する男に俺は呆気に取られていた。

 

 

 

「今日の試合北川第一を相手に、お前はただ勝っただけではない。試合そのものを支配していたと言える。身体能力、技術、判断力、精神力。その全てが高校生と比べても高い水準にある。そして何よりも"あのスパイクとサーブ"…良いものを持っているようだ」

 

 

「…どうも」

 

 

「だが…俺の方が強い」

 

 

「あ??」

 

 

 

牛島の言葉に顔を歪め反応するリオ

 

 

 

 

「ふっ…そう言う幼稚な所もあるのだな。」

 

 

「…」

 

 

「まぁいい。確かにお前の実力は認めている所ではある。しかしそれは所詮中学レベル…その自慢の跳躍やパワー…サーブを取ってしてもお前が現時点で俺より明確に優れている点など存在しない」

 

 

「っ…」

 

 

「…」

 

 

 

 

 

リオは牛島の言葉に怒気を浮かべるような表情を浮かべ牛島と至近距離で睨み合う。数秒…数十秒とも取れる沈黙を破ったのは牛島であった。

 

 

 

 

 

「…話が逸れたな。…つまりは才能は、お前自身が持っている。その才能を完成させる環境は、白鳥沢が用意する。それが俺がお前を勧誘する理由だ。」

 

 

「…っ。俺はーー」

 

 

「天下のウシワカちゃんともあろう人が歳下相手にマウントとって恥ずかしくないの〜」

 

 

「「??」」

 

 

 

 

リオが何かを言い放とうとした時、2人の背後から更にもう一つの声が被さるように響き渡る。

 

声の主は白い純白のユニフォームに水色のラインが入ったコチラもリオや牛島に近い体格を誇る優男風の男。

 

 

 

「…及川」

 

 

「は〜いイケメンセッター及川さんで〜す。」

 

 

「…」

 

 

「ごめんね話遮っちゃって」

 

 

「…いえ」

(…この人も…やるな)

 

 

「まぁそんな警戒しないでよ。俺はそこの"自称"最強君と違ってちょっと君に挨拶しに来ただけなんだからさ。」

 

 

 

 

そう言いながら明らからに牛島に向かって挑発する"及川"と呼ばれた目の前の男。そしてリオの直感が目の前の男も牛島同様、並のプレイヤーではないと警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

「自称?ウチに…俺に負け続け2位の指定席を欲しいままにしているヤツの言葉とは思えないな」

 

 

「っ…指定席じゃねぇわ!今年こそお前を倒して俺たちが優勝するんだからな!」

 

 

「??あまり出来ないことは口にしない方がいいぞ」

 

 

「あぁ!!」

 

 

 

 

睨み合っていたリオを押し除けて牛島と睨み合う及川。

 

 

 

 

「…俺の要件は以上だ。神凪。よく考えろ。でなければ"この男のような道を辿ることになる"」

 

 

「っ…はっ。それは白鳥沢を断って青城に進んだ俺への当てつけか?」

 

 

「お前は道を間違えたんだ。現に俺は正解を証明し続けている。"勝利"という形でな」

 

 

「正解を出すのはまだ早いってことを俺が証明してやる」

 

 

「…まぁ良い。ではな」

 

 

 

 

 

そう言い俺達から離れていく牛島。牛島が去った後大きく息を吐いた及川がこちらを振り向く。

 

 

 

「はぁ〜……相変わらず疲れる奴。」

 

 

そうぼやくと、今度は柔らかな笑みを浮かべて俺へ向き直る。

 

 

「改めまして。青葉城西高校三年、及川徹。」

 

「…神凪リオです。」

 

「知ってるよ。今日の試合、全部見てたからね。」

 

「……」

 

「正直驚いたよ。中学生であそこまで完成されてる選手なんて初めて見た。」

 

 

 

俺は黙って続きを待つ。

 

 

 

「でもね。」

 

 

 

及川は人差し指を一本立てる。

 

 

 

「牛若ちゃんが一つだけ間違ってることがある。」

 

「?」

 

「白鳥沢に入れば強くなれる──そんな単純な話じゃない。」

 

「……」

 

「確かに環境は大事だよ。でも環境って、設備とか実績だけじゃない。」

 

 

 

及川は体育館の方へ目を向けた。

 

 

 

「同じ練習をしても伸びる奴と伸びない奴がいる。同じ才能を持っていても、開花する奴と埋もれる奴がいる。」

 

「その違いは?」

 

「誰と出会うか。」

 

「……」

 

「誰に教わるか。誰と戦うか。誰に託されるか。」

 

 

 

及川は静かに笑う。

 

 

 

「特にバレーはそうだ。一人じゃ何もできないスポーツだから。」

 

 

 

その言葉には妙な説得力があった。

 

 

「スパイカーは一人じゃ点を取れない。セッターがいて初めて最高の一打が打てる。逆にセッターも一人じゃ勝てない。最高のスパイカーがいて、初めて価値が生まれる。つまりーー」

 

 

 

及川は俺を真っ直ぐ見据える。

 

 

 

「選手を完成させるのは環境だけじゃない。“相棒”だ。」

 

「……」

 

「リオは現時点でも確かに全国でもトップクラスのスパイカー。でもねーー」

 

 

 

ニヤリ、と口角を上げる。

 

 

 

「俺となら、もっと強くできる。」

 

「っ……」

 

「君のジャンプ。君の助走。君の空中姿勢。打点。腕の振り。全部見た。まだ二割……いや三割くらい力を殺してる。」

 

 

 

及川の言葉に思わず眉が動く。

 

 

 

「何でそう思うんです?」

 

「セッターだから。俺は毎日スパイカーを見てる。最高のトスを上げるには、その選手が百パーセントじゃ足りない。百二十パーセント出せる場所を知らなきゃいけない。」

 

 

 

及川は自分の胸を軽く叩く。

 

 

 

「俺はそのために誰より人を見てきた。だから分かる。君はまだ完成形じゃない」

 

「……」

 

「だから青城へ来なよ。」

 

「牛若じゃないけど青城には”俺がいる”。」

 

 

 

苦笑しながら肩を竦める。その笑顔には牛島のような圧はない。

だが、不思議と胸を打つ熱があった。

 

 

「もちろん決めるのは君。」

 

「でも一つだけ覚えといて。」

 

 

及川の表情から笑みが消える。

 

 

 

「才能は、誰かに理解されて初めて武器になる。もし君が青城に来るなら。」

 

 

 

静かにリオに向かい指を差した。

 

 

 

 

「俺が君を、日本一のスパイカーにしてみせる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛島さんと及川さんの勧誘イベントを終えた俺は既にみんなが向かっているであろう駅まで歩いて行こうと体育館出口を出ると

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそ。まだだ…負けたままじゃ終われねぇ……!次だ!次は必ずお前と1番を倒して俺がコートに1番長くいてやる!覚えていやがれ!」

 

「…おう!次もぜってぇ負けねぇ!いつでもかかってこい!」

 

 

 

 

そう言い残す影山はこちらの方に歩いてきた

 

 

「…!?テメェは!?」

 

 

「…悪りぃちょっと聞いちまったわ」

 

 

「…別に良い…聞かれてもやることは変わんねぇ」

 

 

「…影山くん?だっけ?」

 

 

「なんで名前!?」

 

 

「悪りぃ俺一応副キャプテンだからさ、チーム名簿とか見れるのよ…ま、それは良いんだけど…【王様】とか言われてるらしいじゃん?」

 

 

「…ちっ!」

 

 

「…正直初めて聞いた時はなんて誇り高い異名なんだろうって思った…けどその反応や今日のお前のチームメイトの反応…対応を見ているうちにそれがポジティブな意味じゃなく揶揄されている言葉だと気づいた」

 

「…」

 

「こんなこと俺に言われても嬉しくねぇしイラつくだけだと思うけど…バレーは1人じゃ出来ねぇぞ?…俺もさっきある人に言われたんだけどさ…俺1人が上手くても全国一位にはならないらしいぞ?それよか全国出れるのですら危ういかも…なんでも1人でできれば良い…お前そんなこと思ってたんじゃないか?」

 

「ッ!?」

 

「…だから俺たちみたいな素人チームに負けた…勿論お前以外にも問題は沢山あっただろうな。「勝って当たり前」「素人」「体格の差」…そちらが俺たちを見下す理由なんていくらでも思いつく…」

 

「でもな…セッター…それもあのチームの軸であるお前がもっとメンバーを使いこなすことができればウチは勝てなかったかも知れない…もう俺がなにを言いたいのか分かるだろう?」

 

「何様かと思うけど…お前は今日勝った俺たちと同じくらいデカい経験をしたかも知れない…ほらどっかの監督も言うだろう?」

 

「【負けたことが財産になる】ってな!どうせなら負けたことをバネにしてもう一度上(高校)でやろうぜ!」

 

 

「!?当たり前だ!…クソッ!思い出させやがって!」

 

 

「…じゃあな影山…」

 

 

「…名前…名前はなんだ」

 

 

「…くく…神凪リオ…リオでいいぞ」

 

 

「…そうか…」

 

 

そう小さく言い残し影山は去って行った。すれ違い様に小さく「ありがとな」って聞こえたのは幻聴じゃないはずだ。もしかすると上でやる時は本当のコート上の【王様】になってるかもな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●その日の夜

 

 

「そうそう…翔陽ってやつなんだけど今度日本に帰ってきたときアドバイスしてあげて欲しいんだ…ポテンシャルは未知数…体格は劣るけどセンスやバレーに対する意欲は文句なし。俺が教えれることは教えた…うん…お願い」

 

 

 

俺はイタリアにいるパパに俺と翔陽のことを見て欲しいと頼み込んでいた。ぶっちゃけ俺が翔陽に教えれることはもうないし基礎はほぼ固めたからここからは自分次第なんだが…それだと必ず壁にぶつかるはずだからな

 

 

 

ーーぷるるるーー

 

 

画面を見ると声を聞きたいと思っていた女性の名前が表示されていた

 

 

「もしもし!うん…勝ったよ!…身長も去年より伸びたしもうアリサちゃん上から見下ろせちゃうと思うよ…」

 

 

アリサちゃんから今日の試合について色々聞きたいらしく電話をかけてくれたのだった。俺は15歳…アリサちゃんは18歳で共に受験が忙しく電話はよくするけど会うのは去年のクリスマスに東京まで行ってデートしたぶりなのだ…

 

 

「…うん…迷ってる…東京に行っても楽しそうだけど…こっちにきてリエーフくらい気を許せる友達も出来たんだ…うん…ごめんね。大会が終わったら必ず会いに行くから…うん…愛してる…おやすみ」

 

 

 

俺はそのまま2時間ほど電話したのち終了したのだった。

それにしても高校…か。宮城には世代No. 1と呼び声高い大エースと総合力ではそいつすら凌ぐ技量の化け物がいる

でも東京にも昔…人生で初めてバレーで俺に土をつけた奴らも居る…ガキの頃で、あのレベルなら今は牛島さん並みの怪物に成長している可能性もある…

あとはリエーフともう一度同じコートに立つのもありだなぁ

 

ま、今は大会に集中しねぇとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●翌日 2回戦 泉館中学校

 

 

俺たち雪ヶ丘は昨日と同じ体育館で2回戦を迎えようとしていた。2回戦の相手は泉館中学校…ぶっちゃけ簡単に言うとただの参加校である。一回戦がお互いに弱小校同士の衝突だったため…どちらが勝ち残ってもシードの北川第一とやる運命だったのである

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!ーー

 

 

「「と、とれる訳ねぇ」」

 

 

「「「うぉぉぉぉ!」」」

 

 

「9本連続!サービスエースの記録って何点だっけ?」

「11とかじゃなかったっけ?」

「これじゃあ記録を破るのは今日だな!」

 

 

 

北川第一の守備陣を崩壊させたリオのサーブを参加校同然の中学生に取れと言う方が不可能な話でありこの試合も初手からサービスエースが続いていた

 

 

ーードパァァンァァァァァァン!ーー

 

 

「ぐっ!」

 

ーーギュルン!ーー

 

 

「「「うぉぉぉぉ」」」

 

「記録更新だぁ〜!」「まじやべぇって!」「いやでも相手弱小だろ〜?」「お前出来んのかよ」「出来ませんけど〜」

 

 

 

 

 

個人の記録では俺が宮城県の連続サービスエース記録を叩き出したりなど二回戦も2戦セットを先取り先取で完勝。この日は勝てば2試合あるので昼食を食べたのち準々決勝が始まる…

 

 

 

 

 

 

 

●準々決勝 千鳥山中学校

千鳥山は強豪校であり北川第一も苦戦を要するならここからだろうと予め予期していたほどの実力者集団である。去年まで在籍していたリベロはあの白鳥沢や青城からもスカウトが届いていたほどの逸材だったらしい。

 

「勝負してみたかったなぁ〜」

 

今年昨年ほどの守備力はないそうだがそこは強豪校らしく今年も安定した強さを身につけてきた。チームカラーとしては突出したものはないが総合的にレベルの高いチームだそうだ。

 

 

 

 

雪ヶ丘の主将であるリオは、コイントス後にベンチへ戻りながら小さく息を吐く。

 

「……やっぱ強豪校は場慣れしてんなぁ。…今回は苦戦は免れねぇかも知れねぇな」

 

隣を歩く翔陽は、逆にワクワクした顔で笑っていた。

 

「でも倒しがいあるよな!俺が跳んでぶち抜いてやる!」

 

リオは苦笑しつつ、胸の中で火がつく感覚を確かに感じていた。

 

 

 

 

千鳥山のサーブはコースがいやらしい。

4枚守備のそれも両サイドの前に落ちる軌道、ラインギリギリの深いボール、速いフローター。

雪ヶ丘は最初からレシーブが乱れ、トスは綺麗に上がらない。

 

リオはブロックに張り付く2枚を見上げながら、ぎりぎりの体勢でトスをあげそれを翔陽が捻じ込む

 

バチィィン!

 

1試合目の相手だったら決まっていた…だが千鳥山のリベロが床を擦る音が響く。

 

「「「うぉぉぉ!!あれ拾うのかよ!」」」

 

「やっぱよく鍛えられてんなぁ」「流石は強豪!」

 

観客が思わず声を漏らすほど、千鳥山は驚異的じみた粘りを見せてくる。

 

「チャンスボール!」

 

リオは苦笑し、こちらへ返ったボールを見てすぐに助走に入った。

 

「翔陽頼む!」

 

「おう!」

 

「お願いします!」

 

 

ーードスッ!ーー

 

 

「くるぞ1番だ!」「右3枚締めろ!」「「おう!」」

 

 

流石は強豪校…この2戦でうちの情報は丸わかりって訳だ…

 

でもな…そんな簡単に止められるほど

 

(やわじゃねぇよ!)

 

 

俺は助走距離を確保したのち全力で跳躍…そして体を大きくしならせ左腕を大きく回しボールを叩き落とす

 

 

ーードンッ!ーーバギャァァァァァァァァァァァァン!!ーー

 

 

「ぐはっ!」

 

 

「まだだ!ワンタッt」

 

「いや無理だ…」

 

 

 

「「「うぉぉぉぉ!!」」」

 

 

 

「!?」

 

 

 

リオが放ったスパイクは3枚ブロックの1番右のブロックの手のひらに衝突したがその程度でボールの勢いを全て殺しきることが出来ず

 

ボールは手が届かないほど遥か後方へ

 

 

 

「シャア!!」

 

 

「ナイスリオ!」「うぉぉぉ!次!次俺にくれ!」

 

 

そこから雪ヶ丘は攻撃を止めず攻め続けたがコチラの攻撃は翔陽ですらギリギリ…俺でも少しでもトスの位置が下がればブロックに捕まってしまいそうなほど追い込まれたりもしたが…

 

そしてようやく、千鳥山のブロックが遅れた瞬間——

 

ーードゴォォォンッ!ーー

 

翔陽のストレートが抜けてなんとか第1セットを25-22で先取。

 

 

■ 第2セット

 

千鳥山はあいも変わらずサーブもブロックも、この2試合で雪ヶ丘を研究し尽くしたかのように的確だった。

 

翔陽の助走に合わせてブロックが2枚、リオには常にマークが1枚多い3枚でのブロック。

俺は苦しい中、ミドルを織り交ぜるが、それすら拾われる始末。

 

ここにきて攻撃陣と連携の選択肢の少なさが明確に弱点として現れ始めた

 

千鳥山の声がよく響く。

 

「粘れ!返してけば必ずチャンスは来る!」

 

接戦のまま中盤。

リオは呼吸を整えながら、翔陽の背中を叩いた。

 

「翔陽、次はCから飛べ。俺がツーのモーションから持っていく」

 

 

「オッケー!」

 

リオは自らが囮とセッターの役割を両方こなす作戦に出ようとした

そしてサーブカットが乱れたが、懸命に上げたボールを俺は助走を数歩だけ確保し跳躍

 

 

「ツーで打ってくるぞ!飛べ!」「「おう!」」

 

 

案の定千鳥山は俺がツーで打ってくることも北川第一の時で予測していたらしく俺に合わせてブロックが飛び上がる

 

(きた!!)

 

俺はその瞬間…スパイクの体制から空中で体制を一度整え両腕を上に持っていきトスを上げる体制をつくった

 

 

「違う!セットだ!攻撃は2番だ!」

 

 

相手の主将がこちらの意図を見抜くものすでにブロックは上がっている

 

 

ーーパスッーー

 

俺は左端にまでロングトスをあげそこに合わせて翔陽が跳躍する

 

 

ーードン!ーードパァァンン!!ーー

 

 

翔陽のスパイクは誰もいないコートの端に突き刺さった

 

セット後半、雪ヶ丘は攻撃のテンポを完全に上げリオがフェイントとツーでのスパイクを織り交ぜ始めたことで主導権を握ることに成功

翔陽はジャンプサーブで揺さぶり、ミドルも流れに乗り始める。

 

千鳥山も粘るが——

 

最後はリオがフェイントを落とし、25-23。

ストレート勝ちではあるが、スコアは1,2セット共にギリギリだった。

 

 

 

 

 

 

リオはどこに進学させるべき?

  • 烏野
  • 青城
  • 白鳥沢
  • 県外
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